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生還者 下村敦史

ヒマラヤでの雪崩遭難事故の生還者2名の証言が、真っ向から食い違う。果たしてどちらの証言が正しいのか?極限状態の山での出来事といういわゆる「開かれた密室事件」を扱った山岳ミステリーだ。事件や事故の生還者が負う罪悪感が証言をゆがめているのか、遭難した人々の登山の目的は何だったのか、いくつもの謎が絡み合って、絶妙な緊張感を生み出している。登山に関わる色々な情報から、真実に迫っていく内容はミステリーとしても第一級の作品だと思う。たまたま本屋さんで見かけた本書だが、思わぬ傑作に出会えた気がする。それにしても登山家の世界というのは、興味のない人には無縁の世界のように感じていたが、大変奥が深く、面白いものなんだなぁと感心してしまった。(「生還者」  下村敦史、講談社)

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