籠城す 懶惰の蓑虫
ひねもすのたり 秋の宵
ふられ上手 ばか上手
文学かぶれのお慰め
空も愛せまい
闇も愛せまい
いわんや 人を
無頼派くずれの成れの果て
誰かをしたってるって
えっ 中也を
誰が まさか いや ただ
・・・・笑ったね そうそう
苦悩少なきゆえ
苦悩を求める奴
それは 無頼派
ソーニャは思った
私しかいない
私でなければいけない
小林を見よ
小林を知れ
ドスト氏が解けそうだ
三島は太宰を嫌った
似てる所があって嫌った
故に そうなった
懶惰は懶惰
この 法悦よ
雪の音
・・・・帰ろうという
帰らないという
帰れないという
ぼた雪 しとしと
泣いている
七つの時
山から鬼来た
血見た
亡びの病見た
目つぶれた
空のような棺桶
捨てられた果敢なさ
雪降る野辺送り
ぼた雪 ふるふる
泣いている
十九の春
恵美は女になっていた
あの頃の恵美はいない
昔の日の憧憬 露と消え
流し目の少女 包む影もなし
笑いあったあの頃 時は流れ過ぎ
思い出そうとしても 笑い顔がない
なれぬ化粧をする いじらしさ
その戸惑いに あの日を見
その戸惑いに せめてもの 慰めを
大河レナの流れ
明かり灯る 凍る街
響くバラライカ
別れの無情
永久の別離
ナターシャの涙
響けバラライカ
響けバラライカ 魂の叫びを
響けバラライカ 氷とけるまで
響けバラライカ 出会いの日まで
響けバラライカ 恩讐の彼方へ
雪の夜
観念の戸を叩くものあり
忘却の果てより現れるは
蝋燭に照る 二人の水子の里帰り
・・・・忘れただろう
・・・・忘れぬいただろうね
どこからとなく響く声
正気は狂気に変わる
・・・・オイラは 十八
・・・・アタイは 十六
・・・・オイラの父はヒモなのさ
・・・・アタイの父は美人局
どちらも同じアホウドリ
葬られた兄妹 母の背に寄生する
想念界を跋扈し 居着く魂を探ねる
それは病んだ者 化膿した者を好む
故に 一は十となる
知るや否やの戯れ言を
目を伏せりゃあいい執念を
化け物見たさの業の淵
救いなき怨念よ
三途の川も渡れまい
一命題
解いてはならね命題
それは 一秒の死
わかったら文学者
太宰の二代目
一言居士たる憂愁を
見ゆるではないか
青と慄とが
虚になりうる美
実になりうる虚
黄昏て知る 虚実折衷の世界が
見ゆるではないか
日傾き 晩鐘響く
祈りの十字はきられる
ボードレールの愛する雲
光輝く 斜陽の天上がり
我はゆく
ロンバルディア平原をただ一人
見果てぬ夢
真の美を追い
ポー川を下る
向こうから誰か来る
童顔のラファエロ来る
跪き乞う
風は通りすぎる
放蕩児くじける
往来に伏す
地に嘆く
耽美的ドンファンの叫びを
美の呪縛よ
ああ 懊悩よ
妖精たちが飛んでいるんです
たくさんいるんです
私には見えるんです
私を包んでいるんです
本当なんです
それは粒子たちなんです
あなたは信じないです
でも 私にはわかるんです
いつか 粒子になるのがわかるんです
消えれなくて 切ないんです
粒子になって永遠に生きるなんて
とても嫌なんです
見てはならないものを 見たようです
トランキライザーが切れました
もう もういいです・・・・