21歳の誕生日、ティムは父親から重大な秘密を打ち明けられる。
この家の男には、特別な能力が備わっている。それはトラベリングタイムだ、と。
ただし、未来に行くことはできない。行けるのは過去だけだ。
やりかたは簡単だ。暗いところにいって、クローゼットの中でもトイレでもいいし、光のあたらないところで、両手を握りしめて念じさえすれば、いきたい過去にもどれる … 。
なんと簡単なのだろう。デロリアンも洗濯機もいらないし、ラベンダーの香りも必要ない。
ティムはさっそく失敗したパーティの夜にもどる。
ひっくりかえしてしまったテーブルのそばを気をつけて歩き、キスしそこねた女の子とみごとしおおせる。
就職してロンドンに出てからは、試行錯誤しながらこの力を使い、見事彼女をゲットする。
もちろん万能ではない。
過去を修正して現在にもどってくると、当然のことながら設定が変わっている。
自分で期待した方向に変わってないことも多く、その場合は再度過去に行き、微調整しなければならない。
交通事故にあった妹を過去にもどって救うと、その結果予想もしなかった別の不幸が起こったりしている。
万能ではないから、観ている側はタイムトラベルにも、いつのまにか違和感がなくなっていくのだろう。
万能のタイムトラベルなどないのだ。
ただ、ほんの少し過去がちがっていたなら … 。
コンビニのおねえさんに、サンキュって言えてれば … 。
落ち込んでる友達に「どうした?」って一声かけてれば … 。
飛ばしてしまった子供の風船をとってあげてたら … 。
それだけで、その後の人生の展開はけっこう変わっていたにちがいない。
未来を作るのは結局、毎日のちょっとしたことを大切にすること、そして自分の身に起きたことを自分がどうとらえるかにつきるのだ。
こう書いてしまうとあまりに凡庸な気づきにしか見えないが、おそらくこの作品を観ている人の多くが、それを心から実感したのではないだろうか。
そういう状態になった後半、ティムと父親とが海岸を並んで歩いているだけのシーンに、気づくと涙があふれている。
私達も、毎日タイムトラベルしてるのだ。
昔の自分を思い出し、そうかあの時はこうだったんだ、そのおかげで今があるんだと気づいたときに過去は変わってる。
過去を変えることはできる。私達は時折タイムスリップして、過去を変えてきている。
暗い部屋で拳をにぎりしめなくても。
自分の過去が愛おしいのと同じように、自分をとりまく人々の思いに気づくと、なお人生は愛おしい。
忙しいとか、思うようにならないとか嘆く前に、一度立ち止まって見回してみたらどうだ。
そんなとげとげしい顔してないで、家族や友人の笑顔を思い出してごらん。
神様がそんなふうに自分をシネプレックス新座に導いてくれたに違いない。
なんか昨日から、志望理由書や推薦書の添削の言葉がやさしく書けてる気がする。