本章が終わると 始まるもの
そう エピローグ
パンドラの底にあるは おまけ
なかには夜叉
開ける必然 罪なもの
これまた業の一里塚
あの時 死んだ気がする
あの日 寒かった
切なく 泣いた 十七の野辺送り
人をあやめたと等しい
守ってくれた 老婆を
死した者 生き返らず
死なず生きずは 我のこと
よって ふろく
おまけの また ふろく
なきぬれど
身上万化に なきぬれど
露は露
落ちるもの
山は燃えゆ
山は燃えゆ
灼熱地獄 再来か
我来た国
燃ゆるなり
我も 燃える
我も 燃える
涙の抵抗 拙きもの 虚しきもの
まるで 火に油
残るは 焦土なり
案山子が笑ってます
・・・・何? 何をです?
猫 猫ですよ
猫と私の空間を 笑ってるんです 案山子は
世俗を放れたのです
人間臭くなくなりました
だから困りました
仮象臭くなっちまったのです
猫は鳴いてます
ニャーオ ニャーオ ニャーオ
仲間と思い なつきます
これでいいんですか?
これでいいんです
これしか ないんです
見え 見えて来るは
瑠璃色の世界
霞ある
オラトリオの空間
川は流れる
それは 文学の流れ
詩はふるさと
小説は彼の国
深きは海
ボキャブラリーの海
泳ぐは 我
凍りかけた湖あり
北の果ての地
孤舟に乗るは 我 我 我
たえず 近くにいる
なれど 迷妄
千里にあふれる
天 曰く・・・・
ネフスキーへ行け
最敬礼せよ
ただ 懺悔せよ っと
偉大なる闇 そこにある
空虚の屍
微かに笑う
大いなる先人 そこにいる
汝 見よ
これが 彼の 仮象だ
笑い方も忘れたころ
心の底の涙も枯れたころ
残り火 恋しころ
・・・・あの 声がする
媚薬の乙女 そこにいる
麗しき美体
情欲の坩堝
天使のエロス そこにいる
慰めの乳房
果てぬ抱擁
いつまでも 続くものよ
眠りと言う果実
永遠の慰謝
眠れる者よ 幸あれ
昔はあったのです
確かにあったのです
幼い頃 銀河は あったのです
ただ 忘れたに過ぎないのです
そう 旅をしたのです あの頃
ジョバンニと一緒に
遠い 遠い ところまで
旅をしたのです
なのに これが 夢想でしょうか
だけど だけど これが
ザネリは言ったのです・・・・
・・・・ラッコの上着が来るよ
・・・・ラッコの上着が来るよ
正太も 裕子も泣いたのです
みんなみんな 泣いたのです
一枚の絵を見た
腐った裏町で、それを見た
凍る絵を、見た
ただ見た、何も知らずに
魂のない絵、そこにある
血の狂気、そこにある
怨みの目、そこにある
呪いの牙、そこにある
殺意の萌芽の擬態
眠るかにみせ、時を待つ
ああ、遅過ぎた
アドルフの絵だとは知らず
私は、嬉嬉した
そう あれは 梅雨の日
蒼い 小舟 難破した
なかには 餓えた 人ばかり
なかには 奇怪な 夜叉ばかり
私は なぜだか そこにいて
隣は 中也 変な顔
いいさ いいさの末期の目
吹く吹く風は ロシア風
ロシア ロシアの闇の風
操る ドストの 得意顔
わおぅ わおぅ と襲い来る
友人 英光 溺れゆき
私も 危ない とこでした
友人 光栄 溺れゆき
私も 危ない とこでした
私も・・・・
若葉のころ・・・・愛し
最後の紅葉・・・・過ぎゆき
この刹那・・・・梢から
吹く風に
身をまかせるや、よしなに
過去は早馬灯
甘き夢
あの子と出会ったころも
そして、別れたころも
みんなみんな、攪乱させ
きえてゆく
ああ、すぎてゆく、すぎてゆく
この、無情
この、寂獏
この、忘却の流れよ
時間と時間よ
お前は・・・・何を
枯葉は地に落ち
そっとそっと、ねむる
文学って文字 見ただけで
感傷に棹され 涙する
この 蒼さ
声を 奪われた
闇の 流刑人
口寄せ せよと
今日も 現れる
幻影 跋扈し
それは 罪の街
それは ソドム
声無き 声
伝えんと 伝えんと
我は 欲する
田吾作 朝寝する
ミヨちゃんと朝寝する
ミヨちゃん いとしや十八
ミヨちゃん 恥じらい またとする
田吾作 無類の好き者
田吾作 種馬もどきなり
田吾作 飽きるを知らず
ミヨちゃん たいへん
ミヨちゃん くたくた
ミヨちゃん 孕む
田吾作 鉄面皮
田吾作 なおも励む
ミヨちゃん 泣く
ミヨちゃん 夜逃げする
田吾作 吠える
田吾作 惚ける
ミヨちゃん 帰らない・・・・
暗い冬へ旅しよう
酒はあるか?
・・・・ある、ある
カルチモンはあるか?
・・・・ある、ある、大あり
女はどうだ?
・・・・これは、これは、女体御法度
ルンペンよろしく
我、懈怠の旅人
懐に禁書かくし
世俗を出奔する
いやはや、これは
これは、いやはや、いやはや・・・・
が この世は 私に生まれた
そこから始まった
悪も 悲劇も 何もかもが
私は厭う 自己しか実在しないという事実を
私は驚く 自己が絶対であることを
私は涙する 現象達のいじらしさを
私は惚ける すべてが無のために
私は手を見る 手は心より 笑っている
だが よそう
笑えたかもしれない可能性を殺し
私は 闇になろう
嘘
あの子
見えない
わかってる
つまり
だけど
なんだ
懶惰 懶惰
陽だまりに抱かれ
あの頃のように眠りたい
消えちまった昔のように
そっと そっと
ねむり たい