メンバーが選ぶ2020年前半に観た映画で良かった、又は印象的な作品(1/2)の続きです。
Mさん
『ウェスタン』(1969伊米合作、監督セルジオ・レオーネ 原題伊語C'era una volta il West直訳:昔々西部で)
大陸横断鉄道敷設によって新たな文明の波が押し寄せていた西部開拓期。ニューオーリンズから西部に嫁いできた元・高級娼婦のジルは、何者かに家族全員を殺され、広大な荒地の相続人となった。莫大な価値を秘めたその土地の利権をめぐり、ジルは、鉄道会社に雇われた殺し屋、家族殺しの容疑者である強盗団のボス、ハーモニカを奏でる正体不明のガンマンらの熾烈な争いに巻き込まれていく。
大俳優、ヘンリーフォンダが珍しい悪役。凄みのあるワルを演じています。ジルはクラウディア・カルディナーレが演じ、妖艶な魅力を発揮しています。鉄道施設風景が非常で広大なスケール感があります。
(下の画像左はハーモニカを奏でる正体不明のガンマン役チャールズ・ブロンソン、右にジェイスン・ロバーズ。画像中左は凄みのあるワル役を演じるヘンリーフォンダ。画像中右は列車から降りるジル役クラウディア・カルディナーレ。画像右はハーモニカの男が鉄道駅で降りた(中央に小さく見える)のを迎え撃つ手前の3人の男、最初の決闘場面、広大なスケール感)
画像出典左:お気楽おやじの備忘録 セルジオ・レオーネ監督の映画「ウエスタン」は本当に傑作なのだろうか?https://ameblo.jp/miura1954/entry-12605711154.html (閲覧2020/7/19) 画像出典中左:映画は娯楽だ ウエスタンhttps://plaza.rakuten.co.jp/mag7cup/diary/200905200000/ (閲覧2020/7/19) 画像出典中右:妄想の荒野~矢端想のブログ「ONCE UPON A TIME IN THE WEST」http://blog.livedoor.jp/yabataso/archives/65465095.html (閲覧2020/7/19) 画像出典右:映画.comセルジオ・レオーネ「ウエスタン」、原題で2時間45分オリジナル版を公開https://eiga.com/news/20190625/6/ (閲覧2020/7/19)
『キャプテン・フィリップス』(2013米 監督ポール・グリーングラス 原題Captain Phillips)
ソマリア沿岸を航海していた貨物船マークス・アラバマ号は海賊の襲撃を受ける。 船長フィップスは流血沙汰を避けようと海賊と攻防を繰り広げるが連れ去れてしまう。 ... 海賊せざる得ないソマリア漁師達の実情も描く、マークス・アラバマ号乗っ取り事件を元にした社会派映画。
犯人達の痩せこけた顔、体がよりリアルさを醸し出しています。現地の方かなと思われるような、演技に拍手。今も何処かの海で海賊が横行していることに驚きです。
(下の画像左はリアルさを醸し出している痩せこけた海賊達。画像右は鉄のはしごを掛けて乗り込む場面。貨物船は放水で撃退しようとする)
画像出典左:キャプテン・フィリップス https://www.ag-n.jp/wp/?p=292 (閲覧2020/7/19) 画像出典右:TSUTAYAキャプテン・フィリップスhttps://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA00007ZJTG (閲覧2020/7/19)
Uさん
1)『新聞記者』(2019日本 監督 藤井道人)
2019年に公開され、昨年度に印象に残った映画として横浜映画サークルのメンバー2名が取り上げていたものです。日本アカデミー3部門受賞を受賞したこともあって、今年になり映画館で観ました。
映画の内容はすでに紹介されているので簡単に述べさせてもらいます。この作品は某大学校設立に関する不正問題の証拠を隠蔽しようとする内閣情報調査局と、それらの事実を暴露しようとした内部関係者および新聞記者の真実追求の物語となっています。現実の事件を暗示しており、現政府を批判した社会派映画として作成されています。ただし、森加計問題などにはなかった、大学の(反社会的)設立目的や実在しない人物を登場させているのは、フクションという姿勢を維持することで(映画の)安全性と娯楽性を加えているのだと思いました。かなりの力作でしたが、私はパロディーとして面白く見ることができました。でも、過去にはこうした社会派映画がたくさんあったのに、今年この映画が注目されたのは最近の国内映画産業の衰退のせいかもしれません。映画にはいろんな主張があっていいのですが、興行ばかりを考えて、子供向けのアニメやとりとめのない家族ものばかりになっているのは残念です。
なお、同じ2019年には米国映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』が公開されました。この映画は当時のアメリカ政府の「イラク核保有でっち上げ」を真っ向から反論し新聞報道した新聞記者たちを事実に基づいて映画化した力作でした。専門家の間では評価は高いものの、一般受けはあまりなかった映画です。でも私は類似のテーマを取り上げたものとしては事実に正直な作品であり、こちらの作品により強いインパクトを感じました。
(下の画像は主人公の一人内閣情報調査局の官僚役松坂桃李)
画像出典:映画『新聞記者』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=Mtn5pEGEC0w (閲覧2020/7/20)
2)『Fukushima50(フクシマフィフティ)』(2020日本 監督 若松節朗)
2011年3月11日の東日本大震災で発生した巨大津波により全電源喪失した福島第一発電所の事故で、現場に留まり奮闘した50人の人たちを描いた映画です。事故後に各国のマスコミなどからその人たちに与えられたのがFukushima50という名前でした。原作は門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」。吉田所長を渡辺謙、1・2号機当直を佐藤浩市が演じています。
映画は事故調査委員会の検証や関係者の証言などをほぼ忠実に再現しており、現場の緊張感がひしひしと伝わってきます。吉田所長が東電幹部や政府高官とするやり取りも臨場感があり、見ていて当時の状況を再認識しました。作業員が2人1組で決死のバルプ確認を行う場面や、高濃度放射線区域での残留者を人選する場面などはぐっとくるものがありました。ただし、50人の現場作業だけでなく彼らの家族との葛藤や原発へ反発する地元民との接触場面を多く登場させているのは、映画として大衆受けしやすいような展開を狙ったためなのだろうか。
なお、事故後も原発を守ろうとする東電幹部やメンツを重んじる総理大臣と、吉田所長とのリアルなやりとりなどは、実際にあった話ではあるが、少し彼らを悪者として描きすぎているようで気になった。
映画に描かれた事故推移は、2017年のNHKスペシャル「福島原発メルトダウン危機はなぜ見過ごされたか」で詳しく放送されており、人的な問題として「備えの甘さ」「構造的な問題」などが強く取り上げられていた。特に吉田所長への業務集中が初期の判断遅れに影響したと言っていた。
福島原発はこれから何十年も負の遺産として受け継がれる。安易な再稼働を計画する前に、いまだに苦しんでいる福島の人たちのことを心に止めるためにもこうした映画が多くの人に観られることが必要なのではないでしょうか。
(下の画像は全電源喪失し、懐中電灯の明かりで対策を相談する職員Fukushima50たち)
画像出典:トーキョー女子映画部Fukushima 50(フクシマフィフティ)
https://www.tst-movie.jp/hh-ha/fukushima50.html (閲覧2020/7/20)
3)『サンマ デモクラシー』(2020年2月8日テレビ朝日放映 沖縄テレビ制作)
この作品は映画ではありませんが、今年最も印象に残った作品(約50分のドキュメンタリー)です。2019年度の第34回民教協スペシャルに選ばれた作品で、沖縄テレビが作成したものです。
1963年米国占領統治下にあった沖縄で、魚屋の女将・玉城ウシが、サンマに関税をかけたのはおかしいと琉球政府に裁判を起こしたことから始まります。当時、沖縄はまだアメリカに統治されていました。琉球政府の上にはアメリカで任命された高等弁務官がおり全ての実権を持っていました。彼らによって作成された高等弁務官布令には日常の法律など、魚の関税までもが決められていました。ウシはこの布令にはサンマの関税は入っていないという不備を指摘して裁判を起こし、琉球の裁判所で勝訴したのでした。しかし、その時の高等弁務官ポール・キャラウェイは「沖縄の自治は神話に過ぎない」と言うほど独断的であり、そうした訴訟結果などは認めようとせず、サンマを追加した改正布令を出すのでした。その後布令に関する裁判権は日本ではなくアメリカにあるとされて、布令の不備はうやむやにされてしまいました。
裁判権取り上げに反対して抗議決議をアメリカに訴えた琉球政府の裁判官らの活動、サンマ裁判を支えた下里弁護士や、その後の日本復帰闘争へと大衆をリードしていく瀬長亀次郎議員の活動など、沖縄の人たちの民主主義を巡る戦いの大きなうねりを丁寧に捉え、事実に基づいたストーリーが展開されています。50年経っても沖縄の民意は、米軍や日本政府ファーストの方針の下に今でも反映されていません。いまだに未解決の「沖縄の民主主義とは何か」を伝えてくれる貴重な番組でした。
(下の画像左はサンマに関税を掛けるのはおかしいと裁判を起こした魚屋の女将・玉城ウシさん。画像中はウシさんの裁判勝訴を伝える新聞の場面。画像右は日本復帰闘争へと大衆をリードした瀬長亀次郎議員)
画像出典左:ウシがサンマを訴えた!? 魚屋の女将が起こした歴史に残る裁判をたどるhttps://news.nicovideo.jp/watch/nw6563299 (閲覧2020/7/20) 画像出典中:shiraike’s blog2020-03-01沖縄本土復帰とサンマデモクラシーhttps://shiraike.hatenablog.com/entry/2020/03/01/022209 (閲覧2020/7/20) 画像出典右:ORICON NEWS伝説の政治家・瀬長亀次郎=第34回民教協スペシャル『サンマ デモクラシー』(テレビ朝日ほかで2月11日放送)(C)沖縄テレビ放送https://www.oricon.co.jp/news/2153482/photo/13/ (閲覧2020/7/20)
H.Eさん
『だってしょうがないじゃない』(2019日本 監督 坪田義史)
発達障がいを持ちながら1人暮らしをする親類の叔父・まことさん。自身発達障がいと診断された映画監督が3年間にわたる交流を記録したドキュメンタリー。
「親亡き後の障がい者の自立の困難さ」「知的障がい者の自己決定、意思決定の尊重」などの難しい問題に直面していく。
見終わって、まことさんはこれからどうするんだろう、どうなるんだろうと思った。ぜひ続きをみてみたい。
(下の画像左は広汎性発達障害と診断された、まことさん。亡くなった母親と二人で暮らしていた家を、支援者に『出なければいけなくなるよ』と言われたときに『だってしょうがないじゃない』と応える。画像右は、右にまことさん、左に監督の坪田義史。横浜港をバックに山下公園)
画像出典左:映画『だってしょうがないじゃない』公式HPhttps://www.datte-movie.com/ (閲覧2020/7/21) 画像出典右:映画.comだってしょうがないじゃないhttps://eiga.com/movie/91822/ (閲覧2020/7/21)
以上です。