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ほぼ週二 横浜の山の中通信

人と異なる視点から見る

浮体式洋上風力発電を応援11~福島沖の問題を整理する~

2013年11月04日 | 洋上風力発電

以前にも、丸紅など企業連合十社+東京大学のコンソーシアム、それに金を出している経産省が推進している福島沖の浮体式洋上風力発電について、問題点を指摘しました。

現在、福島沖のプロジェクトにおいて、2000kW風車が設置(正式な運転は未だ)されており、計画が進んできているので、改めて問題点を整理します。

なお、コンソーシアムのサイトが出来ているので、紹介します。

http://www.fukushima-forward.jp/index.html

その前に、福島沖の計画をおさらいします。

201236日のコンソーシアムの資料では、計画は以下のようになっていました。

http://www.marubeni.co.jp/dbps_data/_material_/maruco_jp/120306a.pdf 参照。

 

⇒印は、変更された実際の日程です。

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(1)第1期実証研究事業(2011年度~2012年度) 

⇒実際は201311月運転開始に延びています

・浮体式洋上サブステーション

 浮体:JMU、変圧器と風況観測機器を搭載

ダウンウィンド型風車搭載セミサブ 

浮体:三井造船、2000kW風車:日立製作所

 

(2)第2期実証研究事業(2013年度~2015年度)

 ⇒7000KW風車設置は、2014年夏と報道されています。

 2015年度までと言う期限は変更されてないようです

大型油圧式風車搭載用セミサブ 

浮体:三井造船、 7000KW風車:三菱重工

大型油圧式風車またはダウンウィンド型風車 搭載用アドバンストスパー

   浮体: JMU  7000KW風車:三菱重工または?

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(注)大型油圧式風車

増速方法が従来のギアでは無く、液体が循環する方式で、7000kWの世界最大級の風車が製造可能としている。三菱重工が、この技術を持っている英国のベンチャー企業アルテミス社を買収した。

(注)ダウンウィンド型風車

  風車のロータが風下側にある風車。陸上の風車は逆のアップウィンド型が多い。

  詳しくは日立のサイト参照。

 http://www.hitachi.co.jp/products/power/wind-turbine/feature/rotor/index.html

(注)セミサブ、アドバンストスパー

  風車などが載っている浮体構造の呼び名。セミサブには、3本足と4本足がある。

  コンソーシアムのサイト参照。

(注)JMU

  ジャパン・マリン・ユナイテッド(IHIマリン・ユナイテッドとユニバーサル造船が合併してできた会社)

 

それでは、問題点を四つ指摘します。

2000kW風車の経験が7000kW風車に生かされない

2014年夏に、7000kW風車を設置するということは、2000kW風車の結果が出る前に、7000kW風車を作ることになる。これでは、2000kW風車も7000kW風車もイチかバチかの一発勝負になってしまう。こういう場合は、通常、コストを無視し、安全サイドで物を作ります。

前にも書きましたが、このコンソーシアムのメンバー社は、実際の海域で、2000kW風車より小さい風車での実験は行っていません。せめて、2000kW風車のデータを7000kW風車に生かして欲しいが、上記日程ではそうはなりません。

これでは、科学とも技術開発とも言えず、バクチでしょう。

当初の予定通りなら、2000kW風車の経験が7000kW風車に生かされたかも知れませんが、所詮日程に無理がありました。

 

2000kW風車の浮体の経験が、7000kW風車の浮体に生かされない

福島沖約20Kmというと、荒海です。こういう荒海での浮体の挙動を次の7000kW風車の浮体に生かせる時間的余裕はありません。

風車と同様に、上記の日程では、2000kW風車の浮体の結果が出る前に、7000kW風車の浮体を作ることになります。

 

③いまさら、風向・風速を測ってどうするの?

風車の横に設置しているサブステーションには、変圧器の他に、タワーが設置され、風向計・風速計が設置されています。

そもそも、福島沖には、風力発電に適した風があるので、この海域が選ばれたのでは?何をいまさら測定する必要があるのでしょうか?

NEDOが実施している、銚子沖と北九州沖の着床式(海底に固定)式の洋上風力発電実験においても、風向・風速を観測するタワーが設置されています。銚子沖と北九州沖、福島沖ともに、同じ東大の教授が関わっています。そして、彼の論文を見る限り、専門は風車その物ではなく、風況の観測です。したがって、彼のために風向・風速を観測するタワーを設置しているとしか思えないです。

  (注)NEDO

     新エネルギー・産業技術総合開発機構。経産省系

 http://www.nedo.go.jp/fuusha/

     着床式の銚子沖と北九州沖の風車の紹介が載っています

 

④福島沖が浮体式洋上風力発電に適しているか?

報道によると、福島沖は風も強いが、波も荒いということです。その証拠に、2000kW風車を固定している鎖は6本で、鎖1本は重さ260Kgの鉄の輪を820メートル繋いだもので、総重量は320㌧という巨大なものです。

また、沖合約20Kmというと、送電線を海底に施設するだけでもコストがかさむと思われます。こういうコスト無視の実験に民間企業が参加してもメリットは限定されるでしょう。報道によると、震災以前から福島沖での洋上風力発電を計画していたと言っていますが、本当でしょうか?復興と称する予算を使用するのが一つの動機のように思えます。

 

福島沖の事業を見るにつけ、環境省の五島列島椛島沖の浮体式風力発電検証事業の向うを張って、経産省として、とにかく作って「日本初」あるいは「世界初」を狙うという思惑が見えてきます。福島の復興は二の次で、経産省と東大教授双方の思惑が合致した計画と言う感じがします。

こういうバクチのような開発計画は、風車に関わる関係者、および福島の人にとっても不幸です。技術は正直なもので、どこかで無理なことをすると、倍返しで仕返しが来ます。

ところで、三菱重工は、H-Aロケットでは成功していますが、造船・リージョナルジェット機では、成功しているとは言えません。7000kW風車を開発する余裕はあるのでしょうか?大いに疑問です。

私が浮体式をメインに日本の洋上風力の紹介をブログで書こうと思ったのは、そういう資料が探しても無かったからです。

日本の洋上風力の文献を探すと先ず件の東大教授の記述に行き当たります。しかし、彼の書いた文章を読むと、海外の洋上風力は紹介してあるのに、日本の洋上風力は一言も書いてありません。それで、さらに探すと、博多湾での実験や佐世保湾での実験(五島列島椛島沖の一段前の計画)が出てきて、何かおかしい、意識的に書いていないのでは?と思った次第です。

でも、こういう人って、どこにでもいますよね。

2013.11.04

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(注)20131113日追加

1111日に、2000kW風車の運転開始式が行われました。

経産省のニュースリリース参照

http://www.meti.go.jp/press/2013/11/20131111002/20131111002.html

経産省のpdf発表資料は

http://www.meti.go.jp/press/2013/11/20131111002/20131111002.pdf

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