ミューザ川崎で上演されたコンサート形式のオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の感想。
コンサート形式のオペラ、なのに演出家の名前があったのである程度期待はしてたけど、期待以上に楽しめた。「演劇を観た」感が強い上に、ステージ空間を本当に巧く活かしていて、歌手とオーケストラの一体感もある。これまで「コンサート形式のオペラ」に抱いていた印象がかなり変わった(オペラやコンサートと並ぶひとつのジャンルだと思った)。
演奏について。
オーケストラには冒頭から惹きつけられた。はっとする瞬間が何度もあったけど、とりわけホルンやフルートが印象に残った。第2幕冒頭、弦楽器の官能的な音にも驚いた。
全体的に余計なものを削ぎ落としたような音楽なのに、その脊髄は驚くほど高濃度だと感じた。
演出について。
合唱の人一人一人にも演技がついていて、好きなタイプの演出。(演出監修の原純さんという方、ペーター・コンヴィチュニーから演出を学んだときいて納得した)
演出で気に入ったところは、
◇序曲で舞台に登場し、去っていくドン・ジョヴァンニ
◇婚礼の場面で、一人一人が演技してるところ
◇終盤の照明の切替
◇いろいろな用途に使われる台
◇最後に投げキスして去っていくドン・ジョヴァンニ
終盤の演出、倒れていたドン・ジョヴァンニがゆっくり起き上がって皆の周りを歩き舞台から去っていくところで、2011年のスカラ座(R.カーセン演出)を思い出した。
どちらも「わるいやつが地獄に落ちました、めでしめでたし」で終わらないところがいい。
演出とは違うけど、指揮者のジョナサン・ノットの指揮姿も格好良かった。随所でハンマーフリューゲルを弾きながらなので立ったり座ったりの指揮だけど、立っても座ってもとても絵になってた。
公演から一夜明けても頭の中で音楽が鳴り、ノットの指揮姿や歌手たちの歌い動く姿を何度も反芻した。
聴きに行くきっかけとなった標題役が来日できず残念だったけど、それを補って余りある素晴らしい公演だった。
ところで、歳のせいか季節のせいか、今年はオペラの翌日によく体調を崩した。9月の「魔笛」の後は寝込んで会社を休んだし、この「ドン・ジョヴァンニ」の後は喉を痛めた。精神が満たされる一方で身体は消耗するのか。甘美劇薬モーツァルト、オペラ観るのも命懸け。(来年は公演翌日の消耗も見込んで予定を組みたい)
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