(その4-5)の続き。
11)用語
(a)「拷問」と「虐待」の使い分け
戦争などで情報を得るなど他の目的がある場合は拷問。他の目的がない場合は虐待。拷問は生きている人に対してだけ使われる用語。死亡した人をさらに切り刻むことを拷問とは言わない。サイコパスは死亡した犠牲者をさらに切り刻んだり、バラバラにしたりすることがあり、これは虐待の延長上にあると考えて、虐待という言葉に含むことにする。サイコパスの場合、金銭は付随した目的で虐待そのものが主要な目的なので本項では用語として虐待を使用。サイコパスにとって金銭を奪うことも虐待の興奮を得る行為の一つ。金銭を渡しても虐待は止まらない。すべての資産を奪いつくされても虐待は続く。これは後の具体例13,14で示す。逆に言えば、金銭を渡して虐待が止まればサイコパスではない可能性がある。その場合「反社会性人格障害」など他の原因が考えられる。M.ストーンが「虐待」の激しいものを「拷問」と表現している場合があり、本シリーズでもM.ストーンと同様の使い方をしているところがありますが、この1.22項では以上のように「虐待」を定義している。
(b)「反社会性人格障害」と「反社会性パーソナリティー障害」
「反社会性人格障害」は日本の心理学会ではアメリカ精神医学会の分類(DSM)に従いサイコパスとの違いを明らかにしないまま「反社会性パーソナリティー障害」と改めたが、本シリーズではサイコパスとの違いを明確にし、旧来の用語「反社会性人格障害」を生かしておく。違いの考え方は本シリーズ(その2)「1.8 サイコパスと反社会性人格障害やその他の犯罪の違い」参照。およそ次のようになる。反社会性パーソナリティー障害=サイコパス+反社会性人格障害。反社会性パーソナリティー障害のおよそ5人に1人がサイコパスで4人が反社会性人格障害〔日経サイエンス、K.A.キールp13〕。K.A.キールは述べる「300種類を超える既知の精神的病状を網羅している臨床医のバイブル『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)』にさえ、サイコパシーは組み込まれていない。犯罪傾向のある様々な人をいっしょくたんにした「反社会性パーソナリティー障害」という診断名を作ってお茶をにごした」「犯罪者を識別するには役に立たない」〔日経サイエンス、K.A.キールp13〕。本シリーズの定義はK.A.キールの考え方によっている。
(c)傍辺縁系、大脳辺縁系、脳辺縁系、辺縁系は同義語
日経サイエンス、『サイコパスの脳を覗く』でK.A.キールが傍辺縁系と言う用語を使用しているので本シリーズでも使用しているが、いろいろな情報元で大脳辺縁系、脳辺縁系、辺縁系と同義語が使われており、情報元に従ってそれぞれの用語を使用している。すべて同じ意味と考えてよい。扁桃体は辺縁系の一部になるが、本シリーズでは辺縁系と言うときに偏桃体を含まない範囲の場合があるので、文脈で理解して頂きたい。
以上主に逆転欲求構造からサイコパスの特徴を視た。次に行動からサイコパスの特徴を視る。平和時と戦時に分けている。
(2)平和時のサイコパスの特徴行動
大きく分けて次の5つの特徴行動がある。1)首の切断、2)身体解体、3)毒殺、4)放火、5)監禁虐待。1人のサイコパスがこれらの複数を行うことが多い。特に重要な行動の特徴は機会があれば無限に残虐行為を続け、無限に殺し続けることである。各項を例によって説明する。1)、2)、3)の例1~10は単独サイコパス、5)の例11~14はまんじゅうサイコパスである。両親が子供を虐待死するケースは監禁虐待に相当するが本シリーズ(その1)で3例を挙げて説明しているのでここでは省略する。
1)首の切断
人だけでなく猫、犬、ウサギやハトなどの首を切断する。目をえぐったり、口を裂き、頭の皮を剥ぎ、手足を切断したりもする。
例1「佐世保女子高生殺害事件2014年」:女子高生1年少女Bが同級生を殺害、首と左手首をノコギリなどで切断。胴体部分にも刃物で切ったとみられる複数の傷。「人を殺して解体してみたかった」「体の中を見たかった」などと供述。猫を殺し解体して楽しいと語っていた。小学校6年2010年頃に、同級生の給食に薄めた洗剤や漂白剤、ベンジンを混入するなどをくり返した。父親を金属バットで殴り負傷させたことがある。幼い頃から学業は優秀でスポーツも積極的。ピアノで賞を取っている。弁護士の父親は2014年10月に自殺。家裁判決医療少年院送致。〔情報元:ウィキペディア「佐世保女子高生殺害事件」「22回予選 : アルカス佐世保 グレンツェンピアノコンクール入賞者発表」2016/4/19閲覧〕。この犯人は女性。サイコパスは男女を問わない〔本シリーズ(その3)「1.15(3)サイコパスと性別の関係」参照〕。
下の画像左は国体スピードスケート長崎代表として県知事室で団旗を持っている少女B。成績優秀、スポーツ万能、音楽の才能もあるサイコパスという、サイコパス理解に貴重な特徴を持っているので、事件当時15歳の犯人であるが顔が分かる画像を他のサイトからコピーした。外見や成績優秀やスポーツ万能などと、サイコパス特性は全く別ということがはっきりする事件である。 顔の掲載に問題が出た場合には直ちに削除するが本人が有名人でありネットでは拡散している画像。下画像右は少女Bとは中学から知り合いであった殺害され首が切断された同級生松尾愛和さん。
画像出典左:佐世保事件がもとで、サイコパスというアニメ放送繰り上げからみる、アニメの恐ろしさとは? [許せない犯罪]http://trend71.blog.so-net.ne.jp/archive/c2303725559-2 画像出典右:ニュース速報Japan松尾愛和さんと加害者女子高生-佐世保北高校殺人事件http://breaking-news.jp/2014/07/28/010413 (2016/4/19閲覧)
長崎教育委員会に見る教育現場の問題:長崎ではこの事件の前に中1男子の幼児誘拐殺人2003年や小6女児の同級生カッターナイフ殺害事件2004年が起きており、長崎県教育委員会は「命の大切さ」を小中学校の児童生徒全員に訴えた。だが健常者の児童生徒は言われなくても人の命を大切にし、弱い者を助けることはあっても殺すことはない。問題はサイコパスの児童生徒の存在で、サイコパスにいくら「命の大切さ」を訴えても全く効果がない。少数のサイコパスが起こす残虐行為に対し、圧倒的多数の健常者と混同した対処教育は的外れになる。また、健常者をサイコパスから守るため健常者に働きかける対策は狡猾なサイコパスに対し消極的すぎ、一時的で抜本的な対策にならないことが多い。その逆にしなければならない。サイコパスが起こす犯罪の対策は、サイコパスに的を絞って行わなければならない。教育現場でのサイコパス理解が強く求められる。
例2「会津若松母親殺害事件2007年」:ノコギリで母親の首と右腕を切断。本項1.22の初めに概要説明済。犯人の少年17歳は母親の首をバッグに入れて一日ネットカフェで過ごした。少年にとって母親の首は逆転快報酬ドーパミンを与えてくれる『宝物』であったと思われる。一日たちその逆転快が弱まったと思われ、タクシーを呼んで警察へ自首した。婦人警官はバッグの首を見て気を失ったという。肩から切断した母親の腕は、あらかじめ用意していた白のスプレーでデザインを施し、自宅の植木の鉢に手が生えているかのように飾っている。少年Aが「淳君の首を大地から生えているように」置いたのと、美的感覚は似ている。〔前項2)(a)サイコパスの逆転認知欲求を示す絵、コラージュ、光景の例(凝視注意)〕参照。
例3「島根女子大生死体遺棄事件2009年」:女子大生19歳の首が切断され、左大腿骨の一部、両手足のない胴体部分、左足首が切断され別々の場所で発見。胴体部分の胸は刃物によってえぐり取られ、腹部は内臓の大部分が取り出され、胴体全体に焼けた跡。皮を剥いだ跡もある。一部食べたかもしれない。遺体の状況は、通常の感覚を持つ人間ならば直視することすらできない残忍なもの。未解決事件。〔情報元:日本″未解決事件″犯罪ファイル15 http://news.livedoor.com/article/detail/5124452/ 2015/9/22閲覧〕
例4「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件1989年」:犯人宮崎勤は4人目の5歳の女児誘拐・殺害した時、指をもぎ、醤油をかけて焼いて食べ、ビニール袋に溜まった血を飲んでいる。ビニールに溜まった血を飲むのは次の例5「神戸連続児童殺傷事件」少年Aと同じ行動。遺体は首を切断しバラバラにしている。また、殺害などをビデオに残している。【残虐なサイコパスの半数は記録を残す。本シリーズ(その4)1.18参照】。宮崎勤の精神鑑定書は1人が統合失調症、2人が解離性同一性障害としている。2008/6月死刑執行。〔情報出典:ウィキペディア「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」2015/9/20閲覧〕。筆者は統合失調症でも解離性同一性障害でもなく典型的なサイコパスと思う。サイコパスは21世紀に入り脳の分析技術が進んでよりはっきりしてきたが、日本ではサイコパスはまだ明確な学問的地位を占めていないし、犯罪白書の犯罪分類にもない。一日も早い学問的確立が必要。
例5「神戸連続児童殺傷(酒鬼薔薇聖斗)事件1997年」:弟の同級生の首を切断、目をえぐり、口を耳までナイフで裂いている。犯人少年Aは2015年に32歳になり手記『絶歌』を出版。医療少年院の更生方針にサイコパス不理解の根本的な問題があることがはっきりしたが、後の項「1.25元少年A更生の失敗と『絶歌』:元少年Aへの呼びかけ」でまとめている。この事件は資料が多く、犯人は自己表現能力があるので、サイコパスを知る大変貴重なものになっている。だが『絶歌』にはサイコパス独特のウソが入り込んでいるので注意が必要。事件概要は本シリーズ(その4)1.18(2)参照。
2)身体解体
被害者の身体がどうなっているかを調べるように、時計を分解するように人体を隅々解体する。身体をバラバラにするだけでなく、さらに頭部をつぶすなどのグチャグチャにする身体破壊がある。腹を裂いて内臓を出す内臓摘出、脳や目などを取り出しもする。人肉や内蔵を生で食べたり、血液を飲んだりも含む。
例6「名古屋妊婦切り裂き殺人事件1988年」:臨月の妊婦(27歳)の手を縛り絞殺。死体は、薄い鋭利な刃物で、みぞおちから下腹部に縦38センチにわたって切り裂かれた。発見されたとき死体の足元には、赤ん坊が、へその緒をつけたまま泣き叫んでいた。犯人は妊婦を絞殺後、胎児を生きたまま取り出してへその緒を切り、子宮に電話の受話器と、人形のついたキーホルダーを入れた。受話器などを入れた意味不明。胎児は男の子で、太ももの裏、ひざの裏、睾丸の3箇所を刃物で切られていたが、手術で一命を取り留めた。腹部切開跡から犯人は医学的な知識がないとわかっている。未解決事件。〔情報元:ウィキペディア「名古屋妊婦切り裂き殺人事件」2015/9/20閲覧〕。
事件例1~6まとめ:1)首の切断の例1、2,3,4,5、は身体解体も行っている。例3は内臓摘出も行っている。例4と例5は血を飲んでいる。例5は食べている。本シリーズ(その6) 「(2)“先生”がカーテン屋に拷問を加える時に浮かべた「愉悦の表情」の違い」で述べたロストフの切り裂き魔と言われたアンドレイ・チカティロ(Andrey Romanovich Chikatilo)は52人の少年少女を殺害し、内臓などを生で食べた。サイコパスの首の切断、身体解体、人肉内臓食、血液飲、は共通の精神基盤である。
3)毒殺
健康でなくなった状態がどうなるか観察するかのように毒殺する。人が毒物で苦しんでいく姿を見たい欲求を持ち、人が死ぬことに快感がある。毒物使用は腕力がない女性サイコパスに多い傾向があるが、腕力の有無にかかわらず毒物の持つ残虐性にサイコパスは引き付けられている。
例7「静岡女子高生母親毒殺未遂事件2005年」:高1少女16歳が母親を劇物タリウムで殺害しようとした。少女が猫を毒殺したことを知っている兄が、医師に相談しその医師が警察に通報し発覚。入院中の母親の姿を撮影した記録などを警察が押収。【サイコパスは記録を残す】。女子高生が楽天広場で公開していたとされる日記の内容にサイコパスの特徴がよく表れているので、要点のみ以下に記述した。少女は男子に偽装している。【 】 内は筆者の見解。
2005/7/14日:道を歩いていた野良犬を蹴ったら、キャンキャン喚きながら、地べたを這いずり回った。
7/18日:道端に血まみれの猫の死体が落ちていました。頭が潰れていて、中から脳髄がはみ出していました。【この少女の行為と思う。少女は激しい動物虐待の可能性大。少年Aが猫の頭部をつぶしているのと似ている】
8/6日:今まで様々な生物を僕は殺戮してきた。彼等で遊ぶのは楽しかったが、同時にとても疲れた。何故なら、残った肉塊の処理だけでも数時間は優に要したから。
8/24日:酢酸タリウムが届きました。【少女は届いてすぐに母親に使用したと思われる】
8/25日:昨日から母の具合が悪いです。全身に発疹が起こり、特に顔面に症状が強く出ています。医者もただ首を傾げるばかりで原因は分からないそうです。
8/25日:変な夢を見ました。僕が彼女(母親)を食べる夢です。僕は彼女を手、足、胴体、頭の順に食べました。細い腕は魚みたいに痙攣していて、引きちぎれても未だ動きました。【サイコパスは人体を食べる衝動を持つ者がいる。〔本シリーズ(その2)「1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動:K.B.症候群(2)」参照〕】
9/4日:生き物を殺すという事、何かにナイフを突き立てる瞬間、柔らかな肉を引き裂く感触生暖かい血の温度。漏れる吐息。すべてが僕を慰めてくれる。【サイコパスは人体解体衝動を持つ】
9/12日:今日も母の調子は悪いです。2,3日前から脚の不調を訴えていたけど、遂に殆ど動けなくなってしまいました。二階にある僕の部屋まで来る事も出来なくなりました。
9/26日:明日、母は入院します。未だ原因は不明のままです。残念な事に母は余り良い保険に加入していない。【サイコパスは大脳新皮質には異常がないので打算が働く】
10/2日:父が呼んだ救急車で連れて行かれた。入院先は近くの病院、布製の担架で運ばれて行った。父も同伴した。少し悲しそうな顔をしていた。【サイコパスは、表情を理解するが、自分の心に映し取れず、共感はしない】
10月某日:人は輪になって踊る。丘の上で死体を数え、微笑みながら飲み交わす。撃ち殺された男の匂い、引き裂かれた女の匂い。【サイコパスは人が殺し、殺され、引き裂かれる場面に強く引かれる】
10月某日:病状は悪化している。日直の先生も異常を察し、集中治療室へ連れて行った。
10/16日:母は幻覚を見始めたらしい。居もしない虫や、ドアの傍の白い陰に悩まされていると言う。
10/16日:今日の朝、先生に筆記用具を借りた。其の時泣きながら母の話しをして、同情を得た。人って案外簡単に騙されるものなんだと思った。【サイコパスはウソ泣きができ、軽い気持ちで人をだます】
10/16日(日記最後の記述):蒼ざめた馬の通る道に、規則は存在しない。暗闇を進む足跡は草木を枯らし、死を招く。其処に生命は宿らない。在るのは寂しい同じ形。【サイコパスの精神的支柱を失っている心象、偏桃体機能不全の心象を表していると思われる内容】
10/21日に少女は服毒自殺を図り10/31日に回復したところを逮捕された。逮捕当時母親は意識不明の重体。
〔情報元:タリウム母親毒殺未遂事件の女子高生容疑者が綴った日記の内容http://plaza.rakuten.co.jp/hontoeiganopage/diary/200511030002/ (2016/2/18閲覧)。静岡県伊豆の国市母親毒殺未遂女子高生http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1183003496 (2016/2/18閲覧)〕
例8「イングランド殺人医師ハロルド・シップマン(Harold Fredrick Shipman)事件1998年逮捕」:ハロルドは成績優秀でリーズ大学医学部卒の医師。被害者は最低でも215人、493人は殺害されたとされるが正確な数はわからない。サイコパスは機会があれば無限に殺し続ける。主に薬物アヘン剤により殺害。裁判で直近の15人の殺害で終身刑。2004年に刑務所内で首つり自殺(57歳)。〔情報元:M.ストーンp117及びウィキペディア:ハロルド・シップマン(2016/2/18閲覧)〕
日本の医師によるサイコパス特性の強い殺人は『九州大学、生体解剖事件』や旧日本軍の731部隊があるがそれについては後の項「(3)戦時下のサイコパスの特徴行動」で述べる。
例9「マサチューセッツ殺人看護人ジェイン・トッパン(Jane Toppan)事件1901年逮捕:ジェインは住み込み看護婦として働きながら転々とした。そのたびにその家族を毒殺した。犠牲者はわかっているだけで31人、一説には100人と言われる。多すぎてジェイン自身にもわからない。ジェインは「砒素ですって? 私、砒素を使ったことなんか一度もないわよ。不勉強ね。砒素なんか使ったらゲーゲー吐いて大変なのよ。すぐにバレてしまうわ。だから私はモルヒネとアトロピンを併用するの。アトロピンはね、モルヒネの症状を判らなくする効果があるのよ。だけど、速効性がないのが残念なのよね」「みんなすっかり私に騙されたわ。馬鹿な医者も、間抜けな親類も」と刑事に話したという。デイヴィス家の4人を皆殺しにしたときに、長旅をしていたもう一人が帰宅し事件は発覚、ジェイン47歳。住居の何軒かに放火し、放火狂との診断もされた。サイコパスの放火の特徴も持つ。毒物などの知見がある知的水準が高いサイコパス。
〔情報元:M.ストーンp237。殺人博物館 – Biglobe:Toppan, Jane(ジェーン・トッパン)http://www5b.biglobe.ne.jp/~madison/murder/text2/toppan.html (2016/2/20閲覧)〕
例10「ロンドン毒殺魔グレアム・フレデリック・ヤング(Graham Frederick Young)事件1971年」:ヤングは14歳で継母、父、姉妹、学校の友人たちに毒物を与え、継母は死亡、逮捕。精神障害犯罪者の病院に収監、回復したとして9年後に釈放。釈放後すぐ写真店の店員に就職し、数ヶ月の間に約70人にお茶に混ぜるなどで毒物を与え2名が死亡。釈放後1年たたず1971年再逮捕23歳。毒物投与とその症状の日記が残っている。サイコパスは記録を残す。以下はその一部。
10/31日:「フレッドに致死量の特別混合剤を投与した。明日どうなっているか楽しみだ」。
11/1日:「フレッドは出社していない」。
11/3日:「フレッドは既に重体だ。意識不明で、麻痺と失明が進行している。あと2、3日もすれば最期を迎えるだろう。その方が彼には救いになる。仮に生き延びたとしても、永久に障害者になるだろうから、死んだ方がいいのだ」
〔情報元:ウィキペディア、グレアム・ヤング。殺人博物館グレアム・ヤングhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~madison/murder/text/young.html (2016/2/16閲覧)〕
下の画像左は少年時代のグレアム・ヤング。中央は毒を盛られた父と叔母と姉。右は殺されたフレッド。
画像出典:殺人博物館グレアム・ヤングhttp://www5b.biglobe.ne.jp/madison/murder/text/young.html(2016/3/20閲覧)
映画化『グレアム・ヤング毒殺日記』(1996、独仏英、原題:The Young Poisoner's Handbook)
毒殺と首切断や人体解体の欲求基盤は同じ:例1「佐世保女子高生殺害事件2014年」の同級生を殺害、首と左手首をノコギリなどで切断、「人を殺して解体してみたかった」と述べた女子高生は、小学校6年の時に、同級生の給食に薄めた洗剤や漂白剤、ベンジンを混入するなどをくり返していた。例7の母親に毒物を与えた少女は、人体解体にも強い衝動を持っている。毒物で人が苦しんでいくことを見たいというサイコパスの欲求は、首切断や人を解体する欲求と同じ精神基盤であることが分かる。
4)放火
例9のマサチューセッツ殺人看護人ジェイン・トッパンは毒殺を繰り返したが、同時に放火魔でもあった。放火は幼少期の3特徴(放火、動物虐待、寝小便)の一つであるが、大人にも見られる。〔幼少期のサイコパスの3特徴は本シリーズ(その4)「1.17(2)扁桃体の構造と具体的機能とサイコパス」「1.18(1)基本的な考え方」参照〕。後の例11「女子高生コンクリート詰め殺人事件」では、逃げられないようにしてライターの油を使って犠牲者の体に火を点けている。例14の角田美代子は犠牲者にガスバーナーを顔に向け髪の毛を燃やすなどの虐待をしている。生きた人を逃げられないようにして体に火を点けることはサイコパスの放火の究極と思われるが現代の戦場でも見られる。後の項「(3)戦時下のサイコパスの特徴行動」参照。
5)監禁虐待
平和時のサイコパスは健常者の目から離れた場所で特徴行動をする。監禁はその特徴行動の典型。健常者が立ち入れない閉鎖環境(友人関係内部、家族関係内部、企業内部、自衛隊内部や警察内部など)で行われる。サイコパスは外部からの力が及ばない限り、監禁での虐待の手を緩めることはない。犠牲者との間で「憎み/憎まれる」「恨み/恨まれる」関係を監禁の場で増幅することが快感になっている。監禁し食料を与えず痩せ細り苦しんでいる姿や、悲鳴を上げ、のたうち回ることがたまらなくサイコパスを引き付ける。犠牲者が「やめて」と叫べば叫ぶほど虐待を強め、ガリガリに痩せて死んでいく過程や死体をバラバラに解体する過程などで逆転快報酬系ドーパミンの陶酔を味わう。
サイコパスは、逃げないようにする監禁部屋や虐待のための道具を能力の総力を挙げて工夫する。何十人もの女性を殺害したデイヴィッド・パーカー・.レイ(David Parker Ray)は単独サイコパスであるが「拷問部屋」を作った。防音、滑車、鎖、ウインチ、テーブル、拘束具、スタンガン、弱電流の牛追い棒、釘で覆われた張形、婦人科用器具、注射器、薬品、強化壁と強化ドア、カメラ、モニターが備え付けられていた〔本シリーズ(その2)「1.7 サイコパスは見た目や会話では分からない」参照〕。
以下の監禁事件例11~14はいずれも、まんじゅうサイコパスで、周囲に暴力装置としての人と道具を配置して虐待を実行している。単独サイコパスは自分自身の腕力や各種道具などを暴力装置として使うが、まんじゅうサイコパスでは暴力装置に相当する人がサイコパスから分離している。暴力装置となる人は映画『凶悪』原作の後藤良次のように反社会性人格障害者が取り込まれやすい。まんじゅうサイコパスは反社会性人格障害と親和性があり、暴力団と繋がりを持つものが多い。例11、12、14のまんじゅうサイコパスは暴力団との繋がりがある。
例11「女子高生コンクリート詰め殺人事件1988年〔以下女高生監禁殺人事件〕」:友人関係の閉鎖環境で行われた。まんじゅうを形成したサイコパスの監禁がどんなに残虐であるかをこの例で理解していただきたい。
宮野裕史(当時18歳)を主犯とした16~18歳4人が刑事犯、2人が少年院送致の犯罪。高3吉田順子17歳を2階の居室に監禁し、輪姦、柱に裸で縛り付け性器にビン・マッチ・タバコなどの異物挿入、裸踊りや自慰行為の強要、タバコを2本一度に吸わせたり、シンナーを吸わせたりした。犯人らの隙をついて警察に通報しようとしたが宮野に見つかり阻止され、その腹いせに足にライターのオイルをかけて火で何度もあぶるという暴力行為をし、彼女の焼け焦げた足の腐臭を疎ましく思い強姦の対象から暴力へと変貌し、1m以上上から鉄棒を腹に落とす。トイレにも行かせず紙コップに排尿させその尿を飲ませ、ゴキブリを食べさせる。顔にマジックペンでいたずら書き。陰部や肛門に鉄棒や瓶を挿入し、刺し込んだまま瓶を割る。1.6kgの鉄球付き棒で大腿部を数十回にわたって殴打し、脇腹部、脚部などを多数回にわたって手拳で殴打した。暴力の激しさは、刃物で刺すことはしていないにも関わらず、殴られた時の出血が天井まで飛び散るほど激しいもの。全身が血だらけになり目の位置がわからなくなるほど顔が膨れ上がる。準主犯格の小倉護が「なんだお前でっけえ顔になったな」と笑う。真冬のベランダに裸で放置、顔面に蝋をたらす、などの苛烈な行為を41日間にわたり行った。最後は「ギャンブルに負けた」という理由(カラ理由)で、自力では立てなくなりほとんど動けなくなった被害者を2時間にわたって殴る蹴る、足をライターオイルで焼く、鉄の棒で殴るなどのリンチを加え放置し、死亡。遺体をドラム缶に入れてコンクリート詰めにし、遺棄。遺体の状態:顔や性器、肛門は破壊されて原型を留めていない:鼻の穴には血が詰まっており、口でしか呼吸ができない状態:陰部には栄養ドリンクの小瓶が2個差し込まれていた:乳房には縫い針が複数本刺さっていた:片方の乳頭(乳首)はペンチのようなもので潰されていた:手足は火傷と炎症で体液が漏れ出していた:歯茎にまともに付いている歯は一本もない:51キロあった体重は30キロ台になり、皮下脂肪が通常の半分近くになっていた:脳が委縮して小さくなっていた〔情報元:ウィキペディア「女子高生コンクリート詰め殺人事件」、及び「女子高生コンクリート詰め殺人事件の全貌。2人は再犯…」http://topicoco.com/post-1654 いずれも2015/9/21閲覧〕 。
下の画像左は殺害された八潮南高校3年吉田順子さん。卒業旅行の旅費を自分で稼ぐためダンボール工場でアルバイトをして、自転車で家へ帰る途中、犯人らの運転する車にぶつけられて拉致された。主犯格宮野は20年の刑の出所後2013年43歳の時に振り込め詐欺容疑で池袋署に逮捕、不起訴。準主犯格小倉は10年の刑の出所後2004年監禁致傷の疑いで警視庁竹の塚署に逮捕、4年実刑。画像右は犯人3名の当時の写真。2人は成人になり逮捕されているので顔が分かる画像を他のサイトからコピーした。2016年現在2人とも釈放されている。
画像出典左:沸騰する人たち・煮えたぎるモンスターたちhttp://blog.goo.ne.jp/xdr123/e/e62e97226587239549f9ab34a419d3e3 (2015/10/10閲覧)。画像出典右3人:女子高生コンクリート殺人事件 に貼られた o0626033611837091548.jpg の画像http://kokushin-kai.seesaa.net/upload/detail/image/o0626033611837091548.jpg.html (2015/10/10閲覧)
この例11「女子高生コンクリート詰め殺人事件」後半はその(4-7)へ続く。