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本当は謎がない「古代史」 八幡和郎 

「魏志倭人伝の記述は役人の報告書なので鵜呑みにしてはいけない」とか「古代史の謎はイデオロギーと商業主義の産物」というコンセプトで「古代史」を見直したらどうなるかという本書。通産官僚だった著者らしい発想が面白いし、なるほどと思える箇所が数多くあって楽しめた。また、古代史について、そもそもどのような謎があって、どのあたりが定説になっているのかを知らない読者向けに、数ページ毎に「定説」と「著者の見解」が細かく対比されていて、親切な構成になっているのが有り難い。ただそれでも、いくつもある定説でない見解のなかで重要な指摘はどれなのか、歴史の流れのなかでそれらの定説でない部分がどのように繋がっているのか、素人にはなかなか判り難い部分があるのはやむを得ないことかもしれない。実は、私は、若い頃、著者を中心とする勉強会に所属していたことがあった。ちょうど著者が「法令審査」という若手官僚の花形の役職だった時だったと記憶しているが、話をしていて、ものの見方がオーソドックスだがどこか人と違う視点をもった人だなと感じたのを記憶している。本書の古代史に対する見方もちょうどそんな感じのような気がして、懐かしかった。(「本当は謎がない「古代史」」 八幡和郎、ソフトバンク新書)

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