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カラスの教科書 松原始
カラスの生態を調査している鳥類学者によるカラスに関する雑学満載の一冊。「鳥類学者の書いた本は面白い」という定説があるらしいが、まさにこの本はそれに当てはまる。人間にとって最も身近な鳥であるカラスがこんなに面白い鳥だとは全く知らなかった。本書は、カラスの種類、カラスの一生、カラスの行動様式、カラスと人間の関わり、カラスの登場する伝説や文学作品など、カラスに関する諸々を面白く解説してくれるが、その面白さの4割はカラス自身の面白さ、残りの6割は著者の文章の面白さといったところ。面白かったところを列記するとキリがないが、特に印象に残っているのは、カラスには突出した才能がないためにしばしば「残酷」とか「弱いものイジメ」というレッテルを貼られてしまうというくだり。一撃で仕留める強い爪や嘴がないので何度も突いて獲物を狩る様が残酷に見えたり、強いものには勝てないので雛や卵を狙うので弱いものイジメに見えるそうだ。、また、カラスが生ゴミを散らかす問題や人を襲う習性などについては誤解も多いようで、何となくカラスを擁護する立場に立っている著者の文章も印象的。カラスについては専門の学者が少ないこと、大人の事情で個別識別装置などによる精緻な調査が困難なことなどから分からないことがまだまだ多いらしい。それを補う著者の推測部分が本書の面白さを倍加させている。(「カラスの教科書」 松原始、講談社文庫)
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