下手の横好き日記

色々な趣味や興味に関する雑記を書いていきます。
ミステリ・競馬・ピアノ・スポーツなどがメイン記事です。

海老沢泰久『空を飛んだオッチ』

2007-01-26 23:59:59 | 
ミステリばかり気を張って読むのも疲れたので、ちょっと気分を変えて読んでみた作品です。
本屋さんに行くときは、買う本(買いたい本)が決まっているときもありますが、
本棚を見ながら、何とはなしに手にとってしまうものもあります。
私はあまり作家を知らないので、題名で選んでしまうことがほとんどなんですが・・・
この作品もそんな一冊で、海老沢氏が直木賞作家というのも著者紹介欄で知った始末(^^;
しかも映画化までされている作品とは・・・

オッチは小学5年生の普通の男の子。山間の村におばあさんと一緒に住んでいます。
ある日、一人で山に入り木に登ってメジロを取ろうとしていたとき、オッチは足を踏み外します。
急降下する体・・・意識を失ったオッチが次に気がついたとき、彼は宙に浮いていました。
彼は、空を歩くことができるようになったのです。
しかし何故か、それを知ったおばあさんは人前で空を歩くことを禁じます。
素直に言いつけを守っていたオッチですが、ある日・・・

ボタンの掛け違いのようなできごとが、オッチを追い詰めていきます。
喜び、悲しみ、憎しみ、恐れ・・・様々な感情がオッチの回りを取り巻いています。
この物語は非常に理不尽で、悲しい話だけれど、
読み終わった者は、その中から教訓めいたものを得ることができるはず。

異端者は、今も昔も平穏には暮らせない・・・
権力がある限り、その影で虐げられるものは存在する・・・
人を差別することで安心する人も多い・・・
人の好奇の目は、ある意味非常に残酷だ・・・
理解できないものを、人は恐れる・・・

ある意味、純粋で無垢なオッチの視点で書かれているからこそ、
不条理な世の中が、圧倒的な存在感で圧し掛かってきます。
大人にこそ、読んで欲しい作品かも。

空を飛ぶ夢、たまに見ます。
この小説と同じく、じっと意識を集中させると体がゆっくりと浮かび上がる夢。
夢の中で、私は楽しいんだけれど、ちょっと不安なのです。
そんな気分の裏側を、そっと教えてくれるような、そんな作品でした。