Don't Let Me Down

日々の雑感、引用。
言葉とイメージと音から喚起されるもの。

靴ひもが切れた

2010-02-20 11:10:45 | 日記


ぼくは“天邪鬼(あまのじゃく)”を売り物にしたいのではないので、連日のオリンピック報道については、先日“上村愛子は参考になるのか”を書いたので、もう黙っているつもりだった。

だから大嫌いな“男子”フィギュア・スケートについても書く気はなかった。
ぼくは大嫌いなものをわざわざ見たりしないので、昨日の“演技”も当然見ていない。
テレビでフィギュアが始まったらチャンネルを替えるか、電源を切るだけである。

にもかかわらず、ここに書く気になったのは、なんと日本選手の使った曲がフェリーニの「道」の音楽だったからである。

‘あらたにす’読売・“編集局から”引用する;

大けがを乗り越え、「ガラスのエース」は強くなりました。五輪男子フィギュアで銅メダルを獲得した高橋大輔選手。「滑る喜びが演技に深みを出した」。トリノ五輪金メダリスト「荒川静香の目」はこう分析します。選んだ音楽は映画の名作『道』でした。「どんなものでも、何かの役に立つんだ。たとえば、この小石だって役に立っている」。コラム「編集手帳」はこの映画の名せりふを引用して、勝負の味わいを伝えています。(引用)


ならば読売編集手帳は何を書いているのか;

 綱渡り芸人の男が、やはり旅芸人のヒロインに語る。〈どんなものでも、何かの役に立つんだ。たとえば、この小石だって役に立っている。空の星だって、そうだ。君もそうなんだ〉◆イタリア映画の名作、フェリーニ監督『道』の一場面である。映画の名せりふを集めた和田誠さんの『お楽しみはこれからだ』(文芸春秋刊)から引いた◆右ひざのじん帯断裂、手術、リハビリ…険しい山坂も彼には、競技者の精神を磨く砥石として役に立ったのかも知れない。バンクーバー冬季五輪フィギュアスケートで『道』の音楽に乗せ、高橋大輔選手(23)が男子悲願の「銅」に輝いた◆織田信成選手(22)の姿に、胸を打たれた人も多かったはずである。演技の途中で靴ひもが切れ、おそらくは泣き出したかったろうに、持ち味のコミカルな動きを最後まで演じきった。励ましの拍手の中で演技を終え、「ありがとうございます」、唇の形がそう動いたのを忘れない◆何のいたずらか、4年前、銀盤の神様が靴ひもにぶつけた「小石」のおかげで今がある――何色かのメダルを胸に、そう語ってくれる日がくると信じている。(引用)


つまりフェリーニ「道」の《高橋大輔選手(23)が男子悲願の「銅」に輝いた》らしいのである(笑)
しかし、織田信成選手(22)は、《演技の途中で靴ひもが切れ》たのである。

ぼくは思った、靴ひもが切れたら<道>は、歩けない(爆)

おそまつ。


これでこのブログを終わらせてもよいのだが、例によって蛇足。

《どんなものでも、何かの役に立つんだ。たとえば、この小石だって役に立っている。空の星だって、そうだ。君もそうなんだ》

すなわちフェリーニ「道」のこのセリフを、はじめて聞いた人も、思い出した人もいたことは、よいことである。

この映画の“テーマ”=“ジェルソミーナ”を思い出すこともよい。<追記>

しかしフェリーニは、「道」以外にもたくさんの映画を撮ったのである。
とても美しい映画を。

ぼくとしては、フィギュア・スケートに“感動する”ひとびとが、もっと別の感動を経験してくださることを願っている;

《サラギーナ、ダンスだ!》(「8 1/2」)<翌朝追記>




<追記>

ニーノ・ロータ!

あなたは、このひとが手がけた映画音楽を何曲挙げることができるか?

ニーノ・ロータは、フェリーニと“共にあった”が、フェリーニ映画以外でも数々の名旋律を生み出した。

“太陽がいっぱい”、“ゴッドファーザー”をあげれば充分である。

ジョルジュ・ドルリュー、武満徹とともに、映画音楽の天才。



*写真は「8 1/2」撮影中と思われるフェリーニ




<翌朝追記>

海辺で、子供たちのリクエストに応えてダンスする、肥った女の写真を掲載したかった。

目玉をグリグルさせて。

彼女は恍惚のなかにあり、そのダンスは完璧だったのだ。