下手の横好き日記

色々な趣味や興味に関する雑記を書いていきます。
ミステリ・競馬・ピアノ・スポーツなどがメイン記事です。

柴田よしき『猫は密室でジャンプする』

2016-01-08 14:08:52 | 
ちょっと軽くてユーモアのあるものを読みたくて、
初めての作家、柴田氏の本を手に取ってみました。
なんせ「猫探偵・正太郎」ですよ☆
黒猫(白毛部分有り)の正太郎と同居人の推理作家・桜川ひとみの短編集です。

☆「愛するSへの鎮魂歌」
 ストーカーは欲望のため敵を殺した。
 しかし彼を阻む悪魔の手先が・・・

 いきなりこれかよ!という重さでした(^^;

☆「正太郎とグルメな午後の事件」
 正太郎と同居人・桜川ひとみは雑誌の企画で京都の食べ歩きに。
 タッグを組むのは浅間寺のおやじさんと友犬・サスケだった。
 しかし、取材中に不審な車が・・・

 正太郎目線の物語。正太郎とサスケの推理合戦が面白いです。


☆「光る爪」
 心に空白を抱えたまま不倫を続ける女。
 相手の家の猫を見たくなり、こっそり会ったのはマニキュアを塗った猫だった。
 そして、不倫相手の妻が殺されて発見される・・・

 これも悲しい、救われないような結末でした。

☆「正太郎と花柄死紋の冒険」
 正太郎のクラスマンションの花壇で、猫が殺されていた。
 土の上に残る足跡模様を見たひとみは、ダイイングメッセージだ!という。
 正太郎は猫仲間たちと真相を探り始めるが・・・

 正太郎大活躍です☆ やっぱり正太郎目線の方が物語的に楽しいな~。

☆「ジングルベル」
 クリスマス・イヴに一人になることを極端に恐れる女。
 そんな女が今年のイヴに間に合うよう、出会い系サイトで相手を探すが・・・

 正太郎の人助け・・・う~ん、助かったのかなぁ。

☆「正太郎と田舎の事件」
 密室殺人ものの原稿を依頼された同居人・桜川ひとみは不得手分野に困惑。
 ヒントをもらうため、浅間寺のおやじさんと正太郎と一緒に、
 密室殺人ものを得意とする玉村一馬の田舎の家に行くことに。
 ところが、そこで本当に密室殺人が起こってしまい・・・

 これはかなり本格でした。
 面白かったし、犯人も分かったけれど、読後感が寂しかったんな~・・・


ということで、初「猫探偵・正太郎」でしたが、
とにかく作品中に出てくる猫がらみの記述が楽しかったです☆
正太郎のボヤキとか、猫分析とか、本当にこうかも!と思うことばかり。

正太郎目線でない物語は、シビアで人間の悲哀があふれてますが、
猫の好きな人には、おすすめの一冊です♪

麻耶雄嵩『名探偵 木更津悠也』

2015-02-08 00:05:43 | 
またまた久しぶりに読んだ麻耶作品。
久しぶりの読書記事に、この作者を選ぶのもどうかと思いますが・・・

連作短編なので非常に読みやすく、
あの初期の作品群は何だったのかと思うほど。
しかし、その世界観はやっぱり一癖ありまして(^^;


☆「白幽霊」
 ある夜、「白幽霊」が出ると噂される通りの近くを通りがかった男。
 彼が目撃したのは、大きな邸宅の2階の部屋でカーテンをハサミで切り取る影。
 その戸梶邸の部屋で戸梶産業の社長が刺殺体で発見された。
 容疑を受けた関係者が香月のコネで木更津に事件解決を依頼してくる。
 アリバイを主張する家族達の証言の裏に「名探偵」木更津が挑む!
 
 『翼ある闇』でも思ったけれど、香月おそるべし・・・
 伏線は、結構親切でした。

☆「禁区」
 高校の文芸部の5人は「白幽霊」の正体を確かめに行くことにする。
 半年前に行方不明になった友人・夏苗かもしれないと思ったのだ。
 だが、それは違った・・・そして呪われた、と思った。
 そして文芸部の部室で殺人が起こってしまう・・・

 こ、これは想像したら怖い(涙)
 でも、これも伏線は丁寧だったですね。

☆「交換殺人」
 酔ったはずみで交換殺人を約束してしまったという男。
 妻を殺してもらう代わりに、ある男の殺人を約束したという。
 ところが、その相手が自分でない誰かに殺されてしまう。
 このままでは、妻の身が危ないと木更津に依頼が来るのだが・・・

 これはやられたな~、注意深く読んでたはずなのに。
 しかし、とんでもない犯人でした。

☆「時間外返却」
 山中で発見された死体は1年前に行方不明になった女子大生だった。
 彼女の父から依頼を受けた木更津は、彼女の周辺を調査し始めるが・・・

 何というか、色々衝撃的な話でした。
 木更津は気づいてるんですね・・・


ということで「白幽霊」がらみの物語たちなんですけど、
何と言っても面白いのは、「名探偵」木更津と「助手」の香月の関係。
「名探偵」という存在に強い思い入れを持つ香月が、
木更津の捜査の進展に一喜一憂する姿、その解決を心待ちにする姿、
こういうワトソン役の設定は興味深いですね・・・ちょい黒いですが(^^;

ファン・香月のために「名探偵」であろうと頑張っている木更津?
「名探偵」って不自由なものだな~・・・

森博嗣『τになるまで待って』

2014-04-04 23:00:24 | 
Gシリーズの第3弾!


森の中に閉ざされたように建てられた「伽羅離館」には、
超能力者・神居静哉とその信者が住んでいる。
この日、ここを訪れたのは新聞の取材と赤柳探偵&C大トリオ。
赤柳はこの建物にある図書館の調査のため、山吹たちを雇ったのだ。
しかし、この館は何者かによって閉ざされてしまい、その夜、密室殺人が・・・
ラジオ番組に冠されたギリシャ文字「τ」に意味はあるのか!?


嵐の山荘、密室殺人、超能力・・・
なんとミステリ読みをわくわくさせるアイテムが揃っているのでしょう。
しかしながら、この謎は難しすぎ(^^;
加部谷恵美の受けた超能力実験のシーンも、
絶対からくりがあるはずだと考えながら読んでいたものの、
結局は分かりませんでしたし、
密室に関しては・・・考え付くのは無理でしょ。
(犀川先生と海月君、すごい!)
今回もなかなかの力技でした。

それにしても、海月君、ますます面白いキャラです。
山吹は客観的かつ常識的な人物ですし、
恵美は好奇心旺盛でとりあえず前進という感じですが、
海月は、周囲の色んなものから距離を置いて、
枠の外から事件をとらえるという高みの視点を備えています。
そういう線引きというかスタンスは犀川先生っぽいですね。

そして、今回も実現した犀川vs海月の推理対決☆
前回もそうでしたが、やっぱり犀川先生の貫録勝ちというところでしょうか。
犀川の登場シーン&推理披露シーンがカッコよかったな~(^^)

そして。
やはり確実となった「彼女」の気配。
このシリーズ、どんな感じで進んでいくのかな~。
また、ぼちぼちと読んでいきたいと思います。

森博嗣『θは遊んでくれたよ』

2014-04-01 23:59:59 | 
久しぶりに読書記事を書こうと思い立ちました。
書いてなかった本をもう一度読み返して、書いていきますね☆


飛び降り自殺と思われた男の額にはギリシャ文字の「θ」が記されていた。
さらに、一見何のつながりもない人たちの転落死が続くが、
そこには同じ口紅で「θ」の文字が記されていた・・・
殺人なのか、集団自殺なのか。
偶然この事件のことを知った西之園萌絵は、大学の仲間たちと共に、
事件の真相を探り始めるが・・・


ということで、久しぶりのGシリーズです。
最初の『φは壊れたね』からだいぶ間が空いたので、
そちらをもう一度読んでから、読みました。
今回は密室ではなく、謎の連続死に隠されたものを探っていく形。
明らかに連続しているのに、なぜそれが繋がっているのか分からない不気味さは、
猟奇的殺人などとは違ったうすら寒さがありますよね。

自分なりに考えながら読んでたけど、海月君のようには発想できませんよね(^^;
私の好きな有名な古典作品に、一見無関係な連続殺人の思わぬ真相がありましたが、
今回のような仕掛けなら、リスクも減るわけか・・・
結末が、かなり悲しかったですけど。

山吹早月と加部谷恵美、そして海月及介のトリオ、面白いですね♪
個性がだんだん際立ってきて、キャラ読み的にも深みが出てきました。
海月君対犀川先生なんていうのも、本当に豪華ですしね。
(犀川先生は、全然対決のつもりはないでしょうけどw)

そして、赤柳初朗の正体って一体!?
俄然気になってきました。
まさか、あの人がここに出てくるなんて・・・
そして、あの団体がここに・・・

それにしても。
海月君がカレーを食べているシーンを読むとカレーが食べたくなります(笑)

道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

2013-06-09 23:10:53 | 
実は去年? 一昨年?に読んだ本なんですけど、
感想書く機会がなく、夏を前にして今頃読み返してみました。


夏休み前の終業式の日。
小学校4年生の「僕」は学校を休んでいたS君の家にプリントを届けることになった。
しかし、「僕」がS君の家に行くと、S君は首を吊った状態で死んでいた。
学校に戻って先生にそのことを伝えた「僕」はそのまま家に帰ることになったが、
その後、訪れた先生と警察は、S君の死体が消えていたという事実を告げる。
そんなある日、S君の死体の消失について考え続ける「僕」と妹・ミカの前に・・・


死体消失の謎とか、犯人は誰なのかとか、謎の提示は非常に魅力的ですし、
視点を変えた章の展開とか、主人公たちの冒険など、読み手を引きこむ作品ですが、
そんな味付けが霞んでしまうほどの世界観が、この作品のすべてですね。

主人公の「僕」は、家族との関係がうまくいっておらず、母親に憎まれています。
そんな「僕」の味方が妹のミカなのですが・・・
などと色々書くと、未読の人の興趣を削いでしまいますからね(^^;
これは書評が難しい作品です。

まあ、かなりの問題作ではあります。
犬猫の惨殺とか、ちょっとグロっぽい場面もありながら、
一方で小学校4年生の夏休みの冒険として、ほのぼのしているところもあるという、
めちゃめちゃアンバランスな作品なんですが、
最後まで読むと、この奇妙な世界観も腑に落ちるというか、必然なのですよね。

そして、この作品、読後感はあまりよろしくありません(涙)
何というか・・・救いのないというより、ぞっとする感じ。
その辺はプロローグの部分読むと何となく予想がつくから、ネタバレではないですね。
逆に、そういうプロローグだから、どんな事件なんだろう??という、
興味や怖いもの見たさな感情が呼び起されるのでしょうけどね。
そういう意味では、非常に技巧的な作品です。

道尾氏の作品を読んだのは初めてなのですが、
読みやすい文章を書く作家さんだな~と思います。
この作品は結構特殊だと思いますが、正統派なものも書くんだろうか??
『シャドウ』とかも賞を取っているし、また読んではみたいと思います。

歴史小説にどっぷり

2013-05-19 16:43:57 | 
前回の記事でも書きましたように、
この春から、幕末ものの歴史小説を堪能しています。
知識がないから、逆に新鮮だったり。
初めて名前を知るような人ばっかりです(^^;

で、幕末もの・・・と思って歴史小説コーナーに行くと、
かなり多いのは新選組関係ですよね、やっぱり。
やっぱり、ドラマにもなったりしてるし、扱いやすい題材なのでしょうか。

で、この数週間に読んだのは以下の作品たち。

『人斬り以蔵』(短編集)司馬遼太郎
これは短編集なのですが、表題作の岡田以蔵の物語の他、
『花神』の大村益次郎など、幕末の人々も多く出てきます。
(幕末以外の人も出てきますけど)
社会や体制の変化の中での人間というものを考えさせられますね。

『峠』(上・中・下)司馬遼太郎
幕末の戊辰戦争の中の北越戦争に散った河井継之助の物語。
自分の芯となる思想を求めて確立し、それによって自分の立場を生きた人です。
動乱の時代、長岡藩の筆頭家老に破格の抜擢をされた継之助に、
藩や領民のすべてが委ねられます。
譜代の藩である長岡は反徳川もならず、かといって反官軍にもつけず。
継之助のとったのは、軍事力強化を背景とした割拠中立の道でした。
しかし、その意図は官軍には伝わらず・・・
もし継之助の構想が実現していたら違った明治維新になっていたかもしれないとも思うし、
いや、この流れは必然で変えられなかったとも思えます。

『獅子の棲む国』秋山香乃
幕末、朝敵とされて凄惨な戦いを余儀なくされた会津藩。
会津戦争のその後を生き抜き、藩の再興を目指した山川大蔵の物語です。
薩長藩閥の時代、流浪の元藩士たちを支えながら、
朝敵の汚名を晴らそうともがき苦しみ、不毛の地の斗南に希望をつなぐけれど、
廃藩置県ですべては泡のように消えてしまう・・・
その薩長藩閥はやがて西南戦争という政権闘争になっていくわけですが、
軍略を買われ、政府軍の一員として九州へ向かう山川の心中を考えると切なくなります。
この作品には新選組の斎藤一も出てくるのですが、これがかなり面白いキャラで、
大久保利通との関わりは創作と分かっていても笑ってしまいました。

『新選組副長助勤 斎藤一』赤間倭子
上記で斎藤一に興味を持ったので、研究者でもあるという筆者のこの作品を買いました。
小説としては、特に面白かった!という感じでもないのですけど、
なるほど、こういう一生をたどった人だったのだな~という感慨が。
新選組→会津藩→斗南藩→警視庁→西南戦争という波乱の人生を全うし、
その死に際して、正座したまま死んだと聞くと、まさに「武士」という感じがします。

『新撰組顛末記』永倉新八
新選組資料といえば、本人(!)の証言によるこの書は外せないだろうということで。
永倉新八は新選組二番隊組長だった最古参の幹部ですが、天寿を全うした人です。
その人が取材の記者に昔を思い出しながら証言した内容がまとめられているんですが、
多少の記憶違いなどはあるにしろ、本当に歴史の生々しさが感じられて圧巻です。
彼ら新選組の隊士にしてみれば、職務を真面目にこなしていただけなんですよね・・・

『幕末新選組』池波正太郎
上記の永倉新八を主人公とした新選組小説。
顛末記で永倉新八の人生のだいたいの流れがわかっていたので、
小説家はこういう風に肉付けするのだな~と、その部分に興味を持って読みました。
松前藩出身者ではありながら、江戸で生まれ育った新八は、さっぱりと粋な江戸っ子で、
自分の生き方にまっすぐな、ある種の現実肯定者のような感じですよね。
国や政局を動かすという理念よりも、人としての生活を第一に大切にした人なのかも。

『沖田総司恋唄』広瀬仁紀
これはタイトルどおり、新選組の中での人気のある沖田総司の物語ですが、
監察方の山崎烝もよく描かれていて、その点が目新しいですね。
創作の部分で、総司と同じ病の女の子の交流があるのですが、ここが泣けました。
予想できた流れだったにも関わらず・・・こういう話には弱いなぁ。


とまあ、こんな感じで読み進めていました。
幕末ものを読んでいると、本当に国とか政治とか個人というものを考えさせられますね。
この時期、それぞれの主義主張のもと刀や銃を持って戦った者もたくさんいますが、
すごいのはやはり、そういう主義主張を飲み込んでいく政治の機微です。

声高にまっすぐに主義主張を推し進めてしまった人は、最終的には勝利していない。
柔軟な考えからで世の中の先を見通し、民心を読み、ときには政敵を生かす。
その中でもその「時」を得たものが、自らの道を開くことができる。
そんな難事を、この当時30代や40代の人たちが行っていたわけですよね。
長州藩を動かした人たちなんて、20代ですよ!

なんか、ついつい今の自分とか世の中を考えちゃいますよね・・・
温故知新という言葉が、見直される時代なのかも。

森博嗣『工学部・水柿助教授の解脱』

2012-11-10 17:24:57 | 
水柿助教授シリーズの第3弾。
あくまで「小説」だが実話に近いというシリーズの完結編です。

久しぶりに読書感想を書こうと思ったのですが、
サボっている間に読んだ本は、記憶も薄れつつある状態です(^^;
再読してから細々と書いていかなきゃな~・・・

しかし本作品は、ストーリーというより、構成というより、
雰囲気が命の作品なので、うろ覚えでも大丈夫(のはずw)

例によって長いタイトルの5話が入っています。

 《第1話》
  まだ続きがあったのか奇跡の帰還を遂げるやいなや
  子犬ぴょこぴょこみぴょこぴょこ柴犬になるコーギーの怪

 《第2話》
  親馬鹿小馬鹿猪鹿蝶馬鹿にも数々あるけれど
  壁を越えて這い上がってくる本当の馬鹿には金メダルをなんて馬鹿なことを

 《第3話》
  リフォームのビフォア・アフタで散財へと突き進み
  ますます社会からボイジャしたセレブな二人と一匹

 《第4話》
  いかにして密室に巨大なパスカルを入れたのかという疑問に対して
  真摯な態度で答える箇条書きこもごも

 《第5話》
  壮大なる宇宙と存在の路傍に夢見る意思の仄かに微小なるや
  さしずめ花弁に落ちる滴のごとくなりぬ


ということで、ものすごいお金持ちになった水柿君と須磨子さんのその後です。
確かに、もう働かなくても自分で何もしなくてもいいだけのお金があったら、
毎日の様々なことは全部「趣味」の類になっちゃいますね。
実際には、そういう感覚は想像も出来ないんですけど。

まあ、運転手付きの車を雇える人が、車を買って自分で運転したら趣味だし、
園芸業者を雇える資力の人が、自分で庭を作ったら、それも趣味ですもんね・・・
でも、いろんなことに制限がないのって、面白みに欠けるのかな?
そんなことを考えさせられる、彼らの境遇。

そんな彼らが犬のパスカルを買って、メロメロになってるのも、
ある意味、制限を与えてくれる存在だからじゃないかな~と思ったりもします。

そして。
完結編ということで、小説を書くのをやめることにする水柿君なのですが、
その辺は、実作者の森先生の真情吐露な感じがして、
寂しい反面、理解もできなくもない。(しちゃいけないのかな)
ちょっと複雑な読後感でした。

と、ここまで深刻な感想を書いてきましたが、
もちろん前作までのように、駄洒落やユーモアも満載で、
読んでる間は「そうボケるのか」とニタニタしながら読んだものでした。

東野圭吾『11文字の殺人』

2011-06-19 16:09:34 | 
なかなか本を読めなかった日々ですが、
(ホッとするので、既読本ばかり読み返してました^^;)
とりあえず、読みやすそうだった東野作品から再スタートです。


「あたし」は推理作家。
と言ってもベストセラーを出すわけでもなく、書き続けているだけ。
そんな「あたし」の恋人が、何者かに殺された。
フリーライターの彼は最後にあったとき、「狙われている」と言っていたのだった。
その言葉を照明するかのように、「あたし」は引き取った彼の遺品が盗まれた。
それは、彼の手がけていた仕事の資料の一部だった。
「あたし」は編集者・冬子の協力を得て、事件を調べ始めるが・・・


1年前に起こった海難事故が、事件の背景にあることがわかるわけですが、
それを調べていくうちに、どんどん人が殺されていくし、
また主人公にも危険が及びそうになるサスペンスに満ちた作品です。

しかし、主人公からして、どうも「緊迫感」がないのですよね。
登場人物がみんな「あっさりしている」というか、
非常に状況への順応力が高いというか、諦めが早いというか、
だから、多少無理のある展開でも、サクサクと進んでいきます(^^;

普通だったらもっと大騒ぎするだろうとか、
私だったら絶対こういう行動はしないとか、突っ込みながら読んでましたが、
事件の真相については、明かされる前に見当はついていました。
それは推理ではなく、この展開ならこの人が犯人だろうという、
全くかわいげのない読み方なわけですけれども(笑)

しかし、そこで終わらないのが東野作品のパワーですよね。
普通だったら犯人が分かってハイおしまいの部分で、
見事に読みごたえのある展開に持っていくところがスゴイ。
この余韻だけで、作品レベルが上がってる気がします。
まさに絶妙。

展開や動機に強引なところがあるのは否めないけど、
案外、人間ってそういう面もあるのかも・・・と思ったりもして。
最近の実際の事件とか見てると、ほら、そんな感じですよね?

でも、だからこそ本格ミステリは必要かも。
一生懸命考えて、納得できる、腑に落ちる世界があるからこそ、
秩序を信じて、安心して生きられるような気もします。

などと堅苦しいことを言ってないで、本を読まなきゃですね☆

岡嶋二人『クラインの壺』

2011-03-19 23:59:59 | 
こんな状況なんで、読書もする気にならないのですが、
気を取り直して、地震の前に読んでいた作品の感想を書きます。
岡嶋二人名義での最後の作品ですが、ほぼ井上夢人氏が書いたものだそうです。


僕・上杉彰彦が公募したゲームブックのための原稿。
勘違いで規定の数倍もの枚数になって失格したその作品を、
イプシロン・プロジェクトがゲーム化したいと申し出てきた。
200万円を受け取ったきり進展がなく、不安になっていた僕の元に、
イプシロンからそのゲームのテストモニターの話が舞い込む。
訪れた僕は、そこで驚異のヴァーチャルリアリティゲームを体験するが・・・


謎の企業イプシロン・プロジェクトが開発しているのは、前代未聞のゲームです。
「クライン2」という装置の中に入ると、ゲームをすることができるんですよ。
難しい理屈は作品で読んでいただくとして、
それはゲーム内に自分がすっぽりと入り込むことが可能なシステムなのです。
ゲームの中では五感のすべてが実際の感覚として体験でき、
実際にその世界にいるように動き回ることもできる。(ありえないけど^^;)
そう、現実との差異が全く感じられなくなるほどに。

そんなゲームのモニターに「僕」と一緒に採用された高石梨紗。
二人はお互いに好意を持ち始め、次第に距離も縮まっていきます。
ところがある日突然行方不明になる梨紗・・・
ミステリとしては、彼女の行方、そしてイプシロンの謎を探るのがメインです。
真相は分かりやすいと思うんですけど、その後の展開に幻惑されます。
作品世界のその後が気になること間違いなし☆

しかし、こんなゲーム、私はやりたくないです(^^;
上杉彰彦の書いたゲームの原作は「ブレイン・シンドローム」というのですが、
スパイもので、謎解きものだという設定で、架空の国が舞台。
そんなところに、めちゃリアルなヴァーチャルで行くなんて、怖すぎます。
痛みもリアルに感じるから、銃で撃たれちゃったりした日には・・・(怖)

やっぱり、ゲームは現実と違うからこそ楽しめるんですよね(^^;

島田荘司『夜は千の鈴を鳴らす』

2011-03-02 23:59:59 | 
島田作品、吉敷シリーズの長編です。
これ、時刻表アリバイトリックのようだったので、
なかなか読み出しにくかったのですが、いざ読み始めてみると一気に読めました。


鬼島政子は不動産取引などの事業で会社を大きくした傑物。
その政子の秘書となった草間宏司は、政子の所有する土地を狙っていた。
10月1日、政子と草間はある賭けをする。
1ヵ月の間に政子を完全犯罪で殺したら、欲しがる土地を草間に与えると・・・
そして10月11日・・・特急寝台列車「あさかぜ」で、政子の死体が発見される。
これは草間の完全犯罪なのか!?


ということで、プロローグでいきなりの殺人予告ですから、
この後、これがどうなるのか?と気になりますよね??
しかも発見された死体は、心臓発作による自然死に見えるわけです。
普通なら病死扱い確定のこの事件を、吉敷が知ったことで事件は見出されるのです。

ただ、吉敷でなくとも、政子の死ぬ直前の様子を聞けば、何かがありそうと思うはず。
なんせ「怖い! ナチが走ってくる! ナチが見える!」と錯乱状態になったのですから。
この「ナチ」が事件の大きな鍵になるわけです。

この作品のトリックの基本は、他の有名な作品にも使われていて、
そういう意味では大きな新味はなかったけれど、
サスペンスを醸し出す構成が、なかなか素晴らしかったのじゃないかと思います☆

ところで、この作品、バブルの絶頂期が舞台です。
土地転がしなどで財を得た鬼島政子ですけど、
バブルの崩壊を知らずに済んだというのは、ある意味幸せだったのかも、とか、
犯人もそんな土地もらっても、値崩れ必至だとか、
いらないことを考えながら読んでしまいました(^^;

そう考えると、この作品も時代を感じさせますね・・・