横浜映画サークル

サークルメンバーの交流ブログです。

メンバーの鑑賞感想や映画情報など気軽に記述しています。

映画『凶悪』残虐性は「人間が持つ普遍的な暗部」と描く。だが最新科学は先天的障害であるとする(その4)

2014-03-31 20:07:04 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

(その3)の続き。

 1.16サイコパスの存在は、人種、民族、文化、時代の違いは無い。

サイコパスは人種民族文化時代によらず人類に共通して、一定割合で存在すると考えられる。

サイコパスの評価チェックリストPCL-Rによると、白人、アフリカ系アメリカ人、先住アメリカ人の男性犯罪者はほぼ同様の心理特性である(J.ブレアP27)。

アラスカ西岸のエスキモーのユピック族にサイコパスに相当するクンランゲタ(Kunlangeta)という言葉がある。『何度も何度も嘘をついたり、人をだましたり、物を盗んだりし、・・・多くの女性の身体を食い物にし、・・・叱責されても気に留めず、罰を受けるために長老のもとへしょっちゅう連れて行かれる男』を表す。1976年当時ハーバード大学に籍を置いていた人類学者J.M.マーフィはあるエスキモーに通常どのようにクンランゲタに対処するのかと尋ねたところ『誰も見ていないときに誰かがそいつを氷河のふちから突き落とす』という答えが返ってきた。また、アフリカのナイジェリアではこのような人をアランカン(Arankan)と呼んでいる。地球上のほとんどすべての民族・文化で反社会的行為によって共同体の平和を脅かす人物の存在が記録されている(日経サイエンスK.A.キール、S.O.リリエンフェルド、p6、p20)。

健常者は生後39ヶ月を過ぎると道徳的違反(他者が嫌がる行為)、と慣習的違反(集団の秩序を乱し勝手な振る舞いの行為)の違いを識別できるようになるが、これは民族・文化において違いは見られない(J.ブレアp79)。サイコパスは子供でも、成人でも、道徳と慣習の識別課題の成績が非常に悪い。サイコパスは道徳的違反では被害者に言及することがほとんどなく、道徳的違反を禁止する規則が無くなることを想定すると道徳と慣習の識別がほとんどできない(J.ブレアp80)。子供のサイコパス傾向は生後39ヶ月過ぎ(3歳児程度)からすなわち扁桃体の機能不全は3歳児程度から表面化し始める。サイコパスは健常者なら3歳になれば適切にできる道徳と慣習の識別課題を、成人になってもできない(J.ブレアp81)。約3500組の双生児調査の結果、サイコパス傾向である冷淡さ・情動の欠如の成分は、7歳児にすでにみられる。この研究をさらに分析し、J.ブレアはサイコパス傾向の2/3は遺伝的要因で説明できると述べている(J.ブレアp40)。子供のこれらの傾向は、人種、民族、文化に共通で、サイコパスの存在は人類に共通していることを示している。人類に共通していることから、どの時代においてもサイコパスは一定割合で存在したことが推定できる。

注:「エスキモー」という言葉はアザラシなどの「生肉を食べる人」と西欧人が名付けた。主にカナダの先住民はこの名称を嫌い「イヌイット=人間」という言葉を使うようになったが、自分たちの食文化に誇りを持ち、「エスキモー」という言葉を受け入れることが、特にアラスカ地域で見られるようになったので(放送大学講座「文化人類学」)、ここでは「エスキモー」としている。日本人も魚を生で食べるということで、西欧人には卑下するものがいた時代があった。サイコパスが食欲系の欲求異常、K・B症候群の項目(2)で内臓を生で食べるのとは全く別の次元。

1.17 扁桃体の位置と具体的機能とサイコパス

(1)扁桃体の位置

下図の赤いところ。脳の奥深くに位置し、爬虫類や魚類にもある動物の生存に必要な基礎的な機能を持ち、周辺の脳機能と密接な関係がある。

 

図の出典:銀座のアトラスオーソゴナルカイロプラクティック:ヘルシー・ラボ

http://www.ryju.jp/name-search/mental-illness/152(2014、3/6閲覧)

(2)扁桃体の構造と具体的機能とサイコパス

機能的に下記3つの部位に分けられる。個別の機能は全体に密接に繋がっている。「K・B症候群」は前述の項目「1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動」参照

1)基底外側部:食欲、性欲に関与=サイコパスの気持ち悪いものを食べるたり、異常な性行動は、ここの機能不全「K・B症候群」項目(2)(4)と関連が示唆される。

2)皮質内側部:対象物の意味を判断、認知欲求の源=サイコパスが奇怪な認知欲求を示すのは、ここの機能不全「K・B症候群」項目(3)と関連が示唆される。

3)中心核:恐怖など過去の経験に基づく反応=サイコパスが恐怖を感じられないのは、ここの機能不全「K・B症候群」項目(1)と関連が示唆される。

3部位はさらに6つの核に分かれる。下図参照。大脳皮質/感覚神経や嗅球(臭いの感覚神経系)と相互に連絡しており、視床下部や脳幹の自律神経中枢に線維を出しており、自律神経の調節に大変深くかかわっている。サイコパスの特徴に成人になっても夜尿症(寝小便)が見られることがある。扁桃体の機能不全が排尿の自律神経に影響したためと考えられる。J.R.ウェーバー(John Ray Weber)は泣き叫ぶ女性に拷問を加え、性器を焼き、乳房に針を打ち、乳房と左足の一部をナイフで切り取り、その後、足で踏みつけて窒息死させているが、成人になっても夜尿症である(M.ストーンp245)。女子供52人を殺害し、内臓を生で食べたロストフの殺人鬼アンドレイ・チカティロ(Andrey Romanovich Chikatilo)は慢性的な夜尿症である(ウィキペディア:「アンドレイ・チカティロ」)。アンドレイ・チカティロの写真は本シリーズの(その6)参照。サイコパスはいろいろな自律神経系の問題を抱えているのではないかと推察される。寝小便は将来サイコパス犯罪者となる幼少時代の手がかりの3特徴放火動物虐待寝小便の1つである(M.ストーンp179)。尚、サイコパスとそうでない人の夜尿症の割合の違いを調べたデータは今のところない。サイコパスでなくても、膀胱の病気やストレスなどから夜尿症を発症する場合があるので、夜尿症だけでサイコパスだと考えることがないようにしてください。

 

図の出典:ネット:大脳辺縁系(2014.3/3閲覧)http://shutoku.fc2web.com/special_subjects/3rd_grade/D7/D7/limbic_system.html

1.18サイコパスが邪悪で暴力的である根本原因

(1)基本的な考え方

扁桃体の機能不全が原因であるが、機能不全であるとなぜ邪悪になり暴力的になるのか?K.A.キール、J.ブレア、M.ストーンはまだ回答に至っていないようなので、私が考えた。おそらく、極限の恐怖の表情や叫び声で機能不全の扁桃体がわずかに反応するのではないかと思われる。このわずかな扁桃体の反応が麻薬のように快感として作用するのではないかと私は考える。麻薬の快感が切れた時に再び快感を求めるように、サイコパスは邪悪な行為を繰り返す麻薬患者が麻薬以外に関心がなくなるのと同じように、サイコパスは邪悪な行為が最大の関心事になる。機能不全の扁桃体のわずかな反応にすべてを注ぎ込む。扁桃体が反応するまで、より刺激的な拷問や暴力へとエスカレートする。相手が苦しみ悶えれば悶えるほど、恐怖で悲鳴を上げれば上げるほど、自分が暴力をふるって興奮すればするほど、扁桃体が反応し、サイコパスは生きている感覚を束の間だが少しだけ取り戻す。サイコパスの邪悪な行為は、病気の症状から、少しでも逃れようというあがきでもある。14人を殺害したR.ラミレス(Richard Leyva Ramirez)は言う「人殺しがたまらなく好きなんだ。人が死んでいくところを見るのはほんとにいい。俺が頭を打ち抜いてやると連中は身をよじってさ。血がドッと流れるのもいいね」と(M.ストーンp192)。70人近くを殺害したトミー・リン・セルズ(Tommy Lynn Sells)は「喉を切り裂き大量の血が流れるのを見ると『アドレナリンがドッとめぐる』のを感じる。それで何週間かは腹の虫が治まるのさ。だが、再び殺しの『一服』が必要になる」と話している(M.ストーンp209)。サイコパスは記録を残すサイコパスは、被害者の叫び声や人体を切り刻む場面をビデオなどで記録しているものが多い。M.ストーンが調べたサイコパス約600人の内70人以上が記録を残している。虐待を行うサイコパスでは半数が記録を残す(M.ストーンp198、p281)。記録を使って思い出し、扁桃体の反応を、後でじっくり繰り返し味わうためであろう。記録を残すところに、殺すことが目的でなく、自分自身への刺激のためというサイコパスの本質が見える。サイコパスの邪悪な行為はわずかな扁桃体の反応を求め、生きている感覚を少しでも取り戻そうとする悲しさがある。サイコパスは、刑務所に入っても刺激を求める衝動は消えず、刑務所の中で他の受刑者を殺害することが見られる(M.ストーン)。

サイコパス犯罪者となる幼少時代の手がかりの3特徴に、自律神経不全による寝小便以外に、放火と動物虐待がある。放火は燃え広がる火の危険が、安全欲求の扁桃体部分を反応させると考えられる。猫を切り刻んだり、犬を絞め殺したりする動物虐待は、死や恐怖に対する安全欲求や対象を認知する認知欲求の扁桃体部分を反応させると考えられる。

放火犯は、中学生など比較的若い人が多い。性的虐待などを行い殺人罪で終身刑を受けたエドワードは、12歳の時に自宅の各部屋にたびたび放火し、母親は直ぐ消せるように各部屋に消化器を置いた。また、猫や犬を殺している。デート中の男女を次々殺害した「サムの息子」と言われたD.バーコウィッツ(David Richard Berkowitz)は10代に1488件の放火をし、猫に火をつけたり、犬に石をぶつけたりの動物虐待をしている。「ボストン絞殺魔」のA.デサルヴォ(Albert DeSalvo)や「グリーンリバーの殺人鬼」のG.リッジウェイ(Gary Leon Ridgway)も少年期に動物虐待をしている(M.ストーンp179)。前項(2)で成人しても夜尿症があると述べた邪悪度22のJ.R.ウェーバー(John Ray Weber)は、4歳で放火を始め、15歳を過ぎると犬を絞め殺している。

サイコパスの精神における、うれしい・悲しい・怖いなどの感情を喪失した空虚な状態は、生きていること自体が無味乾燥で何の意味も見出せず、心から笑うこともない底知れない無力感に襲われている状態と思う。他者が喜んだり、悲しんだりしているのを見ても何も感じない。サイコパスにとっては、強烈に邪悪で刺激的な行為が、衰弱した扁桃体をわずかでも反応させることができ、空虚な状態から脱出する唯一の方法、生きていることを実感する唯一の方法思えるのであろう。健常者には、サイコパスのこの「完全な空虚さ」「心の真空状態」を推測、共感することは不可能かもしれない

サイコパスがどのような状態の病気であろうと、その邪悪性は全く同情の余地は無い。せめて、サイコパスの病気解明に貢献してから、どうしても更生の可能性が無く、裁判の結果、止むを得なければ処刑せざるを得ないであろう。サイコパスにとって、法律は破るためにあり、他者は、いじめ、傷つけ、操り、殺すためにある。病気解明に貢献しなければ、彼らは処刑されるために生れてきたことになるのではないだろうか。サイコパスは恐怖感情が衰弱しているので、処刑を健常者ほど恐ろしいと感ずることは無い。時々処刑を望むほどである。なぜ生まれながらにサイコパスのような扁桃体の機能不全が生じるのかはまだ解明されていない

(2)日本の比較的情報量が多い酒鬼薔薇聖斗事件の例で説明する

当時14歳〔1997年〕のA少年は、小学校5年頃から猫を20匹は殺し、手足や首を切断、舌は切断してビンに集めるなどの動物虐待、他の生徒の靴を隠して燃やすなどの放火、何もしていない生徒の頭を叩く、ナイフで他の生徒の自転車のタイヤを切るといった行為を行い、サイコパスの兆候が見られる。

女児をクッションハンマーで殴打重傷。女児を金属ハンマーで殴打殺害。女児をナイフで刺し、胃を貫通する重傷。いずれも弱いものを狙い相手に対し手加減しないサイコパスの特徴的犯行。合計児童2人殺害、3人を重軽傷にしている。最後に殺害したのは弟の同級生である。首を絞めるなどしてもなかなか死なないので、靴の紐を解きそれで後ろから馬乗りで絞めた時にやっと死んだ。その後、鋸で首を切断し、頭をビニール袋で運んだ時に溜まった血を飲んでいる。切断した頭部の両目にナイフを突き刺し、2、3回ずつ瞼を切り裂いた。口にナイフを入れ、耳に向けて両側とも切り裂いた。このとき、性器に触れることなく射精している。

健常者にとっては意味不明な行為であるが、サイコパスにとっては相手を殺害することが目的でなく、自分の機能不全となり破壊された感情・欲求が一瞬反応すること、この生命の叫びが生じる瞬間を得ることが目的になっている。この生命の叫びの反応刺激は、繰り返し味わいたいと思うことでいろいろ工夫をする。A少年は、殺害の時の刺激を再現したくて他の所へ頭部を運びじっと眺めている。また、「興奮をあとで思い出すため」舌を切り取ろうとしている。死後硬直でかなわなかった。小学生の頃、猫の舌を切り取って集めたことを想起させる行為。頭部を持ち帰り、風呂場で髪の毛を持って洗っている時と、頭部を学校の正門に置き、5分程度じっとしばらく眺めた時に性器に手を触れずに勃起し射精をしている。おそらく、機能不全の扁桃体が反応し、感情機能がわずかに蘇った瞬間なのではないかと思われる。この勃起と射精は扁桃体の性欲機構が破壊されていることと自律神経の障害から生じているのではないかと私は推測する。当時少年は女性には全く興味が無いと言っている。(以上の事件に関する主な情報源はウイキペディア「神戸連続児童殺傷事件」)

A少年は前項「1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動」で述べたK・B症候群のどの項目も発症している。A少年の行動はサイコパスによく見られる特徴で、特別なものではない。以下は私の推測。A少年は周りのみんなが大笑いしている時にも、悲しくて泣いている時にも、激しく怒っている時にも何も感じない。周りの人との一体感は何もない。大笑いしている人は、騒音を出す歪んだ顔の人としか思えない。また、自分自身が大笑いすることも、死ぬほど悲しいと思うことも体験することはできない。心の真空状態になっていることは、自分でも気が付かない。ただ、動物虐待や放火をした時や残虐行為をした時に、感情機構がわずかに息を吹き返し、反応する。反応するだけで、健常者の感情とは異なる。だが、反応するだけでも、神経系やホルモン系が活動し、生きている実感を束の間だが味わうことができる。サイコパスにとって、この束の間の充実感は、扁桃体の病気からの生命の悲痛の叫びである。生存欲求の原点とも言える部分での反応なので、サイコパスが味わっている興奮は、麻薬などと同じかそれ以上に強烈な感覚なのではないかと推測する。その強烈さのため、再犯性が強いと考えられる。

尚。ネット情報で信頼性は疑問があるが、首を切断された被害者の少年の母親は、事件後1年近く泣き続け、布団から出られず、記憶喪失に至ってしまったとのことである。再び述べるがサイコパスに同情の余地はない。

(3)2つの誤った見解

1)有名な精神分析医フロイト(Sigmund Freud)(1939年没)はサイコパス(残虐、サディズム、悪意、破壊)を観察し、異常な人肉食や残虐性に、人間の本質が潜んでいると誤って理解した。フロイトの時代はまだ脳内部の働きを観察できなかった。21世紀の科学ではっきりしたのは、本質が潜んでいるのでなく、本質が破壊されてしまっている病気だと言うことである。米国心理学会の会長を務めたA.H.マズロー(Abraham Harold Maslow)は「フロイトは、異常な人を観察して、健常者の人間の本質を探ろうとしたために誤った。健常者の本質は健常者を観察しなければならない。」(「人間性の心理学」A.H.マズロー、産業能率出版部、1987)と述べている。健康な精神構造を把握することにより、病気となった精神状態を把握できる。病気の精神状態から、健康な精神構造をより深く理解することができる。健常者の精神構造については別に機会があれば述べる。とりあえず、サイコパスの対極と捉えればよい。

2)「サイコパスは人間の野獣性が表面化した」と言うのも事実でない。人類は出発点から、ライオンのような野獣としての生活をしたことが無い。逆に、野獣から逃れ、弱いものが共同体を作って生き延びてきたのが人類進化の歴史である(「人類史のなかの定住革命」西田正規、京都大学自然人類学出身、講談社2007、pp206-220)。

1.19サイコパスの更生の可能性

前項「1.15(1)サイコパスと年齢の関係」で述べたマカファティ(Archibald McCafferty)のように自分が異常だと知って、自ら精神病院へ行くような人、何とかしたいと思ったサイコパスには更生の可能性がある。マカファティは9歳で犬やネコを絞め殺し10歳には監獄や矯正施設を出たり、入ったりしたサイコパスである。だが釈放された中年期、60歳には明らかに更生している(M.ストーンp123)。何人もの少年の首を絞め断末魔の叫びを録音していたイアン・プレイディ(Ian Brady)は服役し40年がたち、人間性が以前より目立つようになった、と面会したM.ストーンが述べている。全体に邪悪度レベルが低いサイコパスほど、人間性の回復が見られる(M.ストーンp306)。だが、サイコパスは更生したふりをするので、専門的な対処が必要。

酒鬼薔薇聖斗事件を起こした当時14歳〔1997年〕のA少年は現在31歳になっている。いろいろなネット情報を見ると、多くの人の尽力で、更生の道を歩むことに成功しているようである。サイコパス凶悪犯の多くは30歳前後から一層凶悪度を増しているので、扁桃体が求める刺激の誘惑に負けずに、このまま更生の道を進んでいくことを願うばかりである。A少年のような典型的なサイコパスの更生は、社会全体にとって大変貴重な経験を積み上げることになると思う。

1.20健常者のサイコパス化の危険

健常者が他者の精神状況(感情)を自らの精神状況に映し込もうとするミラーニューロンの作用、共感する作用は衝動的で強烈なものがある。このミラーニューロンの一体化作用は人間が共同体社会を形成する根源的な能力として遺伝子の中に強く刻み込まれていると考えられる。サイコパスにはこの作用が無い。このことから、サイコパスと健常者とが接触すると奇妙なことが起こる。健常者がサイコパスの行動や空虚な精神を映しこもうとする。サイコパスは健常者の感情を映し込むことはないので完全な一方通行の一体化になる。サイコパスには映し込む感情対象が存在しない状態なので、サイコパスを神秘的な存在として、崇めるような一体化になってしまう。結果として健常者のサイコパス化のみが進むことになる。サイコパスと共存すると健常者が邪悪になり暴力的に変化することがある。このことが、最初の項で述べたサイコパスの特徴説明の「他人を操作する。」となる。夫婦間でも片方がサイコパスの場合に夫婦で子供を虐待するようになることがある。また、健全であればあるほど、ミラーニューロンが活発でサイコパスに利用され易い。サイコパスの「寄生的ライフスタイルを送る(他者の収入などを奪う形で生活をする)」に手を貸すことになる。健常者が複数の場合、サイコパスを核として、集団を形成することがあるが、極端な場合には集団全体として暴力的になり、猟奇的になる。このような集団を「サイコパスまんじゅう」と名付けておく。中心にはサイコパスの黒いアンがあり、周囲は健常者の白い皮で覆われ、全体としてサイコパスとなっている。得体の知れない新興宗教集団にはこのような「サイコパスまんじゅう」が見られるが、身近な小集団にも集団でレイプをするなどしばしば発生する形態である。核のサイコパスが除かれると、周辺の健常者はたちまち正常に戻る場合が多い。サイコパスに同化してはならないサイコパスに同情の必要はない、サイコパスは同情に対し応えることはなく、逆に同情に付け込んでくる、たちの悪い存在だと肝に銘じておく必要がある。

1.21戦争、内乱、政治的テロでのサイコパス。

「妻を殴り、子供を虐待してきたサイコパスにとって、戦争は普通の市民の仮面の下に隠してきた加虐性を発揮する絶好の機会になる(M.ストーンp283)」。サイコパスにとって戦争、内乱、政治的テロの現場は、水を得た魚のように、誰からもとがめられずに思う存分残虐な行為ができる場になる。恐れを知らない勇敢な戦士として、持ち上げられることさえある。また、前項で述べた「サイコパスまんじゅう」が至る所で形成され、戦場だけでなく、国内の軍隊内や治安警察の現場でも生じ易い。現在のいろいろな紛争でサイコパスの凶行と「サイコパスまんじゅう」が生じ易いと考えられる。軍事理論上は、サイコパスが行うような残虐な行為は敵や市民の反感を買い、戦略上得策でないとして押さえるように考えられているが、実際は軍事理論通りにはなかなかいかない。米軍のイラク人捕虜を収容したアブグレイブ刑務所で2004年に発覚した大規模な虐待は「サイコパスまんじゅう」が形成されていたと考えられる。1800枚の写真とビデオを含む6000ページ(マスコミには53ページしか示されなかった)に及ぶ米国陸軍の秘密報告書は米議会で非公開で議員たちに披露されたが、それは議員達の顔色が変わるほど悲惨なもの。米国人看守らに性的虐待を受けた多くの女性収容者は釈放後に自殺したり家族に殺されたりしたと報じた。米誌『タイム』(2004年6月28日付け)は100人以上の子供が拘留され性的虐待をされていることを報道した。2006年にオーストラリアのSBSは拷問、暴行を示す新たな写真や映像入手し、露骨すぎて一部放映を見送った。イスラム・メモ通信員は、約4500人の収容者のうち毎月4、5人が死んでいると伝えた。下の写真は頭巾を被せ、指先と性器にワイヤーを繋げて電気拷問を行ったときのもの。写真にワイヤーが見える。性器は火傷し、出血する。その部分の写真はとても載せられない。拷問で何か情報を得ることのためでなく、拷問自体が目的になっている。サイコパスの存在が強く示唆される。

以上写真も含め情報元はウイキペディア「アブグレイブ刑務所における捕虜虐待」

捕虜への虐待は近代国際法(ジュネーブ条約)で禁止され「第十四条〔捕虜の身体の尊重〕捕虜は、すべての場合において、その身体及び名誉を尊重される権利を有する。」と示されている。違反すれば戦争犯罪として裁判を受ける。私は自衛隊幹部と直接話す機会があったが、日本の自衛隊は、捕虜の虐待禁止関係を徹底的に教育しているようである。だがサイコパスの存在が問題となる。サイコパスは教育訓練では直らない。影で、陰湿に、狡猾に行うようになりうる。

 以下(その5)へ続く。テッシーでした。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画『凶悪』残虐性は「人間が持つ普遍的な暗部」と描く。だが最新科学は先天的障害であるとする(その3)

2014-03-31 19:28:45 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

(その2)の続き。

1.11 サイコパスの統計的特徴

(1)サイコパスの割合

下記表の通りである。この表は日本にも当てはまると考えられる。サイコパスの犯罪調査が進みデータが蓄積されればより正確な数値になるが、今のところの目安である。

 

反社会性人格障害の人口に占める割合*1

サイコパスの人口に占める割合*2

3%

0.6%(0.45~0.75%)

1%

0.2%(0.15~0.25%)

合計

2%

0.4%

*1:アメリカ精神医学会の精神障害の診断・統計マニュアル第4版(DSM-Ⅳ)による(J.ブレアp24)。

*2:J.ブレアp25:米国の刑務所収容者の反社会性人格障害の15~25%がサイコパスの基準を満たす。反社会性人格障害、男3%×0.15~0.25=0.45~0.75平均0.6%、女1%×0.15~0.25=0.15~0.25平均0.2%。日経サイエンス、K.A.キールp13では反社会性人格障害のうち20%がサイコパス。よって男3%×0.2=0.6%、女1%×0.2=0.2%。J.ブレアは大きいほうの値を取り男0.75%としているが、この表ではJ.ブレアとK.A.キールの値が同じになる男平均値0.6%としている。

M.スタウト(Martha Stout)は『良心を持たない人たち』(The Sociopath Next Door)(2006年、草思社)の中で同じ情報源のアメリカ精神医学会の精神障害の診断・統計マニュアル第4版(DSM-Ⅳ)を使い、男女を分けずに人口の約4%が反社会性人格障害としている(M.スタウトp15、p135)。おそらく、男3%と女1%を足して、合計4%と誤った計算をしたのではないかと思われる。合計は平均して2%が正しい。また、反社会性人格障害をそのままサイコパスとしている。これはアメリカ精神医学会のDSM-Ⅳが反社会性人格障害とサイコパスを分けていないため生じた誤りではないかと思われる。そのため4%25人に1人という恐怖」というセンセーショナルな副題の誤りとなっている。上記表から分かるように、反社会性人格障害傾向者は2%、50人に1人。サイコパス傾向者は0.4%、250人に1である。映画『凶悪』にはこのような現実把握の視点は皆無で、逆に主要人物全員がサイコパス特性を持つと描き出している。

(2)日本の『犯罪白書』からの反社会性人格障害者割合の推定:結果は米国と同様

刑法犯(殺人 強盗 放火 強姦)と道路交通法違反を除いた特別法犯(覚せい剤・麻薬、銃刀法、売春など)の合計を人口で割った犯罪率に80%を掛けて算出した。この80%は米国の刑務所収容者の反社会性人格障害割合80%(J.ブレアp25)を流用した。上記表の反社会性人格障害2%に近い値になり、上記表は日本にも当てはめることができると考えられる。

 

刑法犯

特別法犯

人口

犯罪率

反社会性人格障害者

2002年(多い年)

3,693,928人

94,020人

127,486,000人

3.0%

2.4%

2011年(少ない年)

2,139,725人

100,582人

127,799,000人

1.8%

1.4%

日本人は他の国の人より犯罪を行わないと思われがちであるが、自転車の窃盗は世界一で、自転車大国のオランダが2番目である。オランダより約17%程度多い(2011 年度日本犯罪社会学会主催 第 8 回公開シンポジウム 成果報告書p22、1995~99年の5年間で盗まれた経験のある人は日本約27%、オランダ約23%。5年間で4人に1人は自転車を盗まれる。http://hansha.daishodai.ac.jp/meeting/08_symp_seika.pdf(2014.2/28閲覧))。銃器や薬物の入手易さや、経済的環境などの条件の違いのために凶悪犯罪数や犯罪率の違いが生じているので、日本人という人種が特別に犯罪を行わないという特性を持っているわけではない。尚、『犯罪白書』の統計は国民が犯罪に対する対処を考えるための国民へのデータの提供というより、政府の治安政策の正当性をアピール宣伝という面が強いように感じる。

1.12 ごみのリサイクルの非協力者割合は反社会性人格障害割合に近似する。

私は、ごみのリサイクルプラントを設計する仕事をしたが、住民にリサイクルの分別協力のアンケートを取ると、およそ95(92~96)%程度の人は積極的に協力すると言い。実際に協力してくれる。3%程度はリサイクルの対応が良く分からない人や引っ越してきた人や日本語が読めない外国人などで協力の意思があっても困難な人である。残りの2%程度の人は協力しないと言うか、アンケートにも協力的ではない人である。実際にプラスチック容器包装の回収では、重量比で4%程度のフライパンや包丁などの異物が混入する。この異物混入割合は、どの自治体でもほとんど変わらない。設計は協力が困難な3%や協力を拒否する2%の合計5%の人が混入する異物を考慮したプラントシステムの強靭さが必要になる。プラントの建設・運営費用の少なくても1割程度は選別機器や火災、防爆対策など、この合計5%の人たちの行動の対策費用として余分に掛かる。もし10億円のプラントであれば1億円程度は余分に掛かる。わずか5%の人の非協力により税金が余分に使われる。だがこの対策により、95%の圧倒的多数の人たちの協力が無駄にならず有効に働く。サイコパスを含む反社会性人格障害の対策においても、若干費用や労力が掛かったとしても、しっかりした対策をすることによって、健常者の生活が健全に維持できると考える。すなわちサイコパスを含む反社会性人格障害を的確にコントロールできるような社会構造を作って初めて、健常者がはつらつと生活できる。これはサイコパスを含む社会性人格障害の人も根源的には望んでいることであろう。現状は、政府によるサイコパスや反社会性人格障害の実態把握さえ行われていないが、医療機器などの発達で把握の可能性が開けてきている。

リサイクルに協力を拒否する人2%は、反社会性人格障害の割合2%と同ような数値になるのは、共通点があるように思う。

1.13 サイコパスの高い再犯率と暴力性割合

サイコパスはそうでない犯罪者と比較し強い暴力性高い再犯率を示す。サイコパスは相手が痛いということを共感しないので、相手に対し手加減をしない、底知れない凶暴性を示す。また前項で示したとおり罰から行動を是正することができない脳の障害があるので、再犯率が高くなる。下記表はJ.ブレア『サイコパス』p20、p21の内容を私が表にまとめたものである。目安としてサイコパスとそうでない犯罪者との比較は、再犯率3倍暴力的再犯率4倍が妥当なところであろう。サイコパス再犯のすべてが暴力的であるというわけではなく、その4割程度である。再犯のうち情動障害の面が強い再犯は、そうでないものより約1.5倍の再犯率の上昇を示している。すなわち、「K・B症候群」に見られるような扁桃体機能不全から生じる情動障害は再犯性が高い

データの概要

サイコパスとそうでない犯罪者と比較した再犯率

サイコパスとそうでない犯罪者と比較した再犯内容が暴力的である割合、暴力的再犯率

最も知られる総合分析ヘムフィル(J.M.Hemphill)ら1998年

3

4

暴力的件数は3×4=12倍になる。

国際研究、犯罪者278人調査、2000年

サイコパス傾向強い÷(傾向弱い+そうでない者)=2.1倍

サイコパス:再犯の38%が暴力的 27倍

そうでない者:再犯の2.7%が暴力的

刑務所釈放231人、3年追跡調査、1988年

3.2倍

犯罪者299人、3年追跡調査、1995年

2.6倍

スエーデン、触法患者(法律違反の精神障害者)

3.7倍

ベルギー、2000年

サイコパス傾向強い:4.0倍

サイコパス傾向弱い:1.9倍

1.14 サイコパスは犯罪者更生プログラムの集団療法が逆効果で再犯率は上昇する。

犯罪者を更生するプログラム(教育プログラムや職業訓練プログラム)に参加した場合、サイコパスでない犯罪者は再犯率が低下するのに対し、サイコパスは再犯率が高くなる(Jブレアp21)。これは、更生プログラムに、犯罪者同士などで交流し、共感を醸成しようという集団療法があるが、サイコパスは、共感を醸成することが無く、他者との交流を他者の弱点を見抜く場として利用し、さらに狡猾に犯罪をすると考えられている。サイコパスに対し「他者が自分の心の中を赤裸々に語るのに耳を傾けさせるのは明らかに良い戦略でない(日経サイエンス、K.A.キールp12)。」この事実が分かって以後、米国などではサイコパスに対してはこのような集団療法更生プログラムを適用しないようにしている。1対1の精神治療などで対処している。

1.15 サイコパスの年齢や社会的経済的地位などとの関係

サイコパスは反社会性人格障害情動障害の2面を持っている。この2面が異なる特性を持つ。以下諸特性をこの2面から見る。

(1)サイコパスと年齢の関係

反社会性人格障害の面の犯罪率は下記表の通り17歳前後で最大になり、以後年齢と共に減少する。これは、サイコパスでない反社会性人格障害者と同様の傾向である。この犯罪と年齢との関係は日本を含め、西欧諸国全般でほぼ同じ傾向を示す(J.ブレアp29)。

表の出典:J.ブレアp29の表を筆者がコピーしたもの。

情動障害の面は原則的には年齢に関係せず不変(Jブレアp30)。①②を一体的に見れば、中年期になり、反社会性人格障害の面が減衰し、サイコパスとしての犯罪特性が消滅する場合がある。M.ストーンは8歳で犬やネコを絞め殺し、監獄や矯正施設を出たり入ったりし、7人殺せば息子が生き返ると信じて、3人を殺害し逮捕され、監獄でも強暴だった典型的なサイコパスのマカファティ(Archibald McCafferty)が、刑期を終え60歳となった時に面接している。「率直さ誠実さを持ち、自分自身を見つめることができる能力に感銘し」「邪悪さは必ずしも一生のものとは限らないことを、この目で確かめられて本当に良かったと思う(M.ストーンp123)。」と述べている。私はこのマカファティが一時期自ら進んで精神病院へ入っていることに注目したい。自分の精神がおかしいということを、自分で把握できたということである。自分自身を見つめる能力が残っている場合は、中年期には健常者に近づくことができるのではないかと思う。サイコパスの残虐性に目を奪われて、死刑に処するという単純な対応でなく、サイコパスの病気の原因と回復状況を把握する科学的アプローチの確立が必要であることを示す例。これが未確立の現時点では圧倒的多数のサイコパスは中年期に入ったとしても矯正不能と捉えておくべきであろう。7歳や5歳の少年を誘拐し、虐待を繰り返したK.パーネル(Kenneth Parnell)は釈放後、71歳で再び児童への性的虐待で逮捕(M.ストーンp161)され、高齢になってもサイコパス特性は改善していない。

(2)サイコパスと社会的経済的地位の関係

反社会性人格障害の面の犯罪率は、社会的経済的地位が低いと増え、高いと減る傾向。情動障害の面は、失業しているか高度な専門職についているかなどの社会的経済的地位に関係しない(Jブレアp31)。

(3)サイコパスと知能指数(IQ)、教育状況の関係

扁桃体と関連する脳部位が損傷しているが、記憶や論理思考の部位は正常なので、IQや学習能力は健常者と変わらない。「サイコパスは平均以上の知能を有している」という都市伝説の証拠は全くない(Jブレアp31)。

反社会性人格障害の面の犯罪率は、IQや教育状況が悪いと増え、高いと減る傾向。これはサイコパスでない犯罪者と同様。情動障害の面はIQや教育状況に関係しない(Jブレアp32)。

(3)サイコパスと性別の関係

反社会性人格障害の面の犯罪率は、男性が高く、女性は低い。情動障害の面は男女に関係しない。冷淡で情動の欠如を示す情動障害の有病率は男女で差が無いと考えられている(Jブレアp26)。犯罪として表面化するときは反社会的人格障害と一体となっているので、サイコパスの犯罪率としては男性が高くなる。女性のサイコパスのラターシャ.プリアムの犯行は男性と変わらない。6歳女児を、映画が見られるし、お菓子が食べられると誘拐。肛門に小さなボトルを出し入れした。泣き叫ぶ少女を電気コードで締めては緩め、を繰り返した。釘の出た板切れを少女の胸に押し付け、肺にまで達する穴を2箇所開けた。「お願い止めて、あなたが好きなんだから」と懇願すると、コードをきつく締め上げて殺害。その後ハンマーで頭蓋骨を折った。遺体は外のごみ箱へ捨て、上からごみをかぶせた(M.ストーンp156)。

(4)サイコパスと他の精神障害との関係

1)統合失調症:脳の背外側前頭前皮質の障害に関連しているが、サイコパスはこの部分の障害には関係していない。従って、サイコパスと統合失調症は別の障害で、合併症は実証されない。両方同時に持つ場合はある。統合失調症も暴力のリスク要因である(Jブレアp33)。統合失調症では、幻覚や幻聴や妄想がある場合があり、その結果サイコパスに似た犯行に及ぶことがある。『悪魔を殺せ』と言う声が聞こえたとして母親を殺し、両目を抉り出した例。この例では統合失調症治療薬を服用している時には、礼儀正しく母親にも親切であったが、薬を飲むのを止めたときに、病気が再発し犯行に至ってしまった(M.ストーンpp52-54)。この例は、結果として犯行がサイコパスに似ているが、直接の原因は別である。

2)注意欠陥多動障害(ADHD):集中できず、じっとしていられない障害。例:授業中に歩き回る児童。多くのADHDは扁桃体の機能不全を伴わず、サイコパス傾向はない。サイコパス傾向の子供の75%以上はADHDの障害を示す(Jブレアp197)。ADHDは脳障害の面が強いとされ、しつけや本人の努力だけで症状に対処するのは困難とされる。脳の下記3箇所が縮小していることが見出されている。(ウイキペディア、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、2014.3.5閲覧)

・右前頭前皮質:注意をそらさずに我慢すること、自意識や時間の意識に関連している。

・大脳基底核の尾状核と淡蒼球:反射的な反応を抑える皮質領域への神経入力を調節する。

・小脳虫部:動機付け、やる気に関連する。

サイコパス傾向の子供の75%以上は扁桃体の機能不全と共に上記部分に萎縮があると考えられる。

3)不安障害(過度の不安から生じるパニック障害やPTSDなど)および気分障害(大うつ病など)

全体にサイコパスは不安を感じにくい。サイコパスは①②の2つの集団がある(Jブレアp34、p66)。反社会性人格障害の面が強いグループ:不安が高まると犯罪率増大するグループ。不安と正相関。情動障害の面が強いグループ:不安が高いと行動せず、不安が少ないと犯罪をするグループ。不安と逆相関。サイコパスの傾向強いとうつ病の傾向は少ない。すなわち、サイコパスとうつ病は逆相関関係(Jブレアp34)。

4)サイコパスと自閉症(Psychopath and Autism)(この項は2014/11/18追記)

(A)私の甥の例

私の甥は知的障害を伴う自閉症ですが、その様子が、自閉症の理解に役立つと思うので述べる。甥が小学生の当時、障害であることが分からず普通校に通っていた。小学校4年の時に、3人組の激しいいじめに会っていた。2人が甥を羽交い絞めにし、1人のボスが、甥の足の向う脛(俗に弁慶の泣き所と言われるところ)を棒でたたくなどを行っていた。それを知り父親が、3人組の親に抗議するとともに、3人組を直接、張り倒していた。その後甥がいじめに負けないように空手道場に通わせたが、3年経っても上達せず、最下位の3級のままであった。その理由は闘争心や攻撃性が全くなく、相手を蹴ったり叩いたりできないことである。多くの自閉症児は、反撃することをしないので、いじめの格好の標的になってしまい、激しいいじめに会う。サイコパスは弱いものを見つけ、いじめを陰湿に、手加減をしないで行う側である。自閉症者はいじめをされる側である。サイコパスと自閉症者は真逆の位置になる。サイコパスは大人の病気だけではなく、ほとんどは幼少期から特徴が現れるので自閉症と同様、発達障害の一種と考えられる。

自閉症の人がサイコパスや反社会性人格障害のように暴力的になると心配する人がいるかもしれませんが、その心配は全くありません。もし、暴力的になった場合は自閉症でなく、別の障害の可能性が考えられます。

(B)大脳生理学的特徴と感情の特徴の比較

下記表の通り。自閉症の諸特徴はサイコパスの対極にあると言える。唯一共通しているのはミラーニューロンが、不活発であることである。

 

自閉症(人により程度の差がある)

サイコパス(人により程度の差がある)

大脳生理学的特徴

偏桃体

活発正常肥大傾向*1

不活発機能不全、障害*2

傍辺縁系

正常と思われる。

傍辺縁系組織、顕著に薄い*3

ミラーニューロン*4

不活発機能不全*5

不活発機能不全*6

オキシトシン血中濃度

健常者より濃度が低い*7

不明

感情の

特徴

恐怖、不安

人一倍恐怖や不安を感じる*8

恐怖、不安の感性が衰弱。感じない

攻撃性、暴力性

攻撃性は全くない

多くは陰湿な暴力性がある

一般的に嘘がなく、純心。

平気で嘘をつく。病的な嘘つき

注*1:東京大学医学部附属病院、2010年9月14日PRESS RELEASE 『自閉症の新たな治療につながる成果』http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20100914.pdf 及び次の項「(C)自閉症者の偏桃体が肥大傾向であることに対する私の見解」参照。

注*2:後の項目、本シリーズ(その4)「1.17 扁桃体の位置と具体的機能とサイコパス」ほか参照。

注*3:『日経サイエンス別冊心の迷宮、脳の神秘を探る』K.A.キールp11。

注*4:ミラーニューロンは他者が悲しんでいるのを見て、悲しくなったり、楽しそうにしているのを見て、自分もうれしく感じたりする、鏡(ミラー)のように、他者の感情を自分に写し取る機能の脳のネットワークのこと。

注*5:『東京大学医学部附属病院、2010年9月14日PRESS RELEASE 自閉症の新たな治療につながる成果』http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20100914.pdf 自閉症者はミラーニューロンを構成する下前頭回の三角部と弁蓋部の体積が健常者と比較して萎縮していること、特にミラーニューロンシステムの中心部位と見られている右半球の弁蓋部の萎縮に注目している。

注*6:米国の著名な犯罪者精神鑑定医のM.ストーン(Michael H. Stone)はカリフォルニア刑務所の凶悪殺人犯300人の脳をfMRIで調べ、感情を豊かにする扁桃体が一般の人と異なる反応すると共に、ミラーニューロンが反応せず、あたかも存在しないかのようであることを確認している(「殺人犯の心理学」スカパー,ディスカバリーチャンネル)。

注*7:自閉症児はオキシトシンの血中濃度が低い『自閉症と言う謎に迫る。研究最前線報告』(金沢大学子供のこころの発達研究センター監修2013年12月、小学館、p73)。オキシトシンホルモンを点鼻薬で補充することでミラーニューロンの構成部位である腹側内側前頭前野(他者の感情を理解する)と背側内側前頭前野(他者の考えを推論する)が活性化し、機能の回復が見られる『東京大学医学部附属病院、2013年12月19日PRESS RELEASE 自閉症の新たな治療につながる可能性』http://www.jst.go.jp/pr/announce/20131219。オキシトシンホルモンの点鼻薬の効果は2014年11月から120名について検証し、2015年度中に成果をまとめ、その後正式な治療薬へ向けて作業を進めることを考えているとのこと。『自閉スペクトラム症へのオキシトシン経鼻スプレーの治療効果を検証する臨床試験をスタートします』http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20141030.pdf

オキシトシン点鼻薬が自閉症治療薬として有効性が検証された場合、これまで有効な治療薬が無かったので、自閉症患者にとっては朗報になる。また、反社会性人格障害者やサイコパスの治療薬としての可能性も開くことになるのではないかと思う。

*8:私の甥は30歳になるが恐怖心が人一倍強い。たとえば、一人でレストランや大型スーパーの不特定多数がいる場所へ入れない。ゲームセンターの騒音がある所、デズニ―ランドのアトラクションの入り口の暗い所では怖がってすぐに出てしまう。カッターナイフや果物ナイフのような片刃の刃物は怖くて持てない。恐怖心が敏感でとても強いことが分かる。恐怖心とは別だが私の甥は来年や昨年などの日付を言い、曜日をきくと、たとえば来年の8月5日は何曜日と聞くとすぐ水曜日と答えが出る。どうしてわかるか聞くと「カレンダーが浮かぶ」とのことである。歴史的な事件もたとえば1912年に何があったと聞くと明治天皇崩御とすぐ答えが来る。私の甥は自閉症の中でも知的障害のあるサヴァン症候群の特徴を持っている。

映画『レインマン』でダスティン・ホフマンがサヴァン症候群患者を演じているが、自閉症患者の持つ人一倍強い恐怖の感性は描かれていない。

(C)自閉症者の偏桃体が肥大傾向であることに対する私の見解

私は自閉症者の偏桃体が肥大傾向である理由をこう考える。自閉症者は、他者の感情を読み取れず、他者が怒っているのか、喜んでいるかが掴めず、今にも襲ってくるかもしれないという状態に常にある。すなわち、対人関係では常に激しい不安に陥っている状態と考えられる。そのため、不安を脳で処理する重要部位である偏桃体が活発に、日常的に刺激を受けて、肥大傾向になっているのではないかと思う。また、自閉症者は血中オキシトシン濃度が低いということから考えれば、オキシトシンの脳内の最大受容体である偏桃体が、少ないオキシトシンの変化に対し敏感に反応しようとして肥大化が進むとも考えることができる。いずれにしても、対人関係をつかさどる脳の部分に初めに障害があり、そのために偏桃体の肥大化が誘引されたと考える。すなわち、偏桃体そのものは敏感に働いており障害が無い

また、自閉症が閉じこもりになりやすいのは、表情から他者の心が読めないために他者が怖いのである。他者が怖いので自分の心に閉じこもらざるを得ない、とても辛い状況と考える。自閉症の理解はその対極であるサイコパスの理解にもつながると思う。

(D)サイコパス、反社会性人格障害、自閉症の大脳生理学的違いのまとめ

下記表のとおりである。この表は私が作成したもので、学術文献にこのように3障害の全体を捉えたものはまだないと思われる。:正常 ×:障害(不活発、機能不全) 

 

サイコパス

反社会性人格障害

自閉症

ミラーニューロン

×

×

×

傍辺縁系

×

×

偏桃体

×

統計的割合

1人/250人程度*1

1人/50人程度*1

1人/100人程度*2

注*1:前の項の「1.11 サイコパスの統計的特徴」参照

注*2:東京大学医学部附属病院、2010年9月14日PRESS RELEASE 『自閉症の新たな治療につながる成果』http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20100914.pdf 参照

これらの研究は、fMRIなどの脳の観察ができるような技術の発展により21世紀に入り、飛躍的に進んできている。これらの障害の厳密な原因解明と治療法が確立するにはまだまだ時間がかかる。現場では確立するまで待てないので、わかる範囲で、どうしたらいいかを考えなければならない難しさがある。 

(5)サイコパスと薬物の関係

覚せい剤や麻薬などの薬物依存やアルコール依存はサイコパスの反社会性人格障害の面を重篤にする情動障害の面は薬物依存やアルコール依存は関係しない(Jブレアp34)。薬物依存でサイコパスでないものがサイコパスになることはない。サイコパスが薬物依存になれば、より邪悪になると共に、統合失調症を併発することがある。子供の頃から犬やネコを虐待していたサイコパスの特徴を持つK氏は、マリファナを多量に使用して自分は『神』だという妄想を持つような統合失調症を併発し、女性を殺害。頭部は鍋で煮、肉片は料理し、余った肉片はバケツに入れ一時貯蔵した。調理したものは次々とホームレスに振舞って、証拠隠滅を謀った(M.ストーンpp55-56)。薬物でサイコパスの残虐性がエスカレートした例である。

(6)サイコパスの遺伝要素と環境要素(例:幼児・少年期の虐待の影響)

反社会性人格障害の面の犯罪率は環境要素(虐待など)の影響を強く受ける。情動障害の面は遺伝要素が強い。虐待(環境要素)を受け続けた子供は、わずかな脅威ですぐ暴力的な攻撃にでるように変化する。多くの動物は脅威が遠くであれば近づかず、近くであれば逃げる。もっと近くで逃げられない状態では、攻撃に出る。虐待が続くと、この3番目の逃げられない状態が繰り返され、脳内は攻撃性が高まった状態を維持するように変化する、とJ.ブレアは考えている(J.ブレアpp141-147)。すなわち虐待などの環境要素は①反社会性人格障害を悪化させる。攻撃性が高まった子供は「自分にとって良くない社会的刺激に対してだけ選択的に注意を向け、他の方向に注意をそらすことがなかなかできない」(J.ブレアp143)。これはストーカーの特徴や些細なことをいつまでも根にもち復讐をするサイコパスの執念深さと関連する。虐待を受け続けた子供でも、扁桃体と係わりがあるMAOA遺伝子活性が高い子供は、虐待に耐え、健常者として成長することができるというカスピらの調査結果がある(J.ブレアp147)。MAOA遺伝子活性が低い子供は、虐待の環境下では、反社会的人格障害者へとなるリスクが高い。M.ストーンは同じカスピの調査結果に基づき『願わくは、より多くの子供にカスピ(Caspi)らの検査を行ってほしい。「ハイリスク」の子供たちを早期に発見し、暴力衝動との折り合いがつけられるような余地が残されているうちに、彼らを救ってほしい。p278』と述べている。

サイコパスは①②が一体となっているので、①反社会性人格障害の面を、環境を適切に改善して、サイコパスとしての発症を治療することができるかもしれないと私は思う。一方、直接②情動障害を治療することは、扁桃体の機能を活性化する薬学などの進歩に期待したい。MAOA遺伝子活性や扁桃体の機能活性に係わる薬剤が発見されつつあり将来に希望が持てる。

以下(その4)へ続く。尚、2014/11/18に「4)サイコパスと自閉症」を追記し、文字数が制限を超えたので項目1.16と1.17は次の(その4)へ移しました。テッシーでした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画『凶悪』残虐性は「人間が持つ普遍的な暗部」と描く。だが最新科学は先天的障害であるとする(その2)

2014-03-31 18:44:58 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

(その1)の続き。

1.4 サイコパスは罰から行動を是正すことができない罰を無視し、罪悪感が無く、再犯率が高い

サイコパスには、なぜこんな単純なことができないのだろう、と思うようなことができない

報酬・罰逆転課題(受動回避課題、トランプ遊び課題とも言われている)。サイコパスは、途中から報酬と罰が逆転することをうまく対応できず、この成績が顕著に悪い

報酬・罰逆転課題:10枚1組のカードを被験者に提示し、1枚ずつ引く、報酬のカードであれば被験者が欲しているもの、たとえば金銭、タバコ、菓子などを1つ得る。罰のカードであれば、報酬カードで得たものを1つ失う。最初の1組目の10枚はすべて報酬カードになっている。1組目が終わって2組目は10枚中9枚が報酬カードで1枚が罰カードを含んでいる。罰カードがどの程度含まれているかは被験者には知らされない。いつゲームを止めてもいい。3組目は8枚が報酬カードで2枚が罰カード。4組目以後も同様に報酬カードが減り、罰カードが増えていく。健常者は罰が増えてくることを把握し、途中で止め報酬を確保する。だが、サイコパスは罰が増えても止める事はせず、報酬のすべてを失うこともある。このような報酬・罰逆転課題は多くの方法が試され、いずれもサイコパスは罰を無視してしまい、罰から行動を是正することができないことを示す(J.ブレアp71)。

報酬が有るか無いかだけの課題で、奪われる罰がない場合、すなわち逆転がない場合には、サイコパスは健常者と変わらない成績になる。サイコパスの報酬だけの判断は健常者と同様である。状況が逆転していることを把握する脳の部位は傍辺縁系の前頭前皮質(内側・眼窩・腹外側)で、サイコパスはここが機能不全である(J.ブレアp139、p177、p185)。この障害は子供より成人に、より顕著である(J.ブレアp186)。このことは扁桃体機能不全が子供の頃にあり、成長と共に周辺の関連脳部位の発達を阻害したことを示唆する。

報酬・罰逆転課題はサイコパスの子供は対応できるが成人になるとできなくなる。成人はサイコパスが進行した状態へ、すなわち扁桃体の機能不全が成長と共に周辺部の脳障害へと波及したと考えられる。子供の頃にサイコパスを発見し、治療をすることで、傍辺縁系の脳機能障害まで深刻化することを防げる場合があるかもしれないことを示唆している(J.ブレアp73)。子供のサイコパス傾向は3歳児頃から表面化し始める(J.ブレアp81)。早期(おそらく就学前)の介入が非常に重要だ(日経サイエンス、K.A.キール、p12)。

1.5 共感する能力はサルやネズミでも見られる根源的能力であるがサイコパスはそこに障害がある。  

アカゲサルの実験(J.ブレアp107):2本の鎖の一方を引くと多い餌が、他方は半分以下の餌が出てくる。はじめに、これに慣れて、多い方を引くように学習させる。次に多い方を引くと、見えるところで別のサルが電気ショックを受けるようにする。電気ショックの様子を1回見てから、15匹中10匹は別のサルが電気ショックを受けない少ないほうの餌の鎖を選ぶ。1匹は5日間どちらの鎖も引かなかった。1匹は12日間どちらの鎖も引かなかった。この場合の条件は、そのサル自身が電気ショックを受けた経験があること、電気ショックを受けるサルと親密度が高いことである。この実験は、サルの共感能力の存在を証明している。サイコパスはこれが無い。

ネズミの実験(J.ブレアp107):レバーを押すと別のつるされた苦しい状態のネズミを下に降ろし苦痛を除くことができる。このことを学習したネズミは、報酬が無くても、別のつるされたネズミがいるとレバーを押して苦しい状態のネズミを降ろす。おそらく、別のネズミの苦しい声などが無くなる事が報酬となっている。共感の原点といえる実験である。

人間の実験(J.ブレアp74):知人が電気ショックを受けているように思わせ、被験者の皮膚電気反応を計測する。健常者群は知人の電気ショックを見て激しく反応する。比較してサイコパスは反応が衰弱している。すなわちサイコパスは共感能力が衰弱していることを確認した実験である。サイコパスは、サルやネズミでも持っている共感能力が衰弱している。

サイコパスの特徴は、映画『凶悪』で言う「人間が普遍的に誰でも持つ暗部」などではなく、サルやネズミでも持っている基本的な能力を失っている重篤な病気と捉えることができる。

1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動:K.B.症候群

ネコやサルの扁桃体とその周辺を破壊すると「クリューバー・ビューシー症候群」(以下K.B.症候群)といわれる症状を発症する。1937年、クリューバーとビューシーの二人が発見した。その症状は次の通り。食欲、性欲、安全欲求、認知欲求など動物の生存に係わる基礎的欲求構造が破壊されていることが分かる。サイコパスとはK.B.症候群が人間に起こった症状と考えられる。

(1)恐怖・怒りの感情を表出すべき状況でもまったく反応がなくなる、恐怖・怒りに伴う反応の完全な消失。危険なものを避けなくなる。サルは何に対してもためらいなく近づき、恐れている火のついたマッチや蛇にさえも触れる。怒りなど顔の表情の消失。感情とそれに基づく行動である情動の喪失、情動の異常行動。

(2)手あたり次第に口に触れ、口に入れ、噛み、嗅ぐ、食べ物でないものを食べる。正常のアカゲサルにはみられない肉食がおこることがある。すべての対象物を口唇で調べているかのようにふるまう。特徴的なのは手よりも口を用いてものをたしかめようとすることで、同じものを何回も口に入れてみる。食べ物に関する認知の異常行動(口唇傾向、oral tendency)。(サイコパスが人の臓器を生で食べたり、血をすすったりすることがあるが「K・B症候群」と捉えることができる。〔M.ストーンp188、6名を殺害したR.チェイスや日本の神戸連続児童殺傷事件のA少年の例、A少年については後の1.16項を参照〕)

(3)周囲にあるものを見てもその意味を認識できない様子をみせる。サルは同じものを何度も手に取り熱心に調べる様にふるまう。対象物の認知の異常行動(視覚性失認症、精神盲:物は見えているのに、それを意味づけて認識・理解することができない)。(サイコパスは感情を乱すことなく遺体を切り刻む。あたかも時計の内部を見たくてバラバラにする調子である〔M.ストーンp193〕。これは「K・B症候群」の行動と捉えることができる)

(4)性的感覚の異常・亢進(異常な高ぶり):雌雄や種の区別なく、生物でないものに対しても交尾しようとすることがある。猫や犬では雌雄の見境なく何匹も重なり合ってしまう。(15人の男性を殺害したD.ニルセンの例。男性死体を床下に隠し、時々床を剥がして取り出しては興奮を味わい、腐敗が進むまで肛門性交を繰り返すなど異常な性行動〔M.ストーンp194〕。性的乱交や結婚・離婚を異常なまでに繰り返すサイコパスの特徴は、「K・B症候群」と捉えることができる)

出典:①「精神科ポケット辞典 弘文堂 P85クリューバー・ビューシー症候群」。②日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医伊古田俊夫(いこた・としお)のブログ、「クリューバー・ビューシー症候群  扁桃体への旅 その3」http://blogs.yahoo.co.jp/brainandaging/6115798.html(2014.3/1閲覧)③“精神医学事典”、加藤正明、保崎秀夫ほか編集、1975,弘文堂。扁桃体の基礎知識は川村光毅(慶應義塾大学 医学部 教授) 「扁桃体の構成と機能」http://www.actioforma.net/kokikawa/kokikawa/amigdala/amigdala.html(2014.3/1閲覧)より私が専門用語を一般的な用語にしたり、分かり易くしたり、短くしたりした。詳細が気になる人は出典を直接見てください。尚、上記出典には項目(4)の「生物でないものに対しても交尾しようとする」の内容はない。学術的でないが「恐怖が消え去り、全てが性交の対象になる - クリューバー・ビューシー症候群とは」に人間の具体例の記述があるので、付け加えた。http://sweettea.exblog.jp/(閲覧2014/2/27)

下の写真左は、扁桃体を破壊したサルが、普段では近づかない蛇を食べている、「K・B症候群」の項目(1)(2)の症状を示す。もし自然界で毒蛇であれば、サルのほうが命を落とすことになるので、生存の可能性が少なくなり淘汰される。写真右はニワトリに交尾を試みるウサギ、「K・B症候群」の項目(4)の症状を示す。写真はいずれも東京大学教養学部附属 教養教育高度化機構 前半担当: 坂口菊恵、心理Ⅱ3.脳の構造と機能局在http://l319.hocha.org/up1/data/07pdfより(2014.2/27閲覧)。

 

以下の(5)(6)の2例は、川村光毅(慶應義塾大学 医学部 教授「扁桃体の構成と機能」より。

http://www.actioforma.net/kokikawa/kokikawa/amigdala/amigdala.html(2014.3/2閲覧)を参考に、私が専門用語を一般用語にしたり、分かり易くしたり、短くしたので、詳細が気になる人は、閲覧元を見てください。

(5)扁桃体が破壊されたラットの恐怖がなくなる実験

ラットに音を聞かせると同時に電気ショックを与えて「恐怖条件づけ」を行なうと、音だけで恐怖反応(血圧上昇やすくみ)が起こるようになる。扁桃体を破壊したラットでは、この恐怖反応は起こらない。電気ショックを何回受けても、音から恐怖を感じる構造、恐怖反応は形成されない。恐怖反応の形成は正常な動物一般にみられるもので、その構造はヒトとラットで基本的に違いはない(川村光毅)。これは「K・B症候群」の項目(1)に相当する実験例。

(6)魚の情動障害

 メダカの扁桃体に相当する領域とその近傍を破壊すると群れの形成ができなくなる。コミュニケーション障害の研究のモデルとして使用可能である(坪川ら、1999)。扁桃体が動物の基本的な行動原理を形成していることがわかる例。サイコパスは、動物の基本的な行動原理に係わる病気という面を持つ。

(7)好奇心の認知欲求は恐怖の安全欲求と同じレベルの基礎的欲求

米国心理学会元会長のA.H.マズロー(Abraham Harold Maslow)によれば好奇心の認知欲求は、恐怖を感じる安全欲求と同じレベルの動物の基礎的生存欲求レベルである(「人間性の心理学」A.H.マズロー、産業能率出版部、1987)。扁桃体の機能不全を起こしているサイコパスは、認知欲求の異常な行動を伴うことが多い。K・B症候群の(2)(3)が認知欲求異常を示すものである。

1.7 サイコパスは見た目や会話では分からない

脳の障害のために、見た目では分からない。また、扁桃体と関連部位以外の言語、記憶、論理思考などの障害はないので、会話してもわからない。論理思考は障害が無いので、隠蔽工作は狡猾になる。下の2枚の写真は、元米国共和党員で、弁護士を雇わず、自ら弁護をしている知的なテッド・バンディ(Theodore Robert Bundy =Ted Bundy)である。この写真から、彼の犯罪が推察できますか?正解は少し後で。

 

写真の出典:左:ウイキペディア「テッド・バンディ」(2014.2/24閲覧)。

右:Criminal minds a virtual panel、

http://7criminalminds.blogspot.jp/2012/04/handsome-smart-and-deadly.html(2014.2/24閲覧)(日経サイエンスp20と同じ写真)

ニューメキシコ大学のK.A.キール博士は、犯罪心理学を学ぶ大学院生の経験を積ませるために、犯罪歴を見せずに、まず面接するよう指導する。院生は「これほど言葉遣いが丁寧で信用できる人物が間違って刑務所に入れられているに違いない」と思い込むようになる。麻薬、詐欺、強盗、売春などの事実を知って、学生が再び面接すると受刑者の態度が変わる。ぶっきらぼうに「ああ、あれね。ああいう事はあれこれ話したくなかったんだ」などと言われ、仮面が剥がされる(日経サイエンスK.A.キールp6)。サイコパスには他の精神疾患に見られるような、幻覚、幻聴はなく、混乱や不安におびえることもなく、人付き合いが下手ということもない。見かけでは“正気の仮面”をつけている。これがサイコパスを「人間が誰でも持つ普遍的な暗部」と誤解される原因の1つとなる。この暗部は誰でも持っているわけではない。ほんの一部の人が持つ、脳の病なのである。「生まれつき邪悪な人間などいない、人間の中の獣を呼び覚ます状況があるだけだ」(仏人ジャーナリスト、シュライバー)というのも正確でない。「生まれつき邪悪な人間」は稀とはいえ存在する(M.ストーンp289)。それがサイコパスなのである。

刑務所のサイコパスは“正気の仮面”により、弁護士や刑務所スタッフや精神科医などを騙し、模範囚としてじっと釈放のチャンスを窺う。M.ストーンは、早期に『もはや危険無し』と誤った判断を下して、釈放後に犠牲者を出した多くの例を挙げている(M.ストーンpp298-304、p213のJ.ウンターヴエーゲル(Johann Unterweger=Jack Unterweger)事件:釈放後直ちに3人の女性が拷問と殺害の犠牲になった)。釈放すべきでない仮面をかぶったサイコパスを早々と釈放する一方、悔い改めて危険性が無い、釈放すべき犯罪者の刑期を長引かせている。この誤りを防ぐためにもサイコパスの理解が重要と述べている(M.ストーンpp26-33)。

写真のテッド・バンディの犯罪を説明する。女性をレイプした後に殺害し、遺体を切り刻んで遺棄した。人数は30人以上と自白したが正確な人数は分からない。15歳の時に8歳の女子を殺害した可能性があるが事実は不明。相手を殴りつけて意識を失わせ、それから性行為を行う。遺体を切り刻んだ後、切断した女性の頭部の口の中に射精したという。日本の酒鬼薔薇事件の犯人は、頭部を切断し、その顔を切り刻んだ時に、性器に触れることなく射精をしたというのと似ている。なぜこのような残忍で奇妙な行為を行うのかについては扁桃体の機能不全と関連付けてはじめて理解が可能になる。テッド・バンディは最後まで、物事を深刻に受け止めることができず「自分は上訴に勝つ。死刑にはならない」と話していたが、1989年に42歳で、電気椅子で処刑された。出典はウイキペディア「テッド・バンディ」(2014.2/24閲覧)。サイコパスは、一般に、最後まで自分の犯罪を否定し続け、明白になった事実についても真実を語ろうとしない傾向がある(M.ストーンp30)。サイコパスが裁判で嘘に嘘を重ね、無実を主張するこの振る舞いのために、健常者の無実の主張がサイコパスと同じように捉えられて、冤罪を引き起こす原因にもなる。嘘を重ねることは、被害者と共感しないので悪いことをやったという意識が無いこと、すなわち罪悪感の喪失から生じていると私は考える。残虐な犯罪を次々起こしたオウム事件の主犯、麻原彰晃はサイコパスと私は思うが最後まで真実を語らないかもしれない。テッド・バンディのM.ストーンの邪悪度レベルは拷問をしていないのでレベル16程度となる。

邪悪度の最上位レベルは拷問を目的とした22になる。その1人デイヴィッド・パーカー・.レイ(David Parker Ray)を説明しておく。同僚や息子の前では好人物と見られていた。映画『凶悪』の”先生“も家庭では好人物と思われているところは似ている。

拷問殺害した女性は10数人ともその何倍とも言う。5回結婚。10代半ばには女性を木に縛り付けて拷問殺害。「拷問部屋」を自ら作った。防音、滑車、鎖、ウインチ、テーブル、拘束具、スタンガン、弱電流の牛追い棒、釘で覆われた張形、婦人科用器具、注射器、薬品、強化壁と強化ドア、カメラ、モニターが備え付けられていた。

女性を誘拐。手足を拘束し、口をガムテープでふさいで、天井から吊してから、自ら録音したテープを聞かす。

テープは『君には1ヶ月か2ヶ月ここにいてもらう。興奮させてくれたら3ヶ月になるかもしれない。永久にいてもらうことだってある。』とこれから被害者の身に起こることを言う。テープは文字に書き起こすと16ページになるがあまりに邪悪すぎて活字にできるのはわずかだけ、思わず耳をふさぎたくなる、とM.ストーン。ウインチと鎖で絞め上げられ、電気ショックなどの拷問が加えられる。主な関心は性器に向けられた。備え付けられた器具などであらゆる可能な拷問、苦痛、辱めが加えられ、ずたずたに切り刻まれ、最後は殺害された。日記や47枚の拷問を加えられた女性たちのスケッチを残しているが、邪悪すぎて1枚として掲載できない、とM.ストーンpp198-203。他の邪悪度22のサイコパスの例には、同じように拷問部屋を作り、20人以上を拷問・殺害し、記録ビデオを取ったレオナード・レイク(Leonard Lake)(M.ストーンpp204-206)や、森の人気の無い場所へ連れ込み、殴り倒し、縛り上げてナイフで切り、手押し車の柄を性器に突っ込み、性器を焼き、乳房に針を打ち、乳房と左足の一部を切り取り、最後は殺害するというような拷問をしたジョン・レイ・ウェーバー(John Ray Weber)(M.ストーンpp243-248)や、喉を切り裂き、大量の血が流れるのを見ると『アドレナリンがドッとめぐる』のを感じると言い、70人以上を殺害した、トミー・リン・セルズ(Tommy Lynn Sells)(M.ストーンpp207-212)がいる。トミー・リン・セルズと面会したM.ストーンは、半分人間、半分悪魔になっていると言う。サイコパスがなぜこのような奇怪な拷問や残虐行為を行うのかは、後の項「1.18サイコパスが邪悪で暴力的である根本原因」で述べる。

1.8 サイコパスと反社会性人格障害やその他の犯罪の違い

反社会的人格障害の中の一部にサイコパスが含まれる。「その他の犯罪」は、万引きや道路交通法違反などで、経済的環境や年齢で大きく変動する。「その他の犯罪」に比較して反社会性人格障害者は変動が少ない。サイコパスはさらに変動が少なく、経済的環境や年齢に依存しない特徴がある。

反社会的人格障害とサイコパスの違いは下記表の通り、扁桃体の障害が有るか無いかが基本になるが、サイコパスチェックリスト(PCL-R)の点数で分けることが試みられている。犯罪としては慣習的違反(社会秩序の違反)と道徳的違反(他者が嫌がることの違反)の組み合わせでおおよそ分けることができる。

 

サイコパスでない反社会性人格障害

サイコパスの反社会的人格障害

概要

法律違反を繰り返し、何回も逮捕される。社会的義務を果たす意思はない。情動障害は無い。

左記に、他人を傷つけることを求め、異常な性欲や認知欲求など情動障害が加わる。

犯罪の特徴

慣習的違反(社会秩序の違反)

左記に、道徳的違反(他者が嫌がることの違反)が加わる。

脳の障害の部位

扁桃体を除く傍辺縁系等の障害

扁桃体を含む傍辺縁系等の障害

付加する形で、統合失調症や躁病や薬物中毒など他の脳の障害を併発していることがある。

PCL-Rの点数

30点以上、子供で27点以上J.ブレアp11

アメリカ精神医学会の精神障害の診断・統計マニュアル第4版(DSM-Ⅳ)で反社会的人格障害(ASPD)を定義しているが、長いのでそれを参考にポイントだけを私がまとめ上記表「概要」に記した。アメリカ精神医学会のDSM-Ⅳでは反社会的人格障害からサイコパスを分離していない。また、反社会的人格障害は18歳以上で17歳以下は行為障害(CD)と分けているようである。JブレアやK.A.キールらは、治療を考慮してサイコパスを反社会的人格障害から分離して対処することを提案している。サイコパスを判定する標準的な方法が検討されつつあるが、多数の専門家や使用できるfMRIなどの医療機器の普及が必要になるので現状は進んでいない。また、K.A.キールは、サイコパスが巧みに嘘をつくので、正確な診断を下すのが実務的に難しいことも分離することを妨げていると述べている(日経サイエンスp13)。日本の『犯罪白書』では、「精神障害者等」としてまとめており、反社会性人格障害もサイコパスも分離されていない。『犯罪白書』はサイコパスや反社会性人格障害の原因や対策を検討するうえで必要な科学的なデータを国民に提供するものにはなっていない。サイコパスチェックリスト(PCL-R)を知りたい人はウイキペディア「精神病質」を見てください。

1.9 子供のいじめとサイコパス発見方法

(1)道徳的違反(他者が嫌がることの違反)からのサイコパス児童の発見

道徳的違反(他者が嫌がることの違反)を子供は、早くから認識できる。「健常な発達をする子供は、慣習と道徳の違いを生後36ヶ月(3歳)になれば区別することができる。子供はすべての違反を同じようには判断していない。むしろ他人に害を与える違反(道徳的違反)と社会秩序を乱すだけの違反(慣習的違反)を区別している。」(J.ブレアp106)。サイコパス傾向の子供はこの区別がつかないので、これを手がかりに、早期にサイコパスの病状を検知し、治療を開始することができるのではないかと私は考える。

「いじめ」を繰り返し行う子供、他の子供を神経衰弱や自殺にまで追い込む子供は、サイコパスの検査を受ける必要がある。後の項目「1.11(1)サイコパスの割合」で示すように、250人に1人程度の割合でサイコパス特性の子供が存在すると考えられる。すなわち、40人学級であれば6クラスで1人程度は陰湿ないじめをする子供がいることになる。教師などはこの現実に眼を背けず対処する必要がある。M.ストーンは「・・・訓練の結果、サイコパス傾向の子供が――たとえ心の底では善悪の差を「実感」できなくても――自分のためになるからという理由で行動を律することができるようになれば、やがては、道徳的に悪とされる行為や暴力から遠ざかる習慣が身についていくかもしれないp280。」と述べている。

サイコパスは相手が嫌がっている苦痛を、共感することができないので、相手の苦痛により“罰せられる”ことがない(J.ブレアp172)。健常者はいじめをしたときに犠牲者の苦痛の共感により罰せられる。悪いことをしてしまったという罪悪感(嫌悪反応)の罰がある。一般には行為をする前に、その共感の苦痛を予測して、行うことはない。サイコパスが、罪悪感が無いのは、苦痛の共感が無いことから生じている。これは、こどものいじめの原点になる。サイコパスでなくても、成長期の子供は共感する能力が他の欲求能力と比較して相対的に未発達のためにいじめが生じることがある、その場合は成長と共に収まる。扁桃体の機能不全から生じるいじめは、陰湿で手加減がなく、エスカレートすることはあっても、自然に収まることはない。

子供のサイコパスについては後の項目「1.15(6)サイコパスの遺伝要素と環境要素(例:虐待)」も参照してください。

(2)新生児模倣からのサイコパス児童の発見:判別が正確にできないので実用性はない。

新生児は生後1週間も経つと、人のまねをする。たとえば、人が舌を出したり引っ込めたりすると、新生児は舌を出す。これは、じっと目を見合って、動作は変化させながら行う必要がある。尚、この人まねはチンパンジーでも、他のサルでも見られる(放送大学、発達心理学特論、第2回「心の進化と発達」京都大学大学院准教授、明和政子)。この人まねは、まだ確認されていないが、ミラーニューロンによるものと考えられる。サイコパスはミラーニューロンの機能に障害があるため、この人まねが、生まれたときからできないかもしれない。もし、扁桃体の機能不全が始めにあり、その後、扁桃体の異常が周辺に波及してミラーニューロンが機能を失うのであれば、生まれたばかりではミラーニューロンの機能が正常と考えられるのでサイコパスでも新生児模倣は生じることになる。いずれにしても、サイコパスを早期に発見して、適切な対処をすることが重要なことである。尚、新生児模倣は2ヶ月程度で次の段階のコミュニケーションへと成長するため、消滅する。

1.10 傍辺縁系の一部が損傷し扁桃体は正常な場合の例

下の写真はF・ゲージ(Phineas P. Gage)という、穏やかで、部下に信頼されていた作業長が、現場の事故で鉄の棒が刺さり、傍辺縁系の前頭前皮質が損傷した事件を示す。写真左は貫通した鉄棒を持つF.ゲージ本人。右は事故で鉄棒が貫通した状態を再現したCG。F.ゲージは事故後、粗暴で思慮深さを失い、部下たちは別人になったと言った。傍辺縁系の損傷で人格障害を起こしたが、扁桃体は正常のため情動障害は併発せず、サイコパスにはならなかった。人格障害と情動障害が脳の別の部位に属することを示す例である(日経サイエンス、K.A.キールp10)。写真はウイキペディア、「フィアネス・ゲージ」より。

 

 以下(その3)へ続く。テッシーでした。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画『凶悪』残虐性は「人間が持つ普遍的な暗部」と描く。だが最新科学は先天的障害であるとする(その1)

2014-03-31 13:30:56 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

映画『凶悪』2013年度作品では、残虐性は「人間が持つ普遍的な暗部」と描き出す。だが最新の犯罪心理学は、この残虐性は普遍的なものではなく脳に障害がある先天的な疾患(サイコパス)であることを明らかにしている。

別冊日経サイエンス2013/4/18号、心の迷宮、脳の神秘を探る。サイコパスの脳を覗く(ニューメキシコ大K.A.キール他)、以下「日経サイエンス」)では、「サイコパスは脳の傍辺縁部位が顕著に薄く、発達していないことが分かっている」(p11)と述べている。ロンドン大学でサイコパスの研究を行うジェームス・ブレアらは「サイコパス、冷淡な脳」(2009年、星和書店。以下J.ブレア)で脳の傍辺縁系を構成する扁桃体の生まれながらの機能不全を起点として、成長するに従って関連する傍辺縁系などが発達障害を起こすと推測している(J.ブレアp189他)。犯罪者精神鑑定医の権威マイケル・ストーンはカリフォルニア刑務所の凶悪殺人犯300人の脳をfMRI(脳内状況を磁気を使い把握する装置)で調べ、感情を豊かにする扁桃体が一般の人と異なる反応することを確認している(「殺人犯の心理学」スカパー,ディスカバリーチャンネル)。サイコパスの理解は、fMRIなどの脳検査機器が発達した21世紀に入り大きく前進している。映画『凶悪』の原作を読むと、“先生”と呼ばれた三上は動物虐待飼っている鳩やニワトリを蹴り上げたり、首を絞めて殺したり(原作p162映画には表現されていない)」しているなど、サイコパス特性の強い人物である。死刑囚の告発者須藤(原作では後藤)は凶暴で反社会性人格障害であるが、サイコパス特性は弱い。

映画『凶悪』のプログラムのintroductionに「人間が内に秘める心の闇に切り込んだ」とある。同じプログラムの中で根本敬氏は「人間が持つ普遍的な暗部」と言う。映画『凶悪』は「身の毛もよだつような残虐性は誰でも内に秘めている」という考え方で作られている。ほんとにそうだろうか?最新の犯罪心理学はそうではないことを示している今後もこのような「弱い者に対してや性による虐待・残虐行為は人間の内的な本質」とする刺激的な映画が繰り返し出てくると思うので、そうではないことを最新の犯罪心理学に基づき以下の通り、まとめた。長くなったので、ブログの文字数限度で、「その1」~「その7」と分け、映画『凶悪』の狙いや原作との違いや私なら映画「凶悪」をどのような構成にするかを「その5」「その6」「その7」項に記した。全体は大変に長いので、下記の目次で興味の有る項目を選んで読んで頂ければと思う。

サイコパスは「精神病質者」と訳され、素人に分かり易い対応する言葉はないので、このままサイコパスを使う。精神障害者のほとんどはサイコパスのような犯罪を行うような人ではありません。精神障害者には純真で、素直な人や立派な人がたくさんいますので、精神障害者全体をサイコパスのように見ることのないように、はじめに強調しておきます。サイコパスが残虐な犯罪を繰り返すので、表現に気持ち悪い言葉やぞっとする言葉が含まれますので、ご了承ください。また、嫌だなと思ったらその部分は気持ち悪くなることがあるかもしれませんので、すばやくパスするようにしてください。書いているほうも気持ち悪いのですが現実ですので止むを得ません。著作権で問題ないと思われる写真を掲載し、出典を明示していますが、もし問題が生じた場合は削除します。

目次

その1

1.サイコパスとは(映画『凶悪』を評価するのに重要なことなので最近の情報を基礎からまとめている)

1.1 サイコパスの全体像

(1)「日経サイエンス」でのニューメキシコ大学のK.A.キールの説明

(2)「何が彼を殺人者にしたのか」(マイケル.ストーン、2011、イースト・プレス、以下M.ストーン)でのM.ストーンの説明

(3)「サイコパス、冷淡な脳」でのJ.ブレアの説明

1.2 サイコパスは他の人と共感することができない。表情や声や身振りから人の感情を把握できない。

1.3児童虐待の例とサイコパスの虐待の特徴 

その2

1.4 サイコパスは罰から行動を是正すことができない罰を無視し、罪悪感が無く、再犯率が高い。

1.5 共感する能力はサルやネズミでも見られる根源的能力であるがサイコパスはそこに障害がある。

1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動:K.B.症候群

1.7 サイコパスは見た目や会話では分からない

1.8 サイコパスと反社会性人格障害やその他の犯罪の違い

1.9 子供のいじめとサイコパス発見方法

1.10 傍辺縁系の一部が損傷し扁桃体は正常な場合の例

その3

1.11 サイコパスの統計的特徴

(1)サイコパスの割合

(2)日本の『犯罪白書』からの反社会性人格障害者割合の推定:結果は米国と同様

1.12 ごみのリサイクルの非協力者割合は反社会性人格障害割合に近似する。

1.13 サイコパスの高い再犯率と暴力性割合

1.14 サイコパスは犯罪者更生プログラムの集団療法が逆効果で再犯率は上昇する。

1.15 サイコパスの年齢や社会的経済的地位などとの関係

(1)サイコパスと年齢の関係

(2)サイコパスと社会的経済的地位の関係

(3)サイコパスと知能指数(IQ)、教育状況の関係

(4)サイコパスと他の精神障害との関係

1)統合失調症

2)注意欠陥多動障害(ADHD)

3)不安障害(過度の不安から生じるパニック障害やPTSDなど)および気分障害(大うつ病など)

4)サイコパスと自閉症(この項は2014/11/18追記)

(5)サイコパスと薬物の関係

(6)サイコパスの遺伝要素と環境要素(例:幼児・少年期の虐待の影響)

その4

1.16 サイコパスの存在は、人種、民族、文化、時代の違いは無い。

1.17 扁桃体の位置と具体的機能とサイコパス

1.18サイコパスが邪悪で暴力的である根本原因

(1)基本的な考え方

(2)日本の比較的情報量が多い酒鬼薔薇聖斗事件の例で説明する。

(3)2つの誤った見解

1.19サイコパスの更生の可能性

1.20健常者のサイコパス化の危険

1.21戦争、内乱、政治的テロでのサイコパス。

その5

2.映画『凶悪』は、誰もがサイコパス特性を持っているとするために、原作に手を加えたり削除したり、構成を変えたりしている。

(1)原作に付け加えた内容

   1)記者の家庭の痴呆症になった母親

   2)記者の逮捕

   3)会社に黙って記者が単独行動

  4)告発者Gをサイコパスと作り上げるために付加および削除した場面

 (2)原作から削除した重要な内容

  1)藤田幸夫の存在と自殺の削除

  2)“先生”のサイコパス特性の削除

その6

3.実際(原作)と映画『凶悪』の違いまとめ

 (1) “先生” の実際と映画『凶悪』の違い

(2)“先生”がカーテン屋に拷問を加える時に浮かべた「愉悦の表情」の違い

(3)“先生”がカーテン屋の頭を坊主にし、体中に油性マジックで落書きした場面の違い

(4)告発者Gの実際と映画『凶悪』の違い

(5)Gの“先生”を告発した理由の違い

(6)M.ストーン邪悪度等級での実際と映画『凶悪』の違い

その7

4.私なら原作「凶悪」をどのような映画にするか。

(1)「反社会性人格障害者 対 サイコパスの闘い」として描く。

(2)観客に、5つの魅力を提供する。

(3)「推理展開の痛快さ」の魅力となる原作のポイント

あとがき


以下本編です。 

1.サイコパスとは(映画『凶悪』を評価するのに重要なことなので最近の情報を基礎からまとめている)

1.1 サイコパスの全体像:サイコパス (psychopath)の全体像を示す特徴は以下の3者の説明の通り。3者は世界的に有名なサイコパスや犯罪心理の研究者。

(1)「日経サイエンス」でのニューメキシコ大学のK.A.キール(Kent A. Kiehl)の説明

「サイコパスの最も際立つ特徴:他者に対して共感をもてないこと。最も普遍的な社会的責任を単なる虚飾と切り捨てる。嘘をつき、ごまかし、良心の呵責を感じたり悔いたりすることがない。何事についても深く受け止めることが全くない」p6。

(2)「何が彼を殺人者にしたのか」(マイケル.ストーン(Michael H.Stone)2011、イースト・プレス、以下M.ストーン)でのM.ストーンの説明、人格特性と行動特性の2面から説明をしている。

人格特性:人に共感することができない。自己中心的・自己愛的病的な嘘つき。良心の呵責や罪悪感がない他人の権利や感情に非常なまでに無関心口達者で愛想が良い。大げさ、狡猾他人を操作する。

行動特性:行動をコントロールできない。性的乱交を好む。衝動的。寄生的ライフスタイルを送る(他者の収入などを奪う形で生活をする)。邪悪と呼べる行動を取る人は、極端に自己愛的。特に、ずる賢く冷淡で無慈悲この資質を備えた人はどんな残忍なことでも平気でできるp36。

(3)「サイコパス、冷淡な脳」でのJ.ブレアJames Blair)の説明

「サイコパスは、情動面、対人関係面、行動面においてそれぞれスペクトラム(成分に従って配列した全体)をなす複合的な成分から構成される障害である」p11。サイコパスの特徴を把握するため353組の男性双生児を調査したブロニゲンらのサイコパス指標を紹介している、「目的のためには手段を選ばない利己主義恐怖心の欠如冷酷さ、衝動的な社会的逸脱責任転載、ストレス脆弱性、無責任で計画のない行動、社会的権力欲求」p40。1941年の古典的な11の特徴説明を紹介している、「表面的な魅力、不安の欠如罪悪感の欠如信頼できないこと不誠実自己中心的、親しい関係を継続して作れない、罪から学ばないこと、情動の乏しさ、自分の行動が他人に及ぼす影響を鑑みることができないこと、将来の計画が立てられないこと」p10。  

以上の3者の特徴説明のすべては扁桃体の機能不全と関連する傍辺縁系などの発達障害で説明がつく。扁桃体及び傍辺縁系は生理的欲求や安全・秩序欲求や認知欲求などの人間・動物の基礎的な生命活動を確立する機能を持っており、そこが損傷しているので、健常者には予想がつかないような極めて異常な奇妙な犯罪を行う。その奇妙さのためにマスコミを賑わす事になる。

健常者でも、厳しい特殊な状況に追い込まれれば正当防衛的に殺人や人肉を食べることが生じるかもしれない。だがサイコパスはそのような状況にならなくても積極的に行動する。サイコパスの犯罪は、健常者が状況によれば自分もやるかもしれないという理解の範囲を遥かに超えた犯罪で、奇怪な猟奇的な内容になる。サイコパスの奇怪さ、猟奇的な度合いを、M.ストーンは邪悪度(悪の等級尺度、凶悪度)としている。以下に出てくるM.ストーンの具体的犯罪者の説明は、主に犯罪者精神鑑定医として犯罪調書と犯罪者に面接した情報による。邪悪度は、M.ストーンが裁判で陪審員が量刑を判断する時の参考のために作成したもので、22段階に分けている。扁桃体や関連する部位の機能不全の度合いによって、サイコパスの邪悪の内容や邪悪度が違ってくると考えられる。

1.2 サイコパスは他の人と共感することができない。表情や声や身振りから人の感情を把握できない。

読者は自分がサイコパス的であるかどうか、次の写真で調べることができる。

下の3枚の写真それぞれをじっとしばらく見て、健常者は楽しそうだなと感じるが、扁桃体と関連する部位の機能不全の度合いの激しいサイコパスは何も感じない。感じたふりをすることはある。

    

下の4枚の写真それぞれをじっとしばらく見て、健常者は悲しそうだな、どうしたのだろう、「大丈夫」と声を掛けたくなるような感じを持つ。サイコパスは何も感じない。感じたふりをすることはある。右下のモノクロ写真はJ.ブレアが共感しているかどうかを調べるため、サイコパスの脳の反応をfMRIで観察する時に使用する写真の1つである。J.ブレアの「サイコパス、冷淡な脳」のp75の写真を私がコピーしたもので鮮明でない。

  

下の左の写真をしばらくじっと見ていると健常者は、不安そうだな、どうしたのだろう、「心配いらないよ」と声を掛けたくなるような感じを持つ。右の写真の左から右への少女の表情変化から、健常者は悲しいことが起こったことを読み取るが、サイコパスは顔の形が変わった以上の何も読み取らない。読み取ったふりをすることはある。

  

以上は視覚による感情認識であるが、サイコパスは声や手振りからも感情を認識することは無い。女性の恐怖で叫ぶ声、助けてという悲鳴悲しく泣いている声からサイコパスは感情を読み取ることができず、騒音でしかない。同様に、身振り手振りから、サイコパスは感情を読み取ることができない。読み取ったふりをすることはある。特にサイコパスは相手の恐怖の表情や声が他の感情表現より読み取りが困難であることが指摘されている(J.ブレア)。

下の写真を見ると、健常者は、少女に何か悪いことが起こっているかもしれない、どうしたのだろう、何かしてあげられないだろうかと感じる。サイコパスは叫び声を上げて泣く少女の表情や声で感情を動かすことはない。感情そのものが無いといっていい。サイコパスにとって少女の叫び声はうるさい騒音でしかない。あるいは、後で述べるような、失われた感情機能を一瞬呼び戻す麻薬のような快感のものになっている。

 

サイコパスは情動(感情に基づく行動)中枢である扁桃体とともにミラーニューロンと呼ばれる、他の人の感情を鏡のように映し出す機能が損傷している。M.ストーンはカリフォルニア刑務所の凶悪殺人犯300人の脳をfMRIで調べ、感情を豊かにする扁桃体が一般の人と異なる反応すると共に、ミラーニューロンが反応せず、あたかも存在しないかのようであることを確認している(「殺人犯の心理学」スカパー,ディスカバリーチャンネル)。サイコパスは人の気持ちを共感する領域が機能不全である。そのために相手の恐怖の表情や声から何も感じずに殺害することができる。

 サイコパスが共感しているふりをすることは、たとえば左足に障害がある場合に健全な右足が左足をかばうように、左足の負担を軽減するように振舞うのと同様に、脳の機能不全の部位を他の部位がかばうように働くと考えられる。この働きは機能不全の代替をするのでなく、機能不全が分からないように取り繕うように働く。サイコパス本人が意図的に「ふりをしている」というより、自然に行っていると考えられる。このことはサイコパスを健常者と誤認しやすい理由のひとつである(J.ブレア)。

写真の出典

笑顔の写真左、笑う少年:Is Laughter Contagious?(笑いは伝染するか)By PAUL JAMES CASSANOより

http://www.personal.psu.edu/afr3/blogs/siowfa13/2013/12/is-laughter-contagious.html

笑顔の写真中、笑う赤ん坊:Make Baby Laugh. By China Creative Technology Corporation

https://itunes.apple.com/ms/app/make-baby-laugh/id512169350?mt=8

笑顔の写真右、笑う少女二人:Wikipedia Humor (positive psychology)

http://en.wikipedia.org/wiki/Humor_(positive_psychology)

悲しい写真左上:Warner Sale Brings Sadness

http://www.waynerosso.com/2011/05/11/warner-sale-brings-sadness/

悲しい写真右上、帽子の少女:Carta de um bebe、CARTA DE UM BEBÊ

http://amadobebezinho.blogspot.jp/2013_03_01_archive.html

悲しい写真左下:Family Counseling Center

http://familycounselingcenterutah.com/personal-and-family-crisis/

悲しい写真右下:「サイコパス」(J.ブレア他、星和書店、2009年、p75、図4-1)

不安の顔:Body Language Experts

http://www.bl-expert.com/tag/eyebrows/

泣き叫ぶ少女:Tackling ‘Terrible Twos’ by Caitlin Vinner - Leave a Comment

http://my10online.com/2011/10/tackling-the-terrible-twos/

表情の変化の写真:出所不明

1.3児童虐待の例とサイコパスの虐待の特徴

死に至らしめるほどの児童虐待はサイコパス傾向の強い人の行為である。健常者はどんなに経済的に苦しくても、複雑な恋愛状況が係わっていても、子供の表情や声などから苦痛を共感し、たとえ叩く程度のことはあっても激しい虐待に至る事は無い。骨が折れるほど、内臓破裂が生じるほどの暴力を毎日のように繰り返すことやじわじわと餓死させることや80度以上の熱湯風呂に入れるようなことは、健常者にとっては自分の感情をどのように解きほぐしても、その片鱗さへ見る事ができない。健常者には自分の延長上でサイコパスを理解することができない。全く別の領域がサイコパスの世界である。それはサイコパスが重篤な扁桃体と関連部位の機能不全の病気のために生じているからである。下記は極めてサイコパスの程度の強い児童虐待事件の3例、要点のみ。

秦野市小学1年生女児虐待死事件2013(日経新聞など):殴る蹴るの暴行。夜に外へ締め出す。風呂場の水に顔をつけ、シャワーを顔に息ができないほど掛け、苦しがっていた。蹴り上げた時に、頭を強打し死亡。遺体は雑木林に遺棄。小学校へは一度も行くことは無かった。

西淀川区小学4年生女児虐待死事件2009(ウイキペディア):木刀などによる連日の殴打と食事や水が制限され、冬にベランダで薄着のまま寝ることが強要され、衰弱死。女児には喘息の病気があったが薬は与えられることがなかった。

尼崎市小学1年生男児虐待死事件2001(ウイキペディア):ゴルフクラブで殴打、両鎖骨骨折。食事を十分与えられず、深夜にトイレ前に正座をさせられ、生の素面を口に突っ込まれた。両親が外出時には紐で縛り声を出さないよう口に粘着テープ。頭への回し蹴りで脳内出血死亡。遺体はごみ袋に入れ川に捨てられた。                                                                           

サイコパスには相手の恐怖の表情・声や止めてほしいという身振り表現の意味が認知できない。泣いて、「やめて」と叫ぶ子供の声は、騒音でしかない。「うるさい音を出すな」とさらに激しい暴力になる。遺体遺棄は、遺体となった相手との共感が存在しないので、罪悪感なく行うことができる。上記3例の赤字部分は、サイコパスの特に特徴的な行為。相手がどうなるだろうかと調べているかのような行動、認知行動を取る。この異常な認知欲求がサイコパスの行動の特徴の1である。これは、扁桃体が生物欲求の根源的な部位を占めていることから生じているが、これについては後で述べる項目「1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動」の「K・B症候群」の項目(2)に相当する。サイコパスが並外れて凶暴である、より重要な理由は後の項目「1.18サイコパスが邪悪で暴力的である根本原因」で述べる。 

(以下は2014/11/18に追記)他者の表情から感情を読み取れないことは、サイコパスだけでなく、反社会性人格障害や自閉症の人にも見られる症状ですので注意してください。それらはサイコパスとは全く別の障害です。反社会性人格障害は、本シリーズの『その2』「1.8 サイコパスと反社会性人格障害やその他の犯罪の違い」、『その3』「1.11 サイコパスの統計的特徴」を、自閉症は本シリーズの『その3』「1.15(4)サイコパスと他の精神障害の関係4)サイコパスと自閉症」を参照してください。映画「凶悪」はサイコパスと反社会性人格障害との違いが混同されており、この違いを表現できればより深い、重厚な作品になったと思いますが、できていません。また原作はそのために必要な素材を十分に含んでいます。

以下(その2)へ続く。テッシーでした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする