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中国夜話 毛沢東異界漫遊記(十四話) ムッソリーニの愛人と、お話しの巻

2022-01-08 16:50:26 | 小説

 クララ・ぺタッチに、光をあてたいと思う。
 前回に登場したムッソリーニの愛人である。
 複数いた中で最期まで寄り添い、共に銃による処刑になった美人。
 普通の女性が、その時代のカリスマに信奉し惹かれ、33才で消えた。

 彼女の愛称はクレラッタ、1912年にローマの上流階級に生を受ける。
 ムッソリーニには20才の時に知り合った。時代は彼の台頭を望んでいた。
 町には熱風が渦巻いていた。総領、総領と世間は連呼して止まなかった。
 そして24才の時から、彼女は正妻ラーケレに存在を知られずに愛人に。
 ムッソリーニは元教師であり、四か国語を操りスポーツも出来て、まさに色男だ。
 常に愛人は数人、一夜妻なんぞは数百を有に越えるという。
 それはまだしも、彼は徐々に変質していった。より先鋭化し、イタリアを窮地に追いやった。
 彼は言った……「神なんている訳もなく、教会はイタリアの癌、キリスト教は堕落した宗教」
 反ユダヤ、反教会的、ローマ帝国復活を夢見る誇大妄想者へと。

 クレラッタは、愛してはいけない人に、永遠の愛を捧げてしまった。
 彼女は最期に言った……「そんな事をしてはいけない、総領を撃つなんて、そんな事を」
 スイス国境の近くのコモ湖畔で、彼女は彼をかばい共に倒れた。
 だが、まだ終わりではなかった。ミラノでは猛り狂った市民による制裁が。
 彼女の処刑には反対もあった、ごく普通の女性だからだ。
 ここからは、声無き声を聞こうと思う。そんな声を、拾いたいのです。
 毛沢東さんや、お手柔らかに、お頼みします……


毛沢東  「あなたの存在を知ったのは、この前に、ムッソリーニに会った時です」
     「愛人だったのですな。最期まで一緒で、共に銃弾に倒れたんですな」
     「その、市民の怒りの渦の中で、あまりにも……」
クレラッタ「私は運命に従っただけ、好きな人に沿いとげられて幸せでした」
毛沢東  「お国では、総領、総領と崇められて、さぞや眩しかったのでしょう」
     「その時代には、その時代の流れがありまする、抗う事なんぞ出来ない」
     「たまたま、その時代、その場所、そして出会う出会わないで変わります」
     「あなたも、それらが重ならなければ、また、違った幸せがあったでしょうに」
クレラッタ「そんなのいいの、彼との9年間がすべて、光に包まれていたわ」
     「もしもまた、生まれ変われるんだったら、彼の元へ行く」
毛沢東  「この天界から、また地上界に降臨するのは、徳を積めば出来るとのこと」
     「かのムッソリーニ様もしかり、修行に次ぐ修行の果てには、可能かと」
     「なにせ、地上界で暴れ過ぎたせいか、かなりと、後かもですが」
クレラッタ「そう、そうなのね。そしたら私、モデルをやりたいわ」
     「大きな黒い瞳が自慢だった、それに腰は細くて、出っ尻よ、ふふっ」
毛沢東  「それは良かった、まさに典型的なイタリア美人の、お出ましですな」
     「その出っ尻だと、いわゆる安産型ですな、何人も出来まする」
クレラッタ「あのね、彼の正妻だったラケーレはね、好き者の百姓女よ」
     「4人産んだわ。あっちの方ばかり盛んで、彼といい勝負よ」
     「だけどいい所はね、男の浮気には寛大だったの、愛人は許したわ」
     「男は女にもてないようだと駄目だって、そういう女ね」
毛沢東  「ラケーレさんも、見上げたものですな。浮気を多めに見る、いいじゃないですか」
     「ムッソリーニ様は、相当に浮名を流したのですな、恐らく隠し子も多いかと」
クレラッタ「そう、実はラケーレの前にもいたの、オーストリア女との間にも」
     「隠し子ではないけど、その認知のことで、ラケーレが反対してたわ」
     「そう、彼はタフよ、一夜限りは数百人越え。でも、愛人と呼べるのは数人」
     「私はね、正妻や、そんな愛人達を押しのけて最期まで残ったのよ」
毛沢東  「ははーん、となるとムッソリーニでわなくて、スケベッ二―二ですな」
     「羨ましい限りですわ。私もイタリアに生まれれば良かったですな」
     「いや、まったくもって、お国は素晴らしいです。男天国ですな」
クレラッタ「毛沢東さん、教えて、天界では鏡がないの、私っ、綺麗?」
毛沢東  「はい、それはもう、充分に綺麗です。吸い寄せられます」
クレラッタ「あの、ミラノ、あのロレータ広場で彼と共に凄惨な目にあったわ」
     「もう死んでいるのによ、顔はぐちゃぐちゃなっても、まだ蹴られまくった」
     「彼の顔はパンパンに、片足は取れかけていたわ、尿までも……」
     「自慢だった私の黒目は、見開いてしまっていた、誰か閉じさせてと思ったわ」
毛沢東  「お悔やみ致しまする」
クレラッタ「あのね、でもね、我がイタリアの良心を感じる時があったのよ」
     「それから、5人が屋根から逆さ吊りにされたんだけど、彼の隣にしてくれたわ」
     「そしてね、私のスカートが捲れて垂れ下がったのをね、マダムがね」
     「群衆の野次の嵐の中、そのマダムがね、よじ登って来て直してくれたの」
     「本当に嬉しかった、時代が悪いんであって、イタリアの心は、まだ大丈夫ってね」
     「そう、地上では色々あったわ、でも彼との9年間で充分よ」
     「もしね、また彼と回り逢えたら、今度は正妻を仕留めるわ」
     「愛人は許さないわ、私だけのものにする、一生」
     「あのラケーレは4人産んだから、それを越えるわ、女の意地ね」
     「毛沢東さん、話を聞いてくれて、ありがとう。チャオチャオ」
毛沢東  「こちらこそ、教わりました、では……」




 私は今、この拙文を泣きながら書き上げました。
 クレラッタこと、クララ・ペタッチの声をまったく汲み取れずにいます。
 本当はもっともっと語っているのに、残念です。
 彼女は、いい女性だと思います。時代に翻弄されたのです。
     

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中国夜話 毛沢東異界漫遊記(十三話) ムッソリーニと、戦争談義の巻

2022-01-05 18:31:39 | 小説

 おぞましい事が、よくも連続で起こったものである。
 1945年4月30日、ドイツ第3帝国は風前の灯火であった。
 ソ連はベルリンの心臓部に迫った、総統官邸の地下壕には炸裂弾が轟いた。 
 ヒットラーはその夜、愛人エヴァ・ブラウンと結婚式を挙げた。
 立ち合い数人に別れを告げ、愛犬シェパードに毒を飲ませた後、奥の部屋に二人で消えた……

 その時、イタリアでは、どうであったのか。
 嘗ては師と仰いだ、統領ムッソリーニが愛人ともどもに、2日前に殺されていた。
 ヒットラーは、その事を知ったのだろうか、仲の良かった同士だ。
 何らかの、お告げはあったのかも知れない。虚空で、何か言ったのかもしれない。
 私は言葉を拾おうとする、そう、ムッソリーニは天界ではどうしている。
 そこは同盟国だった日本の敵国、中国の毛沢東に異色対談してもらおう……


ムッソリーニ「チャオ、毛沢東、あなたチャイニーズ、日本の敵」
      「私に会って、どうする。イタリアとも敵、あなた嫌い」
毛沢東   「おやっ、あなた、こんなに元気なのですか、とんでもない事になったでしょ?」
ムッソリーニ「ん? パルチザンに捕まっての処刑のこと」
      「あれはな、愛人のクララ・ペタッチが身を投げて防ごうとした」
      「わしは9発くらった、あの女はもっとくらった、わしを守ろうとな」
毛沢東   「それから、その後、亡骸は町に運ばれて広場で逆さ吊りと……」
ムッソリーニ「ああ、ミラノのロレータ広場で虫けらの様に足蹴りにされた」
      「まさに死体に鞭打つだ、美人のぺタッチの閉じてた目が開いたわ」
毛沢東   「まっくもって無惨ですな、国民に統領と崇められた、あなたが」
ムッソリーニ「アッローラ、今のは切り替えのイタリア語だ、その話は、もういい」
      「お前は何で、わしを呼んだ?」       
毛沢東   「まあ、昔は昔。私は今、同時代の指導者廻りをしとるのです」
      「この天界では誰にでも会えるんで、ロシアの狼と白犬の次は、あなたにと……」
ムッソリーニ「何っ、ロシアはもっと嫌い、東部戦線の我が軍を踏みつぶした」
      「盟友ドイツの息の根を止めた。占領後は盗む壊すは、女を滅茶苦茶にした」
      「いいかね、女は愛すもの。我がイタリアの十八番ね、野蛮人嫌い」
毛沢東   「まあ、ロシアはそうでも、中国は違いますぞ、紅楼夢の国です」
ムッソリーニ「今のは、おそらくエロいって意味なんだろうな、何それ」
      「我が国は、アモーレ、カンターレ、マンジョ―レの国だ」
      「人生は愛して、歌って、食べてが、イタリアそのもの」
毛沢東   「あの、統領、それでは戦争に勝てんでしょ」 
      「ドイツは嘆いてましたぞ、イタ公のせいだって」
ムッソリーニ「何を言う。ローマ帝国を見よ、野蛮人どもを駆逐したぞ」
      「ヨーロッパ大陸をほぼ全部、ブリテン南部、北アフリカまでもな」
      「こんなに強い国があったか、連戦連勝のたわものよ」
      「わしはな、ローマ帝国の復活を夢見て戦って来たんだ」
毛沢東   「それはそれは、大昔はそうでも、リビア戦線でボロ負けしましたな」
      「ドイツのロンメルの足を引っ張ってばかりが、事実なのでは」
ムッソリーニ「わしは鼓舞したぞ、信じるべし、従うべし、戦うべしとな」
      「これは思うに、祖国のマンマとレディーのせいかもな」
      「我が国民は移り気なのだよ、割に合わない事は特にな」
毛沢東   「あなたと、ヒットラーの関係は?」
ムッソリーニ「弟分だよ。毒のあり過ぎる弟。いろいろとあったな」
      「そうだな、あの男はわしを信奉していた、真似もされた」
      「ローマに呼び、大群衆を前に演説した時は、横で上気してたな」
      「ファシズムは、わしから学んだ。大衆を融合するすべを」
      「ただ、わしは最初から大声で演説するが、あの男は違っていた」
      「小声から話し出す、みんなが聞こうするまではな、後はまくし立てる」
      「そう、ローマ式敬礼も真似された、格好良く、ハイルと叫ばした」
      「ヒットラーは化け物だよ。わしも仕舞いには怖気づいた」
      「戦争末期、軍のクーデターで一夜にして刑務所に入ってた時だ」
      「わしを救い出してくれた。スイスへの逃亡、後ほんの一歩だった」
      「パルチザンめ、わしに期待してた時もあったであろうに」
      「これがイタリア、まさにイタリア、わしがイタリアそのものだ」
      「ドイツの千年王国は夢となった、ローマ帝国も、夢まぼろしとな」
毛沢東   「最後にお聞きいたす、ヒットラーが自殺した時、天界で何を思いましたか?」
ムッソリーニ「何も思わなかった。ただ、抱き合った……」




 類は類を呼ぶである。
 この二人は、お互いの中に自分を見たのであった。
 まるで自分の分身が、ドイツに現れたり、またイタリアに現れたりするかのように。
 もし悪魔がいるとすると、このような形で現れるのだろうか。
 二人の始まりは、売れない画家と、熱心な教師だったが……

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中国夜話 毛沢東異界漫遊記(十二話) フルシチョフと、何故か仲良くの巻 

2022-01-02 22:23:02 | 小説

 第二次世界大戦、その後の時代で、毛沢東にとっての事である。
 彼にとっての、ソリの合わない順に並べてみるとどうか。
 敵国の東条英機を筆頭に、ヒトラー、ムッソリーニであろうか。
 では、見方ではどうか、トルーマン、フルシチョフか、さあ、どうか。

 1953年3月、スターリンが死に30年に及ぶ恐怖政治が終わったかにみえた、が。
 まだ、この亡霊に支配されて来たソ連、それを終わらせたのがフルシチョフだ。
 スターリン批判まで、実に3年もかかった。亡霊は、まだいたのである。

 嘗てレーニンの死をスターリンは待っていた、今度も、そうか……
 そこらも、ソリの合わない毛沢東と語り合ってほしいものだ……


毛沢東   「おお、これはこれはフルシチョフ同志、お久しぶりです」
      「下界ではとんだ失礼を致しました、北京の中南海での事です」
      「嫌がるあなたを、プールでパンツ一丁にさせてしまい、申し訳ござらんでした」
フルシチョフ「ダー、ダー、わしは腹が出てて恥ずかしかったですぞ」
      「とんだ接待ですな、都合2回中国に来たのに、得る所はなかった」
毛沢東   「いや、来てくれただけで、こちらの面子が立ち嬉しかったです」
      「あのスターリンでは、あり得ません。ひとえにあなたの、人徳かと」
      「昔はやりあったげど、この天界では、もう水に流しましょう」
      「良くぞ、スターリン批判をやってのけてくれましたです」
      「独裁主義、秘密主義、大粛清の暴露、30年の膿を出しましたな」
      「隣国として、どれだけ安堵したことか、感謝の言葉もありませぬ」
      「あなたは、スターリンを信奉していたのかと、思ってましたが」
フルシチョフ「ニェット、あれはグルジアのヤクザもんです。ロシア人ではありません」
      「共産革命、大粛清の嵐、ドイツとの大祖国戦でロシア人数千万殺しました」
      「あの男にとっては、ロシア人は雲霞の大群です。多過ぎるのです」
      「昔を引きずった、カフカスはグルジアの悪です、我がロシアは無惨にも」
毛沢東   「あの、それではレーニンは、生粋のロシア人ですかな?」
フルシチョフ「ニェット、実は違います。カスピ海のあるカルムイクの出です」
      「真に残念ながら、モンゴル、トルコの血が入ってます」
      「我が国は広大過ぎるのです。ヨーロッパ・ロシアの先はアジアです」
      「多民族を、ソ連という枠でまとめてるのです、強制力が必要です」
毛沢東   「では、あなたの出自は、いかがか?」
フルシチョフ「ダー、わたしは、スラブ民族です。ロシア人です」
      「その、ウクライナに接する炭鉱町で生まれました」
      「まあ、16世紀まではウクライナ領でしたな、うん」
      「ロシア国家で生まれた、ウクライナ民族とも言えますな」
      「その、この二つは微妙なのです。キエフ・ルーシが母体なのです」
毛沢東   「お互い多民族国家ですな。実はですな、中華民族も微妙なのです」
      「もともとの漢民族は黄河中流域の、黄土高原が故郷でしてな」
      「それが歴代皇帝の東西南北への征服の中で、混血していったのですな」
      「ですんで、北京人、上海人、広東人は微妙に違うのです」
      「私は湖南人です。大昔に、南下して来た漢族と土着が同化したのです」
      「お互いに、遡れば切りがありませんな。中国人も多過ぎます」
      「あなたは、スターリンによく見出されましたな?」
フルシチョフ「ダー、入党後、35の時に彼の妻と知り合い、紹介されました」
      「いかつい男で、人を射貫く鋭い目をしてました、びびりました」
      「モスクワに呼ばれたり、ウクライナに送り込まれたり」
      「独ソ戦の時は、スターリングラードで政治委員として軍を指導してました」
      「この政治委員は、陸軍中将にあたります。敵にも味方にも容赦しません」
      「敗走する自軍には、後方のスメルシが一斉射撃します」
      「師団長はその場で責任を取らされ、拳銃を渡し自決」
      「町は瓦解し廃墟に、両軍合わせて200万死傷、60万の住民は6万に」
      「そこでの勝利と、ウクライナの戦後復興で認められたのです」
      「大恩はあるが、私は彼の死を待ってた。ロシアを壊し過ぎたからだ」
      「まあ、私の時代は、彼の死後11年位ですかな、解任までに」
      「スターリンの罪は甚大ですぞ、革命の最中に将校大粛清で軍を弱体化された」
      「モスクワまで、30キロと大手が掛かった。砲弾の音は響いた」
      「あの男は,ロシア人がいくら死のうと、自分がロシアの血でないせいか……」
毛沢東   「そこの所は難しいですな。実はこの前に会ったのですが……」
      「この天界にても、やはり怖くて、まるで虎の前の猫でしたわ」
      「フルシチョフ同志、今のその話で、またぶり返しが」
      「ここら辺でお開きとしましょう。背筋が寒くなって来ました」
フルシチョフ「毛沢東同志、お国では、毛沢東批判が出ませんでしたな」
毛沢東   「その話は、また今度に致しましょう。ややこしくなります」
      「お会い出来て、懐かしく思いをはせる事が出来ました」
      「どうも、ありがとうごさいました」
フルシチョフ「ハラショー、こっちこそスパシーバ、ダスヴィダーニャ」





 この毛沢東にとっての、スターリン批判にあたる毛沢東批判は、やばいことに。
 虎の尾を踏むではすまされない、一番知っているのは、劉少奇か。
 それでも、アジアはまだ牧歌的である。もしソ連だったら。
 スターリンの生前にはありえなかった、彼の死後も、人民は、まだ恐れた。
 その呪縛を解いたのが、フルシチョフである。3年も後だが。
         

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