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日本の医学生24人が参加した臨床思考能力向上トレーニングの研究

2012-05-30 | 闘魂スパーリング

日本の医学生24人が参加した臨床思考能力向上トレーニングの研究

 

日本の医学生の持っている「臨床医が現場でどのように思考回路を働かせているか、患者とどんな風に話をして、いかにして彼らの医学的問題を解決すべきかを学びたい」という思いに応える興味深い一つの方法が、PBL(=Problem Based learning)です。

日本の医学部教官にとって、医学生に「いかにして臨床医らしいものの考え方を教えるか」は重要な課題です。臨床的な討議を通して、あるいはSQA(=Sequence Question & Answer)を用いてPBLを実現することができたら…。

こうした背景をふまえ、今回文科省の支援で医学生のPBLトレーニングの研究が実現しました。

 

臨床的思考能力向上トレーニングを目的とした研究に賛同して参加を表明してくれた沢山の医学部4年生の中から無作為に抽出された24人を対象に、4週間以上にわたって研究が行われました。福井大学と岡山大学の2大学の学生諸君に協力していただきました。

24人のうちランダムに割り当てられた12人のグループは、2つの6人クラスに別れてWeb講義という形式でアメリカで臨床研修経験のある講師による指導を受け、残りの12人は自習グループ(=コントロール群)としました。ひとクラスの6人は、異なる2大学の学生3人ずつからなり、このような機会でもなければ一緒に勉強することはなかったであろうクラス編成としました。各講義では、和やかな雰囲気で臨床的思考を学んだり、PBLに基づいて症例検討を行ったりしました。

 

日本の医学教育において革新的といえるSQA方式を用いてプレテスト・ポストテストを行い、学生の知識・臨床的思考を評価しました。その結果は現在解析中です。

 

Web講義の内容についても、グループ講義という形式がどのように働き、学生思考回路にどのな影響を与えたか等について解析を進めています。

 

この研究の結果によって、日本の医学教育において現時点では不十分と思われるPBLに基づいた教育体制が、学生が臨床的思考技術を取得するのにとても大切であることが示唆されるでしょう。もしこれを読んでくださっているあなたが医学生ならば、ぜひ自分が通う大学の教育体制においてPBLがもっと重要視されるように働きかけて下さい。学生ではなく教官なのであれば、このプロジェクトでお示しする手法を参考にしていただき、自身の教育体制のPBLをより効果的なものに改善なさって下さい。

 

詳細をお知りになりたい方は

福井大の徳永医師marutoku@mx2.fctv.ne.jpまでお問い合わせください。

 

YouTubeの動画もご覧下さいhttp://youtu.be/fVxRT29klwQ

 

 

講義グループで参加した学生のアンケートより

・知識が増えたという意味だけでも十分勉強になりました。でもそれ以上に、「臨床医の先生が実際に現場で使っている思考の過程を学ぶことが出来た」ということが、大変意味がありました。

・(Web講義という遠隔授業は)とても良いシステムだと思います。少人数での講義というのも頭に入りやすかったです。また、他大学の学生と同じクラスで受講できたために、自分の知識等を比較したりすることも出来ました。講師の先生を含めて学外に知り合いができることも、今後役立つかもしれないと感じました。

 

講義を担当した講師のアンケートより

・4回のWeb講義を通じての臨床的な思考プロセス指導というのは、大変貴重な経験でした。自分自身は病院における診療の中で日々臨床的な思考を繰り返しているですが、いざそれを学生(あるいは研修医)に理解して身につけてもらうと、それは大変な時間と労力を要する作業だと実感しました。今回のWebinar(=Web講義)プロジェクトを通じて、その具体的な方法を学ぶことが出来ました。

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