(その3)の続き。
1.16サイコパスの存在は、人種、民族、文化、時代の違いは無い。
サイコパスは人種、民族、文化、時代によらず、人類に共通して、一定割合で存在すると考えられる。
サイコパスの評価チェックリストPCL-Rによると、白人、アフリカ系アメリカ人、先住アメリカ人の男性犯罪者はほぼ同様の心理特性である(J.ブレアP27)。
アラスカ西岸のエスキモーのユピック族にサイコパスに相当するクンランゲタ(Kunlangeta)という言葉がある。『何度も何度も嘘をついたり、人をだましたり、物を盗んだりし、・・・多くの女性の身体を食い物にし、・・・叱責されても気に留めず、罰を受けるために長老のもとへしょっちゅう連れて行かれる男』を表す。1976年当時ハーバード大学に籍を置いていた人類学者J.M.マーフィはあるエスキモーに通常どのようにクンランゲタに対処するのかと尋ねたところ『誰も見ていないときに誰かがそいつを氷河のふちから突き落とす』という答えが返ってきた。また、アフリカのナイジェリアではこのような人をアランカン(Arankan)と呼んでいる。地球上のほとんどすべての民族・文化で反社会的行為によって共同体の平和を脅かす人物の存在が記録されている(日経サイエンスK.A.キール、S.O.リリエンフェルド、p6、p20)。
健常者は生後39ヶ月を過ぎると道徳的違反(他者が嫌がる行為)、と慣習的違反(集団の秩序を乱し勝手な振る舞いの行為)の違いを識別できるようになるが、これは民族・文化において違いは見られない(J.ブレアp79)。サイコパスは子供でも、成人でも、道徳と慣習の識別課題の成績が非常に悪い。サイコパスは道徳的違反では被害者に言及することがほとんどなく、道徳的違反を禁止する規則が無くなることを想定すると道徳と慣習の識別がほとんどできない(J.ブレアp80)。子供のサイコパス傾向は生後39ヶ月過ぎ(3歳児程度)から、すなわち扁桃体の機能不全は3歳児程度から表面化し始める。サイコパスは健常者なら3歳になれば適切にできる道徳と慣習の識別課題を、成人になってもできない(J.ブレアp81)。約3500組の双生児調査の結果、サイコパス傾向である冷淡さ・情動の欠如の成分は、7歳児にすでにみられる。この研究をさらに分析し、J.ブレアはサイコパス傾向の2/3は遺伝的要因で説明できると述べている(J.ブレアp40)。子供のこれらの傾向は、人種、民族、文化に共通で、サイコパスの存在は人類に共通していることを示している。人類に共通していることから、どの時代においてもサイコパスは一定割合で存在したことが推定できる。
注:「エスキモー」という言葉はアザラシなどの「生肉を食べる人」と西欧人が名付けた。主にカナダの先住民はこの名称を嫌い「イヌイット=人間」という言葉を使うようになったが、自分たちの食文化に誇りを持ち、「エスキモー」という言葉を受け入れることが、特にアラスカ地域で見られるようになったので(放送大学講座「文化人類学」)、ここでは「エスキモー」としている。日本人も魚を生で食べるということで、西欧人には卑下するものがいた時代があった。サイコパスが食欲系の欲求異常、K・B症候群の項目(2)で内臓を生で食べるのとは全く別の次元。
1.17 扁桃体の位置と具体的機能とサイコパス
(1)扁桃体の位置
下図の赤いところ。脳の奥深くに位置し、爬虫類や魚類にもある動物の生存に必要な基礎的な機能を持ち、周辺の脳機能と密接な関係がある。
図の出典:銀座のアトラスオーソゴナルカイロプラクティック:ヘルシー・ラボ
http://www.ryju.jp/name-search/mental-illness/152(2014、3/6閲覧)
(2)扁桃体の構造と具体的機能とサイコパス
機能的に下記3つの部位に分けられる。個別の機能は全体に密接に繋がっている。「K・B症候群」は前述の項目「1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動」参照
1)基底外側部:食欲、性欲に関与=サイコパスの気持ち悪いものを食べるたり、異常な性行動は、ここの機能不全「K・B症候群」項目(2)(4)と関連が示唆される。
2)皮質内側部:対象物の意味を判断、認知欲求の源=サイコパスが奇怪な認知欲求を示すのは、ここの機能不全「K・B症候群」項目(3)と関連が示唆される。
3)中心核:恐怖など過去の経験に基づく反応=サイコパスが恐怖を感じられないのは、ここの機能不全「K・B症候群」項目(1)と関連が示唆される。
3部位はさらに6つの核に分かれる。下図参照。大脳皮質/感覚神経や嗅球(臭いの感覚神経系)と相互に連絡しており、視床下部や脳幹の自律神経中枢に線維を出しており、自律神経の調節に大変深くかかわっている。サイコパスの特徴に成人になっても夜尿症(寝小便)が見られることがある。扁桃体の機能不全が排尿の自律神経に影響したためと考えられる。J.R.ウェーバー(John Ray Weber)は泣き叫ぶ女性に拷問を加え、性器を焼き、乳房に針を打ち、乳房と左足の一部をナイフで切り取り、その後、足で踏みつけて窒息死させているが、成人になっても夜尿症である(M.ストーンp245)。女子供52人を殺害し、内臓を生で食べたロストフの殺人鬼アンドレイ・チカティロ(Andrey Romanovich Chikatilo)は慢性的な夜尿症である(ウィキペディア:「アンドレイ・チカティロ」)。アンドレイ・チカティロの写真は本シリーズの(その6)参照。サイコパスはいろいろな自律神経系の問題を抱えているのではないかと推察される。寝小便は将来サイコパス犯罪者となる幼少時代の手がかりの3特徴(放火、動物虐待、寝小便)の1つである(M.ストーンp179)。尚、サイコパスとそうでない人の夜尿症の割合の違いを調べたデータは今のところない。サイコパスでなくても、膀胱の病気やストレスなどから夜尿症を発症する場合があるので、夜尿症だけでサイコパスだと考えることがないようにしてください。
図の出典:ネット:大脳辺縁系(2014.3/3閲覧)http://shutoku.fc2web.com/special_subjects/3rd_grade/D7/D7/limbic_system.html
1.18サイコパスが邪悪で暴力的である根本原因
(1)基本的な考え方
扁桃体の機能不全が原因であるが、機能不全であるとなぜ邪悪になり暴力的になるのか?K.A.キール、J.ブレア、M.ストーンはまだ回答に至っていないようなので、私が考えた。おそらく、極限の恐怖の表情や叫び声で機能不全の扁桃体がわずかに反応するのではないかと思われる。このわずかな扁桃体の反応が麻薬のように快感として作用するのではないかと私は考える。麻薬の快感が切れた時に再び快感を求めるように、サイコパスは邪悪な行為を繰り返す。麻薬患者が麻薬以外に関心がなくなるのと同じように、サイコパスは邪悪な行為が最大の関心事になる。機能不全の扁桃体のわずかな反応にすべてを注ぎ込む。扁桃体が反応するまで、より刺激的な拷問や暴力へとエスカレートする。相手が苦しみ悶えれば悶えるほど、恐怖で悲鳴を上げれば上げるほど、自分が暴力をふるって興奮すればするほど、扁桃体が反応し、サイコパスは生きている感覚を束の間だが少しだけ取り戻す。サイコパスの邪悪な行為は、病気の症状から、少しでも逃れようというあがきでもある。14人を殺害したR.ラミレス(Richard Leyva Ramirez)は言う「人殺しがたまらなく好きなんだ。人が死んでいくところを見るのはほんとにいい。俺が頭を打ち抜いてやると連中は身をよじってさ。血がドッと流れるのもいいね」と(M.ストーンp192)。70人近くを殺害したトミー・リン・セルズ(Tommy Lynn Sells)は「喉を切り裂き大量の血が流れるのを見ると『アドレナリンがドッとめぐる』のを感じる。それで何週間かは腹の虫が治まるのさ。だが、再び殺しの『一服』が必要になる」と話している(M.ストーンp209)。サイコパスは記録を残す。サイコパスは、被害者の叫び声や人体を切り刻む場面をビデオなどで記録しているものが多い。M.ストーンが調べたサイコパス約600人の内70人以上が記録を残している。虐待を行うサイコパスでは半数が記録を残す(M.ストーンp198、p281)。記録を使って思い出し、扁桃体の反応を、後でじっくり繰り返し味わうためであろう。記録を残すところに、殺すことが目的でなく、自分自身への刺激のためというサイコパスの本質が見える。サイコパスの邪悪な行為はわずかな扁桃体の反応を求め、生きている感覚を少しでも取り戻そうとする悲しさがある。サイコパスは、刑務所に入っても刺激を求める衝動は消えず、刑務所の中で他の受刑者を殺害することが見られる(M.ストーン)。
サイコパス犯罪者となる幼少時代の手がかりの3特徴に、自律神経不全による寝小便以外に、放火と動物虐待がある。放火は燃え広がる火の危険が、安全欲求の扁桃体部分を反応させると考えられる。猫を切り刻んだり、犬を絞め殺したりする動物虐待は、死や恐怖に対する安全欲求や対象を認知する認知欲求の扁桃体部分を反応させると考えられる。
放火犯は、中学生など比較的若い人が多い。性的虐待などを行い殺人罪で終身刑を受けたエドワードは、12歳の時に自宅の各部屋にたびたび放火し、母親は直ぐ消せるように各部屋に消化器を置いた。また、猫や犬を殺している。デート中の男女を次々殺害した「サムの息子」と言われたD.バーコウィッツ(David Richard Berkowitz)は10代に1488件の放火をし、猫に火をつけたり、犬に石をぶつけたりの動物虐待をしている。「ボストン絞殺魔」のA.デサルヴォ(Albert DeSalvo)や「グリーンリバーの殺人鬼」のG.リッジウェイ(Gary Leon Ridgway)も少年期に動物虐待をしている(M.ストーンp179)。前項(2)で成人しても夜尿症があると述べた邪悪度22のJ.R.ウェーバー(John Ray Weber)は、4歳で放火を始め、15歳を過ぎると犬を絞め殺している。
サイコパスの精神における、うれしい・悲しい・怖いなどの感情を喪失した空虚な状態は、生きていること自体が無味乾燥で何の意味も見出せず、心から笑うこともない底知れない無力感に襲われている状態と思う。他者が喜んだり、悲しんだりしているのを見ても何も感じない。サイコパスにとっては、強烈に邪悪で刺激的な行為が、衰弱した扁桃体をわずかでも反応させることができ、空虚な状態から脱出する唯一の方法、生きていることを実感する唯一の方法に思えるのであろう。健常者には、サイコパスのこの「完全な空虚さ」「心の真空状態」を推測、共感することは不可能かもしれない。
サイコパスがどのような状態の病気であろうと、その邪悪性は全く同情の余地は無い。せめて、サイコパスの病気解明に貢献してから、どうしても更生の可能性が無く、裁判の結果、止むを得なければ処刑せざるを得ないであろう。サイコパスにとって、法律は破るためにあり、他者は、いじめ、傷つけ、操り、殺すためにある。病気解明に貢献しなければ、彼らは処刑されるために生れてきたことになるのではないだろうか。サイコパスは恐怖感情が衰弱しているので、処刑を健常者ほど恐ろしいと感ずることは無い。時々処刑を望むほどである。なぜ生まれながらにサイコパスのような扁桃体の機能不全が生じるのかはまだ解明されていない。
(2)日本の比較的情報量が多い酒鬼薔薇聖斗事件の例で説明する。
当時14歳〔1997年〕のA少年は、小学校5年頃から猫を20匹は殺し、手足や首を切断、舌は切断してビンに集めるなどの動物虐待、他の生徒の靴を隠して燃やすなどの放火、何もしていない生徒の頭を叩く、ナイフで他の生徒の自転車のタイヤを切るといった行為を行い、サイコパスの兆候が見られる。
女児をクッションハンマーで殴打重傷。女児を金属ハンマーで殴打殺害。女児をナイフで刺し、胃を貫通する重傷。いずれも弱いものを狙い相手に対し手加減しないサイコパスの特徴的犯行。合計児童2人殺害、3人を重軽傷にしている。最後に殺害したのは弟の同級生である。首を絞めるなどしてもなかなか死なないので、靴の紐を解きそれで後ろから馬乗りで絞めた時にやっと死んだ。その後、鋸で首を切断し、頭をビニール袋で運んだ時に溜まった血を飲んでいる。切断した頭部の両目にナイフを突き刺し、2、3回ずつ瞼を切り裂いた。口にナイフを入れ、耳に向けて両側とも切り裂いた。このとき、性器に触れることなく射精している。
健常者にとっては意味不明な行為であるが、サイコパスにとっては相手を殺害することが目的でなく、自分の機能不全となり破壊された感情・欲求が一瞬反応すること、この生命の叫びが生じる瞬間を得ることが目的になっている。この生命の叫びの反応刺激は、繰り返し味わいたいと思うことでいろいろ工夫をする。A少年は、殺害の時の刺激を再現したくて他の所へ頭部を運びじっと眺めている。また、「興奮をあとで思い出すため」舌を切り取ろうとしている。死後硬直でかなわなかった。小学生の頃、猫の舌を切り取って集めたことを想起させる行為。頭部を持ち帰り、風呂場で髪の毛を持って洗っている時と、頭部を学校の正門に置き、5分程度じっとしばらく眺めた時に性器に手を触れずに勃起し射精をしている。おそらく、機能不全の扁桃体が反応し、感情機能がわずかに蘇った瞬間なのではないかと思われる。この勃起と射精は扁桃体の性欲機構が破壊されていることと自律神経の障害から生じているのではないかと私は推測する。当時少年は女性には全く興味が無いと言っている。(以上の事件に関する主な情報源はウイキペディア「神戸連続児童殺傷事件」)
A少年は前項「1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動」で述べたK・B症候群のどの項目も発症している。A少年の行動はサイコパスによく見られる特徴で、特別なものではない。以下は私の推測。A少年は周りのみんなが大笑いしている時にも、悲しくて泣いている時にも、激しく怒っている時にも何も感じない。周りの人との一体感は何もない。大笑いしている人は、騒音を出す歪んだ顔の人としか思えない。また、自分自身が大笑いすることも、死ぬほど悲しいと思うことも体験することはできない。心の真空状態になっていることは、自分でも気が付かない。ただ、動物虐待や放火をした時や残虐行為をした時に、感情機構がわずかに息を吹き返し、反応する。反応するだけで、健常者の感情とは異なる。だが、反応するだけでも、神経系やホルモン系が活動し、生きている実感を束の間だが味わうことができる。サイコパスにとって、この束の間の充実感は、扁桃体の病気からの生命の悲痛の叫びである。生存欲求の原点とも言える部分での反応なので、サイコパスが味わっている興奮は、麻薬などと同じかそれ以上に強烈な感覚なのではないかと推測する。その強烈さのため、再犯性が強いと考えられる。
尚。ネット情報で信頼性は疑問があるが、首を切断された被害者の少年の母親は、事件後1年近く泣き続け、布団から出られず、記憶喪失に至ってしまったとのことである。再び述べるがサイコパスに同情の余地はない。
(3)2つの誤った見解
1)有名な精神分析医フロイト(Sigmund Freud)(1939年没)はサイコパス(残虐、サディズム、悪意、破壊)を観察し、異常な人肉食や残虐性に、人間の本質が潜んでいると誤って理解した。フロイトの時代はまだ脳内部の働きを観察できなかった。21世紀の科学ではっきりしたのは、本質が潜んでいるのでなく、本質が破壊されてしまっている病気だと言うことである。米国心理学会の会長を務めたA.H.マズロー(Abraham Harold Maslow)は「フロイトは、異常な人を観察して、健常者の人間の本質を探ろうとしたために誤った。健常者の本質は健常者を観察しなければならない。」(「人間性の心理学」A.H.マズロー、産業能率出版部、1987)と述べている。健康な精神構造を把握することにより、病気となった精神状態を把握できる。病気の精神状態から、健康な精神構造をより深く理解することができる。健常者の精神構造については別に機会があれば述べる。とりあえず、サイコパスの対極と捉えればよい。
2)「サイコパスは人間の野獣性が表面化した」と言うのも事実でない。人類は出発点から、ライオンのような野獣としての生活をしたことが無い。逆に、野獣から逃れ、弱いものが共同体を作って生き延びてきたのが人類進化の歴史である(「人類史のなかの定住革命」西田正規、京都大学自然人類学出身、講談社2007、pp206-220)。
1.19サイコパスの更生の可能性
前項「1.15(1)サイコパスと年齢の関係」で述べたマカファティ(Archibald McCafferty)のように自分が異常だと知って、自ら精神病院へ行くような人、何とかしたいと思ったサイコパスには更生の可能性がある。マカファティは9歳で犬やネコを絞め殺し10歳には監獄や矯正施設を出たり、入ったりしたサイコパスである。だが釈放された中年期、60歳には明らかに更生している(M.ストーンp123)。何人もの少年の首を絞め断末魔の叫びを録音していたイアン・プレイディ(Ian Brady)は服役し40年がたち、人間性が以前より目立つようになった、と面会したM.ストーンが述べている。全体に邪悪度レベルが低いサイコパスほど、人間性の回復が見られる(M.ストーンp306)。だが、サイコパスは更生したふりをするので、専門的な対処が必要。
酒鬼薔薇聖斗事件を起こした当時14歳〔1997年〕のA少年は現在31歳になっている。いろいろなネット情報を見ると、多くの人の尽力で、更生の道を歩むことに成功しているようである。サイコパス凶悪犯の多くは30歳前後から一層凶悪度を増しているので、扁桃体が求める刺激の誘惑に負けずに、このまま更生の道を進んでいくことを願うばかりである。A少年のような典型的なサイコパスの更生は、社会全体にとって大変貴重な経験を積み上げることになると思う。
1.20健常者のサイコパス化の危険
健常者が他者の精神状況(感情)を自らの精神状況に映し込もうとするミラーニューロンの作用、共感する作用は衝動的で強烈なものがある。このミラーニューロンの一体化作用は人間が共同体社会を形成する根源的な能力として遺伝子の中に強く刻み込まれていると考えられる。サイコパスにはこの作用が無い。このことから、サイコパスと健常者とが接触すると奇妙なことが起こる。健常者がサイコパスの行動や空虚な精神を映しこもうとする。サイコパスは健常者の感情を映し込むことはないので完全な一方通行の一体化になる。サイコパスには映し込む感情対象が存在しない状態なので、サイコパスを神秘的な存在として、崇めるような一体化になってしまう。結果として健常者のサイコパス化のみが進むことになる。サイコパスと共存すると健常者が邪悪になり暴力的に変化することがある。このことが、最初の項で述べたサイコパスの特徴説明の「他人を操作する。」となる。夫婦間でも片方がサイコパスの場合に夫婦で子供を虐待するようになることがある。また、健全であればあるほど、ミラーニューロンが活発でサイコパスに利用され易い。サイコパスの「寄生的ライフスタイルを送る(他者の収入などを奪う形で生活をする)」に手を貸すことになる。健常者が複数の場合、サイコパスを核として、集団を形成することがあるが、極端な場合には集団全体として暴力的になり、猟奇的になる。このような集団を「サイコパスまんじゅう」と名付けておく。中心にはサイコパスの黒いアンがあり、周囲は健常者の白い皮で覆われ、全体としてサイコパスとなっている。得体の知れない新興宗教集団にはこのような「サイコパスまんじゅう」が見られるが、身近な小集団にも集団でレイプをするなどしばしば発生する形態である。核のサイコパスが除かれると、周辺の健常者はたちまち正常に戻る場合が多い。サイコパスに同化してはならない。サイコパスに同情の必要はない、サイコパスは同情に対し応えることはなく、逆に同情に付け込んでくる、たちの悪い存在だと肝に銘じておく必要がある。
1.21戦争、内乱、政治的テロでのサイコパス。
「妻を殴り、子供を虐待してきたサイコパスにとって、戦争は普通の市民の仮面の下に隠してきた加虐性を発揮する絶好の機会になる(M.ストーンp283)」。サイコパスにとって戦争、内乱、政治的テロの現場は、水を得た魚のように、誰からもとがめられずに思う存分残虐な行為ができる場になる。恐れを知らない勇敢な戦士として、持ち上げられることさえある。また、前項で述べた「サイコパスまんじゅう」が至る所で形成され、戦場だけでなく、国内の軍隊内や治安警察の現場でも生じ易い。現在のいろいろな紛争でサイコパスの凶行と「サイコパスまんじゅう」が生じ易いと考えられる。軍事理論上は、サイコパスが行うような残虐な行為は敵や市民の反感を買い、戦略上得策でないとして押さえるように考えられているが、実際は軍事理論通りにはなかなかいかない。米軍のイラク人捕虜を収容したアブグレイブ刑務所で2004年に発覚した大規模な虐待は「サイコパスまんじゅう」が形成されていたと考えられる。1800枚の写真とビデオを含む6000ページ(マスコミには53ページしか示されなかった)に及ぶ米国陸軍の秘密報告書は米議会で非公開で議員たちに披露されたが、それは議員達の顔色が変わるほど悲惨なもの。米国人看守らに性的虐待を受けた多くの女性収容者は釈放後に自殺したり家族に殺されたりしたと報じた。米誌『タイム』(2004年6月28日付け)は100人以上の子供が拘留され性的虐待をされていることを報道した。2006年にオーストラリアのSBSは拷問、暴行を示す新たな写真や映像入手し、露骨すぎて一部放映を見送った。イスラム・メモ通信員は、約4500人の収容者のうち毎月4、5人が死んでいると伝えた。下の写真は頭巾を被せ、指先と性器にワイヤーを繋げて電気拷問を行ったときのもの。写真にワイヤーが見える。性器は火傷し、出血する。その部分の写真はとても載せられない。拷問で何か情報を得ることのためでなく、拷問自体が目的になっている。サイコパスの存在が強く示唆される。
以上写真も含め情報元はウイキペディア「アブグレイブ刑務所における捕虜虐待」
捕虜への虐待は近代国際法(ジュネーブ条約)で禁止され「第十四条〔捕虜の身体の尊重〕捕虜は、すべての場合において、その身体及び名誉を尊重される権利を有する。」と示されている。違反すれば戦争犯罪として裁判を受ける。私は自衛隊幹部と直接話す機会があったが、日本の自衛隊は、捕虜の虐待禁止関係を徹底的に教育しているようである。だがサイコパスの存在が問題となる。サイコパスは教育訓練では直らない。影で、陰湿に、狡猾に行うようになりうる。
以下(その5)へ続く。テッシーでした。