北海道、すずしいどー

夏は北か、高地にかぎる。
これは、旅大好き人間の私めの一迷言である。
ようは、すずしい所に行き、何か得したような気分になりたいのである。

さて、北海道は稚内、礼文島、利尻島に行って来ました。
ロシアのサハリン島は見えなかったのですが、最果ての風情たっぷりでしたね。
ここには、２０年前に来たことがあり、懐かしさで今浦島みたいでした。
ああ、おまえはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云う。

さっきのは、好きな詩人のまねをしました。
気取らない私めが、気取りたくなるようないい味したとこじゃよ。
味といえば、ウニ、イクラ、ほっけ、こんぶ最高ね。
ああ、お前は何を食い散らかしたのだと……
ウニの身にもなってみよ。

ここで、島に向かう船の中での小話ひとつ。
到着まで２時間位あるので、客室で横になってゆらゆらに見をまかせてたのよ。
私のとなりは、年配のご夫婦が横たわっておったのよ。
ゆらゆら、ゆらゆら、小気味いい感じで進んで行ったときじゃ。
コツン、壁に固い物があたる音が耳元でした。
何だろう、あたりを見回した、何？
そしたら、となりにいる奥さんが「このお金、あなたですか？」と聞いてきた。
私のポケットから落ちた１０円玉だった。
ありがとうと言い、受け取りました。
これまた、ご親切と思いながらも、こんなこと思いました。
……あの、響いた音は何かしら……

よかよか、ウニの踊り食いをした私じゃ。
なーんも、おもっちゃせんかいのー。
お互い、いい旅しましょう。

そうこうしてたら、島に着きました。
島の人たちの出迎えの声が聞こえます。
「おかえりなさいー、おかえりなさいー」
なんか、旅人を喜ばす言葉ですね。

私は２０年ぶりに帰って来た、と思った。