「映画『凶悪』残虐性は『人間が持つ普遍的な暗部』と描く。だが最新科学は先天的障害であるとする(その4-1)」の「1.21戦争、内乱、政治的テロでのサイコパス」の次に入る項目ですが、文字数制限で(その4-2)としています。本シリーズ(その1)でも述べましたが、映画『凶悪』のように暴力、残虐行為を扱う映画が多数あり、サイコパスを理解することはこのような残虐映画を批評するうえで重要なのでまとめている。また、戦争は典型的な暴力・残虐行為で、サイコパスとの関係性が強く、戦争映画を批評するうえでもサイコパスの理解は重要と考えている。本シリーズ(その1)~(その7)掲載後約2年がたち、「神戸連続児童殺傷事件」の酒鬼薔薇聖斗と名乗った元少年Aが2015年に手記『絶歌』を出版し、女性サイコパス角田美代子の「尼崎監禁殺人事件」の最後の被告瑠衣の判決が2016/2/12日に出たなど、サイコパスに関する情報が豊富になったので追記したものです。
1.22サイコパスの存在原因と戦争
昨年(2015年)安保法案〔戦争法案〕が国会を通過するときロンブーの田村淳がTwitter2015/09/16で「 安保法案賛成の人も反対の人も戦争したくない想いは同じじゃないのかな? 」と述べていたが、これは正しくない。「戦争をしたいと強く想っている人」がいる。それがサイコパス。サイコパスはその病理から潜在的に戦争を強く渇望している。戦争と聞いただけで興奮し、殺し殺される場面を思い浮かべ、また武器を使ってあらゆるものを破壊し、多くの人が苦しんでいること思い、また皆殺しにすることを想像してワクワクすると思われる。「会津若松母親殺害事件2007年」の犯人高3男子17歳は寝ている母親47歳を包丁で刺し、ノコギリで首と右腕を肩付近から切断。母親の手には抵抗した際に出来たと思われる無数の傷。動機について「誰でもいいから殺そうと考えていた」「たまたま近くに母親がいたので殺した」「戦争やテロが起きないかなと思っていた」と供述。中学校時代は野球部のエース、スキーのジャンプもうまく、何事にも一生懸命な優等生。県内で有数の進学校生徒である。〔情報元:ウィキペディア「会津若松母親殺害事件」2015/9/21閲覧〕。この犯人はサイコパス特性が強く、戦争を強く望んでいる。
本シリーズ(その1)で述べた凶悪なサイコパスのテッド・バンディは「優秀な成績で大学を卒業」し「州知事や連邦上院議員にもなれるだろう」と称賛されたワシントン州共和党員だった。後で述べる例13「北九州監禁殺人事件」主犯松永も小学校時代はいつもオール5の成績優秀で弁がたつ、「頭の回転がいい」サイコパスである。松永を接見した女性は「大企業の管理職などで成功できたはず」と印象を述べている。政治中枢や経営幹部や自衛隊幹部などにもサイコパスが入り込んでいるか、その影響を受けている可能性があると考えるべきである。サイコパスの割合は250人に1人程度である〔本シリーズ(その3)「1.11(1)サイコパスの割合」参照〕。経営組織のサイコパスは項目1.23を参照。
この1.22項ではまずサイコパスの逆転欲求を説明し、次に平和時のサイコパスの特徴行動と戦時の兵士の特徴行動から、戦時下でサイコパスは解き放されることを示す。映画『凶悪』原作で形成されていたサイコパスまんじゅうなどの例を参考に、平和時と戦時のサイコパスまんじゅうを詳細に分析し、サイコパスにより健常者がサイコパス化する過程を示す。その後でサイコパスの存在原因は戦争を繰り返してきた人類の歴史に根本があるという筆者の考え方を述べる。平和時のサイコパスの説明の所々に太平洋戦争に関する記述が出てくるのは、このため。太平洋戦争は「サイコパスの戦争」の面が強いことを示し、いくつかの戦争映画を概観する。また、サイコパスは「いじめ」と密接な関係があるので、関連部分で記述している。
本項は暴力や残虐行為の描写で不快に感じると思われる表現を含みます。また、一部残虐な画像を使用しているが、サイコパスの本質を明らかにするためにやむを得ず掲載しています。残虐画像を見てマネ〔模倣〕をする人がいるのでふさわしくないという人がいるかもしれないが、サイコパスの残虐性を含む実態を把握しなければ、残虐映画を評価し、効果的なサイコパス対策を考えることは出来ないと思うので、あえて実態を明らかにするようにしています。「3)戦時下のサイコパスの特徴行動」では残虐画像は小さくしているので、気持ち悪いと感じたら画像を大きくせず、すぐに先へ進むようにしてほしい。健常者は残虐な画像が心から消えなくなり、軽いPTSD(心的外傷後ストレス障害)状態になることがあると思うので注意してください。その場合無理をせず読むのを停止してください。もし、残虐行為の描写や画像に魅力を感じ引き付けられる人がいたら、その人はサイコパス特性を持っている可能性があるので、自分のサイコパス特性を自己分析し、サイコパスが表面化しないように抑え込む努力をしてほしいと思います。注意すべき画像は(凝視注意)または(画像拡大注意)としています。
ここに述べる事件例に不運にも遭遇して殺害された遺族の皆さんや傷を負った皆さんには、触れたくないと思われることが記述されているかもしれませんが、二度とこのような事件を起こさせないためにも事実を把握する必要があると考えておりますので、ご理解いただきたく。また、亡くなられた被害者の皆さまには心からご冥福をお祈り申し上げます。
本項の目次
1.22サイコパスの存在原因と戦争
(1)サイコパスの精神構造=逆転欲求構造
1)サイコパスの逆転生存欲求
2)サイコパスの逆転認知欲求
(a)逆転認知欲求を示す絵、コラージュ、光景の例(凝視注意)
(b)動物や人体をぐちゃぐちゃにしたい衝動の例
(c)物や草花をぐちゃぐちゃにしたい衝動の例
(d)認知できないことを求める衝動の例
3)サイコパスの逆転愛情/逆転承認欲求
(a)ネコの「対象がないのに怒る」実験
(b)サイコパスの偏桃体は小さく、愛情あふれ献身的な利他的な人の偏桃体は大きい
(c)神戸連続児童殺傷事件の元少年Aの逆転愛情/逆転承認欲求
(d)サイコパスは健常者を自分と同じサイコパスにしたい衝動を持つ
a)サイコパスの心の交流破壊と人間関係のロボット化衝動
b)サイコパスの人の意思破壊と個人のロボット化衝動
(e)健常者が「他人の不幸は蜜の味」と感じることとサイコパスが他者を虐待することは全く別
4)サイコパスの逆転安全欲求1(逆転痛み欲求)
(a)サイコパスの「痛み」が快感になるメカニズム
5)サイコパスの逆転安全欲求2(逆転残虐欲求)
(a)サイコパスの「逆転快」の強烈さを麻薬の関係で掴む
6)サイコパスの性的サディズム論の誤り
(a)健常者の性的快感
(b)サイコパスの快感は性欲とは別物
(c)サイコパスの性欲以外の本能行動の問題
7)サイコパスが優しい顔から悪魔に豹変するとき
(a)豹変の3つの時期
(b)サイコパスは健常者が逆らえない状態になったとき豹変期に入る、それまで仮面をかぶる
8)サイコパスは虐待に全能力を注ぐ
(a)サイコパスは虐待道具、武器、薬物などの知識をフルに使って残虐行為をする
(b)サイコパスは執念深く何年たっても特定の犠牲者を捕まえようとする
9)サイコパス自身は自分をどう感じているか
(a)自分がなぜ残虐行為をするかわからない
(b)離人症的感覚を持つ
(c)虐待犠牲者に代償感覚を持つ
(d)虐待行為に理由付けを必要としている
(e)心に正常と悪魔の両者がいることに苦しむことがある
10)サイコパスの逆転欲求構造のまとめとサイコパスまんじゅう
(a)サイコパスの逆転欲求は統一した全体で捉える
(b)サイコパスは健常者と類似の多様な個性
(c)サイコパスには単独型とまんじゅう型がある
(d)サイコパスまんじゅう内部での健常者のサイコパス化過程
(e)サイコパスまんじゅうの構造
(f)サイコパスまんじゅうのいじめ集団(虐待集団)と反社会性人格障害者のいじめ集団(反秩序集団)
(g)サイコパスまんじゅう拡大の特徴
11)用語
(a)「拷問」と「虐待」の使い分け
(b)「反社会性人格障害」と「反社会性パーソナリティー障害」
(c)傍辺縁系、大脳辺縁系、脳辺縁系、辺縁系は同義語
(2)平和時のサイコパスの特徴行動
1)首の切断
例1「佐世保女子高生殺害事件2014年」
例2「会津若松母親殺害事件2007年」
例3「島根女子大生死体遺棄事件2009年」
例4「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件1989年」
例5「神戸連続児童殺傷(酒鬼薔薇聖斗)事件1997年」
2)身体解体
例6「名古屋妊婦切り裂き殺人事件1988年」
3)毒殺
例7「静岡女子高生母親毒殺未遂事件2005年」
例8「イングランド殺人医師ハロルド・シップマン(Harold Fredrick Shipman)事件1998年」
例9「マサチューセッツ殺人看護人ジェイン・トッパン(Jane Toppan)事件1901年」
例10「ロンドン毒殺魔グレアム・フレデリック・ヤング(Graham Frederick Young)事件1971年」
4)放火
5)監禁虐待:サイコパスまんじゅう形成による事件
例11「女子高生コンクリート詰め殺人事件1988年」
例12「映画『凶悪』原作、三上静男事件2005年逮捕
例13「北九州監禁殺人事件2002年」
以下は現在原稿作成中です。以下の原稿作成が進んだ場合に、作成済の部分に手を加えることがあるかもしれませんので予めご了承ください。
例14「尼崎連続殺人事件2011年」
(3)戦時下のサイコパスの特徴行動
1.23経営とサイコパス
(1)健常者の欲求構造とサイコパスの出現理由
(2)ケヴィン・ダットン(Kevin Dutton)のトロッコ問題の誤り
1.24戦争映画の概観:「男たちの大和」「永遠の0」など
1.25元少年A更生の失敗と『絶歌』:元少年Aへの呼びかけ
以下は本文
(1)サイコパスの精神構造=逆転欲求構造
サイコパスが表情から相手の心を読めず、恐怖心がないことなど、全般の特徴は本シリーズ(その2)~(その4)を参照。この項では、さらに深くサイコパスの精神構造に入り込んで、サイコパスの心理は「人間が内に秘める心の闇」〔映画『凶悪』プログラムintroduction〕というような誰でもが持つものではなく、ごく一部の人が持つ偏桃体機能不全という病気から生ずる逆転欲求という病状であること示す。
健常者が強く恐怖を感じ、嫌悪するあらゆることが、サイコパスにとっては機能不全の偏桃体がわずかに反応する麻薬、魅力的なこと、になり健常者と逆転した欲求構造になっている。なぜ逆転してしまうのかは後の項目「4)(a)サイコパスの「痛み」が快感になるメカニズム」で示す。健常者が、激しくのどが渇いて水を求めるように、サイコパスは機能不全の偏桃体が要求する残虐行為を激しく求める。偏桃体は動物生存の根源の位置を占め、五感などのすべての感覚器官からの情報が他の脳組織を経由して入射され、その情報が生命の大原則にとって好ましいものか好ましくないものかを評価判断を行う根源になっている。その根源部位の病気である。残虐行為を行い一時的に渇きが解消しても、時間がたつと再び渇き、残虐を求める。より強い刺激を求めて残虐性がエスカレートする〔本シリーズ(その2)「1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動:K.B.症候群」及び(その4)「1.18サイコパスが邪悪で暴力的である根本原因」参照〕。偏桃体の機能不全以外でも暴力行為にかかわる脳部位、例えば反社会性人格障害や統合失調症や薬物依存にかかわる部位は存在するが、その場合はサイコパスとは言わない。〔反社会性人格障害や統合失調症などについては本シリーズ(その3)「1.15 サイコパスの年齢や社会的経済的地位などとの関係」参照〕。健常者の欲求構造全体については後の項目「1.23(1)健常者の欲求構造とサイコパスの出現理由」で述べる。ここでは主要な逆転欲求を説明する。逆転欲求の考え方は、筆者独自の考え方で、心理学会等で認められたものではありませんが、サイコパスの理解のために不可欠な考え方と思っています。
1)サイコパスの逆転生存欲求
下記表は生存欲求の健常者とサイコパスの比較。逆転生存欲求は健常者が自分の心の延長上で理解することはできない。尚、健常者でも、サイコパスの虐待の影響下で絶望すると真白化を経て疑似サイコパス化し平気で人を殺すようになる。〔真白化から疑似サイコパスへ至る過程については後の項「10)(d)サイコパスまんじゅう内部での健常者のサイコパス化過程」参照〕。また健常者も、他人に対して冷淡な面を本質的に持っているがサイコパスの冷淡とは全く別のもの。〔これについては後の項目「1.23(1)健常者の欲求構造とサイコパスの出現理由」参照〕。NHK心と脳の白熱教室第3回「あなたの中のサイコパス」の講師ケヴィン・ダットン(Kevin Dutton)はサイコパスの冷淡と健常者の冷淡を同じにとらえる誤りに陥っている。〔これについては後の項「1.23(2)ケヴィン・ダットン(Kevin Dutton)のトロッコ問題の誤り」参照〕。
健常者の生存欲求 |
サイコパスの逆転生存欲求〔真空化した生存欲求〕 |
どんな困難があっても生きたい、自己実現(成長の限界まで到達)したいと思う。 |
生きたくない。自分を殺してほしい。自分は生まれてくるべきではなかったと思うことがある。簡単に死ぬ。 |
理由がなく人を殺そうと思わない。 |
人を殺したくてしょうがない。殺すことに理由はなく、ただ殺す。カラ理由(表面的な中身のない理由)を言うことはある |
逆転生存欲求=〔真空化した生存欲求〕としているのは、生存の基礎となる偏桃体の機能が失われて、心のよりどころを失った状態、偏桃体が真空になってしまった状態として「真空化」と表現している。
以下に逆転生存欲求が表れていると思われる5例を示す。サイコパスは、一般的には最後まで自分の犯罪を否定し続け、明白になった事実についても真実を語ろうとしない傾向がある〔『何が彼を殺人者にしたのか』2011マイケル.ストーン(Michael H.Stone) p30、イースト・プレス。以下M.ストーン〕。サイコパス自身が自分でもなぜ犯罪をするのか、本当のところが分からないので、真実を語れないためと筆者は思う。以下5例の犯人の様に。
・附属池田小事件2001年(小学生8人刺殺、教師を含む15人重軽傷):犯人宅間守(当時37歳)の判決時の法廷発言「どうも死刑にしてくれてありがとう!、裁判長さん。 感謝するわ!わし、もうはよう、死にたい思うてたから、ほんま助かる。やっと死ねるんやなーと思うとほっとしたわ」「なんで、幼稚園にせんかったんやろ?、幼稚園ならもっと殺せた」。弁護団が控訴したが、宅間が取り下げ、死刑を早くするよう申し出て、判決から約1年後2004年に死刑執行。〔情報元:ウィキペディア附属池田小事件。宅間守の生い立ち(附属池田小事件)http://matome.naver.jp/odai/2136425953880976101 (2016/2/4閲覧)〕
・大阪姉妹殺害事件2005年(帰宅時にドアを開けたところを押し入り姉妹を殺害):犯人山地悠紀夫(当時22歳)「母親を殺したときの感覚が忘れられず、人の血を見たくなった」「誰でもいいから殺そうと思った」と供述。この事件の5年前の16歳の時に金属バットで母親を滅多打ちにして殺害し、殺害時に射精をしている。中等少年院送致の保護処分を受け。3年6か月後の2004年3月退院。退院後1年8か月でこの姉妹殺害事件を起こした。弁護人が差し入れたノートに「何のために生まれてきたのか、答えが見つからない。人を殺すため。もっとしっくりくる答えがあるのだろうか。ばく然と人を殺したい」と記している。接見中「生まれてこない方がよかった」と話した。弁護人権限で控訴したが山地が望んで控訴を取り下げ死刑が確定。2009年25歳の時に死刑執行。〔情報元:ウィキペディア大阪姉妹殺害事件、他〕
「神戸連続児童殺傷事件1997年」の酒鬼薔薇聖斗と名乗った元少年Aは手記『絶歌』〔pp230-235〕で「事件当時の自分を見ているようだ」と山地悠紀夫とA自身の共通点を分析している。Aも逮捕当時は殺されることを望み「死刑はいつですか」「一刻も早く死刑台に連れていってほしい」と尋ね、刑事の「お前はガキや、死刑にはならん」の答えに「何を言ってんだ、このオッサン」「救いは『死刑』だけだった」〔『絶歌』p11、pp14-15〕と当時を振り返っている。
・秋葉原無差別殺傷事件2008年(7人死亡、10人重軽傷):犯人加藤智大(ともひろ)(当時25歳) 携帯サイトの電子掲示板に、「秋葉原で人を殺します」とのタイトルで、「車でつっこんで、車が使えなくなったらナイフを使います みんなさようなら」と掲載した後に実行。犯行理由の供述は、取調官などの話に合わせ変遷。本人もなぜ犯行に及んだかよくわからない言動。派遣社員の劣悪な雇用条件や家庭環境が犯行理由の可能性は少ない。犯行前に中央線に飛び込む自殺を計画、実行せず。2015年2月死刑確定。2016年3月現在東京拘置所に収監中。〔情報元:ウィキペディア秋葉原通り魔事件、他〕
・千葉君津祖父母殺害事件2015年(祖父(67)と祖母(64)を殺害):犯人高2男子17歳。「誰でもいいから殺そうと思った。通行人でもいいが、逃げられると思い、身内にした。祖父母に恨みもトラブルもない」と供述。ハンマー、ナイフ、つるはしを使い何度も殴ったり刺したりした。殺害から3日後に自首。「学校の人間関係のストレスを解消するために殺した」と供述した〔情報元:日経新聞2015/12/28朝刊と夕刊〕。健常者はどんなにストレスが溜まろうとも、理由なく人を殺そうとは思わない。犯人はサイコパス特性が強い。おそらく本人もなぜ自分が人を殺すのか理由が分からないと思う。警察はこのような事件を「強い殺意による犯行」とし、その「動機」を探ろうとすることがあるが、おそらく見つからない。従来の「物取り、怨恨」の動機捜査はサイコパスには通用しない。「快楽殺人」も正確ではない。「快楽」という前向きな衝動ではなく、犯人は深刻な欲求構造の問題を抱えている。「サイコパス犯罪」という概念が必要と思う。
・旧ソ連時代のロストフの切り裂き魔:52人の少年少女を殺害し、内臓などを生で食べた殺人鬼。アンドレイ・チカティロ(Andrey Romanovich Chikatilo)。「私は生まれてくるべきではなかった。死刑になって当然だ」と言ったという。(本シリーズ(その5)「3.(2)“先生”がカーテン屋に拷問を加える時に浮かべた「愉悦の表情」の違い」の項参照)。
下の画像左は池田小事件の宅間守。中央は姉妹殺害事件の山地悠紀夫の逮捕時、この微笑みを元少年Aは「彼の微笑みの意味が分かる気がした。」「あれほど絶望した人間の顔を、僕は見たことがなかった。」と心情が自分と似ていると述べている〔『絶歌』p235〕。右は秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大。外見でサイコパスはわからない。
画像出典左:宅間守の三大名言http://fknews-2ch.net/archives/31037748.html (2016/2/20閲覧).画像出典中央2つ:山地悠紀夫http://x37.peps.jp/shinda10/free/?cn=47 (2016/2/20閲覧).日本を震撼させた猟奇殺人http://www.pakfiles.com/watch--3566728 (2016/2/20閲覧)。画像出典右:StarHills 替え玉http://starhills.cocolog-nifty.com/kaedama/images/2008/06/17/photo_2.jpg (2016/2/20閲覧)
健常者でもあまりにも厳しい現実を前にしたとき、もう死んだほうがましだ、と思うことがあるかもしれないが、サイコパスは厳しい現実がなくても死にたいと思う。「扁桃体を失えば、人生から一切の個人的な意味が消失する」〔『脳の仕組みと脳内物質の働き。情動の爆発』http://www.geocities.jp/eastmission7/b-system.html (2016/2/23閲覧)〕
精神分析学の開祖ジークムント・フロイトは多くのサイコパスと思われる患者を診て、誰でも「死の欲動」があると考えた。サイコパスにはあるが、健常者に「死の欲動」はない。フロイトはサイコパスの逆転生存欲求と健常者の正常生存欲求を混同して、統一して健常者を理解しようとしたため混乱した理論になった。しばしば理論の変更をしているが、ついに基本的な誤りを正すことはできなかった。フロイトは無意識世界などに多くの業績を残し、この誤りがフロイトの功績を無にするものではないが、現在でもフロイト派として誤りを引きずっている心理学者が精神分析学の中には多数いる。〔フロイトについては本シリーズ(その4)「1.18、(3)2つの誤った見解」も参照〕。
2)サイコパスの逆転認知欲求
下記表は認知欲求の健常者とサイコパスの比較。
健常者の認知欲求 |
サイコパスの逆転認知欲求〔真空化した認知欲求〕 |
知ることを喜びとして求める、認知することの欲求。知的好奇心=科学的認知欲求がある。他者が蓄積した知識の上に新しい認知を統合し、知識が体系的で統合的であることに魅力を感じる。 |
認知できないことを求める欲求。「いったいどうなっているんだ」という混沌状態に惹き付けられる。自ら対象をぐちゃぐちゃな状態にして「いったいどうなっているんだ」と確かめるようにぐちゃぐちゃにする。「人体をぐちゃぐちゃにすること」に強く引き付けられる。ぐちゃぐちゃにした対象物は逆転欲求満足の『作品』『宝物』として、記録を残す傾向がある。体系的統合的知識に魅力を感じない。 |
以下の例で逆転認知欲求がどのようなものかを理解する参考にしていただきたい。
(a)サイコパスの逆転認知欲求を示す絵、コラージュ、光景の例(凝視注意)
下の上段左の絵は「1997年神戸連続児童殺傷事件」の酒鬼薔薇聖斗と名乗った少年A(以下元少年A、少年A又はA)の犯行当時14歳頃の絵(凝視注意)自画像とも言える。上段右は犯行ノート?に描かれていた。
下段のコラージュは昨年2015年10月に元少年A〔32歳〕が立ち上げたホームページ『存在の耐えられない透明さ』に掲載された。このホームページは規則違反があるとして、開設の3日目にはネット管理者により凍結されている。コラージュ左の中央の黒い服を着て顔がゆがんで、目が一つなのは元少年A自身。サイコパスは自分がぐちゃぐちゃになってこのコラージュのように心(脳)が無いように感じていると思われる。またこれは偏桃体が機能していない状態の感覚と思われる。中央下のハート形と上から垂れ下がっている5つの塊はナメクジで作られている。元少年Aは塩水を掛けられ、粘液を出し、のたうち回るナメクジを見て「地獄絵図」として魅力を感じている。少年時代に切り刻んだナメクジに今も強い執着がある〔元少年Aホームページ〕。コラージュ右は同じナメクジを周囲に配置し、自分自身だけを変えたもの。一つ目にして、その目でこちらを覗いている。サイコパスの離人症的感覚を表しているように思う。この感覚については後の項「7)サイコパス自身は自分をどう感じているか。(b)サイコパスは離人症的感覚を持つ」参照。
画像出典上段2枚:酒鬼薔薇聖斗が描いた絵- ラビット速報http://livedoor.4.blogimg.jp/rabitsokuhou/imgs/c/8/c857ea6a-s.jpg (2016/3/18閲覧)画像出典下段2枚:気まま備忘録【神戸連続児童殺傷事件】酒鬼薔薇聖斗こと元少年A、公式ホームページ『存在の耐えられない透明さ』、発見される…不気味なナメクジ絵も公開【画像】(※閲覧注意)http://blog.livedoor.jp/aokichanyon444/archives/55362635.html (2016/3/18閲覧)
元少年Aが逆転認知欲求を現在も持ち続けていることと、再び猟奇事件を起こすかどうかは別の視点が必要なので注意をしてください。少年Aの医療少年院での更生方針が誤りであったことについては後の項「1.25元少年A更生の失敗と『絶歌』:元少年Aへの呼びかけ」で述べる。元少年Aの逆転欲求を絵やコラージュなどに表現する欲求は強く、その強さは健常者の表現欲求(自己表出欲求)以上と思われる。これは、偏桃体と関連部位に障害があるが、「やる気」をつかさどる前頭葉などの大脳新皮質は正常であることによると思われる。生命の根源的な基盤が存在しない(偏桃体機能不全)で、糸の切れた凧のような心象を表現しないではいられない、極限状態を思わせる。表現しなければ存在していることができないくらい深刻な表現欲求。この絵やコラージュを制作するときにAは脳にドーパミンを分泌する快感状態が形成され、扁桃体がわずかに揺さぶられていると考えられる。本シリーズ(その6)「(3)“先生”がカーテン屋の頭を坊主にし、体中に油性マジックで落書きした場面の違い」に掲載したジェイソン・バーナム(Jason Barnum)37歳が自分の頭部に描いた入れ墨も逆転認知欲求を感じさせるものである。映画『凶悪』原作のサイコパス三上静男は犠牲者カーテン屋を坊主にして体中に絵を描いている。また後の例11「女子高生コンクリート詰め殺人事件」のサイコパス小倉も犠牲者の女子高生の顔に絵を描いている。いずれもAが描く絵と同様気持ち悪い逆転認知欲求を示すものであると推測する。
元少年Aは、淳君(当時11歳)の首を切断し両目をナイフで十字に刺し、口を両側に耳まで裂いた頭部を、夜中の中学校の校門に置いた光景を思い起こし「告白しよう。僕はこの光景を美しいと思った。」「もう、いつ死んでもいい。そう思えた。自分はこの映像を作るために、この映像を視るために、生まれてきたのだ。すべてが報われた気がした〔『絶歌』p99〕」と述べている。健常者には、この美的感覚、逆転認知欲求は理解できない。少年Aはこの情景を5、6分ほど眺めながら勃起し、性器に触れることなく射精しているが、これについては次の(b)項も参照。
(b)動物や人体をぐちゃぐちゃにしたい衝動の例
少年Aは小6の時、猫を殺し目口腹などを切り裂きめちゃくちゃにした後、頭部にコンクリブロックを置きその上から踏んでつぶしている。「砕けた頭蓋骨からピンク色の脳がはみ出し、『猫だった』ことさえ判別できないほどグチャッグチャだった〔『絶歌』p63〕。」このとき少年Aは勃起し射精している。本シリーズ(その2)で述べたテッド・バンディ(Theodore Robert Bundy =Ted Bundy)も、女性を殺害し切り刻んだり、切断した頭部を万力(物を挟む道具)でつぶしグチャグチャにしたりしたときに射精している。逆転認知欲求と性的現象が結びついた性的サディズムと言われる状態に含まれるが、これについては後の項「4)(a)サイコパスの性的サディズム論の誤り」参照。
ブログの文字数制限を超えますので以下(その4-3)へ続く。