パソコン美人におんぶにだっこ

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小話  キラキラ美女、サリーちゃんに遭遇    後編

2024-05-10 06:11:04 | 小説

あくる朝、寝ぼけまなこで思いに浸っていた。すでに夢で逢っていたのだ。
その事から語ろう、待ち合わせのコンビ二に待つこと5分、やって来た。
 
サリーちゃんはトレードマークのネコ耳でなく、トラ耳で現れたじゃんか。
それも関西ギャルでいそうな、上下ヒョウ柄のトレーナーで、ポケットに手。
ヤンキー風だった。腰のくびれは遊び人の証拠、グラインドが半端ないのか。
となると、今晩のホテルには「二人に変更になりました」との電話をしよう。
 
私     「おや、サリーちゃん、今日はコスプレみたいじゃないですか」
サリーちゃん「ねえ、きのう言ってたさ、あの白糸ノ滝なんか、やめない」
      「そんなんじゃなくて、あそこ、あのピカピカしてるとこがいい」
      「あたい、最近さ、と言ってもいつもだけど、あの事で頭いっぱい」
      「もう朝シャンじゃなくてさ、朝ズボって言うんかな、ねえ、どう」
私     「そんなにも手っ取り早くていいんですか。それは素晴らしいです」
      「では、あそこにある『ホテル マリファナ』ってとこがいいね」
サリーちゃん「うん、いいよ。あなた、相当に女に飢えてるでしょ、まかせて」
      「ウテウテ女のテク味わわせてあげる。あたいさー、ゴリゴリ好きー」
私     「飢えている、と言うのは大当たりです。あそこ、入りましょう」
 
この盛り場には、意味深な名前のホテルが多い。あれこれと考えたもんだ。
「ホテル ワンモア」「ホテル ソーグット」「ぬか六旅荘」などなどと。
私は、あのヤバい名前のホテルの玄関でつまずき転んでしまい、夢から覚めた。
 
あー、なんて詳しい夢を見てしまったのだろうか、本物のサリーちゃんに会いたい。
あの本当のコンビニに行ってみると、すでにいた。ヒョウ柄どころか、シックだ。
素敵な女性は、たとえ何も着ていなくても良い。いや、着ていない方が綺麗では。
 
私     「おはようございます。来てくれましたね、良かったです」
サリーちゃん「あのー、白糸ノ滝にやっぱり行くんですか、違う所にしない」
私     「はっ、ホテル マリファナの事ですか。いやいや、何でもないよ」
サリーちゃん「何それ? 私は身持ち硬いんです。口説こうなんて思わないでね」
私     「もちろんです。行くと決めてある、有名な滝のみに行きましょう」
 
富士宮の名所、この白糸ノ滝は名高い。富士山の湧水が落差のある崖から落ちる。
水量豊富、近付き下から見上げると、水しぶきが凄い。何かに似ていやしないか。
 
私     「さあ、着きましたね、私、ここ来るの2回目です。やっぱりいい」
サリーちゃん「初めてよ、ここ。滝は一つでなくて、ぐるっと一面が滝になってる」
私     「サリーちゃん、写真を撮らせて。家に帰ったら夜な夜な見るので」
サリーちゃん「何やるかわかった。ああ、ねえ、滝って見ようによっては色っぽい」
私     「さすがですね。その通り、女性を表しています。水しぶきしかり」
      「男によっては、とんだ思い違いをするヤツもいます。遊び人にね」
サリーちゃん「ねー、これからホテル マリファナに行きたい、あなた、玄関で」
私     「何で、何で知っているんですか、夢で玄関で転んだのが、えっ」
サリーちゃん「夢の中の続きさせてあげる。だって、私、二人いるもん。お見通し」
      「あなたを救いたくて現われたの。夢の中でもね、ヤンキーに化けて」
      「私はあなたになる、あなたは私になって、男と女の世界を知ってね」
      「あなたはこうでしょ、思いっ切り泣いた事がある人。見ててわかる」
      「だったら今度は思いっ切り気持ち良くなって、みんな受けとめるわ」
      「あの夢の中で、あなたが転ばなかった事にして、続きを・・・・」
 
 
何なんだろうか、本物のサリーちゃんと、夢のなかのサリーちゃんは同じなのか。
どうしても、夢の続きを見たいと言うか、味わいたい。また、寝て待とう。
サリーちゃんに会いたい。思いっ切り抱きしめたい・・・・

 

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小話  キラキラ美女、サリーちゃんに遭遇    前編

2024-05-09 18:48:33 | 小説

私は引き寄せの法則は、にわかには信じてはいないのですが、でもね。
これは結果的には、そうなったって事でしょうか。不思議な体験をしました。
なんと、ブログでお気に入りのキラキラ美女のサリーちゃんに出会った。
旅好きの私が、静岡は富士山の見える町のコンビニで買い物をしてたとき。
その女性は、アイスのまわりで、真剣に大きな可愛い目をしていた。パッチリと。
 
・・・・あれっ、どっかで見たことがある、ブログの、そう、あのマスコット。
・・・・サリーちゃんの自分紹介のネコ耳画像と似ている、もしや彼女は。
 
女性に声を掛けるのを、大の苦手としており、ナンパなどは当然、無理無理。
そんなんじゃなく、清き心で大真面目に、お声をお掛けしました・・・・
 
私     「あのー、もしかしたら、スイーツ大好きの、サ・・・・」
サリーちゃん「そー、どうしてわかったのー、私サリー、あなた何か、あるのー」
私     「プログのサリー言葉と同じだ、やっぱりサリーちゃんでしたか」
      「私ねえ、前から気になっていまして、静岡のどこかで会えないかと」
      「富士山の写真、あれ良く撮れてますね、この町からと思ってました」
サリーちゃん「そー、じゃあー、あの写真の角度でわかったのー、すごーい」
私     「良かったら、ここでは何ですから、外に出ませんか、お話しを」
サリーちゃん「ええ、いいけどー。あなた誰だかわかったわ。フォロワーさんね」
      「ちょっと待って、このPアイスクリームを二つ買うねー、食べよー」
 
この方、サリーちゃんに出会えて嬉しいばかりか、これからの展開がどうなるのか。
女性にうとい私としては、わからん。東京から3連休で来ている。宿は取れている。
予約してあるホテルに、人数変更の電話をする事になるのかならないのか、どっち。
 
サリーちゃん「あのサリー言葉はやめるわね、あなた、藤原てるてるさんでしょ?」
      「何となくわかったわ、好奇心旺盛な感じね、カンで当てたのね」
私     「ええ、その通りです。なかなかいいブログやっていますね」
サリーちゃん「スイーツやアイス紹介はね、特にを選んでやってるの、好きなのよ」
私     「私は旅先のパン屋によく行きます。昔、パン屋で働いていました」
サリーちゃん「そう、はい、このアイスどうぞ、このコンビニいいのあるわよね」
私     「どうも。このアイスのこと、ブログに書きました。あなたに宛てて」
サリーちゃん「わかってる、いいねは付けなかったけど、たしかに美味しいもんね」
      「あなた、旅行の途中でしょ、これからどこ行くの、一緒にどう?」
私     「明日は、富士宮の白糸ノ滝に行きます。今日はこの町に泊まって」
サリーちゃん「じゃあ、明日の朝、9時ならいいわ、このコンビニで待ってるわ」
私     「えっ、それは喜んで、では明日、お待ちしています、今日はどうも」
 
 
ホテルに一人で帰ってから思った。誘えばよかったのか、もう遅い、しょうがない。
肩透かしをくらった感も無きにしもだが、明日に備えて体をゴシゴシと洗う。
深酒している場合ではない、エッチネットどころじゃない、来ると信じて寝よう。

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小話  アパートにキラキラ姉御が、紫のストールをまとってやって来た

2024-04-08 22:56:58 | 小説

東京西部は川のある町、築40年弱の日当りの悪い部屋にである。
私がゴールデンタイムに、いつものネットサーフィンをしていたとき。
海でのモテモテサーファーと違って、独身男大好きマル秘ネット遊びを。
ちょうど、その時、佳境を迎えている最中であった。寸前に邪魔が入る。
トントン、トン・・・・トントントン・・・・
 
私 「はいっ、どちら様で、何か・・・・」
姉御「すみません、こんな時間に、あのー、藤原てるてるさんですよね」
  「いつもブログ拝見しています、小説読みましたわ、一気にファンに」
  「それで、今度は私の事も書いて頂きたくて、突然やって来ました」
私 「いきなりですな、いくら私のファンでも、時間が時間でしょう」
  「明日にしませんか、今日はもう遅い。イチャイチャ時間ですぞ」
姉御「私の方は、それで結構です。夫には内緒で名古屋から来たのです」
  「明日の昼前までには帰らないとなのです、でないとバレるので」
私 「あなた、お子さんは? 旦那さんとうまくいってられると、お見受け」
姉御「ええ、夫とは週末デートを楽しんでいます。子供はまだですけど」
私 「あなたは、何かされているのですか? その前に、どうしてここが」
姉御「藤原さんのやっている、姉ブログと妹ブログ、全部読みましたわ」
  「住所や職業に繋がるのがありました。それと本名がわかるのもあった」
  「めずらしい本名ね。表札出てるからわかった。ああ、私は元スタイリスト」
  「今は、ブログで集客をやっています。あなた、私に良く訪問、知ってるわ」
私 「そんなにファンなのですか、ではファン一号になります。うれしい」
  「ささっ、立ち話もなんです、汚い所ですが、どうぞ、中へ・・・・」

昔流に言えば、据え膳食わぬは男の恥である。ご馳走を前にして何とする。
私は食べ放題に目がない。一番好きなのはステーキである。めったにないが。
この女の方は、着痩せしているのであろうか、実はモチモチかも知れん。好物か。
 
私 「では、旦那さんには、くれぐれもバレない様に出来ますかな、うまくね」
姉御「大丈夫、ええ大丈夫、私の愛ある毒舌で巻く。一回位はわからないわ」
  「ねえ、私、あなたと? どう? 気に入ったのなら好きにして、いいのよ」
  「あなたのものになりたい。私との波長の繋がりを感じます。会いたかった」
私 「うん、心持ちは良くわかりました。でも、旦那さんに悪くて、ちと、どうか」
  「やはり、よした方がと。こうしましょう、私は台所で寝ますので、いいです」
  「この布団で、お一人でどうぞ、イカ臭さもありますが、独身ゆえです、さあ」
姉御「そうですか、残念ですわ、ではこうします。このイカ布団だけで満足と」
私 「ええ、そうしてください、夢の中でガチンコしましょう、もう、寝ます」
姉御「わかったわ、思いっ切りね。待ってるわ、おやすみなさい・・・・」
 
 
翌朝、彼女は綺麗なまま名古屋へと帰って行った。一時の間違いをするではなく。
あの方はそれでいい。旦那さんが大好きなのが良くわかった。綺麗でいてください。

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小話  キラキラ熟女と、深夜の無料セミナー  後編

2024-04-07 08:00:08 | 小説

あのキラキラ熟女に憑りつかれたのだろうか、夢の中では、たびたびと会った。
もう、こうなったからには私の方こそ憑り付きたい、ガチンコ魂で喰らいつく。
抱き観音に、抱いて抱かれて共に極楽沼に浸かろうか、これ男の本懐ではないか。
ただのキラキラ熟女ではない、男を狂わせる何か、とっておきの媚薬のような女。
 
私は、お約束の小説を一気に書き上げた。また、深夜の無料セミナーに行く。
二人きりの密室での個人レクチャー、甘すぎるコーヒー、布団まである。
例のコーヒーを飲んでからウテウテになった。媚薬入りに違いない・・・・
 
私  「また来ました。どうしても会いたくて、我慢するのに苦労しました」
   「小説完成したので見てください。コーチも出て来るので、どうぞ」
コーチ「もう、書いて来たのですか、こっちも早いのね。どんなのかしら?」
私  「申し遅れましたが、私、藤原てるてると言うペンネームでやっています」
   「この処女作は、『江戸情話 てる吉の女観音道』でして、時代物です」
   「艶物にかなりと近いのですが、よくよく読むと女性を救う物語りを」
コーチ「色物を書いたのね、女好きって顔にも書いてあるわ。その観音道って?」
私  「はい、江戸は幕末のころ、越後から出て来たサカリ男が、ある願掛けを」
   「女百人斬りの修行の中で、目覚めて行くのです。観音様を救うと言う」
コーチ「じゃ、女性を百人も描き分けたの、私との約束、私って、どんなかしら」
   「エッチすぎにしてないわよね。この前は、あなたが悪いのよ、あんな事」
   「まあ、いいでしょう。女は心も体も海の様に深いのです。男は溺れます」
   「ねえ、自分のコードネームのこの、ワルサー5、25って何なの?」
私  「これはですね、ドイツの拳銃に模した男性自身の事です。第二ペンネーム」
   「すぐピントと来ますよね。センチではなくてインチです。お恥ずかしい」
コーチ「まっ、あなたって、どこまでも正直なの。もうちょっと足せばいいのに」
   「繊細さん。あなた、そうよ。生き辛さがあるから、書かずにはいられない」
   「いいこと教えるわ。自分ではない人の想いまで、自分の想いにしている」
   「人の波動を受け過ぎているのよ。これ好きこれ嫌い、と自分の心に尋ねて」
   「良く聞いて、負の感情から自分を解き放つのよ。心地良い感覚を大切にね」
私  「ではまた、あのコーヒーお願いします。媚薬入りみたいな、あれ効いた」
コーチ「ああ、あれ、あれはね私のエキスが入ってるの、惚れ薬みたいなもんね」
私  「えっ、コーチのが? それって最高じゃないですか、どおりで空っぽに」
   「また、心の中も空っぽにしてください。全部、ほんとに全部たのみます」
コーチ「私の方こそ、若返りの妙薬お願いね。あのコーヒー持って来るわ・・・・」
 
 
私は、コーヒーをがぶ飲みしたのかもしれない、そこの所の記憶が飛んでいる。
強烈な愛のセミナーが過ぎ、そっと部屋を後にした。可愛い寝顔をしてた・・・・

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小話  キラキラ熟女と、深夜の無料セミナー  前編

2024-04-06 21:15:48 | 小説
私が、その女性の事を知ったのはブログを通してであった。
そのアメアメブログでは、起業家の女性達が凌ぎを削って集客をしていた。
あの手この手で、顔出しあり、上半身あり、またはキャミソールやベアトップでと。

オカズ動画もあり、セミナーの生徒さん募集でそれは熱心にされている。
そんなキラキラ熟女の中に、私のチャックを壊しそうな方がおられる。
どうしても会いに行きたい。下心は伏せて、この愛のセミナーに参加へと。
場所は都内某所、深夜2時過ぎ、私だけの秘密のセミナーだった・・・・

私  「どうも、お久しぶりです。本物のキラキラ熟女に会いに来ました」
コーチ「今っ、お久しぶりって言いましたね、前にお会いしましたか?」
私  「いや、初めてですよ、いいじゃないですか、動画でお世話になってます」
コーチ「ああ、もう動画を見てくださっているのですか、では早いですね」
   「ご期待にこたえてお会いしたのは、それも無料でしたのには訳が」
私  「ええ、わかっています。ブログ動画の中で、元夫がと何回も言ってられる」
   「男欲しさと察しています、でも、どうしてまた、この私に・・・・」
コーチ「この仕事を長くやっていると、人の心がわかりますの。特に、男の方の」
   「あなたは、女に飢えているだけではないわね、もっと強く求めている何か」
   「それは何かを、教えてもらいたくて、私の元に引き寄せられて来たのよ」
私  「いやいや、フェロモンにです。あの事で頭が一杯です。ただの熟女好き」
コーチ「ふふっ、いいのよ、すべて叶えてあげるわ。ねえ、ちょっと休まない」

このお見通し熟女コーチは、やたら甘過ぎるコーヒーを出してくれた。
なかに何やら入っているのかも知れない、もしや媚薬では、まあ全部飲んだ・・・・

コーチ「あれよ、愛の意識に目覚めてください。純粋なエネルギーが循環してゆく」
   「自分が本当に大切にしている価値観。あなた、何かを表現したがってる」
私  「まあ、小説を書きたいとは思ってます。この世を包んでいる別の世の事を」
コーチ「いいですか、創造性を発揮する事が出来る、感じるものを自由に表現して」
   「あなたの使命が必ずあります。軽やかに生きていきましょう。応援するわ」
私  「ええ、その身を持って応援のほど、よろしくお願いします。身を持って」
コーチ「わかってる。夜のセミナーは始まったばかりよ、ねえ、私の事も書いてね」
私  「喜んで。この左手の人差し指に真珠の指輪がありますが、はずして、ほっ」
コーチ「私がそんなに欲しいのね。わかったわ。あなたに会える時だけそうする」
   「ねえ来て、こちらへ、なでてあげる。甘美な愛をあげるわ、こっちへ」
私  「何でも言うこと聞きます。素晴らしい世界へ導いてください・・・・」


朝、今度は普通のコーヒーを飲ませて頂きました。甘過ぎなかったです。
次回は小説を書き上げたら、また会ってくれるとのこと。大急ぎで取りかかろう。
私は帰りしなに言った。「また、あのコーヒー飲みに来ます」と。彼女は媚態した。


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小話  孔子の教え、六十にて耳したがう(耳順)

2024-02-03 15:29:54 | 小説

子のたまう、六十ともなれば人の言葉に素直に耳を傾ける事が出来る。
かたや馬齢を重ねること六十前、来年は「耳順」の年を向かえる事に。
こちとらは耳かきにハマっている次第、教えにはほど遠き歩みをとぼとぼと。
これではいかん。還暦前の貴重な一年になる。さて、どうしたものか。

諸子百家の筆頭格であられる孔子様ご本人に説教してもらおう、それが良い。
さて、誰に化けてご対面いたそうか、この際は老子に化けようか。
いやいや恐れ多い、老人になれても老子の役なんて無理、どうしたものか。
ああ、そうだ孔子様には時代を越えて清朝末期にご登場願おう。客人になろう。

ところは上海の魔窟、黄昏時の阿片窟ではチーパオ娘が来い来いをしとる。
柳腰グーニャンが好きな私は、女と煙を吸いに中へと消えた・・・・

女主「ねえ アンタ 煙先か 女先か どっちアルネ?」
私 「右手にはキセル 左手にはオンナでいいアルヨ 戸口いた娘にするアル」
女主「同時進行てことネ わかったアル 無茶しちゃダメダメヨ」
私 「煙で力ぬけるアル 娘の好きにさせるアル 大丈夫アル」

この阿片窟で同時進行とはツウのやること、煙は後のほうがいいのだが・・・・

私 「おやおや腰細いアルネ 煙やり過ぎネ オレの好みアル かわいいアル」
姑娘「煙 アナタ煙吸うそれイイ ワタシ横になる左手だけヨ」
私 「そう同時アル グーニャン寝ちゃだめアル 起きてるアル」
姑娘「ダメ寝るアル 毎日くたくたネ 阿片やる疲れ取れるアル おやすみネ」

お楽しみの前に寝てしまった。しばししたら寝言を言い出した。はっとした・・・・

姑娘(すけべ男や、よわい六十前にして若猿なみ、回春を求めるは良し、だがな)
  (そちは幻を抱こうとしておる、一時の悦に負け、煙に巻かれ煙となるぞよ)
  (虚ではなくして実を取るのじゃ、ここには来ぬがよい、ようわかっかや)
  (仁の道を歩め、論語を読むがよかろう、ワシの教えが書いてある、ええな)



私は娘のような孔子様、いや孔子様のような娘に頭を叩かれた思いだった。
そうだ、その通りだ、もう阿片窟には来まい。煙なしの真面目淫窟だけにしよう。
教えに素直に耳を傾けよう、「耳順」の意味がようやくわかり出して来た。

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小話  関東大震災秘話 「五十五銭」

2023-09-09 19:37:55 | 小説

帝都壊滅かと思われる未曽有の災害。東京市の4割強を焼く。死者10万強。
ここでは日本人の被害については置く。記録に残らなかった事実を載せる。
人は窮地に陥ると正気を失う。群衆心理も働き敵を作りだす事に向かう。
破れかぶれで、何かにぶち当たりたくなる、やり場のない怒りが暴発する。

自警団、何から何を守ろうとしたのか、そう、朝鮮人から守ろうとした。
とんだナショナリズムである。日本人はこの程度か、だから敗戦に繋がる。
帝国主義の尻馬に乗って、アジア同胞の血肉を喰らい一等国気取り。
震災被害は日本人だけでは毛頭ない、朝鮮の人々の声を私が代わって記す。
この人たちの声が、埋もれたままなのである、辛いことに。

・・・・震災の火災が、ようやく収まった頃の話である。
赤坂見附の紀尾井坂は、大八車でごった返している、荷物があればまだましである。
すっからかんの褌一丁もいる。親は子を見失い声枯らしわめく、なんも届かね。
どこ逃げるや、皇居前広場なら安全だ、天皇様がおわす、とみな向かおうとする。
入り口に柵みたいにして、通せんぼしてんがいる、眼付の悪いんがかたまって。

オラ 「天皇様んとこには、ここから入るってかや、入れてくれて」
自警団「おいガキ、お前、日本人か?」
オラ 「そうだて、日本も日本、大日本人だ。天皇様が遠眼鏡好きなんも知っとる」
自警団「それを言うなって、今はそうじゃのうて、本当で日本人か?」
   「じゃお前、国はどこだ、お国ん言葉で何か言ってみろ」
オラ 「オラ越後らいのう、雪ん中で育ちましたて。向こうは地震ねえこってすて」
自警団「うん、ただの百姓のガキやな。よし行っていいぞ。なんとかやれ」
オラ 「ご苦労さんだの。あの、なに見張ってらんだて?」
自警団「朝鮮人だ。火事場に付け込んで悪さやんだ、そんただ奴、通さんわな」
オラ 「ほっかほっか、顔も似てるしの、着物も同じらいて、見分けつかねえ」
自警団「五十五銭と言わすんや。朝鮮は濁点が言えんでの、こいで一遍にわかる」
   「お前はもういい、さっさと行け」
オラ 「ほい・・・・」

何人かが柵を越えてった後の事、帽子を深々と被った男が来た。
目は落ち着かない、前の人に続け様に入ろうとしていた、しれっと・・・・

自警団「こらっ、ちゃんと並べ、ここで確かめてから通すんだ」
男  「はいっ、わかりました」
自警団「いいかや、こいはみんなに聞いておる、お前は日本人け?」
男  「日本、ええ日本。今は東京、その前は大阪、もっと前は博多にいました」
自警団「ああそう、東京に出て来てこの地震、さんざんだのう。わかった、行け」
男  「ああ、日本は大変なことなりました。みなさん見回り、コクロウ様」
自警団「待てっ、お前、日本人じゃねえな。ごくろう様って、もう一度行ってみい」
男  「はぁ、コクロウ様。みなさん、コクロウ様。それ何か?」
自警団「じゃ、五十五銭と言ってみろ、そんでお前が日本人じゃ否かがわかる」
男  「わかりました。コシュウコセン、コシュウコセン、はい、もう・・・・」
自警団「捕まえた、朝鮮人だ。日本人のふりしやがって、こっち来い、来い」
   「これだから油断ならんのや、何しやがるかわからん、出来んようにしたる」
   「この野郎、天誅を喰らわす。膝まづけ、喰らえっーー」
男  「ケーセッキ(犬野郎)ーーー」

この様な痛ましい事は、東京市を越え荒れた。
被害者の記録は残りにくい、加害の日本人は口を閉ざす。被害者は口もない。
昭和に入り、大東亜共栄圏と言う美辞麗句を謳う。何をか言わんやである。

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小話   親鸞、越後での説法

2023-04-06 08:41:47 | 小説

親鸞の、「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」を自己流に解釈する。
この逆説は謎かけであると思う。答えはあってないようなものか。いや、待て。
今の世と、平安鎌倉の世とでは死生観が違う。あの世はこの世の続きと見られてた。
こうではないのか、善人はこの世での行いで、すでに往生するに値する。
悪人は往生するに値しないなれど、あの世での修行の後、遅れて往生。
人とはすべてが往生するように出来ており、悪人はあの世で往生致すか。
悪人は悪に染まっているゆえ、地獄経由の極楽となる。鬼にしごかれて目が覚める。
そんな地獄の責め苦が待っているではないか、いわんや否が応でも往生する、か。

さて、親鸞聖人の異相は何を語るや。
そう親鸞は善人の風貌ではない。悪人の様相も呈していない。
聖人一流の謎かけを解くには、あの異相に答えがありやしないか。
今の世の人が解けない事を、当時の民は解けた気が私にはする。
親鸞の生きた世は、平安から鎌倉へとの端境期である。幕府の起こるを見る。
平安末期は荒れた、戦乱災害相次ぎ世は乱れ武士の台頭を許す。
朝廷が派遣した治安維持の検非違使は、もはや形無しで守ってはくれない。
刀を持った者が強くて、切り捨て御免は常、取り締まる御成敗式目はまだ先。
庶民はもとより、僧でさえ首が飛ぶ。所選らばず転がるである。
後の江戸時代は、治安を取り締まる制度があった。武家諸法度で律していた。
しかるに鎌倉の世では本当で一寸先は闇、岡っ引き、町奉行なんかの活躍なし。
そんな時代を生き抜くなんてなったら、善人はどうしていたのか。

仏にすがるであろうか。大岡越前のもっともっと前である。与力同心もなし。
天皇、朝廷を頼るなんてお門違い。守護地頭の手先に怯える日々か。
そこで親鸞はかの名言を吐くに至る。善人はほっとし、悪人の中には勘違い多しや。
ではここで、私は想像してみる。仏の与えた法難による流刑の地での話である。
親鸞聖人と、村の間男とのやり取りである、越後での説法を・・・・


村の男 「和尚さんて、大変らいて、オラんカカがの、よそんガキ作りやがったて」
    「オラにちっとも似てなくての、色の白い子られ、どっかの種らいや」
    「先に生まれた子なんて、オラにそっくりの黒い子なんのにの」
    「ああ、どうしょかのう、育てたくなんてねえ。いっそ、いねほうがええ」
親鸞聖人「南無・・・・。そちが悪かであろうに。可愛がりようがたりんのじゃ」
    「夜な夜な、掛布団となり敷布団となりて大事に扱ったのかや」
    「そちは男の心得をよう知らん、ええかや、男が布団ぞ。女はこれあらず」
    「今んのはわかりやすか、たとえぞ。本当の布団は干すほどに良い」
村の男 「うんにゃ、そんげん事でねえ、そらオラが家にいる時は可愛がってるて」
    「あの、オラは冬の間の、出稼ぎで半年も家出てて、そん時の事らて」
    「四月に生まれたすけ、オラがいねえ事をええ思って、男引っ張ったんら」
    「あの男が怪しいらて、村にのうヤサ男がいるて、オラん仲間だ」
    「カカの奴、あの男を布団にしやがったんや。許せんのう・・・・」
親鸞聖人「そうかや、なら女が悪い、その女はどげな眼をしてるかや?」
村の男 「底の暗い眼してるて、眼が笑わねえ女らいて、あらなんだろかの」
親鸞聖人「やましいからや、人はな、眼と影だけは誤魔化されんぞ」
    「影について教えて進ぜよう、お天とう様が照らすと影出来る」
    「ええかや、そちが照らしてみい、そちがお天とう様になるんじゃよ」
    「そんしたら、人がわかる。影は嘘をつかん、これこの世の仕組みなり」
    「また人を知るにこれもあり、地べたを這うなりし人を見上げることぞ」
    「人は乞食には正直ぞ、ありのままの本当の姿が出る。乞食は人の心知る」
    「ええかや、この世は仕組みで出来ておる、仏は修行の場を与えた」
    「悪人は天に照らされるのが怖い、己の影が蛇となって現れようぞ」
    「その照らすのが難しいのであれば、虫の心を持つことじゃ」
    「人は虫にも正直じゃでな、見上げるのじゃよ、どんどん見えてくるぞい」
村の男 「そうですかえ、天か虫ですらか。オラは虫の心を持ちてえて」
    「虫んなれば、カカの事、カカの色布団の事、その種の子もなんでもねえ」
    「てことは、許したろかいや。生まれた子を大事にしますて、オラん子ら」
親鸞聖人「それで良いのじゃ、裁きは仏に任せよじゃ、そちではない、心せよ」
村の男 「はあ、ええ話もいらいましたて、今夜はカカを笑わせてみますて」
    「あの笑わん眼を、なんとかやってみますて、あのヤサ男に化けようかや、けっけっ」
    「間違えて眼が笑ったりして、そんでもええ。けっけっけっ」
    「あのスケベ女、よがり泣きさせますて。和尚さん、あんがとごわした」


この物語は物語としてここまでとしますが、事実に則しています。
生まれた子は一つにして、六月の夜に非業極まる最期をむかえた。
尻の軽い女は、それを待ってたかの様に離縁し実家へと消えた。
その時は、本当の笑顔だったに違いない、眼が笑っていたと。
あの浮気相手の男は、酒を飲みにたまに家に来ていた。父は笑顔でいた・・・・

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小話  新釈 奥の細道   曾良の、息抜きの段

2022-12-23 14:28:31 | 小説

この河合曾良なくしては、芭蕉の旅は成りいかなかったのでは。

芭蕉門下十哲の一人、また深川八貧の一人でもある。真心の人である。
信州は上諏訪の酒蔵に生を受け、六才にて両親を亡くす。
長男なれど養父母へ引き取られ、またまた十二にして二人を亡くすことに。
その後、伊勢は長島へ行く、やがて三十を過ぎて江戸へと出る。
神道、地誌、国学、和歌に興味を持つ、それで芭蕉の元へと繋がる。

芭蕉曰く、「性隠閑を好む、交金を断つ」とある。
これは何を意味するのか、また貧しかった、生涯一人者か。
曾良にとっては芭蕉が救いだった。俳諧、生きるよすがとした。
旅の同行に選ばれて心底喜んだ、師匠に尽くし支えようと。
前もって、名所備忘録をしたため、西行ゆかりの地などを記す。
道中では僧衣を纏い、まるで影のように師の後をゆく。我は影にと。
句を残しながら、随行記に事細かに足取りを書き連ねる。

その中に一か所、別にて街道を進むの段あり、出羽国温海宿に泊まった後よ。
このまま羽州浜街道を下り越後へと向かうとき、二手に分かれた。
奥州三関の一つ、鼠ヶ関を先に越えたは芭蕉のみか、二人してなのかは定かならず。
芭蕉は馬で向かい、義経伝説の地を見ての海沿いを辿る。
では曾良はと言えば、山に向かいて温海温泉によってからの鼠ヶ関。何があったのか。
芭蕉とのやり取りが、聞こえて来ようぞ・・・・

芭蕉「おい曾良や、道中難儀をかけてすまんのう。ここらで息抜きとせぬか」
  「わしは、海沿いを馬で進み、義経が跡の地を見てからの鼠ヶ関とする」
  「お前は、山を越え、ちょうど温泉場がある、温海温泉によってからや」
曾良「はあ、それはええですども、師匠さんも温泉につかったらええのに」
芭蕉「あのな、お前は真面目は良し、なれど心に油させ。遊んで来ぬか」
曾良「そげなこつ言うても、不向きにて所作も知らず、まして女心はわからず」
  「いつまでも湯に浸かって、酒飲むのが関の山、それで充分にて」
芭蕉「温泉場には女が付きものゆえ、これも風流と心得て一句作ってこんか」
曾良「こいも風流、一句ですかな。それならばわかり申した、何が何でも作って来ますぞ」
芭蕉「うむ、それがよかろう。では、夕刻には越後の中村宿で会おうぞ」
曾良「はあ、そういたしましょう。では、ご無事で・・・・」

我らが曾良は、人擦れしていないのである。
幼少期から点々としており、人の情を良くと知らずなり、まして女心をや。
芭蕉翁の粋な計らいで、温泉場に半ば送り込まれたけれども、はたと困った。
湯女が出て来たら、どげにしよう。まして僧ではないが、僧衣である。
向こうは僧と思うのではないか、いや、たとえ僧でも引き込むか。
ままよ、まあこれわからずだが、これも句の為、いざ温泉場へ・・・・

曾良「おいや、旅のもんだども、湯に浸からせてはくれぬか」
湯女「これはお坊様、よくと来てくだされたのう、ささ、入れって」
曾良「この温海温泉は鄙びた場であるな、湯治がたんと来るかいや?」
湯女「そらな、男衆が鶴岡や酒田から来てな、骨休みとか、ええこつしてるど」
曾良「そう、ええこつとは、これ如何に?」
湯女「垢落としだべさ、そこらじゅうの垢さ落としてな、やけに元気んなんだ」
  「ワテらはのう、それこそ骨抜きんして、宿から出れんようにすんのや」
  「そんで稼ぐ、泊まりを長引かせてな、ふらふらんなって帰るのもおっぞ」
  「でな、味しめてな、また来たくなんだ、男ってそんなもんだなや」
曾良「拙僧は、あっ、いやいや僧ではないんだが、まあ、それみたいなもの」
  「では、よしなに垢落としをお頼みいたす。おまかせします」
湯女「おお、そんでええ。じゃ、そこさ脱いで湯屋へ来い、ふらふらんしたる」
曾良「あ、うん、よしなに・・・・」

かたや、年期の入った四十路の湯女である。
痒いとこ、よう知っておる。力も強い、垢がぼろぼろと出た。痛キモである。
曾良も四十路である。なれど、女に疎い。流れが読めずなり、湯女は言う・・・・

湯女「なあ、お坊さんや、いつまで洗わせる気かえ、手が疲れてもうは」
  「たいがいの客はの、洗わせるんはそっちのけでな、こっちを洗いたがるわ」
曾良「いやいや、自分のことは自分でしてくだされ、これにて充分で」
  「しばし湯に浸かってから、酒を少々もらえまするかな」
湯女「ああ、ええ、じゃあ支度しとるで」

それからというものである。しばしどころか、待てど待てど湯から出ず。
湯女は何かあったかと思う次第。だけど何もなし。ただ、思案中なり。
曾良は曾良で、これからどうしたものかと、湯の中で迷いそうろう。
このまま浸かろうか、いや、それじゃ、違う意味でふらふらとなるではないか。
本当は、あの湯女にふらふらにされたい、でも、どうやって。
わからん、俳句どころじゃない、困りそうろう。

ここで苦しまみれに、一句捻りだした。
・・・・温泉場 拙僧は浸かる まじめ風呂・・・・

夕刻に、師匠にどう伝えようか。
湯の中で、まだ考えるになりにけり、その前に、あの湯女には、これいかに。
・・・・湯女とかけ 客は湯にとけ あてはずれ・・・・

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小話  新釈 奥の細道   平泉の段

2022-12-18 12:20:46 | 小説

旧暦五月十三日と言えば、新暦六月の終わりをさす。
五月雨で煙るなか、一面には白い卯の花が咲きそよいでいる。
北上川は原野を流れる、この地に来たかった、芭蕉は喜び勇んだ。
杜甫の五言律詩が頭をよぎる、国破れて山河在りか、思いは飛ぶ。
ああ、ついに来た、奥州藤原三代の都、平泉へと。

中尊寺は光堂と経堂で、清衡、基衡、秀衡の棺、仏に首を垂れる。
宝物は散り失せ、扉は破け、金色の柱は朽ち杉のままとなる。
栄華は何故も儚く消えたのか、やはり義経か、いや頼朝か。
いやいや武家とは、そう言うもの、争そいに勝て残り、負けて滅ぶもの。
必然には勝てない、武家だけではなく、この世は諸行無常なり。
義経よ、静御前と共に散り、何を思ったのか、夢に現れてはくれぬか。
芭蕉は願いつつ、枕に頭をのせた・・・・

義経「おい、そちが呼ぶので来た、源九郎判官義経である」
芭蕉「まずもって現れてくださり、恐れ多いことであり、ありがたき幸せこのうえなく」
  「お父上の敵討ち、源氏の世を作ったお働き、あまたに語り継がれておりまする」
  「貴公はこの奥州で育まれ、千載一遇の好機に登場なされ、大働き、お見事でした」
  「兄上の喜んでおられるお姿も、このしがない俳諧師にも大いにわかりまする」
  「波乱万丈の人生なれど、これあっぱれと思う次第にござりまする」
  「あの世では、きっと兄弟仲睦まじく過ごしておると、思いまする」
  「そう、かの絶世の美女、静御前様は如何かと・・・・」
義経「静か、静がわしと共に高舘で散った時、最期に何を言ったか教えてしんぜよう」
  「こいが定めと思うて、この世はこの世、来世で思い叶えてのう、と言ったのじゃ」
  「何が兄じゃ、兄だけでは平家を倒せんではないか、返す刀で弟を倒したか」
芭蕉「あの、拙者が言うのもなんなれど、兄弟は他人の始まり、でもこの世のみ」
  「貴公のおられるあの世では、それどころか稚児のように仲睦まじいかと」
  「やっと、本当に仲直り出来たのではと、思い廻らせておりまするが」
義経「我が無念、語って聞かせようぞ、しかと聞け、ええか・・・・」
  「兄じゃはのう、二つの源氏が許せんかったのじゃ、まあ、今ではわかるぞ」
  「武家の治世には隙が出来る、そしておごりが出来き滅びの始まりとなる」
  「おごりとは明るさの事ぞ、人も家も暗いうちは滅ばず。平家の明るさを見よ」
  「もう武家ではのうなっておったわ、公家気取りの西のお笑いびととな」
  「そこへいくと、この奥州は違っていたが、焼け落ちて草原となるに至る」
  「なあ、このわしが平泉を滅ぼしたかと思うか、それとも兄じゃか?」
芭蕉「大そう難しき問につき、早々には答えに窮しまする。時の流れとしか」
義経「静なら、こう言うのであろうか、風は種を運び実り刈られた、とな」
  「まあよい、わしは出来た女を得て果報者じゃったわ。今じゃ、一緒じゃ」
  「兄じゃの事もええ、たまにだが酒もって、ひょっこりと来るぞい」
  「何か、そん時の作り笑いが面白くてのう、こっちも笑っておるわ」
芭蕉「おお、それはそれは目出度しですな、こちとらも安堵致しましたです」
  「きっとお父上の義朝様も微笑んでおられるかと、母上の常盤御前様もですな」
  「あっぱれ源氏ですな、国破れて山河在りなれど、あの世では源氏は続くですな」
  「ああ、ええ話を聞かせてもらいました、お姿も見ること出来ました」
  「このことは相棒の曾良に語り、悦に浸りたいと思いまする」
  「その曾良と言うのは、貴公の弁慶にあたるのですが、家来ではないのです」
  「露払いと言うのか、太刀持ちにあたるのか、荷物持ちなのか、その」
義経「おい、弁慶を持ち出すと長くなるぞ、今宵はここまでじゃ、また夢でな・・・・」

ここで芭蕉翁は目を覚ました。
そうだ、曾良には弁慶の夢を見てもらいたいものよのう。
弁慶のように太刀にて守る事は出来んでも、あの笑顔で守ってくれとるわ。

みちのく、ここ平泉では涙した。五月雨は消した。
・・・・夏草や 兵どもが 夢の跡・・・・
・・・・五月雨の 降りのこしてや 光堂・・・・
その夢の跡を、曾良と共に進む。

善人の曾良は、義経の従者、老いたる兼房に卯の花を重ねて一句。
・・・・卯の花に 兼房みゆる 白毛かな・・・・

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小話  新釈 奥の細道   馬の尿(ばり)の段

2022-12-17 14:22:22 | 小説

南部から日本海に出るには、奥羽の深山を越えねばならない。
蝦夷の末裔が暮らしている地である。マタギの舞台でもある。
芭蕉一行は南部道に別れを告げ、鳴子の湯から尿前の関に向かった。
人通るは少なき道ゆえに、関守に怪しまれるも先進む。
この国境の中山越えの山道で、日が暮れてしまい難渋する。
まるで獣道の様な所なので、旅籠なんかありやしない、ぽつんと一軒あるのみ。
そこは見張り小屋みたいな、掘っ建て小屋である。主に声掛けた・・・・

芭蕉「御免くだされや、こいから出羽の国に抜けんとせしど、もう日暮れ」
  「まことに申し訳なきところ、一夜の宿を所望致したき、願いそうろう」
主 「はっ、お面達どっから来たずらか、こげな道なして通るんだ?」
芭蕉「私らは江戸からの旅人、俳諧を作りながらの諸国を巡る旅の途上」
  「奥州街道を北に進み、この峠を越し最上へと抜け、北陸路を西へ」
  「そしてもって、美濃は大垣へとの紀行をしておりまする」
主 「おい、そっただ長旅やってもうて、何がおもしれえんだべさ?」
芭蕉「西行、歌枕の地、いにしえの歴史の舞台に立ちて、俳諧を作りたく」
主 「俳諧? 知らねえ、西行? 初めて聞いたなや、まあええ、上がれって」
  「オラは国の堺の見張りを頼まれてっから。しょうがねえ、泊めてやっぺ」
芭蕉「ありがたき事にそうろう。良しなにそうろう」

宿と言うか、寝ぐらがあって助かった。後も先も獣道である。
こんな山奥では狼、熊が出てきよる、盗賊もいない様な所である。
して、通された部屋は土間の横である、板二枚分の隅で曾良と寝ることに。
馬を飼っている、臭ったらありやしない、なんかやな予感が漂っておる。
まあ、その前に晩飯を馳走になる。

主 「おいや、二人こっちさ来い、飯だぞ」
芭蕉「かたじけなき事、ありがたく頂戴致しまする」
曾良「あの、実はこちらの方は江戸で高名な俳諧の師匠でありまして・・・・」
芭蕉「おいおい曾良や、余計な事は言わんでもよい。飯を頂こうぞ」
  「主の方、この笹包みの中身は何でありまするか、ええ匂いですな」
主 「だすけ俳諧なんて知らんて、そっただこつよりも、笹ほどけ」
芭蕉「これですな、はっ、こりゃこりゃ、手が出てきてもうた、燻し焼きですな」
主 「こいがマタギん名物の熊の手焼きだなあ、熱いうちに食え」
芭蕉「曾良や、お前先に味見をしてくれぬか、旨いかどうか正直に申せよ」
曾良「はあ、したらば先にと、初めて故にとりあえず一口・・・・」

この門人の曾良は人がいい、いつもにこにこしながら芭蕉のお供をしとる。
宿の手配、道の確かめ、荷物持ち、得体のしれない物の味見、なんだってする。

曾良「うむ、こいは旨い。熊とは滋養強壮の塊ですな、手だって旨い」
主 「そうずらよ、手の方が旨いなや、よくとたんと動かしている所がええ」
  「足もええぞ、みんなええ、皮は寒さ防げるしな、昔から山ん神だなや」
芭蕉「ではでは、ほー、これは珍味ですな、熊は手が一番なのですな、旨い」
  「熊はよう肥えておりまするが、何を食べておるのですかな?」
主 「そんだな、鹿、狐、狸、蛇、熊笹なんかよ、まあ、人はめったに襲わねえずら」
芭蕉「人を襲ったら人の味をしめるとなりまするな、山は怖い所ですな」
  「あの、熊と馬はどっちが強いですかな、互角の様にも思えまするが」
主 「山ん中じゃ馬、家ん中だと熊ずらなあ。ワシらは馬を家の土間で守っとる」
  「お前らの布団は土間だぞ。馬の隣だ、何があっても気にすんなや」
芭蕉「はあ、では、馳走になりました。休むことにします」

風流を愛する二人は、野趣溢れる熊の手を全部食べおおせた。
さあ、こんな所で風呂はなし、後は寝るのみ、先ほどの馬の事が気掛かり。
主に虱布団を敷いてもらい、蚤のかいかいを気にしながら床についた。
曾良はと言えば、もう寝ておる、本当に憎めない相棒やないか、ええヤツや。
芭蕉はそんなことを思いながら、寝入ったかに思えたが、寝入ったのだろうか。
その矢先である。ジョジョジョジョジョーージョー・・・・

滝の音に、目が覚まされてもうた。
芭蕉のみ、驚き桃の木山椒の木、曾良はと言えば、ムニャムニャ眠るのみ。
これを風流と言うのだろうか、夢追い人は句を作った。

・・・・蚤虱 馬の尿する 枕もと・・・・

さすがわ芭蕉、そぞろ神、道祖神に導かれての旅行脚である。
すべては風流、絵となり音となり句となりもうす。浮世は、おもしろおかしなり。

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小話  新釈 奥の細道   遊女の段

2022-12-11 17:17:43 | 小説

奥の細道。
西行法師に憧れ、道祖神の導きで奥州から北陸、そして美濃は大垣までとな。
芭蕉翁は四十六、門人の曾良は四十一、名所巡りしながらの道中記である。
後から見れば、芭蕉は旅の疲れか養成に入る事に。亡くなる数年前の旅だった。

お江戸は深川を意気揚々に出立した二人は、白河の関越えて、みちのくへと。
松島、平泉、立石寺、出羽三山、最上川と、それはもう感歎の連続であった。
やがて越後を下り、越中へと抜けようと北国一の難所に差し掛かる。
親不知子不知である。正しくは後に、犬戻り、駒返しと付くほどの国境。
昔から道はここしか無し、急峻な崖が日本海の荒波に迫って来る。
まさに親を波に浚われ、子を浚われての、親も子もどうなったか知らずの地である。
芭蕉は河に落ちたそうな。ほうほうの体で切り抜けて、市振の関に辿り着いた。
明日は越中、やっと越後とさらば出来る、そんな越後最後の宿のこと・・・・

芭蕉「おい曾良や、今宵の宿は如何なる宿であるか?」
曾良「はいな、まっとうな宿はなし、寂れたとこゆえ、あいまい宿しか無く」
芭蕉「それも風流で良し、親不知子不知越えでさんざんやった、そこでええ」
  「明日は越中となる、早う休もうぞ、隣部屋なんぞ気にせんとな」
曾良「わかっとります。耳に栓して眠ることにしやす」

そうは言ってもあばら家である。板一枚で筒抜け、戸も良く閉まらず。
隣の声が聞こえてなんね。聞くともなく聞く羽目になりそうろう。
なんやら、うら若き遊女二人と爺が泊まっておる。真面目話をしておる。
お伊勢参り、お伊勢さんに女だけで行くそうな。爺は遊女屋の小間使いか。
越後は新潟みなとの置屋から、銭貯めての罪落としの伊勢参りとのこと。
ああ、この世は無常、これにつきる。萩は夜風にそよぎ、月は照らすのみ。
・・・・一家に 遊女もねたり 萩と月・・・・

あくる朝、遊女に声かけられる、願い事を聞くことになる。
はや芭蕉一行は先を急ごうとしている時である。聞くも止む無しである。

遊女「あの、隣部屋のお方でねえですかえ、昨夜は変な話耳に入ったかのう」
芭蕉「いやいや、まったく聞こえはしませんどした。疲れてもうて、直ぐにと寝ました」
遊女「そんな、面に寝てねって書いてるねか。まあええ、アテらは見たまんま遊女らて」
  「男悦ばしてなんぼの生業だて、きっと前世で何か悪かこつやったん」
  「そんでのう、まだ生きてるうちに、せめてのう、そんや罪落としやで」
  「お伊勢さんに参ってのう、前世の悪行、この世での報いを、仕舞いにしたいん」
  「来世ではのう、まんまたんと食って、ええ着物着て、笑って暮らすんやで」
  「あんな、そんでお願いや、付きの爺は帰っちまった、女二人が心細いん」
  「お二人ん後、付かず離れずで、そっと付いてってええろか、お頼みしますて」
芭蕉「それはそれは、心持ちは重々とわかりましたども、あちこちよっての旅ですよって」
  「こればかりは如何ともしがたく、意にそうことは出来かね申す。」
遊女「うん、そうやな、こいが世間や、この世はそう出来てるわい」
  「わかった、今まで何もええこつなかったども、意地でも伊勢さ行く」
  「体こわしてまでして、銭は貯めてきた。無くなりゃ、道々で稼げばええ」
  「アテらはのう、土喰ってまでものう、生きていけるんや」
  「ああ、こいはもう、長々と足止めてもうて、すんませんどした」
  「蚊、トンボの戯言と思って、聞き流してくらんしょ。はばかりませ」
芭蕉「痛み入り申す。道中安寧を願っておりまする。では、先にと・・・・」

世は無常、なれど萩と月は見守るなり。
これも何かの教え。あの遊女二人は影かも知れん。影こそ表かもである。
芭蕉と曾良も、あの遊女達と入れ替わっててもおかしくはない。
たまたま、サイコロの目が違って出ただけかも、そう、知らんて。
この世は、コロコロ、コロリンや・・・・

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小話   良寛さんと、貞心尼の語らい

2022-12-10 18:59:45 | 小説

越後は出雲崎、海の向こうは佐渡、荒海は続く。
海を見て独りごとを言った、何と言ったのか、波に消えた・・・・

この善に生きた僧は、無を求め、それを貫き通した一生だった。
唄はあふれ出た、手は追っつかず、筆は自由のままに流れた。
わらべの様になりたい、心は綺麗がいい、何時までもそれがいい。
天はその褒美を与えたのか、見目美しい女性を遣わした。
齢七十にして、貞信尼と出会う。唄返しの日々始まる。師弟愛は四年続いた。
母を天明飢饉のさ中に失ってからというもの、心に穴が開いていた。
それが、救われたのである。この尼僧は母の再来か、また、海を見た・・・・

・・・・佐渡が見えらあ、カカの国じゃ、飛ぶ鳥ならばひとっ飛びかや。
・・・・会いてえのう。オラを産んでくれて、ありがとのう。
・・・・あの貞心尼はカカではねえねか、そんだ、出て来てくれたんだ。

ここからは、物語りとなる。
良寛と貞心尼との出会いから、最期の日までの儚くも美しい日々のこと。
よくと耳を傾けてみよう、聞こえて来る・・・・

良寛 「あいゃー、こいはこいは、また、長岡から来てもろうて、わるいですな」
貞心尼「いや、なも、あん時は急にやって来たすけ、和尚さん出てましたのう」
   「そんで、手毬と和歌を置いて帰りましたわ」
良寛 「お前さん、ええ唄読みする。そんでオラは返し唄を書き送ったんだて」
   「あの意味わかりましたな、そんで、こうしてのう、えかったわい」
貞心尼「なあ、和尚さんや、アテんこつ弟子にしてけろ、お願いや」
   「昔から本が好きでのう、唄作ってたて、教えてな、ええやろ」
良寛 「今まで何があったん、心に何かがねえと、唄作ろうなんてしねえ」
貞心尼「ん、んだな、アテはカカさん知らね。三つん時、亡くなった」
   「トトの後釜には邪見にされた、家を出たくて十五で嫁いだ」
   「したけんど、嫁ぎ先に馴染めず、また子が出来ねえすけ、五年で離縁だて」
   「そっからと言うもの、尼になりたくてのう、こうして来ましたて」
良寛 「ああ、わかったわい、心が唄を欲しておるんやな、なら唄ったらええ」
   「そばに居てええど、このオラと唄返しの日々、送ろうて」
貞心尼「ええかいや、和尚さん、ずっと一緒だえ、よろしゅうな、ええわ」
良寛 「こっちこそ、オラん世話たのむて、もみじ散るまでな、な・・・・」

こうして、最晩年の四年間を送る事となる。貞心尼は三十路になったばかり。
良寛さんはひねもすのたり、わらべと手毬、かくれんぼ、唄読み、筆書き。
背中をさするは貞心尼、長生きしてくれ、してくれって・・・・

天保二年 正月六日、雪降る夕方、冬なのにもみじは舞った。
・・・・うらを見せ おもてを見せて 散るもみじ・・・・  良寛

明治五年、貞心尼は、くしくも良寛みたいに齢七十五で、もみじとなった。
こう思ったのかもしれない、「同じ齢んころ、土んなりて」と、その願いは叶った。
・・・・散る桜 残る桜も 散る桜・・・・  良寛 

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小話   人の心を一番知っているのは、誰じゃい

2022-11-17 23:41:00 | 小説

・・・・さてもさても、日本の偉人の中で誰が一番に、人とはを、知っていたのか。
人の心のヒダヒダの一枚一枚、カサカサと言う心の音、心の匂いとでも言おうか。
間違っても今の方々ではあるまい、つまり、心理学者、精神科医、小説家、詩人、芸術家、
評論家、哲学者、思想家、宗教家、教育者、占い師などではない。
しからば、この場合のB級グルメ的面々はいかに、つまり、詐欺師、極道、イカサマ師、
美人局、マフィア、用心棒、すけこまし・・・・知れている。

ん~~、ああそうだ、お坊さんや神主ではないんかえ、仏の目や心眼を持っておられる。
範は昔にありにけりだ、それも遡る程に傑物、偉人ありではないんかい。
日本のお坊さんでは誰かいや、鑑真は中国人なり、それ以外では。
最澄、空海、空也、法然、栄西、親鸞、道元、日蓮、一遍、ではまだ若い。
あのお方、もしや行基菩薩ではないか、生きているうちからすでに菩薩になられておる。
よし決めた。小生、一念発起し行基菩薩様と夢の世界でのご対面致したく。
致したく、致した、致し、致・・・・(深き眠りに入りました)・・・・


小生  「これはこれは、お初にお目に掛かります」
    「私は越後の百姓の倅、名は助六いいまする」
    「今、夢の世界で夢を見ている様な、奇妙な面持ちでありまする」
    「とにもかくも、せっかくお会いした機会ですから、単刀直入にお聞きしたき事が」
行基菩薩「ああ、ええよ、助六とやら。あのその前に、なあ、ちとええか」
小生  「はっ、何でありまするか?」
行基菩薩「そちには、女難の相が出ておる。カカさんはもしや悪人では?」
小生  「仰せの通りであるまする。間男の子を産んでしまいました」
    「その子、つまり私の弟が亡くなった日の事を、笑い顔で話していました」
    「私は三才で捨てられました、でも今となっては、むしろ良かったかと」
行基菩薩「三才で影を知り、その後、地獄を見たんじゃな。面に書いてある」
小生  「はあ、七才の時、山から鬼の様な女が来て、もぬけにされかかりました」
    「あの十年で萎れました。まるでセミが脱皮しそこねたみたいな男に」
行基菩薩「うむ、生母が夜叉、後釜が鬼か。そちは女難から始まっておるか」
    「南無観世音菩薩、ええか、女とは観音ぞ、夜叉も鬼も借りの姿ぞ」
    「逆もしかり、麗しき女も借りの姿、いかにでもなれようぞ」
    「助六よ、そちは肥やしを貰ったのじゃ、多いほどに良しじゃ」
小生  「菩薩様、私には人の心が見えませぬ。このすさんだ目には・・・・」
行基菩薩「ええか、見ようとするな、むしろ見ぬが良い。心が見える訳がなし」
    「匂いをかぐが良かろう。人の心をかぐのじゃよ。匂いは誤魔化せん」
    「ええ人はええ香りの心を持っておる。逆は逆じゃて。これ人なり」
小生  「私の育ての婆やは、ええ匂い持っておりました。本当に、それはもう」
行基菩薩「よいか、そちは三つの肥やしをもらっておる。もらい過ぎじゃて」
    「その肥やしで、ええ花咲かせよ。夜叉も鬼も、本当は観音かもな」
    「良く聞けや、観音様は何にでも化けるぞよ、それを知ることよ」
    「人とは、人の心とはな、それは花じゃて、みな違う匂いだぞい」
    「花を愛で、育て、そして楽しむのじゃ。それで人は、救われるのよ」
小生  「人とは、花ですかえ。わかりました、花の心を知れゆうことですの」
行基菩薩「そちは、何の花が好きじゃ?」
小生  「はい、道端のすみれが好きです。あの紫が本当に美しいですて」
行基菩薩「では、すみれの様な女を求めよ、それが良い。では、な・・・・」
小生  「はぁ、後まだ、あれは、あっ・・・・」



そんなこんなで、夢は覚めてしまった。
夢では無かったのかもしれない、幻を見たのかもである。
あの助六は私だったのかもしれない、まあ、私にしておこう。
さあ、すみれを探しに行こう。人の心を見ようなんて、もう、どうでもいい。

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小話   色街での、あの世話

2022-10-03 22:48:04 | 小説

あの世は、あるんかい、ないんかい。
あると言えばある。いや、ないと言えばない。あるようでない、ないようである。
これは禅問答に似て来やしないんかい。わけわからんわ。
わかるようでわからず、わからないようでわかる。もしや、この世あの世は紙一重やも。

夢か幻か、物語を一つ。時代は明治の始め、所は江戸改め東京の四ツ谷。
色街は改元があろうがなかろうが、男と女の睦ごとは永遠なり。
ここに、登場人物あり。薩摩の若ぞう、名を菊一と言う。
相手方は、土佐からの流れ者でサヨとな、夜鷹あがりの五十路や。
二人仲良く蓮の上で、観音様にお目道理した後の話やで・・・・

菊一「いやー、ほんのこて、おはんに会えてよかごわした」
  「行ったり来たりと、うろちょろしてた甲斐がありもうした」
  「名残り惜しいけんど、わいは行かねばなんね。また、お会いしましょう」
サヨ「なんや、帰るっち、朝までいたらええっち、また、あっためてんか」
菊一「わいも、そいは山々だけんど、ほかのおなごの分がありもうす」
  「男は辛いごわす。女にはわかりはしもはんど。また、来ますよって」
サヨ「あんた、じゃ、こいはどげんや。閨での、夜更け話でええき、いてな」
  「銭の為なら朝まで言うやろ、でもそうじゃないき、あんた、めんこいがよ」
  「出すんはちょっとでええき、そんかわり、話だけやで、ええな」
菊一「そいは、まるで団子屋に入って、食べずに帰るんに似てもうそう」
  「だども、そいは大砲やすめにはなるごわすな。あい、わかりもうした」
サヨ「暴れたくなったら、そん時は、銭やきな、ええな・・・・」

夜風は生ぬるい、菊一どんの腕枕で、サヨさんは娘に戻ったようだった。
親子みたいに歳が違っていても、色街の男と女、何にだってなれる。
まして明治になったばかり、江戸の香りぷんぷんや、ええ匂いや。
さあ、どげな夜話になったんかのう・・・・

菊一「おいどんは、なあ、遊びまくっておるんは、訳があるごわす」
  「あんまこと、長生きしなか予感がありもうす、せやからで」
サヨ「ええちっ、そげなこと。こう思えばええき、あの世でも狂ったええ」
菊一「そいは、あの世でも、女がいるってことでごわすな」
  「なら、何も急ぎ打ちせんでも、よかごわす。あの世はあるんかい」
サヨ「ある、あるよってな、昔から猫、キツネ、狸は化けるやないけ、あるっち」
  「そいどころか、蛇は大蛇になって祟るでないんかえ、恐か」
  「ましてな、女は般若や夜叉んなってでも、男に仕返しするっちゅうが」
菊一「てことは、あの世はある思うて女は大事にせんと、いかんごわすな」
  「あ、待てよ、人、猫、キツネ、狸、蛇には、あの世あるにしてもだども」
  「アブ、ブヨ、蚊、蜂、蝶々、蛾にもありもうそか?」
サヨ「あるがぜよ、生きとし生けるもんは全部繋ごうてるき」
菊一「そうでごわすか、そいでんやったら、みみずはどげなですやろ」
サヨ「あるに決まっちゅうが、蛙、イモリ、蛇、モグラなんかの役にたっちゅうに」
菊一「みみずにも、あの世あるかいのう、みみずにもやろ、みみずが、みみず・・・・」
サヨ「あ兄さんや、みみずみみず言ったらいかんがぜよ、男にはわからんき」
  「そげに言うたらの、あていのみみずが暴れ出すがよ、手に負えんがきな」
菊一「あっ、こいはこいは、すんもはんの。とんだあの世話しになてもうた」
  「朝まで、大人なしゅうして寝るごわす。お休みなさいの・・・・」
サヨ「なんちないわ、もうええが、あていも寝るわいな、ふん・・・・」



あくる朝、菊一はお約束と言っていいのか、おかわり砲をぶってから宿を後にした。
女に火付けてしまってからに、そんで寝てもうたんや、それじゃいけん。
サヨはしずしずと見送った。付け銭なしでのう。

あの世は、あるんかい、ないんかい・・・・

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