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村上春樹雑文集 村上春樹

本書が単行本として刊行された時、ある書評家が「雑文という題名をつけて売れるのは作者くらいだろう」というような趣旨のことを書いていた。「全くその通りだなあ」と思い、敢えて読まないでいたのだが、やっぱりずっと気になっていた。最近、本屋さんで平積みになっているのを見つけたので、読んでみることにした。それで気がついたのだが、作者の本というか文章は、何故か読んでいて楽しいというか気持ちの高揚をもたらす気がする。大したことが書いてなくても、それを読んでいて「時間を無駄にした」という感情が全く湧いてこないし、なぜか「良い時間を過ごした」と思ってしまうのだ。本書も正にそんな感じで読んでしまった。内容は、翻訳のこと、音楽のこと、交友関係について、読書についてなど、思った以上に多岐にわたる「雑文」が収録されていて、読み終わると、何だか作者に対する理解が立体的になったような気がした。これを読んでいると、作者には早くノーベル賞を取ってほしいと思う。そうしたら喜ぶ人がいっぱいいるだろうから。(「村上春樹雑文集」 村上春樹、新潮文庫)

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