goo

田村はまだか 朝倉かすみ

かなり昔の名作という感じだが、未読だったので読んでみた。何年振りかの同窓会で、久し振りに「田村」に会うことを楽しみに待つ5人の男女とその店のマスター。なかなか現れない田村を待つ時間のちょっとした緊張感のなかで、それぞれがそれぞれの空白の時間を埋めるように話したり考えたりというシチュエーションが絶妙で、本当に小説らしい小説だ。こうした小説の場合、その「田村」が何かの象徴のように曖昧なまま終わってしまってがっかりすることが多いが、この小説は、ちゃんと実像の田村が立ち上がって、登場人物全員(と読者)を納得させる。過去と現在を結ぶ様々なエピソードの1つ1つが胸を打つ傑作だと感じた。(「田村はまだか」 朝倉かすみ、光文社文庫)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )