下手の横好き日記

色々な趣味や興味に関する雑記を書いていきます。
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森博嗣『詩的私的ジャック』

2007-01-07 22:52:42 | 
一気に読んでしまったS&Mシリーズの4作目です。
やはり密室ですね。もはやこのシリーズに密室は欠かせないのでしょうか。
それにしても、N大周辺。事件起きすぎですよね(^^;

さて密室とは書きましたが、これは通常のミステリで言う密室とは言えません。
通常のミステリの場合、「どうやって」密室にしたのかというのが謎解きの中心になり、
「なぜ」密室にしたのかが、その過程で問題になってくるわけです。
そうして、この「なぜ」が弱い場合は、作品の批評の対象になるわけですが・・・

この作品においては、「どうやって」を考えることは、あまり意味がありません。
そして、「なぜ」すら非常に特殊な動機に裏打ちされているので、
謎を解きたいミステリファンには、ちょっと不親切かも。
もっとも、森氏はそんなことを気にして創作しているのではないのでしょう。

犀川は、今回はいよいよ安楽椅子探偵になっていますね。
彼は捜査をしませんから、ただ聞いて、考えるだけです。
「この世には不思議なことなど何一つ無いのだよ、西之園君」とでも言いそうなくらい(笑)
彼の論理の中には「密室殺人」は存在しません。
(言われてみれば当たり前ですが、それは幻想でしかないんですよね)
犯人が捕まれば分かると考えるから、彼は「どうやって」を気にしないのでしょうね。

さらに、犀川の中には結論しかないのです。
途中の式は割愛される。周囲の刑事やなんかは分からないから「?」です。
読者の視点は、完璧にこの刑事側についちゃいますよね(^^;
そして、事件は例によって犀川の「講義」で締めくくられるのですが、
この場合も犯罪や犯人に対する感情は、彼にはあまりない。
語られない気持ちを「理解」することはできないと、彼は思っているから。
だから、恣意的に「気持ち」を想像し、評価することを避けているのですね、きっと。
本当に、今までのミステリの中には存在しなかったタイプの探偵です。

しかし、その犀川助教授、今回はものすごくかっこいいです。
「大人」なんですよね、本当に。
萌絵への発言、ちょっとしびれちゃいましたね♪
萌絵を尊重し、対等に扱おうとするから、ああいう物言いになるんだろうし、
でも「大人」だからこそ、ああいうスタンスなんでしょうね・・・
今回は事件そのものより、犀川&萌絵の話が気になっちゃいました(^^;
まあ、そういうのもアリですよね!