あまりにも麻耶作品がヘビーだったので、有栖川作品に逃げてしまいました。
予定調和といわれようが、火村&アリスのタッグに安堵。
シリーズものは、こういう安心感があるからいいですよね。
そう、ミステリファンもいつも気を張ってるわけにはいかないのです!
今回は、3編の中篇+掌編を収めた作品集でした。
☆「助教授の身代金」
〈助教授〉と聞けば、火村のことだと思ってしまいますが、火村が誘拐されるわけではなく。
プロローグの部分からの緊張感が、いわゆる「誘拐もの」を読んでいるようで面白かったです。
しかし、その後は火村&アリスの出番になるわけで、つまり殺人事件です。
アリバイのある容疑者達。いったい誰が、どのように犯行を行ったのか。
火村の仕掛けた罠と論理が、犯人を追い詰めるラストは、読み応えたっぷり。
☆「ABCキラー」
アガサ・クリスティーの有名な『ABC殺人事件』を模したような事件が発生します。
関連の無い被害者達を前に難航する捜査を、あざ笑うかのように届く〈挑戦状〉。
推理の端緒が見つからず足踏み状態の火村&アリスの苛立ちが伝わってくるかのようです。
そして・・・鬱憤を晴らすような怒涛の解決。なるほど。言葉は呪術だと実感。
シリーズに出てくる兵庫・大阪・京都の警部たちが勢ぞろいの豪華な作品です。
でも、私のツボにはまったのは・・・「蕎麦」でした(笑)←読めばきっと分かります。
☆「推理合戦」
朝井女史と火村&アリスの宴から、物語は始まります。
前は串かつを食べてましたが、今回は焼き鳥ですね~(^^)
ふと、ホームズのように朝井女史の最近の行動を言い当てる火村の先制攻撃!
そして、間もなくツイストパンチで反撃する朝井女史!!
後手にまわったアリスでしたが・・・見事なアッパーで朝井女史をノックダウン!!!(笑)
微笑ましい小話ですが、私はアリスの勝利を高々に宣言しましょう。うん、さすがアリス♪
☆「モロッコ水晶の謎」
招待されたホームパーティーの席上、アリスの目の前で毒殺事件が発生します。
誰も論理的には成しえない犯罪。犯人はいかにして犯行を行ったのか?
呼び出された火村が、いつもと逆にアリスにやり込められるのも、ちょっと面白かったです。
しかし、これはすごい論理です。論理から逸脱した、特殊な論理。
見事に解いた火村だけど、それを認めさせるには、ああいう手を使うしか無いのですね。
(思わせぶりですが、ここが見どころですから乞うご期待♪)
火村&アリス、お互いを信頼しているからこその勝利でした。
これで、火村&アリスのシリーズで単行本になっているものは全部読んでしまいました。
(アンソロジーとか雑誌の類はチェックしてないけど)
有栖川作品で読んでないものは、まだいくつかありますので、そのうち読みたいと思います。
しかし、この数ヶ月、我ながら呆れるほどの「有栖川中毒」でした。
何がそうさせたのか・・・「好きになってしまったから」としか言いようが無いな~。
それは、有栖川氏のバランス感覚だったり、世界に対する目だったり、文章だったり。
そして、自分の作品に溺れない職業意識だったり、作中人物の持つ優しさだったり。
もちろん、トリックやプロットの論理性も、本格に対する愛も。
今後も読み続けていきたい作家です♪