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季節風-夏 重松清 

春夏秋冬の季節に合わせた短編をそれぞれ1冊ずつにまとめた4冊の連作集の1冊だが、読むのは「冬」編に次いで2冊目になる。高校野球、七夕、風鈴、夜店の金魚すくい、夏休みの宿題など、誰もが「夏」を思い出す小さな出来事を巡る小品が並んでいるのだが、読んでいて、それほど強烈に季節を感じさせるような話ではなく、それらの小道具がある出来事や遠い記憶を思い出させるきっかけという程度のものに仕上げられている。そのあたりが、押し付けがましくない著者独特の雰囲気をかもし出す手腕のようなものなのだと感心してしまう。それにしても、こうして「夏」という1つの共通項でくくれる心の温まる話を次から次へと作り出していける著者の作家としての無尽蔵さには驚かされるばかりだ。(「季節風-夏」 重松清、文春文庫)

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