明治村に一番最近移築された建物、芝川又右衛門邸です。(登録有形文化財)
旧所在地:兵庫県西宮市上甲東園2丁目
建築年:1911(明治44)年
解体年:1995(平成7)年
移築年:2007(平成19)年
設計者:武田五一
大阪の豪商、芝川又右衛門の別荘として建てられ、日本の郊外住宅のさきがけとなるものです。
又右衛門は果樹園「甲東園」を開き、別荘としてこの建物を建て、日本庭園や茶室を整え、関西財界人との交友の場としました。
阪急今津線のこの近くには駅がなかったため、又右衛門は駅の設置費用と周辺の土地1万坪を阪急に提供し、駅ができるとともに、後にこの周辺の宅地開発の端緒となりました。
「洋館」の依頼を受けた武田五一は、ヨーロッパのグラスゴー派やゼツェッシェンと数奇屋など日本建築の伝統を融合したこの建物を建てました。
その後、何度か増改築が加えられ、当初は杉皮張りだった外壁は、関東大震災後に耐火を意識してスパニッシュ風に変更されました。
阪神・淡路大震災の際に被害を受け、明治村に移築されました。
1階ホール。床はリノリウムですが、壁は聚楽壁、天井は網代と葦簾を市松状に用いた和風です。
2階和室。
2階から屋根裏に上がる階段室の天井も網代で、壁も手のこんだ金色の塗り壁です。
1階洋室の暖炉。
2階和室の襖の中にも暖炉があります。
坊っちゃん風の男子と牛すき屋の仲居さん風の女の人が建物案内をしてくれましたが、ちょっと違うんじゃないか(時代が)と思いました。
2階の部屋外廻り縁にあったハート・マーク。武田五一はハート・マークがお好きだったようです。
武田五一デザインの照明台。
1階窓のステンドグラス。
武田五一は終生この建築と深い関わりを持ち続け、増改築の際にも図面や家具の設計図を残しています。
和の中に洋の意匠を取り込んで、日本人でもなじみやすい洋館となっている明治末から大正期の住宅建築です。