横浜映画サークル

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-11)北九州監禁殺人(5/6)絶望とサイコパス化の関係他

2016-05-13 18:17:53 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

その(4-10)の続き。

文字数制限で前のページの表の注からになります。見づらくてすいません。

*1:松永の元妻は殺されずに生存している。元妻にたいする暴力は恋人時代から。子供ができてからも止まらず、警察署に駆け込みDV被害申請し、紹介された相談所に隠れ住んだ。松永は居所を突き止めようとしたが、市役所が住民票を移さないまま子供の転校等を特別に許可するなどで難を逃れ2か月後に離婚成立。事件発覚後元妻は「もしあの時逃げなければ、私が純子さんのように自分の家族を殺していたかもしれない」と述べた〔ウィキペディア〕。

*2:1980年に高校の同級生であったことから松永の誘いで会う。当初は優しく応対していたが豹変して暴力を振るいだす。1985/2純子が睡眠薬と手首を切り自殺未遂。以後松永のアパートに住まわされ、暴力がひどくなる(p8/42)。自殺未遂の時期は純子が逃げられない絶望を感じて犠牲者の地位から、何も感じない真白化へ移行したと筆者は考える。

*3:純子は松永から通電虐待を受けるようになり、懇意にしていた人を騙してカードを作り、金を詐取。抗議されると逆切れして怒声を浴びせる。昔から純子を知る人は「まるで別人のように性格が変わった」と述べている。純子はこの時期に「自分が自分でなくなる絶望」の状態に入ったと思われ、松永の指示で下位社員に通電虐待を行い始めた。指示に従わなければ純子が通電される(p8/42)。純子は通電虐待から逃れるために真白化から「自分が自分でなくなる絶望」の疑似サイコパス前期へ移行した。もう一人の側近社員も、下位社員へ通電虐待を行っているので、ワールドには疑似サイコパス前期がすくなくても2いたと考えられる。

*4:社員は自分では虐待をしていないが最下位社員が虐待されるのを見ていて何も感じない状態(真白化)に変化していたと考えられる。時々互いに最下位に転落し、虐待を受ける。最後まで残っていた社員3人は虐待に耐えかねて逃走し、殺されなかった。社員への虐待は事件化していない。

*5純子は松永不在時に虎谷へ通電をしているが、指示の範囲を超えていないのでまだ疑似サイコパス

*6沙織は虎谷の死体処理を言われるまま行っており、真白化から疑似サイコパス前期に入ったと思われる。以後沙織はこの段階を維持する。

*7純子は97/4湯布院逃走で捕まり、97/5門司駅で逃走失敗の後、激しい通電虐待にあっており、自分が自分でなくなることから逃れられない絶望、これ以後疑似サイコパス後期に移行したと思われる。松永の指示がなくても、松永を映し込んで行動をする。後期に入る逃げることはしなくなる。と純子は、頻度は少なくなるものの一貫して通電を受けており、サイコパスまんじゅうのアンの位置にはなっていない。

*8理恵子主也の2人は第2の緒方誉殺害では正座して見ており、真白化段階にある。第3の静美殺害では松永のいるところで「隣在の空気』」に従い、殺害の決意と実行をしているので疑似サイコパス前期。第4の理恵子殺害では、主也は松永のいないところで「在の空気』」を察して、「自主的に計画し、決意し、殺害しており疑似サイコパス後期に達したと考えられる。

*9は第5の主也の殺害まで、主に見ているだけ、真白化過程にあったが、殺された父主也を確認し、松永に報告したとき、彩は逃げることのすべての希望を失ったと筆者は思う。最も頼りにし、希望としていた父を失い絶望。このとき完全に真白化し、次の疑似サイコパス前期への準備が完了したと言える。第6の優貴殺害のときに、優貴を助けてと懇願していたが松永の長時間の通電により「そうします」と答え、実行する。この時に自分が自分でなくなる絶望はさらに極まり、言われるままに行動した。彩は初めて殺害実行者になり疑似サイコパス前期になったと考えられる。

*10:松永は、純子に沙織を殺害させた後に自殺をさせ、関係者全員を消す計画だった。計画通りであれば、まんじゅうの皮は消滅し、初期の松永単独期に戻る。すなわちまんじゅうの形成消滅の1サイクルが完結する。その後、再びどこかの家族を同じようにまんじゅう化し、殺害を繰り返したと考えられる。まんじゅうサイコパスは機会があれば無限にサイクルを回し続け、あるいはまんじゅう構造を拡大して殺し続ける。例14「尼崎監禁殺人事件」はサイクルが繰り返され、重層化し、まんじゅうが拡大した例である。

(a) サイコパスまんじゅう形成から衰退の全過程で重要な3

以下の3点。(ⅰ)健常者は絶望を契機にサイコパス化していく、(ⅱ)健常者のサイコパス化移行期間の特徴と絶望の関係、(ⅲ)サイコパスの逆転欲求満足にはサイクル(サイコパスサイクル)がある。

(ⅰ)健常者は絶望を契機にサイコパス化していく

サイコパスは健常者を種々の絶望に追い込むことに強く引き付けられている。絶対に逃がさないということは、逃げようとする健常者を絶望させることでもある。健常者が希望を失えば失うほどサイコパスは逆転欲求を満たす。サイコパスは希望を持った人、将来に向かって努力する人の心、希望をぐちゃぐちゃにし、絶望に落とし込みたいという衝動を持っている。以下絶望を機にサイコパス化へ移行した犠牲者6名を具体的に見る。

純子は‘85/2/13松永から物理的に逃れられない絶望真白化し、自殺未遂をした。ワールド社では「逃れられない」に加え「従わないときの制裁虐待」により松永の命令に従い社員に通電虐待を行っている。この段階で他者を虐待する自分に対する絶望、すなわち自分が自分でなくなる絶望相手を思いやる人間的な心/人間的共感本能を破壊される絶望、で疑似サイコパス前期へ移行した。2回の逃走(湯布院,門司駅)は疑似サイコパス前期から疑似サイコパス後期へ移行することを拒否しようとする逃走である。この逃走の失敗を契機に「他者を虐待する」ことから、すなわち自分が自分でなくなることから、逃れられない絶望疑似サイコパス後期へ移行した。真白化への「逃れられない絶望」と疑似サイコパス後期への「逃れられない絶望」は異なる。真白化は「物理的拘束」から逃れられない。疑似サイコパス後期は他者を虐待する精神的絶望から逃れられない、すなわち疑似サイコパス前期の状態から逃れられない絶望健常者がサイコパスからの逃走行為は異なる質のこの2段階がある。2段目の疑似サイコパス後期になることを拒否して逃走するときは、より深刻な精神状況、人間であることをかけた逃走になる。以上まとめると下記表の通り。表の下段にサイコパス松永からの視点を記している。

 

真白化へ

疑似サイコパス前期へ

疑似サイコパス後期へ

純子

‘80-85松永に従属して約5年たち自殺未遂。物理的拘束と暴力から逃れられない絶望

‘86ワールド社で社員を通電、以来約10年間疑似サイコパス前期。他者を虐待する自分に対する精神的絶望自分が自分でなくなる絶望

第2の殺害から第7までの約1年間は疑似サイコパス後期。疑似サイコパス前期の状態から逃れられない絶望人間でなくなる*1絶望

松永

虐待相手を逃がさない、嫌がることを行い、逆転快を得る

心を破壊する逆転愛情/逆転承認欲求を満足させる。

健常者の完全サイコパス化すなわち高度な逆転欲求満足、逆転快を得る。

 

*1:ここでの「人間でなくなる」という意味は、肉体ではなく精神における人間性を失うこと。すなわち偏桃体を中心に置いた脳神経ネットワークが破壊され、代わりのネットワークが形成された状態=サイコパスの状態になることである。サイコパスは生命の根源の偏桃体が機能しない、人間性そのものを失った病理である。また、疑似サイコパス後期に入ると生きているという状態でないため殺すことも殺されることも抵抗がない。偏桃体機能不全は人間だけで、他の動物には存在しない病理と考えられる〔サイコパス化へ移行の基本的な考え方は本シリーズ(4-4)「10)(d)サイコパスまんじゅう内部での健常者のサイコパス化過程」及び「10) (e)ロボット化とサイコパス化の違い」参照〕

主也、恵理子、静美、彩、沙織の絶望とサイコパス化移行の関係は下記表の通り。

 

真白化へ

疑似サイコパス前期へ

疑似サイコパス後期へ

主也

第2の殺人の時:家族3人(主也,恵理子,静美)正座の前で純子が父緒方誉を通電で殺害したのを見た時。3人とも真白化へ移行した。物理的拘束と暴力から逃れられない絶望

第3の殺人の時:松永同席の強弁「隣在の『空気』」で主也,恵理子の2人が静美の殺害を決意し実行した時に、母親を虐待死する自分に対する精神的絶望自分が自分でなくなる絶望2人とも疑似サイコパスへ移行。

第4の殺人の時:松永不在下の「遠在の『空気』」で主也は妻恵理子を「自主的」に殺害した時に、疑似サイコパス前期の状態から逃れられない絶望

恵理子

殺害され、後期へは移行せず。

静美

殺害され、前期へは移行せず。

*1

叔母静美、母恵理子が殺されるのを見て真白化前期。父主也の殺害を見て、また通電虐待を受けて真白化後期

弟優貴を殺害するときに、激しい通電虐待を受けており、弟を殺害する自分に対する絶望自分が自分でなくなる絶望疑似サイコパス前期へ移行。

殺害され、後期へは移行せず。

沙織

全裸写真を撮られ、逃げたらばらまくことに同意する書類にサイン。「ちくりノート」をさぼると通電受け。ノートを理由に父が虐待されるのを見て逃げられない絶望

第1の殺人で父の死体解体処理を手伝った時。父を虐待する自分に対する精神的絶望。自分が自分でなくなった絶望で疑似サイコパス前期へ移行。

他者を「自主的」に虐待したことはないので、後期の段階に至ってはいない。そのため、疑似サイコパス前期の状態で約2年間いたが、呪縛解放が早かったと思われる。

*1彩の絶望については前の項「(N7殺人の要点まとめ 」の表の注*2を参照。 

次の例14「尼崎監禁殺人事件」では、警察へ何回も駆け込んで、警察が何の役にも立たないという絶望(どうやっても逃げられない絶望)がきっかけになって疑似サイコパスに移行している犠牲者がいる。この事件後警察は不十分だが対応策を打った。 

項目「(ⅱ)健常者のサイコパス化移行期間の特徴と絶望の関係 」と「(ⅲ)サイコパスの逆転欲求満足にはサイクル(サイコパスサイクル)がある」は文字数制限で次の(その4-12)で記述しています。

 以下(その4-12)へ続く。 

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-10)北九州監禁殺人(4/6)まんじゅう形成から衰退まで

2016-05-13 17:16:03 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

その(4-9)の続き。

(N)7殺人の要点まとめ 

下記表のとおり。松永は被害者全員に通電を行っている。通電には殴る蹴るが伴う場合が多い。有機への通電は見ていないと沙織の証言があるが、サイコパスは子供を特別視することはないので筆者は沙織の見てないところで行ったと思う。第3の殺人では、サイコパス同席の、すなわち隣在の空気で子供3人が母親殺害を「自主的」に決意した。殺害実行はサイコパスが見ているところで「自主的」に行った。松永は「自主的」と言う形式で、家族間の心の交流を完全に破壊し、殺し合わせるという逆転愛情欲求の満足を得ている。母親殺しで3人は疑似サイコパス前期になった。第4の殺人ではその場にいないサイコパスの意思、すなわち「遠在の空気』」で、主也と純子が恵理子殺害の決意、計画、実行を主的」に行った。この二人は疑似サイコパス後期になっている。殺害に加わった彩は父親の主也に言われるまま行ったもので真白化状態と考えられる。松永は第5の殺人の主也のみ自分の手で最後のとどめを刺している。他の殺害は疑似サイコパスにした家族に代行させる形式をとっている。元警察官の主也が最も手ごわい相手だった。そのため松永は自分の手で最後の虐待を味わいたかったと思われる。死体はいずれも首が切断され、脳が取り出され、頭の皮が剥され、内臓が取り出された。その状況は詳細に松永へ報告する形式をとっている。バラバラになった死体は、最後は大鍋で煮詰めて近くの公園の便所や海や下水に廃棄された。下記表の死体処理関係者欄の(純子,沙織)は松永が望む処理手順を知っており、「自主的」に緒方家の人々に指示を行った。

 

第1の殺人

第2の殺人

第3の殺人

第4の殺人

第5の殺人

第6の殺人

第7の殺人

外部犠牲者の位置(殺害された人)

虎谷*1

沙織の父

緒方誉*1

純子の父

静美*1

純子の母

恵理子

純子の妹

主也

恵理子の夫

優貴5歳*1,恵理子/主也の子

彩10歳, 恵理子/主也の子

アン

サイコパス松永の役割

純子へ虎谷の通電指示

死体解体手順の詳細指示

純子へ誉の通電指示

死体解体指示

(詳細指示無くても、純子は松永の望み通りに解体する)

静美をどうしたらいいか純子、理恵子、主也に考えさせ、隣在の空気』で殺す結論にする。

死体解体指示

起きるまで結論を出し終わっておけと遠在の空気』で恵理子殺害指示。計画にも実行にも同席せず。

死体解体指示

松永が自分の手で最後の虐殺。

死体解体指示

優貴を助けてという彩を通電し「そうします」と言わせる。純子と沙織に手伝指示

死体解体指示

彩を風呂場スノコに仰向けに縛り通電30分、自殺強要。純子と沙織への自殺幇助指示

死体解体指示

暴力装置

通電(武器)、監禁マンション、逃走防止用の鍵、身体拘束用ロープ、解体用ノコギリなど多くの道具類

まんじ ゅうの皮

純子

殺害概要

純子の通電で虎谷最後の衰弱死。沙織が死体解体手伝い

家族3人(静美,恵理子,主也)が正座の前で純子が誉に通電殺害

純子恵理子が静美の体を押さえ主也が電気コードで絞殺

純子主也が相談し実行。足押え主也が首にコードで恵理子を絞殺

に父の死を確認させ松永へ報告させた。絶望*2

沙織が足を押さえ純子の2人で絞殺

松永「彩は死にたいと言っている」彩がうなずき純子沙織が絞殺

沙織

恵理子

主也

死体処理関係者

純子,沙織

(純子,沙織) 静美,恵理子,主也,

(純子,沙織) 恵理子,主也,

(純子,沙織) 主也,

(純子,沙織) 

(純子,沙織) 

純子,沙織

*1:虎谷、緒方誉、緒方静美、緒方優貴の4名は他者を虐待していず、一貫して外部の犠牲者の位置である。恵理子、主也、彩の3名は虐待する側に回ってまんじゅうの皮を形成するが、順次転落して外部の犠牲者の地位になり、殺害されている。

*2が父主也の死体を確認したとき、がすべての希望を失った瞬間と筆者は思う。元警察官で最も頼りにしていた父が殺された。彩に、この「絶望を与えることが松永の「逆転快」になっている。この絶望と通電虐待によりあれだけ助けてくれと懇願していた弟優貴5歳の殺害を言われるままに行うことになる。また「死にたい」と松永の意志の通りに言わされ、自ら殺されるのを望む。松永の言われるままになる背景に絶望がある。〔「絶望」については本シリーズ(4-11)「(a)()健常者は絶望を契機にサイコパス化へ移行していく」参照〕

(O)北九州監禁殺人事件のサイコパスまんじゅう基本構造

下記表の通り。表の青文字は殺害された7人。真白化の人は他者を虐待していない。疑似サイコパス前期の人は松永のいる前で他者を虐待している。精神病院に入った証人は3か月監禁され、松永の指示で自分の子供を虐待したので疑似サイコパス前期とした。疑似サイコパス前期のものは後期に移行する前にサイコパスから逃走を試みるものがが、この証人も試みて成功し生存した。この逃走は人間であろうとする最後の力である。この逃走に失敗し絶望すると疑似サイコパス後期へ移行し、以後逃走することがなくなるが、純子がそれである。。優貴君5歳は真白化(偏桃体機能停止期)を経ずに殺されたと思われる。

サイコパスまんじゅう基本構造

基本構造内容

北九州監禁殺人事件の基本構造

中心のアン

サイコパス

松永太

暴力装置

通電、監禁マンション、解体道具、電気部屋

まんじゅうの皮         (サイコパスに取り込まれて、サイコパス化したもの。犠牲者に転落する)

疑似サイコパス後期

緒方純子、緒方主也

疑似サイコパス前期

理恵子沙織、精神科の証人、元社員幹部

真白化

虎谷静美、元社員、松永の元妻*1

外部の犠牲者

資産収奪、虐待受

優貴、詐欺にあった人々

松永の元妻については次項表の注*1で説明。純子と松永には2人の子供が生まれたが逮捕時に施設に入った。子供の将来のために本シリーズではこれ以上触れない。他に双子の子供を松永のところで預かっていたが不明部分が多く割愛した。

基本構造の説明とサイコパスまんじゅうの持つ支配の階級構造については本シリーズ(4-4)「10)(f)サイコパスまんじゅうの構造」参照。そこで述べたA)~H)の「サイコパス」を「松永」にして以下に再度記した。

A)階級序列は頂点の松永が必要に応じて自在に変える

B)暴力装置を松永に代わって使うものが松永の右腕として虐待実行の最上位になる。この位置は疑似サイコパス後期者が占める。最上位のものは下位、例えば疑似サイコパス前期のものとともに複数で、外部犠牲者やまだ真白化段階の者を虐待する。

C)B)をまとめれば上位の者が下位の者に対して虐待する。最下位が外部の犠牲者の位置になり、最も激しく虐待される。

D)松永に逆らえば序列の下位に落とされる。「誰かが下位に下がれば他の者は安堵」する(例13北九州監禁殺人事件の公判での純子証言)。「自分より下位が現れて怒られていれば矛先が向いてこないので安心する」(例14「尼崎監禁殺人事件」公判での瑠衣証言)。

E)まんじゅう内部では松永の機嫌を損ねないよう絶対服従するようになる。

F)まんじゅう内部で他者の「問題点」「悪口」を述べれば序列の下位から免れるように仕向けられ、互いが「悪口」を言い合い憎み/憎まれる関係が増幅する【まんじゅう告げ口システム】。「悪口」を言わないものは下位へ落される。「悪口」はどのようなものでもよく、言われた者は制裁虐待の理由に使われ虐待される。【サイコパスは虐待にどうでもいい理由を必要とする】

G)相互の会話を禁じる。盗聴していることを匂わせるなどで、松永がいない場所で逆らう話しをさせない。逆らう話をしたと思われるものは、見せしめに虐待される。

H)以上のため、まんじゅうの皮を構成する人は数が多くても一致団結して松永に逆らうということが無い

(P)北九州監禁殺人事件のサイコパスまんじゅう形成から衰退の全過程

下記表の通り。皮となった犠牲者を全員殺害してサイコパスまんじゅうの1サイクルが終わる基本形である。

 

布団販売社

ワールド社

第1の殺人

第2の殺人

第3の殺人

第4の殺人

第5の殺人

第6の殺人

第7の殺人

時期。( )内は前の殺人からの期間

1983~1986,約3年間

1986~1992,約6年間

監禁約1年後に死亡1996/2/26

1997/12/21,(1年10か月後)

1998/1/20,(2か月後)

1998/2/10,(20日後)

1998/4/8,(2か月後)

1998/5/17,(40日後)

1998/6/7,(20日後)

形態推移

松永単独期

皮形成初期

皮形成中期

皮完成期

同左

同左

同左

皮衰退期

同左*10

アン松永

‘61/4/28生

22-24歳

25-32歳

34歳

36歳

37歳

暴力装置:通電、電気部屋、監禁マンション、拘束道具類、身体解体道具類など

後期

純子*7

純子

純子,主也*8

純子

純子

純子

前期

純子*3、側近社員

純子*5,沙織*6

沙織

恵理子, 主也*8,沙織

 沙織

沙織

*9,沙織

沙織

真白化

純子*2

社員*4

沙織*6

静美, 恵理子, 主也*8

*9

犠牲者

元妻*1純子*2

最下位社員(虐待)

虎谷(殺害)

緒方誉(殺害)

静美(殺害)

恵理子(殺害)

主也(殺害)

優貴(殺害)

彩(殺害)

この表の注*1*10は、文字数制限で、その(4-11)へ続く。

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-9)北九州監禁殺人(3/6)サイコパス対策の基本他

2016-05-13 16:29:59 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

その(4-8)の続き。

(F)第5の殺人:緒方主也38

主也(かずや)は、松永の度重なる通電とひどい食事で度々嘔吐や下痢をし、痩せて飢餓状態となりまともに歩くことができない。ある日一時的に症状がおさまると、外出しレストランで量の多いセットものを注文して食べるように指示され、丼と小さいうどんのセットとメンチカツを食べる。その日浴室に閉じ込められた主也の嘔吐がひどくなった。上半身を起こすことができなくなり、吐いてもすぐに吐き気を催し、吐くものがないのにむせている状態が続く。その何日か後、松永が浴室で眠気防止ドリンクと300ml缶ビールを全部飲ませて1時間後、衰弱死(p15/42)。この際に、娘彩に浴室での父の死亡を確認させ、松永へ死亡報告をさせた。父親が死んだのは以前彩が父親とけんかした時に「死んでしまえ」と言ったからだと言い聞かせた。主也と彩のけんかも松永に無理やり作られたもの。【父と娘の心の交流は完全に破壊された】。純子は日々悪化する主也について「死亡2日前には病院に連れていかないと死んでしまうと思ったが、母静美の時に病院に入院させる提案が松永に拒否されたので、病院に連れて行こうと考えなかった」。松永の意に沿わない提案をすると通電される。公判では主也の死因は「高度の飢餓状態に基づく胃腸管障害による腹膜炎」と考えるのが妥当とされた。この松永の行為は「監禁し食料を与えず虐待して死んでいくのを見たい」というサイコパスの逆転認知欲求そのものである。死体は純子と娘彩が第1の殺人虎谷と同様に解体処理。純子は解体時に「腹腔内に濃い緑色の液体が広がっており、何かが腐敗するような重たい感じのするにおいがした」と述べている(論告書p15/42)。

(a)元警察官主也がなぜ小柄な松永に屈し、家族を殺し、自らが殺されることになったのか。

腕力でも、会話力でもない。根本原因は主也がそれまでにサイコパスのような人に会ったことがないこと。最初、義理の姉純子が犯罪をしていると聞き「松永にたぶらかされているに違いない」と松永の所へ直談判に行き初めて会い、取り込まれた。正義感が強いものが取り込まれるのは、次の例14「尼崎監禁連続殺人事件」の主犯角田美代子のところへ谷本隆が直談判に行き取り込まれて虐殺されるのと同じ。主也は以下のステップでサイコパスに屈した。虎谷が屈したのと同様のステップであるが、前項「()(b)虎谷久美雄を逃げられなくした松永のアプローチ法」はサイコパス側から見たものである。ここでは、同じステップを主也、犠牲者側から見ることにする。

・ステップ1懐柔期話し合いの努力が無駄になり、逆に利用される時期。相手がどんな人物か探りを入れ、話合える関係にしようと、人間的関係構築の努力の直談判。今までにサイコパスに直面したことがないためサイコパスの巧みなウソ話をまともに聞き、信用できると誤って把握。酒を飲まされ長時間、何日にも亘る話し合いの間にサイコパスの誘いに乗って自分のたわいもない弱点を話す。「農協から30年住宅ローンを借りている」「跡取りなのにまだ土地の名義人になっていない」「妻の理恵子が夜に外出する」などを掴まれる(p14/42)。自分が本音を話せば、和気あいあいの関係になれば、サイコパスも本音を話してくれると、勝手に思い込んでいる状態。サイコパスの本音は一般的には健常者に理解不能。いつまで話し合っても結局サイコパスの本音が全く分からない。弱点吐露と人間的な交流関係ができないことがはっきりする時期。サイコパスから見れば弱みを掴む時期。たわいもない弱みは次のステップで強弁のネタへと変貌していく。また「義理の姉純子が1年前に虎谷を殺した」(実は松永が殺した)ということを口外していいのかという事も弱点として利用された。

・ステップ2、ステップ3(懐柔、豹変の繰り返し)理解不能、思考停止(真白化) :虎谷や緒方誉と同様に強弁長時間拘束眠らさない3大手法をまともに受けたと思われる。「妻の理恵子が夜に外出する」では松永が離婚する旨の「事実関係確認書」を作り、サインさせられた。「土地の売却を親族に邪魔された」「妻の首を絞めて殺害をもくろんだ事実を認める」など何通もの「事実関係確認書」*1にサインさせられた。離婚については、カセットテープに離婚の告白を録音させられ、両親にも異議がないことを言わせ録音させられた(p13,14,15/42)。主也は夫婦の心の交流を完全に破壊された。虎谷が娘沙織を人質に取られたのと同様、主也は子供の彩と優貴の二人を松永のマンションに人質に取られた。もはや、がんじがらめ。主也は言われるままに動くロボット化へと向かっていった。サイコパスから見ればステップ2弱みの実体化(書類化)とステップ3弱みの拡充時期。情報元の「Googleドキュメント」では主也は「心理的ダメージ」により屈服した(p14/42)としている。筆者は、それだけでなく、弱点をいつまでも突き続ける「心理的ダメージ」とともに3大手法の「肉体的ダメージ」により主也は完全に屈服したと分析する。サイコパスは屈服するまでいつまでも3大手法を続ける。主也は松永がなぜ弱点を大げさにして脅してくるのか今までに経験したことのない異常さで理解不能になり、なぜ長時間拘束され、眠らないで同じことを何度も言われるのかわからないまま、頭が真っ白の状態になって、あれよあれよという間にがんじがらめになり、逃げられなくなった。真白化前期

松永は主也の悪いところを緒方誉、静美と恵理子から聞き出し、それを「理由」(カラ理由)に使い通電をし始める。それぞれから悪口を聞き出し全員へ通電するようになった。互いに、あいつが「こんなことを言うから通電される」と憎しみ合う。家族内の心の交流が完全に破壊された。沙織に「父親虎谷の悪いところを10個書いて報告しろ。そうしないと電気を通す」として、虎谷を通電する「理由」(カラ理由)を作り出して親子の心の交流を破壊したのと同じ方法。【松永にとっては通電による虐待とともに、告げ口と通電を組み合わせて家族の心の交流を破壊することが逆転愛情欲求を満足させる。】〔逆転愛情欲求については前項「3)サイコパスの逆転愛情/逆転承認欲求」参照。注*1:情報元で書類の名称が虎谷の場合は「事実確認証明書」と異なっているが、この違いに意味はない。〕

・ステップ4(懐柔、豹変の繰り返し)金銭提供と虐待受け:松永に全く逆らえない真白化後期になり暴力装置の通電を日常的に受ける。農協から金を借りては渡し、取られた金額は約6300万円。この段階では義理の父緒方誉や妻理恵子を松永に言われるままに殴るようになっており、疑似サイコパス前期に移行している。恵理子の殺害では松永に言われなくても実行しており疑似サイコパス後期へ移行した。土地を売るよう動いたが、不自然さが出て警察が動き始めたことを松永が知り、土地は売られなかった(p14,p15/42)。松永の冷静な判断が働いていることが分かる。【松永型サイコパスは、大脳新皮質は『優秀』に機能しているので逆転欲求満足を追求できない状況に対しては、じっと耐える冷静さがある】

・ステップ5、ステップ6(満足期)虐待の本格化と死体解体:借金もできなくなると衰弱死するまで虐待され、死亡後は解体された。内容はこの項「(F)第5の殺人:緒方主也38歳」の始めに記した通り。

(b)主也の対応の誤りとサイコパス対策の基本

主也の対応の根本的誤りは、サイコパスを自分の延長上で理解しようとしたことである。一般的には健常者にサイコパスの行為は理解できない。このことは『サイコパス対策の根本はサイコパスがどのような特性を持つか、健常者が理解できるようにすること』であるということを示している。腕力で勝る主也が松永に抵抗できなかった根本原因はこの項の始めに記したようにそれまでにサイコパスのような人に会ったことがないこと。今までに経験したことのない徹底的な嘘と人が困ることを好んで行い、人を殺害することに何の抵抗もないサイコパスの底知れぬ恐ろしさである。主也はサイコパスの実態に圧倒されて何もできなかった。もし、ルールを決めて戦えば主也が勝つが、サイコパスにはルールがなく手加減がない。健常者はこれ以上やれば関節が折れるとか目を突けば見えなくなるなどで本能的に手加減をする。サイコパスは相手の目がつぶれようが、関節が折れようが、死のうが全く気にしないで攻撃する恐ろしさを持つ。また、武器や毒物などを平気で使い、寝ている時など相手が抵抗できない時を襲う。サイコパスは自分が死ぬことに恐怖がないので躊躇することなく徹底的に相手の弱い所、例えば目を攻撃する。サイコパスの特性を知らずに対峙した健常者は暴力による闘いをする前に、この恐ろしさのために凍り付く。例14「尼崎監禁殺人事件」の角田美代子は女性サイコパスであるが、大の男が美代子の「やるなら殺すまでやって見ろ。殺すことが出来ないで、大きいことを言っているな」と怒鳴る迫力に圧倒され、凍り付き、最後は美代子に虐殺された。

直談判で説得しようとしてもサイコパスは説得を全く受け付けない。人から説得されるということ自体が存在しないサイコパスは相手を理解して全体で物事を考えることがないので、自分の言いたいことだけを、威圧的に連射するだけになる。「元警察分際で偉そうに言うな」「子ネズミがほざくな」「能無しは黙っていればいい」「知識だけを振りまく小心者が」と根拠のない上滑りの言葉だけが次々出てきて、反論すればさらに似たような威圧的な言葉「お前は人間のクズだ」「見え透いた猿芝居するな」を連射され、ついには物理的虐待が待っている。上滑りの言葉は強制力を背景に持つサイコパス強弁になっている。「元警察分際で偉そうに言うな」(カラ理由)と殴る。「お前は人間のクズだ」(カラ理由)と殴る。どういう振る舞いが偉そうなふるまいなのか、や人間のクズとはどういう人を言うのかの説明はない。ただ殴る理由に使っている。この理由に意味はない。サイコパスにとって「殴る」ことに意味がある。健常者はなぜ自分が殴られなければいけないのかが分からないまま殴られ、「カラ理由」が特別な意味があるように錯覚する。例14では角田美代子が「黙ってアメを食べたとんでもない奴だ」「こんな時に横を向いている、人の話もまともに聞けんような奴は性根を入れ替えてやる」と殴っている。健常者は呪縛解放すると「カラ理由」が全く意味のないものだったということに愕然とする。主也は、なぜ自分が妻を殺さなければならないのか、なぜ自分が飢餓状態に衰弱して死ななければならないのか全く理解できないまま虐殺された。サイコパスに殺された人は自分がなぜこんな無残な殺されかたをするかわからないまま死んでいく。サイコパスの方もなぜ虐殺するか自分でもわかっていない。この「なぜ」を理解できるようにすることがサイコパス対策の基本になる。この「なぜ」が逆転欲求の理解により解るようになる。すなわちサイコパス対策の基本は逆転欲求の理解と解明である。

【太平洋戦争では、主也と同じように、自分がどうしてこのような無残な死に方をしなければならないのか、わからないうちに死んでいった兵士や人々は少なからずいた。これは太平洋戦争が「サイコパスの戦争」だったとすると理解できる。「国のために、民族のために、家族のために死ね」「死ぬことが武士道」という「カラ理由」を押し付けられて、主也のように自らサイコパス化して、死んで逝った人たちである】

(G)第6の殺人:緒方優貴5

10歳の少女彩に5歳の弟を殺させたサイコパスは子供であることを全く気にかけない。主也が死亡した1か月後、松永は純子に「子供に情けをかけて殺さなかったばかりに、逆に大きくなって復讐されたという話もある」「そうならないためには早めに口封じをしなければならない」と言い、純子は優貴が生きていても虐待されるだけと考えたため「そうするしかないですね」と同意した。松永は優貴君にも食事制限などの虐待をしていた。彩は松永に「このことは誰にも言いません弟優貴にも言わせません。何も言いません。父親の実家に二人で帰ります」と懸命に誓っていたが、松永は「死体をバラバラにしているから、警察に捕まっちゃうよね。優貴君が何も喋らなければいいけど、そうはいかないんじゃないかな」「俺や彩自身に不利益が生じるが、責任が持てるの?」と尋問し続ける。そして、松永が「優貴君は可哀相だから、お母さんのところへ行かせてやる?」と暗に優貴君を殺すことを命じる。通電を加えられ、ついに彩は「そうします」と答えた。純子は「自分ひとりで優貴を絞める」と言ったが、松永は彩も加えるよう指示を出した。松永は彩に優貴君を殺させ姉弟間の「心の交流を完全に破壊する」逆転愛情欲求の快感を味わっている。さらに沙織にも参加するよう促し、幼い子供をかわいそうと思う心をずたずたにして楽しんだ。純子の証言「彩は優貴君を台所の床に仰向けに寝かせるように指示し、お母さんのところに連れて行ってあげると嘘をついて」「沙織が足を押さえた上で彩と私が二人がかりで絞殺した」。沙織の証言では「殺害場所が台所ではなく浴室」「彩が1人で絞殺して純子は手首を押さえていただけ」と証言している。裁判では前述の純子の証言が採用されたがいずれにしても松永は満足している。死体は解体処分。松永は直接には殺害や死体解体をしてない。情報元には記述がないが、松永はそばで見ていたか、解体の状態を純子に虎谷の時と同じように報告させていたなどで陶酔していたはずである。

(H)第7の殺人:緒方彩10

少女彩を長時間虐待し自ら死を選ばせた。松永は彩に通電を繰り返して衰弱させ、「太っていたら大変だろ?」というカラ理由で食事の量を減らした。彩がいない所で松永は沙織に向かって「アイツは口を割りそうだから処分しなきゃいけない」「アイツは死ぬから食べさせなくていい」(45回公判p28/42)と。純子は優貴君殺害直後に解体道具を多めに買うよう松永が指示したことが彩の死体解体準備と認識した。松永は浴室で彩と2人きりで何度も話し合った。この時に彩の両手両足をスノコにひもで縛り付け顔面(最も思考能力を失わせる)へ30分にわたり通電している。サイコパスは思うとおりになるまで虐待を続ける。その後、純子と沙織の前で松永の「彩は死にたいと言っている」との言葉に彩がうなずき、彩は静かに横たわり、絞め易いように10㎝近く首を持ち上げたという。純子と沙織が彩を絞殺。沙織の証言では「松永が彩に通電し続け、全く動かなくなった時に純子と私で首を絞めた」と証言し、一部が純子の証言と異なる。裁判では前述の彩が締めやすいよう首を上げたという純子の証言を採用。彩は当時小学生たちの体操クラブに所属していて殺される少し前に「今までありがとうございました」とみんなの前で退会のあいさつをしている。指導員は「やる気のある子」だったと述べている。また、捨て犬の飼い主を暗くなるまで探す優しい少女だった(p16/42)。

(I)生き延びた沙織の将来の夢

沙織は小学生の時から酒を飲まされ、監禁状態で成長が阻害されたと思われ、小柄である。接見した人は19歳にしては幼く見えたと話す。掃除など雑用に使われていたため殺害を逃れていた。事件の全体を知る重要な生存者。沙織の右足親指は生爪が剥がれている。これは17歳の時に1度目の逃亡が見つかった時、松永からラジオペンチを渡され、逃亡を理由に5分以内に右足親指の爪を自分で剥ぐよう命じられたため、自分で剥いだ。松永は「あと1分しかないぞ」と急かした。カッターナイフで指を切り血で「二度と逃げません」と誓約書を書かされた。その20日後2度目の逃亡が成功し警察に駆け込み事件が発覚した。逃亡を決意したのは「18歳になったら風俗嬢として働き今まで育ててやった費用(4000万円)を返せ」と言われ、純子にロープで首を絞められことがあり、連日のように通電されていたことと、本人は18歳になったら車の免許を取りたい、美容関係の専門学校へ行きたい、ワープロの勉強を始めたいなどの夢があったことによる(p20/42)。【サイコパスは子供が将来に向けて頑張るということが全く理解できない。人は機械、ロボットでしかなく機械の変化として成長を見る。将来に向けて、情熱を持つ心があることは理解できない。生き延びた沙織が夢に向かって一歩でも進んでほしいと筆者は願っている。】

(J)サイコパスの虐待の構図は「いじめ自殺強要」と同じ構図

自分で爪を剥がさせる構図や前項「(h)第7の殺人」で少女彩に自ら死を決意させる構図は『逃げ場がない状態に追い詰め、頭が真白化になった後もさらに虐待を加えて自殺へ追い込む』、いじめの自殺強要の構図と全く同様。サイコパス特性のある者による、いじめ自殺の犠牲者はこの構図に追い込まれている。サイコパスの狡猾な自己中心の構図。自分に罪は来ないように自殺に仕向け、憎みたい/憎まれたい、苦しむのを見たい、死ぬのを見たいという逆転欲求衝動を満足させる。子供でも大人でも、いじめ自殺の多くは自殺する側に原因はなく、自殺させる側のサイコパスの存在が原因である場合が多いと筆者は考えている。サイコパスは犠牲者に対して、家族にいじめのことを話させない、先生に本当の事を話させない、いじめアンケートで本当の事を書かせない、作文で本当の事を書かせない、ようにすることは難しいことではない。「そんなことをすればどうなるかわかっているな」と脅す必要もなく、脅しと同じ『空気』がひしひしと伝わる。そんなことをすれば本当それまでより何倍も激しい虐待を陰湿にする。特に「成績の良い松永型サイコパスであれば、サイコパスの知識のない教師など簡単に丸め込まれる。本事件の松永や次の例14「尼崎監禁殺人事件」の角田美代子で分かるように、サイコパスは気丈で正義感が強いために反抗するようになった者や逃げようとして失敗した者に対する虐待はその前より遥かにひどい虐待となる。どのような健常者でもまんじゅうサイコパスに遭遇すれば、いじめられる側になり、たやすくは逃れられない。「いじめ自殺」という名称より「サイコパスの虐待自殺強要」が実態に合っている。短い名称にすれば「サイコ虐待自殺」さらに短くすれば「虐待自殺」である。「いじめという言葉は軽すぎる。事故に関するハインリッヒの法則がこの場合にも当てはまると仮定すれば、1人の虐待自殺の重大事態が生じた場合、その周りに約30人の自殺に至らないが中程度の事態が生じていることを示す。ヒャリとする程度の軽い事態であれば約300人に生じていることをハインリッヒの法則は示している。サイコパスの自殺強要は次の例14「尼崎監禁殺人事件」の橋本久芳の飛び込み自殺強要で詳細に見る。〔「虐待集団」については前の項「10)(f)サイコパスまんじゅうのいじめ集団(虐待集団)と反社会性人格障害者のいじめ集団(反秩序集団)」を参照。〕

(K)生き延びた純子の状況(p7,8,9,10/42)

・松永の布団販売の詐欺会社の事務員として雇われた。会社では純子も他の社員と同様に寝具購入や名義貸し契約をし、松永から言われて両親や親族から借金や金を無心している。

・松永により、胸にタバコの火で「太」と焼印、太ももに安全ピンと墨汁で「太」と入墨を入れられた。

・1985年睡眠薬と左手首を切って自殺を図ったが一命をとりとめた。松永は自殺をする純子の心を理解することはなく以後一層激しい暴力で松永に取り込まれた。

・1997年4月逃げ出し湯布院でホステスとして働いた。松永が自殺したという嘘の葬儀に戻り捕まる。〔次項「(L)サイコパス松永の特徴まとめ・執念深く逃亡者を捕まえる」参照〕

・1997年5月郵便投函などのため外出時に門司駅で逃亡を企てるが、タクシーに乗ったところで捕まる。捕まった時に、松永の「なぜ逃げた」に「電気が怖かったんです」と答えると「電気は私の友達ですと言って笑え」と命じ、その通りにすると、松永はそれを見うれしそうに笑った。激しい通電が1か月は続いた。この笑いは、例11「女子高生監禁殺人事件」の小倉が被害者の女子高生を激しく殴り目の位置がわからなくなるほど膨れ上がった顔をみて「なんだお前でっけえ顔になったな」と笑うのと似ている。【サイコパスは逆転欲求が満足された状況で笑うことがある】。純子はその後逃げることはなかった。純子は、他の犠牲者に、松永に代わって通電や死体処理をして、すなわち疑似サイコパス後期となって生き延びた。生き延びたが殺される寸前だった。【健常者はサイコパスまんじゅうに取り込まれると疑似サイコパスにならなければそこに存在することはできない

(L)サイコパス松永の特徴まとめ

ここでは松永の残虐性以外の特徴をまとめる。

・「成績が良く」、「弁がたつ」:これが松永型サイコパス核心をなす。小学校全学年で殆どの科目でオール5。学級委員長や生徒会役員を務め、中学1年時に校内弁論大会で3年生を差し置いて優勝。教師を言い負かせた。部活でキャプテン〔情報元:ウィキペディア北九州監禁殺人事件、以下ウィキペディア〕。「成績優秀」で「頭の回転がいい」からサイコパスでないと考えてはならない。健常者の頭の回転がいいとは異なり、「サイコパス強弁」である〔サイコパス強弁については前の項「(B)第1の殺人(d)サイコパス強弁」参照〕

・性的乱交:純子とその母や妹や離婚した元妻とも同時並行で肉体関係を持つ。同時に言葉たくみに様々な女性遍歴と結婚詐欺で見境がない。サイコパスは心の交流がなく、報酬系のわずかなドーパミン分泌で性的な反応をするので性的乱交や結婚・離婚を異常なまでに繰り返す〔前の項「(1)5)(b)サイコパスの快感は性欲とは別物」及び本シリーズ(その2)「1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動:K.B.症候群(4)性的感覚の異常・亢進」参照〕。

・執念深く逃亡者を捕まえる:純子が逃げてひっそり湯布院でホステスとして働いたときに、松永が自殺したとのうわさを隅々に流し、緒方家の人を取り込んで葬儀を捏造し、松永が死んだと思い込み葬儀に来た純子を、松永が押し入れに隠れて捕まえ、激しく殴った(p8/42)。執念深さが尋常でない。逃亡者を捕まえる執念深さはサイコパスの特徴の一つ。松永は逃げるものの気持ちを理解することはなく、この後純子に対する通電虐待は激しさを増す。例14「尼崎監禁殺人事件」も逃げたものを捕まえた時に虐待の激しさを増している。逃げたものを親族を利用して捕まえるのは例14「尼崎監禁殺人事件」も同様である。〔前の項「8)(b)サイコパスは執念深く何年たっても特定の犠牲者を捕まえようとする」参照〕。

・病的な嘘つき:「村上水軍の末裔」「河合塾の講師」「小説家」「北朝鮮の関係者」などウソの多数の顔。

・寄生的生活他者の資産を奪って生活する。病的な嘘による詐欺生活。映画『凶悪』原作のサイコパス三上静男が「うそつきの先生」として他者から財産を奪って生活するのと類似。以下詐欺会社と結婚詐欺の具体的寄生生活内容。

(a)詐欺会社(p2,3/42):父親の布団販売業を受け継ぎ詐欺会社ワールドを設立1986年25歳。粗悪品を訪問販売で高額で売りつけ、ヤミ金融パクリ行為(支払うつもりがない多額の借金や商品を取り込んで雲隠れする行為)をした。1.8億円を稼ぎ、詐欺罪脅迫罪で指名手配されたが、1992年に石川県に夜逃げをし、時効。夜逃げの前には多数の不渡りを計画的に出した。夜逃げまでの6年間は松永の側近2人を含め常時社員5~6人がいた。社員は布団を買わされ、松永に多額の借金をした。また、社員の母親に金の無心を強要することもあった。地方都市(九州、柳川市)で仕事が少なく社員にとっては貴重な勤め先だった。3階建のビルの3階に社員が「電気部屋」と呼ぶ防音壁の部屋があり、床にコンセントが6つ埋め込まれていた。社員は販売ノルマが果たせないときや松永の気分で、側近の2人に押さえつけられて通電虐待を受けた。松永は側近2人を操り、「でんき!」と言うと通電し、「なぐれ!」というと殴った。側近2人は松永に逆らえない疑似サイコパス前期になっている。松永自身はソファーに横なって見ており手を出すことはない。映画『凶悪』で「うそつきの先生」(サイコパス三上静男をリリー‣フランキーが演じた)がソファーにいて指示を出し須藤(反社会性人格障害後藤良治をピエール瀧が演じた)らが電気屋ジジに通電している場面とほぼ同じ。前の項「(A) (c)暴力装置(通電) 」の証言(元社員)はこれらの社員である。付け加えれば「通電時に両腕がばねのように跳ね上がり、2~3mも吹っ飛んだ」「脳の芯を鉄棒で打たれたような衝撃。一瞬気を失うが。手足の焼けるような痛みでいつも目覚めた」「通電が終わっても、帯電していて、ドアノブを握った瞬間、ビリットはじけ飛ぶことがあった」と述べている。いずれも社員は殺害されずに逃げている。純子はこの詐欺会社ワールドの前身の布団販売有限会社1983年設立の事務員で雇われ、ワールドでは側近の1人になっていた。【1の殺人1996年の約10年前から既に企業内部閉鎖環境詐欺会社ワールドで虐待の構図ができている】。ワールドを夜逃げで計画破産させてから4年後に第1の殺人になる。

松永と側近の関係は例14の角田美代子とマサの関係と同様。角田が「マサ殴ったれ」と言うとマサが犠牲者を殴り「マサやめ」と言うまで殴り続けた。側近とマサはサイコパスまんじゅうの暴力装置に位置づけられる疑似サイコパス前期者にあたる。

(b)結婚詐欺(p5,6/42):被害届などで確認されているだけで被害女性は25人以上。その例を以下に記す。

・結婚詐欺例1:松永は京都大学で物理学を研究している村上と名乗る。ワインレッドのアタッシュケースから取り出したビデオ、アインシュタインみたいな人が講義しているのを見せ、解説をして信用させる。大学をやめ小説を書くからどこか落ち着いたところに部屋を借りてくれと頼む。信用させるために純子を姉と紹介し口面を、合わす。560万円だまし取ると、初めて会った時は誠実そうに見えた松永が豹変する。髪の毛を掴む、殴るなどのすさまじい暴力が始まり何日も監禁された。2階から飛び降り逃げた。あまりの恐怖体験で当時警察に届けることができなかった。サイコパスは犠牲者からこれ以上金がとれなくなったところで、逃げられない状態〔監禁〕にして豹変し、サイコパスの逆転欲求の餌食にする。〔豹変は本シリーズ(その4-4)「7)サイコパスが優しい顔から悪魔に豹変するとき」参照〕

・結婚詐欺例2:松永は医師タシロと名乗る。夫の暴力に悩んでいた中年女性の相談に乗った。「働いている病院をやめるのに、支度金を返さなければならない」と困り果て表情を見せて、数百万円を融通させた。

・結婚詐欺例3:松永はコンピュータ技師ミヤザキと名乗る。カラオケボックスで会った女性に「米国が使用した弾道ミサイルの軌道計算のために、戦場にいた。人が死ぬのをたくさん見た。戦争はよくない、心からそう思った…」と。おどおどした感じで、スーツも地味。うだつの上がらないサラリーマン風。ミヤザキは女性の近くで、携帯電話で外部と英語を交えて話をすると、女性の心をとらえた。幸いこの女性は金を奪われる前に監禁殺人が発覚した。警察に呼ばれミヤザキの正体を告げられても「あの人は、そんな人じゃない」と強く抗議していた。

これらの例からわかるように、サイコパスは嘘で人の心を操ることに何の躊躇もなく徹底しているばかりでなく、相手の信頼を裏切り愛情をズタズタに破壊することに、人間的な心の本質を破壊すること、すなわち逆転愛情欲求に、「逆転快」を感じている。サイコパスの寄生的生活は、金品を奪われる犠牲者の苦痛を、サイコパスが「逆転快」と感じることに本質があり、限りなく奪いつくす。「逆転快」を求める欲求は際限がない。金品そのものは寄生的生活に必要なものであるが、サイコパスにとっては「逆転快」の付随物でしかない。そのことは金品を奪い尽くした後の虐待で表面化する。

(M)松永の無罪弁明にみるサイコパス裁判と科学的犯罪心理学の課題

「純子がやった」「私に殺す理由はない」「殺害現場にいなかった」「風呂掃除のときに転び、頭を打った」などたわいもない言い逃れや嘘で無罪を主張(8回公判など)。「自分は何でもできると錯覚した全能感を持っており、罪悪感がなく自信満々だった」。この弁明の態度は本シリーズ(その1)に説明した凶悪サイコパスのテッド・バンディの全能感に酷似。弁護士の「純子は言うことを聞いていたか?」の問いに。松永「聞かないときにはげんこつで殴るか、通電をする。通電しつけの意味があり教師のげんこつと同じ」と答えた。弁護士「20年、内妻の純子と暮らして2人の関係は?」。松永「日本の伝統的な雷オヤジと家長を併せ持ったような感じです」と答え、死の恐怖に追い込み、虐殺や死体解体を強制した罪を微塵も認めようとしない。テッド・バンディと同様に、相手の苦痛を読み取れないだけでなく、逆転欲求満足を感じているため、事の深刻さがわからない。逆転欲求は健常者には自分の延長上で理解できないので、その論理も理解できない。判決は死刑確定。本シリーズ(その1)でも述べたが、サイコパスがウソ(カラ理由)を繰り返すので、サイコパスでない無実の人の発言がサイコパスと同様の嘘と受け取られて、冤罪を生む。サイコパスは冤罪を生む間接的な元凶である。サイコパスのウソ(カラ理由)と健常者の真実を見分ける方法の確立が法廷の課題であり、科学的犯罪心理学の課題である。そのために、サイコパスの脳活動の特殊性解明を含めた研究に多くの人と資金を注ぎ込む必要があると筆者は考える。〔サイコパスが作り出すウソ「カラ理由」「サイコパス強弁」については本シリーズ(その4-4)「9)(d)虐待行為にどうでもいい理由を必要とする」、前の項「(B)(d)サイコパス強弁」参照〕

純子は無期懲役が確定した。日本の裁判では、サイコパスまんじゅうに取り込まれ疑似サイコパス化して他者を殺害した場合が想定されていない。情状酌量の範囲で考慮されるが、本人の意思で殺害したことになり、重い刑になる。これもサイコパスの研究とともに見直されなければならない。松永に逆らえば純子は殺され、逆らうという選択肢は純子になかった。純子の無期懲役は重過ぎる。

純子に再犯の可能性はない。サイコパスの皮となった人の量刑はサイコパスまんじゅうに取り込まれて犯した罪を主体とするのではなく、①再犯の可能性と②サイコパス化にどれだけ抵抗したかの2点を加味しなければならないと筆者は考える。すなわち呪縛解放(偏桃体機能回復)の程度と健常者としての反サイコパスの行動を考慮しなければならない。そのためにも呪縛解放したかどうかの判定方法と健常者のサイコパス化のメカニズムの解明を医学的に科学的犯罪心理学として確立する必要がある。それはまた、サイコパス犯罪を認定し、サイコパスに対して病状の改善度合い(偏桃体の機能回復度合い)で刑期を柔軟に変更する方法を確立することにもなる。量刑を単純に刑期で測る現状の方法は健常者には有効で、罪を犯すことを押しとどめる作用を持つが、死刑や量刑を恐れないサイコパスにはその有効性に限界がある。サイコパス犯罪者を残虐性による刑期で処理することは根本的な解決にならず、いつまでも社会からサイコパス犯罪と戦争を求める脅威がなくならない

N)松永の無罪弁明はいじめを行う児童生徒の言い訳と共通点が多い

自殺に追い込む生命に係る深刻ないじめ虐待を行う児童生徒の言い訳「じゃれていただけ」「ふざけていただけ」「かわいがっていただけ」というのは、松永の「命にかかわる通電虐待」を「教師のげんこつ」に置き換える言い訳と似ている。教師の中には、自殺などの深刻な事態に対しても「じゃれていただけと思った」とサイコパスの言い訳(カラ理由)に乗っていることがある。本当にふざけているだけか、サイコパスの深刻ないじめかを見分ける方法、陰湿に隠れて行う深刻ないじめの対処方法の確立が急務であるが、そのためにサイコパスの本質理解を基盤にしてサイコパス特性を持つ児童生徒に対処する方法の確立が教育現場の課題になる。

その(4-10)へ続く。

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-8)北九州監禁殺人(2/6)虐待実態とサイコパス強弁他

2016-05-13 15:27:57 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

その(4-7)の続き。

以下7人の監禁殺人がどのように行われたか詳細に見ていく。

(B)第1の殺人:虎谷久美雄34

不動産業の虎谷久美雄は賃貸マンションの浴室に監禁され、通電と虐待が行われ、松永がいないときは内妻の純子が行うように命じた。【自分が直接虐待するのでなく他者に行わせる。健常者を、逆らえない空気を作り出して操るところに松永型サイコパスの重要な特徴がある】。浴室の窓は黒のごみ袋をガムテープで一面に貼り、光が遮断され、南京錠が掛っていた。玄関にも南京錠。純子が虐待に手加減をしていることが見つかれば、松永から制裁を受ける。純子は松永から喉を攻撃されて40代ながら老婆のような声になり、通電で右足の小指と薬指が癒着し親指の肉が欠けていた〔ウィキペディア〕。松永がマヨネーズの液を床に垂らし、なめろと言えば這いずってなめる。純子は何も逆らえない。

(a)通電以外に虎谷が受けていた虐待

サイコパスの虐待は人を心が存在しないロボット化することにある。ロボット化した後はロボットであることを、確認するかのように虐待を続け、あらゆる人間的なものは破壊される。衰弱死は、サイコパスにとって究極のロボット化に到達した姿で、人が完全に物体になる。虎谷の死体は首が切断され『いったいどうなっているんだ』と調べるようにバラバラに解体された。この全過程でサイコパス松永は「逆転快」報酬ドーパミンの快感を得ていると考えられる。虎谷自身は他者を虐待していないので疑似サイコパスにはなっていない。真白化状態で虐殺された。

食事制限〔17回公判〕(p27/42):1日1夜中の午前1~3時の間。松永指示のメニューが与えられた。肉・魚・野菜などの副菜は全くなく、どんぶり山盛りの白米にラード油をかけたものがほぼ毎回出された。時々うどんやインスタント棒ラーメン(九州のマルタイラーメン、具無し)が付いたり、麺類だけだったり、卵を付けることが松永の気分できまり純子が作った。白米の上に塩を山盛りにして食べさせた時があった〔論告書(p36・42)〕。こんなものを食べたらどうなるか観察するかのように食事を与える、毒殺と同じ心理(逆転認知欲求)。食事の時は台所の「領土」と称する狭いベニヤ板を敷いた場所へ出され、尻を付けて座ることが許されず、そんきょの姿勢で食事をした。「領土」以外の場所は素足で歩くことを禁じ。下駄状のものを履かせた。食事の時間は浴室を出たところから戻るまでをその都度16分、19分、23分と細かく制限し、純子にストップウォッチで測らせた。なぜこのような中途半端な時間設定なのかについて松永は「食べる時間をみはからってのこと」と答えた【犠牲者が言う通りにしないと通電される恐怖から、時間を気にしてオタオタしながら従っている姿に松永は引き付けられている。『あと1分だぞ』と言うと犠牲者があわてる。犠牲者の意思を破し、人間性を破壊する過程と言える。次のトイレ制限なども同様。純子は松永が指示したもの以外を与えることはなかった(p17/42)【もし犠牲者をかわいそうと思い指示されたもの以外を与えれば純子が虐待される。例14尼崎監禁殺人事件の角田美代子もまんじゅうの皮となった人が犠牲者に「情をかける」ことを許さない。情をかけて優しい言葉を犠牲者に発すればその人が虐待される(瑠衣や健太郎証言)】

トイレ制限:1日1回松永の許可。大便の時は全裸にしたうえ、浴室からトイレまでの床に新聞紙を敷き詰めて移動させ、全体を13分に制限した。ドアを開けたまま用便の様子を純子に監視させ、便座に腰掛けることを禁じて中腰で排便した。用便後は純子が尻や、尻を拭いたトイレットペーパーを確認し、浴室に戻した。純子が後を清掃した(p17/42)。【トイレに行かせず苦痛でどうなるか観察するように虐待(逆転認知欲求)】

睡眠制限昼間3~4時間に制限し、昼と夜を逆にした。サイコパスには昼夜の感覚が正常に働かない者がいる。前項「6)(c)サイコパスの性欲以外の本能行動の問題()睡眠欲の問題」参照。

同じ姿勢で長時間:言ったことを守らなかったなどの制裁として浴室や台所で直立不動やつま先立ちのそんきょの姿勢を長時間強制した(p7/42)。姿勢を崩せば通電される(p17/42)ので崩せない。情報元に具体的時間の記述はないが一日中もあったと思われる。例14「尼崎監禁連続殺人事件」でも角田美代子が正座を長時間強制し、床と接触する部分にこぶができ膿んでくるほどである。【同じ姿勢を長時間強制するのは人をロボット化するサイコパスの虐待特徴の一つ。旧日本軍の新兵虐待にも見られる。】

厳冬期に水シャワー:浴室で寝起きしていた虎谷に水のシャワーを浴びせた(p27/42)。前の例11「女高生監禁殺人事件」や例14「尼崎監禁連続殺人事件」でも見られる虐待。映画『凶悪』原作でもカーテン屋にサイコパス三上静男が行っている。【水で息をさせなくするなど道具として水を使いうのはサイコパスの虐待特徴の一つ。太平洋戦争旧日本軍731部隊では反抗する地元住民の中国人に水拷問を行っている。】

大便などを食べさせる:浴室で排便したものや嘔吐物を食べさせ小便をペットボトルにさせて飲ませた。食べなければ通電されるので食べる。通電で神経が侵され垂れ流し状態になってくると紙おむつがはかされた。大便がトランクスに付いたときには付いた大便を口で吸い取らせたり、拭きとったトイレットペーパーを食べさせたりした(p17/42)。【例11「女高生監禁殺人事件」で女高生に尿を飲ませたり、ゴキブリを食べさせたりしたのと類似している。サイコパスは犠牲者が嫌がることをこれでもかと、手加減せずに行う。】

以上の虐待のすべてはサイコパスの特徴を示している。

 (b)虎谷を取り込んだ松永のアプローチ法

基本はサイコパスアプローチ3区分〔懐柔(仮面)期、豹変(悪魔化)期、満足(悪魔)期〕のアプローチが繰り返されて犠牲者は取り込まれ虐殺された。ここでは繰り返された3区分を6ステップに分解して松永のアプローチの仕方を分析した。豹変期に入ると、サイコパスは逆転欲求の満足を感じるようになっており満足期と重なるようになる。また松永型サイコパスは強弁が重要な位置を占めている。〔強弁については後の項「(d)サイコパス強弁」参照〕

・ステップ1懐柔(仮面)弱みを掴む:松永はコンピュータによる競馬予想会社の共同出資話(うその話)を虎谷に持ち掛け、連日酒を共にし、安心させて、弱みになる話を巧みに聞き出す。不動産屋の虎谷は昔「部屋の消毒をしないで、消毒代金を着服した」話を聞かれるまま得意げにした。松永はこの話を逃さなかった。

・ステップ2豹変(悪魔化)弱みの実体化(書類化):掴んだ弱みを使い、松永と同じアパートに住まわせるようにし監禁が始まる。「消毒代金着服の犯罪をした事実を証明します」と言う「事実関係証明書」を作り強弁で何度も繰り返し同じ弱点を突き長時間拘束し、明け方まで眠らせず、サインするまで続ける。サインをすることで、どうでもいい、ささいな弱み実体のある弱みとなった。サイコパスには、徹夜で興奮状態を維持するものがいるが松永がそれである。この強弁長時間拘束眠らさないは松永型サイコパスが健常者を屈服させる3大手法。その後、3大手法で虎谷の娘沙織を松永と一緒に住まわせるようにした。虎谷の弱点を書類化し警察に逃げ込んでも書類があるので無駄だぞと虎谷に思わせるとともに、娘沙織を残して逃げることができないように人質にした。

【おそらく虎谷は、松永がなぜこのような行為をするのかわからず、あれよあれよと思う間にがんじがらめの監禁状態になった。この段階は逃げることができない真白化前期に当たる】

・ステップ3(懐柔、豹変の繰り返し)弱みの拡充期:ステップ2で作った書類を使い、どんな些細なことでもでっち上げて、ステップ1、2を繰り返したながら弱みを拡充し、さらにがんじがらめにする次期。ステップ1、2と同様3大手法が威力を発揮する。「私は娘の沙織(仮称当時10歳)に頻繁に性的な嫌がらせをした」旨の、また「私は緒方純子に対し強姦未遂を犯しました」旨の「事実確認証明書」を作りサインさせた。いずれも虎谷の身に覚えのないことだが、3大手法で折れてしまう。折れるまで続ける。また、顔写真を撮り、逃走したら「事実関係証明書」と「写真を警察に出す」「ヤクザを呼んで追い掛け回す」(pp17-18/42)と脅した。虎谷は完全に自分の心を失い、言いなりになるロボット化へと向かった。

・ステップ4(懐柔、豹変の繰り返し)金銭の要求と虐待:口止め料や慰謝料の名目で多額の金銭を要求されるままに渡した。犯罪の証明書があり、松永の強弁があるので、警察沙汰にはできない。また、娘の沙織の監視があるのでさらに逃げられない。沙織は虎谷に不審な言動があれば直ちに松永へ報告しなければ食事制限や通電を受ける。実家からは63回に分け1500万円以上を送金させた。実家から金が出せなくなると、多額の借金を負わせた(p17/42)。要求に応じなければ通電などの虐待が強化される。【この段階で完全な真白化後期になっている。松永に言われれば何でもする】

・ステップ5(満足期)虐待の本格化:借金もできなくなると衰弱死するまで虐待する。〔虐待内容は前項「(a)通電以外に虎谷が受けていた虐待」参照〕。精神に異常をきたし、死亡3か月前には「えんま大王様がやってくる」「手首から糸が出てくる」「壁に引き出しがある」などと話すようになり、純子が通電をしたとき「娘沙織がいつもお世話になっています。自分も沙織もここまでこれたのは松永様のおかげです。」と話し純子に土下座している。死亡1か月前には完全に神経がやられ、ろれつが回らなくなり、発語が出来ず、死亡直前には常に無表情になり死亡(p18/42)。

・ステップ6(満足期)死体処理:松永のサイコパス特性がよく表れているので次項「(c)死体処理(ステップ6の詳細)」で述べる。ステップ5と6は、松永は指示するだけ実行は純子と沙が行った。【松永は『空気』で純子と沙織を操り、虐待を実行させて、親子関係の破壊や人の意思の破壊や人体解体の逆転欲求満足を得る】

(c)死体処理(ステップ6の詳細)〔11回、12回、20回公判(p24,25,26,27/42)〕

松永が純子と沙織に指示して行わせる形式をとる。二人にノコギリと包丁をそれぞれ数本と大鍋、消臭剤などの準備をさせる。浴室で解体した。「松永は『殺人マニュアル』など死んだ人の写真や絵が付いた本を数冊持っていた」〔沙織証言〕。まず、首と手首の血管を切り血液を抜いた後、首を切断。下あご部分を切り、頭部を逆さにしてお椀を持つように持ち、脳を取り出す。純子は「ずいぶん用心して取り出したから、形をなしていた」「そばに立っていた松永に、見た脳の状態をきちんと報告」し、ポリバケツに入れた。頭皮を剥いだ。剥いだ頭皮についていた髪の毛は、後でカミソリで剃った。次に内臓を取り出しポリバケツに入れた。包丁で骨と肉を分離し、肉は細かく切り刻み、内臓とともに大鍋で煮てドロドロにした後ジョウゴでペットボトルに入れて運び海や公衆便所などへ捨てた。骨や頭骨は鍋で「煮込」んだ後、粉々に砕いて海に捨てった。すべての処理に1ヶ月近くかかった。沙織は、純子の助手のように包丁で血管を切り、血抜きをすることや頭皮の髪の毛をカミソリで剃ることや骨を砕くことを手伝わされている。【松永は首の切断、内臓摘出、身体解体などの逆転快とともに娘沙織に父親の死体処理をさせることによる「心の交流破壊」の逆転欲求の快感を得る】と同時に沙織を父親殺しに加担したとして警察へ行く事が出来ないようにした。他の殺害の死体処理もほぼ同様に行われたが、段取りに慣れ、肉片処理にミキサーを使うなどで時間はかからなくなった(純子証言)。松永は頭髪を保存させたが6人を殺害した後6人分をまとめて排水管の洗浄液を使って溶かして下水へ流した。【松永は死体の一部、頭髪を記念品のように大事に残した。この行動はサイコパスの特徴行動。例5の少年Aは20匹近くのネコの首を切断するなどしたとき、必ず舌を切断してビンに集めて大事にしていた。サイコパスにとって残虐行為の遺品は、再び興奮を呼び覚ましてくれる大事な「宝物」になる】。

(d)サイコパス強弁

内向的単独サイコパスの「カラ理由」はサイコパス自身の脳内矛盾の合理化という内的なものが主体となるが、松永の様な外交的まんじゅうサイコパスの「カラ理由」は外部の人を従属させる理由という形をとる。この外的な「カラ理由」をサイコパス強弁(カラ論理)と名付ける。下記のように定義する。

(ⅰ)サイコパス強弁(カラ論理)とは:暴力装置を使った虐待や威圧の強制力を背景に持強弁のこと。「一般的な強弁=道理の通らないことを、無理に通そうとすること(Goo辞典)」とは強制力を持つところが異なる。サイコパス強弁とは「カラ理由」を強制力で押し付けることでもある。健常者は強弁により従属させられ、まんじゅうの皮となる。サイコパスが作り出す、意思決定の『空気』はサイコパス弁を基礎にしている。まんじゅうサイコパスは強弁を使い、逆転欲求を追及する。本シリーズでの強弁とはすべてサイコパス強弁のこと。〔「カラ理由」は前の項「9)(d)虐待行為にどうでもいい理由を必要とする」参照。〕

(ⅱ)強弁の時にサイコパスが「頭の回転がいい」ように見える理由:偏桃体機能不全による短絡回路のため

健常者の頭の回転がいいとは異なる。強弁の時にサイコパスが次々と機関銃のように言葉が出てきて「頭の回転がいい」と見えるのは、脳神経回路での偏桃体情動/記憶回路や相手のことを思いやるミラーニューロン回路や他者と協調する脳辺縁系の回路を経由しないので、言葉を瞬時に発することができるためである。健常者は言葉の一つ一つが偏桃体情動/記憶回路内部で情報交換をしており、また言葉を発した時に相手がどう思うかのミラーニューロンや脳辺縁系の回路と交互作用をしているため会話に常に「一定の時間」を必要とする。また、それらの神経回路で矛盾している場合には会話に躊躇(ちゅうちょ)が生じる。サイコパスはこの「一定の時間」や「躊躇」が存在しない。サイコパスは、論理を作る大脳新皮質は健康なので言葉だけが上滑りの状態で次々出ている。機関銃のように言葉が出るが、弱者を思いやる感情や他者の立場を尊重した部分は存在しない。逆転欲求追及に必要な場合にのみ仮面期として形式的に思いやりの言葉を発したりすることはある。サイコパスの上滑りの論理は健常者を納得させることはできないのでサイコパスは大声で威嚇したり、長時間拘束したり、暴力装置を使用せざるを得ない。【健常者はサイコパスが何を言いたいかを論理的に理解することが不可能で、理解しようとする努力は徒労に終わる。健常者はなぜ自分が虐待されなければならないのかわからないまま、大声で怒鳴られ、殴られ、長時間拘束される。サイコパス自身もなぜ強弁を行うかわかっていない。】

(ⅲ)松永の強弁(カラ論理)の例:検事「虎谷さんに大便を食べさせ、厳冬期に水のシャワーを浴びせたのはなぜか」。松永「愛情だと思います。水シャワーは風邪をひかんようにするためです」(17回公判p27/42)。弁護士「純子は言うことを聞いていたか?」。松永「聞かないときにはげんこつで殴るか、通電をする。通電しつけの意味があり教師のげんこつと同じ」(8回公判)と述べた。【「しつけ」という「カラ論理」で虐待するのは、サイコパスの親が子供を虐待するときと似ている】

(e)娘沙織(父死亡時11歳)を取り込んだ松永のアプローチ法

松永は「父親の悪いところを10個書いて報告しろ。そうしないと電気を通す」と言って、「ちくりノート」を携帯させ、父親虎谷を見張らせた。サボると通電し、些細なことでも報告があれば適度なご褒美を与えた。報告した内容を使って、父親を虐待する理由にした。【親子関係の心の交流は完全に破壊された】。全裸の写真を撮り逃亡したら雑誌やネット上にばらまくと脅し、ばらまくことに同意する「書類」にサインさせた。父親が死亡する直前に、沙織に歯形が付くほどきつく噛ませ、その跡の写真を撮った。沙織に「私は、殺意を持って実父を殺したことを証明します」という「事実関係証明書」にサインさせた。松永は沙織に「歯形があるから、お父さんを病院へ連れていけなかった。」「沙織が掃除している時にお父さんの頭を叩いたから死んだんだ」「病院へ行けば沙織が殺したことが直ぐにわかって、警察に捕まってしまう」と言い聞かせた。(p19/42)。少女沙織は長い間この「事実関係証明書」に縛られ、マンションの外に出る機会はたくさんあったが誰にも松永などのことは話さなかった。沙織は生きのび、経過全体を知る貴重な証言者になっている。

 (C)第2の殺人:緒方誉(たかしげ)61

第1の殺人から1年10月後に純子の父の緒方誉(おがたたかしげ)が殺害された。松永と緒方誉が知り合って約10か月後である。誉(たかしげ)は2haの田畑を持ち農協関係団体の副理事で次期理事長と目されていた。地域集落の2/3を緒方家が占め、その本家が誉の家族。誉の父は村会議員を務めた名門家族である(p11/42)。

 (a) 緒方誉(たかしげ)が受けていた虐待

「(B) (a)通電以外に虎谷が受けていた虐待」と類似の内容に以下が加わる。

物使用制限:物の使用は松永の許可。「ファンヒーター」「布団乾燥機」など。殺害するときの絞殺用のケーブルや、死体処理のノコギリでも使っていいかの許可が必要。許可を取らないと食事制限や通電される。

外出制限:運転免許証と車のキーが取り上げられた。玄関ドアに南京錠。外出に許可。外出時には携帯電話で頻繁に連絡を入れて、何処で何をしているのか報告しなければならない。松永は大体の地理が頭に入っていて、所定の場所に到着する時間制限。ガソリン代や駐車料金は代金を貰い、借用書を書かされる。必要最低限のお金。

監禁部屋化:部屋の全ての窓に遮光カーテン。玄関ドアのチェーンは殆どドアが開かないくらい短くした。玄関のドアスコープや新聞受けは物で遮るなどして、外部から室内を覗けない。あらゆる窓やドアに多数の南京錠。鍵を開けないと出入りができない。

家族間の会話の禁止と憎しみ合い:家族間の心の交流破壊。松永は悪口を言わせ、言わないと通電する。それを理由に言われた人が通電される。なぜ悪口を言ったと相手を憎む。悪口を言わない人が最下位になりいつも通電される。通電されないようにするため互いに悪口を言い合うようになる。まんじゅう構造の告げ口支配システム。

衣服制限:上半身裸で下半身はパンティーのみ、両乳首に小さく切ったガムテープを貼られた姿にさせられた。1着だけで、ごくたまにしか洗濯が許されない。

睡眠制限:寝具は使えず、週刊誌を敷いて新聞紙を被せるだけになった。台所で雑魚寝。いびきがうるさいと浴室に常時閉じ込められた。昼間3~4時間の睡眠で昼夜逆転。(松永は昼夜感覚に問題を持つと思われる)

各制限の違反者:違反者は松永による制裁‣通電、浴室監禁。制限を守っていれば松永の気分で時々外食をさせたり、マンション内の食事に1品つけたりした。沙織も3週間浴室に閉じ込められたことがある。

サイコパスの監禁は人の尊厳を失うあらゆる行為を伴うこの段階では緒方家の静美、恵理子、主也がこの虐待に巻き込まれている。

(b)緒方誉(たかしげ)を取り込んだ松永のアプローチ法

虎谷と類似なので簡略する。

・ステップ1懐柔期弱みを掴む:松永は緒方家が名門であることを利用した。松永は1年前の虎谷殺害を誉の娘純子がやったと誉にささやき、「緒方家から殺人犯を出したくない」と話し、松永の「時効まで辛抱」する案に乗る。松永は弱みを握った。

・ステップ2~6懐柔、豹変、満足期:この弱みを繰り返し突いて3大手法(強弁、長時間拘束、眠らさない)で攻めステップ2,3を進み監禁と通電を行いステップ4の金銭を奪うに至る。貯金1千万円と農協から土地を担保に3千万円を借り、松永へ渡したと誉と親しかった市議会議員は聞いた。市議は緒方宅へ駆けつけ「やめろ」と語気を強めたが誉は「松永はいずれ自分たちを幸せにしてくれる」と、あとは何を言っても話をそらすだけで松永に運命を託したかのようだったと述べている。通電などを続けて金銭を奪いつくすとステップ5の虐待が本格化する。ある日、言いがかりをつけて緒方一家の純子を含め大人5人が並べて正座させられ、その場で純子に命じて父誉の頭に通電させ殺害した。ステップ6の死体処理は、緒方家の人が、第1の殺人虎谷と同様に首を切断し、解体処理をした。これ以後緒方一家全員が松永のマンションに監禁状態

(D)第3の殺人:緒方静美58

松永がいる「隣在の『空気』」により子供たちが母親殺しを決定した。純子の母親静美は度重なる通電によって精神が侵され奇声を発するようになった。どうしたらいいかを、松永は、純子とその妹の理恵子と理恵子の夫の主也の3人に考えさせた。松永は弁がたち、「頭の回転が良く」、他者を操るサイコパスである。「入院させる」や「別居する」などの案をすべて却下し、「回復するかもしれない」と言う意見には「暴れるようになったら、殺害が困難になる」とまくし立て、殺害案が出てくるとそれに決めさせ「一家の決断」とした。自分たちで決めたと言う形式をとらせる。「一番いい方法が殺害」という結論が松永の作り出す『空気』に誘導されて確定した。松永の意思はその場の空気になっている。空気に逆らう意見が出ると、松永の無意味な議論や蒸し返しや大声のまくしたてで、『空気通りの結論に至る。【松永は静美を殺せと命令すればいいことだが、なぜ回りくどく「家族の決断」で殺すという形式を取らせるのか。このことが松永型サイコパスを理解する重要なカギになる。松永の逆転欲求満足は静美の虐殺だけでなく、家族間の心の交流を破壊し、一人ひとりの意思を破壊して、サイコパス化することで得られると考えられる。〔サイコパス化衝動は本シリーズ(その4-5)「10)(e)ロボット化とサイコパス化の関係」参照】松永は「どうやって殺すんだ」と先へ進めた。電気コードの使用を松永から許可を取り、純子と恵理子が母親静美の体を押さえ、松永に「お前が絞めろ」と言われて主也が絞殺した(p36/42純子証言)。【3人は通電や食事制限などの恐怖と逃げ場がない絶望と従わないときの制裁虐待で疑似サイコパス前期になり、母親殺しを実行した】。死体解体をしたとき恵理子は母親静美が「便秘していたため腸内に多量の便が詰まっていたことと、皮下脂肪が多くて切りにくかった」とこぼしていたと純子証言(p36/42)。

(E)第4の殺人:緒方恵理子33

松永がいない「遠在の『空気』」により夫が妻を殺した。【サイコパス不在の空気』で殺人計画と実行を行う極めて重要な意味のある場面である。サイコパスはその場にいなくてもまんじゅうの皮を使い殺人を行うことができる】。度重なる通電によって耳が遠くなっていた恵理子(33歳)について、松永は純子ら3人に「母親の静美みたいになったらどうするんだ」と問いかけ、「今から寝るから、一家で結論を出し、起きるまでに終わらしておけ」と指示。殺害命令と受け取った純子、主也(かずや)、恵理子の娘の彩10歳の3人が話し合った。「殺害を拒否しても、恵理子はもっとひどい虐待を受けて辛い思いをした末に殺されるのではないか?」などと悩んだ。松永の意図を確認しようということになったが、松永の部屋に向かうドアは開かなかった。「お母さんは生きていても、もっとひどい虐待を受けて辛いだけ」「起きるまでに終わっていないと自分たちがひどい目にあう」などと話され、主也が「それなら自分がやる」と殺害を決意。3の殺人では松永がいる「隣在の空気で殺害が決まったが、4の殺人では、もはや松永はその場にいない「遠在の空気で殺害が決まった。サイコパスが他者を操る場合に直接と間接とある。第3の殺人直接の空気』、第4の殺人間接の空気』で操ったと言える。第4の殺人のようにサイコパスは意思を貫徹するのにその場にいなければならないということはない。『空気』で意思を貫徹する。サイコパスは自分が虐待するだけでなく、他者に他の人を虐待させることに強くひき付けられる。仲が良かった同士が殺しあう場面にたまらなくひき付けられ、その場面を作り出す。その場面は人の心の交流の完全な破壊の場面である。この場面に松永は逆転愛情欲求などの逆転快報酬系ドーパミンの陶酔を味わっていると考えられる〔前の項「3)(d)a)サイコパスの心の交流破壊と人間関係のロボット化衝動」参照〕。

主也(かずや)は娘彩に「お父さん(主也)がお母さんの首を絞めるから、おまえは足を押さえてお母さんと最後の別れのあいさつをしなさい」と話す。お母さんがいる浴室に主也と彩が入り、主也が首にコードをかけようとした瞬間、主也を凝視して「主也、私、死ぬと?」とつぶやく。主也が「すまんな」と答え、彩に足を押えつけさせた上で絞殺。以上は傍で見ていた純子の公判での証言。遺体は第1の殺人虎谷と同様に解体。

この第4殺人は『空気』で健常者を操り、ターゲットを虐殺する典型的なまんじゅうサイコパスの特徴である。松永は直接には立案も実行も手を下していない。このため公判では無罪を主張した。【第3母親殺人では、主也は疑似サイコパス前期に、4殺人では疑似サイコパス後期になっている】【旧日本軍の一部の部隊は、第4の殺人での緒方家の人々のように、サイコパスが一人もいないにもかかわらず指導部のサイコパスの『空気』を反映して疑似サイコパス後期となって残虐行為を平然と行なった場合があったと考えられる】

その(4-9)へ続く。

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-7)「凶悪」と北九州監禁殺人(1/6)全体概要

2016-05-13 14:05:00 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

その(4-6)の例11「女子高生コンクリート詰め殺人事件1988年〔以下女高生監禁殺人事件〕」続きから。

虐待時に小倉が被害者の「顔にマジックペンでいたずら書き」をするのは映画『凶悪』原作のサイコパス三上静男がカーテン屋社長を監禁虐待した時と同様行動で、サイコパスに共通する逆転認知欲求の絵と思われる。その絵は健常者がぞっとするようなものと思われる。〔本シリーズ(その4-2)「2)サイコパスの逆転認知欲求(a)サイコパスの逆転認知欲求を示す絵、コラージュ、情景の例」参照〕

この事件は友人の閉鎖環境で行われ宮野、小倉の2人を核としたサイコパスまんじゅうが形成されている。逃げられなくなったのは被害者だけでなく周りを囲む10人以上がまんじゅうの皮として宮野、小倉の凶暴性の言いなりになっていたはずである。少年犯罪のため公表情報が少ない。

以下の両者の特徴から、小倉がサイコパスまんじゅうの中心のアン(1次核)、宮野はサイコパスを映し込んだ暴力装置として中心のアンを取り囲む外周のアン(2次核)と思われる。宮野が年上で暴力が目立つため主犯格になっているが、残虐性の中心はサイコパス小倉にある。2人の少年時代などを以下見ておく。

宮野小学生時代家庭内暴力や器物損壊罪を起こした。卒業文集の将来の夢「少年院の院長になりたい。オレ、悪いことをいっぱいした。万引き、ケンカ、たいがいのことはやった。だから、悪いことをやった奴の気持ちがわかる。オレなら非行少年と呼ばれてる連中を立ち直らせてやれる。オレに向いてるのはそういう仕事だと思う」。中学時代:柔道の選手。都大会2位。東海大学付属へ柔道で推薦入学。身長160cmと小柄だがガッシリとした体格。1年で中退中退後に暴力団員と知り合い、パシリとなる。暴力団の事務所やトイレの掃除・洗車・買い出し・構成員の手伝いなどをする。映画『凶悪』原作後藤良次と似た少年期〔本シリーズ(その6)参照〕。後藤良次と同様反社会性人格障害でサイコパスではないと思われる。

小倉:宮野の中学時代の1年下の後輩。身長約180cm。高校時代不良化して校内暴力を起こし、退学処分。アルバイトを転々とした後に宮野とともに暴力団員のパシリになる。暴力団員のパシリになってから宮野とともに頻繁に強姦などの性犯罪を起こす。その一つがこの女高生監禁殺人である。出所後の2004年に監禁事件を起こし、監禁された被害者に、女高生監禁殺人の前科をはオレが主犯だったと笑いながら自慢。「オレは10年間懲役を受けてきて、そこで警察や検事を丸め込むノウハウを学んだ。何があっても出て来られる。」「捕まっても警察をだますのは簡単だ」「簡単に刑務所から出れる。精神鑑定にひっかかるフリをすればいい」と、また「アレ(女高生監禁殺人)はマジで楽しかったなあ。」「サブリーダーとか言ってるが、オレこそ本当の主犯なんだよ。」と言っていた。2004年の監禁事件の被害者の1人男性27歳は、小倉の復讐を恐れ法廷で証言しなかった。小倉は復讐をするサイコパスの執念深さを持っている。女高生監禁殺人で小倉の刑が宮野より軽かったのは。小倉がサイコパスの狡猾さで罪を宮野にかぶせたかもしれない。映画『凶悪』原作でサイコパス三上静男が後藤良次に罪をかぶせたのと似ている。宮野は小倉のサイコパスを映し込んでサイコパス化したと考えられる。〔情報元:横山裕史 - Yourpedia 及び神作譲 – Yourpedia(2015/10/5閲覧)〕

尚、この例の高3吉田順子に加えられた残虐性は大変なものであるが、サイコパス犯罪としては特別に残虐と言うわけではない。小倉、宮野ともに暴力団と繋がっている。

例12「映画『凶悪』原作、三上静男事件2006年逮捕 企業内部閉鎖環境で行われた。反社会性人格障害(暴力団)との2重構造となったサイコパスまんじゅうの例。

他者の資産奪取や保険金殺人による寄生的生活と殺人・虐待を楽しむサイコパスの三上静男と、反社会性人格障害の後藤良次が融合しまんじゅうを形成した一連の事件と筆者は捉えている。多くの犠牲者がまんじゅうの最下層に位置する。虐待は主に三上静男の事務所の閉鎖環境で行われた。原作では、事務所は犠牲者に「住居を提供した」と表現されているが、実態はサイコパスによる「監禁」がふさわしい。サイコパスが反社会性人格障害者を暴力装置として金銭で取り込んだ形態のサイコパスまんじゅうを形成していた。各犯罪での金銭の授受は下記表参照。暴力団組長の後藤の配下の小野塚(映画では五十嵐)、鎌田(映画では日野)、もう一人の舎弟(獄中の後藤と三上の両方と話ができ、後藤に忠実な貴重な証言者。実名は公表されてない。原作p281)など組員全体でまんじゅうの皮になっている。サイコパス三上のコントロール下のまんじゅうの皮であるが、暴力団の組としての独立性もある2重の構造になっている。また、まんじゅう周囲に寄生的生活を支える土地利権や保険金利権に群がるように人が係っている。

下の表は、原作からリストアップした三上による犯罪。事件化したのはカーテン屋保険金殺人の1件だけ。原作を読む限り当局の努力も相当あるが、この表全体14件の事件化率1/14≒7%のわずかである。本事件は本シリーズの(その5)(その6)(その7)で詳細を述べているのでここではこれまでにする。

犯罪項目

時期

犯罪内容と後藤への報酬金額。ページは原作のページを示す

大塚某殺人・死体焼却

1999

大塚某を三上がネクタイで絞殺。死体焼却を後藤に手伝わしたp102。後藤へ680万円 p203

土地略奪、生き埋事件

1999

大宮市大地主名義人倉浪篤二生き埋め事件。後藤へ1200万円p108

設計会社幹部排ガス自殺

1999頃

上記倉浪さんが埋められたとみられる土地の開発設計会社幹部。乗用車排ガスホース自殺。理由不明。P277。

パチンコ屋保険金殺人

1999頃

パチンコ屋80歳保険金殺人未遂。後藤殺害依頼に同意。カーテン屋に専念し実行できず。p280-281。

富裕ママ殺害未遂

1999末

マンションを持つスナックママ殺害未遂。後藤は、女は殺さないと断る。別人が対応したが実行せず。pp285-286

スナックママ自殺強要

1999/12

スナック経営ママ入水自殺。三上の借金追い込み。保険金は不明。p278

1戸建略取と保険金殺人

1999頃

サラリーマンの一戸建てを三上が転売し、家族離散。保険金殺人未遂。後藤はカーテン屋に専念し実行できず。

2005/10

三上は犠牲者64歳をアパートに住まわせ監禁ガリガリに痩せて変死保険金不明。p268-274

カーテン屋保険金殺人

2000

カーテン屋67歳8千万円保険金殺人。7月水戸事務所に監禁8/13殺害。後藤らへ2000万円の約束。p111

岡田毅殺害未遂

2000/8頃

広域暴力団元会長の親族のブレーン的存在の岡田毅が倉浪篤二殺害の取り分が少ないと三上に不平。pp250-253

三上は後藤に銃を渡し1000万円で殺害依頼。何回かアプローチしたが、宇都宮事件で逮捕され実行できず。

土地資産略取と急死

2001/5

日立市60歳代土地を三上に取られる。水戸事務所に監禁、自宅にいるときに体調悪化し病院で急死。p275

藤田家

不動産略奪転売

名門造園業者藤田家5千㎡と1haの土地を三上が転売。

藤田幸夫の母親

保険金殺人未遂。酒浸りにして保険金を狙ったがなかなか死なず。その後母親消息不明。p290.

藤田幸夫自殺強要?

2004/10

造園業者長男藤田幸夫を水戸事務所に監禁、自殺。

2006/12/9三上静男逮捕。無期懲役確定。

例13「北九州監禁殺人事件2002年」企業内部家族内部閉鎖環境で行われた。この事件から下記4項など、特にサイコパスまんじゅう形成過程がわかる重要な事件。

(1)サイコパスがどのように健常者を犠牲にしていくか?=なぜ逃げられないのか?

(2)健常者はどのような過程を経て、自らサイコパスになるか?=サイコパスまんじゅう形成過程

(3)元警察官が体力の劣るサイコパスに屈服し、サイコパス化し、ついには虐殺されるのはなぜか?

(4)虐待を行なう時に必ず、どうでもいい、つまらない理由(カラ理由)を付けるサイコパスの特徴。

この事件は次項例14「尼崎監禁殺人事件」とともに太平洋戦争のサイコパスまんじゅうを分析する重要な参考にもなるので説明が長くなっている。情報元は、ウィキペディア「北九州監禁事件」、及び「まとめ 北九州監禁事件 - Google ドキュメント」(いずれも2015/10/15~25閲覧)。情報元「Google ドキュメント」をA4サイズでプリントアウトした全42ページのページ出典を(p00/42)のように記す。特記ないものはこの二つである。裁判については00回公判と記述した。【 】内の文章は特に強調したい筆者の見解など。

(A)事件概要と人的関係図と暴力装置(通電)

(a)事件概要

主犯松永太(逮捕当時42歳)は9人の近親者や知人親子を、監禁状態にし、7人が殺害された。他にも監禁虐待を受け約1880万円が奪われ海に投身自殺した親子で、自殺教唆罪の可能性があったが証拠が揃わず立件できなかった事件や逃亡して精神病院に入った犠牲者がいる。この犠牲者は裁判に証人出廷し、松永と顔を合わせないように工夫しても、震えて倒れるなどで結局証言はできなかったが、最後に「どうか松永を極刑にしてください。望むことはそれだけです」との発言を残した。他にも結婚詐欺の犠牲者など多数いる。サイコパスは多数の被害者を生み出すが、証拠が揃い裁判にできるのは一部分、氷山の一角だけのことが多い。学校でのサイコパスによるいじめ虐待の発覚が氷山に一角であるのと類似している。この事件は殺人の前の段階を含め1986年頃から2002年までの16年に渡る。このほぼ全過程に係わった純子と沙織(仮称)の2人が殺されずに生存しており、公判などの証言で全体像が分かる貴重なサイコパス事件である。主犯松永は小学校時代オール5の「成績優秀」で「頭の回転がいい」特徴があり松永型サイコパスと名付ける。587ページの1審判決を読み込み、弁護人に「ここはもっと掘り下げて」などと弁護に注文を付けた(p4/42)。松永が使った暴力装置「通電」はこのサイコパスまんじゅうの重要な位置を占める。情報元の沙織の生まれ年がGoogleドキュメント1981年生まれ、ウィキペディア1984年と異なる。ウィキペディアの年齢は全体に矛盾がなくなるので本シリーズではウィキペディアを採用している。下記表は筆者がまとめた松永の犯罪全体。人数事件化率は17%以下

犠牲内容

犠牲者

殺害:これのみ事件化

7人

虎谷久美男、緒方誉、緒方静美、緒方理恵子、緒方主也、緒方彩、緒方優貴

虐待を受け自殺

1人+子供

投身自殺親子。自殺教唆罪の適用が検討されたが立件できず。

虐待脱出、精神病院生活

1人+子供

親子。監禁して親に子を虐待させるまでになった。法廷証人、証言できず。

結婚詐欺被害

25人以上

被害届などで確認された被害女性。

物品購入の強制と虐待

6人以上

松永が社長の詐欺会社の従業員。1983~1992年の約9年間の社員

激しいDV(家庭内暴力)

1人+子供

子供とともに逃げた松永の元妻。離婚成立1983年頃?

殺害等の犠牲者 合計

41人以上 (事件化=裁判になったのは7人の殺害のみ。人数事件化率17 %以下

虐待する側になり生存

2人

緒方純子、虎谷沙織(仮称)。松永は2人を殺害しかかったところで発覚。

(b)人的関係図

下画像左関係図の右上「父(当時34才)」が最初に殺害された虎谷〔仮称〕である。右上角の「女性」が最後まで生き延びた沙織〔仮称〕である。関係図の右下の「女性」は、松永と純子がアパート2階の四畳半和室に監禁し、3か月半、連日虐待した女性。その女性は松永の命令で自分の次女3歳をも虐待する(疑似サイコパス前期)までに至った。3か月半後2階窓から路上に飛び降り脱出に成功し、殺されなかったが、精神科に長期入院した。法廷で証言を試みたが震えて証言できなかった女性である。下画像右は松永太。一見イケメンにも見える。サイコパスは外観ではわからない。最後まで無実を主張した。判決死刑。どのように無実を主張したかにサイコパスの特徴が出ているので後の項「(M)松永の無罪弁明(8回公判など)にみるサイコパスの特徴と犯罪心理学の課題」で記す。図左の純子の家族の緒方一家6人が次々に殺害された。緒方一家は普通以上の名門家族で特別にサイコパスに狙われやすいことはない。純子の義理の弟主也(かずや)は元警察官であったが殺害された。主也は第5の殺人で状況を述べる。

画像出典:左図、右の松永とも:北九州監禁殺人事件の全貌http://matome.naver.jp/odai/2135181593658354201(2016/1/25閲覧)

 (c)暴力装置(通電)

サイコパスは虐待に暴力装置を使う。松永が考え出し「通電」と名付けた。裸にした電気コードの先にクリップをつけ身体に挟んで瞬間的に電流を流す。激痛が走り目の前は真っ白になり患部は火傷を起こし酷い時には水膨れになる。性器に対し、男女関係なく通電。女性に対する性器の通電は裸で仰向けに膝を曲げて寝かせた状態で行った。2人同時の場合もあった。男性に対する性器の通電は、下半身裸で直立不動にさせてだらんと垂らした性器に通電した。女性に行わせることもあった。米軍がイラク軍捕虜に加えた虐待に類似している〔本シリーズ(その4) 「1.21戦争、内乱、政治的テロでのサイコパス」の写真参照〕。性器以外にも、手・腕・足・太股・乳首・口や耳や顎、などすべてが通電の対象。繰り返し通電を受けたものは、神経系が破壊され糞尿が垂れ流し状態になり、廃人状態になった。通電は映画『凶悪』で電気屋ジジの虐待場面に出てくる。通電を受けた生存者が次のような証言をしている。

「顔面に通電されると、1秒でもものすごい衝撃で激痛が走り、意識が遠のいて目の前が真っ暗になり、このままどうなるかという恐怖感があった(純子)」「顔面への通電で判断力を失い、何も考えられなくなったことがある。生きていくのが嫌になり、生きていたいという意欲が削がれた(純子)」「肉が食い込み、締めつけられ、千切れるような熱感で身体が捩れ、息ができず歯を喰い縛った(元社員)」「脳天に突き上げられる衝撃で目の前が真っ暗になって倒れて気を失った(元社員)」「筋肉が引き攣って痛くて火傷をし、一発で気持ちを圧し折られてしまう(男性)」「乳首に通電されるとちぎれるような痛みがあり、心臓がバクッとして胸にドンという電気の衝撃があり、仰向けに倒れたことがあった。眉毛への通電では、目の前に火花が散って真っ白になりそのまま失神した(監禁女性)」、性器の通電を受けた者から「性的な意味で自分という人間を否定されるような屈辱感があり、石にでもなってしまいたかった(純子)」。純子は「松永は通電を含めた虐待を、酒を飲む際の肴にしていたように感じた」と、虐待が快感になっているサイコパスの特徴を証言している。被害者は通電の前には必ず理由(カラ理由)が言い渡され、どんな些細な事も理由になった。「黙ってアメを食べたから」通電をする。サイコパスが健常者をコントロールするときには必ず理由を付ける。コントロールされている時はその理由が重要なものに思えているが、健常者はサイコパスのコントロールから離れるとその理由が全く意味のないものであることに気が付く呪縛解放。ほぼすべての殺人の実行に関与した純子は松永逮捕から3年で呪縛解放の状態になり「今の私にはあの時の当時の自分が信じられません。どうしてあんなことができたのだろうと思います。」〔裁判最終意見陳述(p38/42)〕と述べた。

【この呪縛解放と同様のことは太平洋戦争の終結時に多くの人に見られた。『どうしてあんなことができたのだろう』と。「国のため」「家族のため」が「カラ理由」であったことがはっきり見えたときに呪縛解放に向かった。「国のため」にも「家族のため」にもならず、逆に国や家族がバラバラになり破壊され、個人の尊厳が破壊された。戦争に嫌気がしていただけでなく、サイコパスの、理由なくただ多くの人を殺したい。ただ憎み/憎まれたい。何もかもめちゃくちゃに破壊しつくしたいなどの戦争だったという面が強いことを多くの人が感じとったためと思う。当時の人はサイコパスの逆転欲求のことは知らなくても、蔓延していた実在のために感じることができたと考えられる。疑似サイコパス後期まで至ってしまった軍人などの中には、その後も呪縛解放が十分に行われないまま、いつまでも「国のため」「家族のため」の戦争だったと思い込んだものが残った。旧日本軍のうち、海軍は組織がほぼ壊滅していたが、大本営の中核となった陸軍幹部の公職追放は形式的で温存され、米国進駐軍の指導の下に、自衛隊の前身の警察予備隊に旧日本軍幹部1057〔佐官級(大佐・中佐・少佐,主に連隊または大隊の指揮官や参謀)405名、尉官級(大尉・中尉・少尉,下士官/兵を率いて最前線で直接戦闘を行う)407名、戦中最後の陸軍士官学校卒業生245名〕が旧日本軍の肩書が正式に認められて幹部に滑り込んだ。警察予備隊を拡充して保安隊とした1952年にさらに大佐級旧陸軍10旧海軍1が滑り込んでいる〔情報元:ウィキペディア警察予備隊2016/4/28閲覧〕。旧陸軍将校組織は警察予備隊に入らず服部機関と言われた組織のように直接政治中枢に影響力を持った〔情報元:ウィキペディア服部卓四郎2016/4/28閲覧〕。それらの影響は現在の自衛隊幹部や政治家へと繋がっている。ドイツなどでは旧ナチス幹部は徹底的に社会から排除されたが、日本では自衛隊や政治組織の中に温存された。自衛隊幹部や政治家の中に太平洋戦争の呪縛を引きずったものが国民の平均より多いと思われるのはこのためと考えられる。このことが現代の戦争映画に影響を与えている可能性がある。これについては後の項「(3)戦時下のサイコパスの特徴行動」でも触れる】

以下(その4-8)へ続く。

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