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日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

『父が子に語る世界歴史』第1巻 ジャワーハルラール・ ネルー(著)

2006年03月19日 | Book
『父が子に語る世界歴史』という本の第1巻を読みました。著者はインドの政治家のネルー。彼がインド独立運動を指導していた際に牢獄に入れられ、その獄中で娘に世界史を教えるために書かれた手紙からなっている本です。

まず獄中にもかかわらず、本を書くほどのエネルギーを持続させた点が目を見張ります。しかもその分量は日本語訳版で8巻にも上るほどの分量。おそらく獄中でも本を仕入れることができたのでしょうが、元々彼がいかに歴史好きだったかが分かります。

彼が娘に、「お前には歴史を無味乾燥な事実の羅列や年代のつながりとして見て欲しくない」と語る場面があります。その言葉どおり、この著書では、一つ一つ一つの歴史事実に対する彼の主観が強調され、そのためかえって歴史の動きが生き生きとしたものとして読者に映ってきます。

一人の本(全8巻)で世界の全歴史を収めようとするのですから、当然専門家から見れば粗い部分が多いでしょう。また社会の構造や民衆の生活について詳しく記述されているわけではありません。彼は歴史学者ではないのですから。

しかし、ここには学校の教科書のような退屈な事実の羅列はなく、過去の一人一人の王、一つ一つの社会についての著者の立場=独立運動家としての民主主義に対する思い入れからの評価が述べられ、それだけ初学者に「なぜ歴史を学ぶ欲求が人にはあるのか」を教えてくれます。

私は大学入試でも歴史を勉強しなかったので、大学入試での歴史がどういうものかは分からない。ただ、教科書だけを見るなら、公平性・客観性というものを重んじるあまり、おそらく単なる事実の記述に終始しているのでしょう。

それでも、予備校の情熱のある先生なんかは、面白く歴史を論じているのかもしれない。

ともかく、著者はインド人としての立場から、古代・中世におけるヨーロッパの後進性、ローマの腐敗、インドの村の民主性、カースト制度の柔軟性、中国の先進性、モンゴル人の動きの重要性、などなどよりアジアの地位の重要性を強調します。

歴史に詳しくないと古代で学ぶべき歴史の動きはギリシア・ローマだけのように私なんか思い込んでしまいますが、著者はそれは世界の中のほんの一つの動きに過ぎず、しかも他の残りの世界に比べて特筆すべき点が多いわけではないこと、むしろ世界の中心は中東・アジアに見るべき点が多いことなどを指摘します。

それはそれで一つの偏向だろうけど、著者としては、標準的な世界史の見方に対して、自分の子供に少しでもよりバランスのある世界の見方を教えたいという想いの表れなのでしょう。

先週の『プロフェッショナル 仕事の流儀』「なにくそ!負けたらあかん」英語講師・竹岡広信」で京都の英語塾の先生が取り上げられていました。私は最初のほうを見なかったけど、彼は子供の興味・関心を引き出すために、受験テクニックや暗記の方法ではなく英語の言葉のイメージを一つ一つ教えるのだそうです。

おそらく大西泰斗さんによって広まっているような、言葉とイメージ・感覚との結びつき、言葉は感覚に応じて選ばれることを竹岡さんは教えているのでしょう(もちろん、こうした考え方を述べているのは大西さんだけじゃありません)。

そこで印象的だったのが、とにかく子供が興味を持ってくれるまで待つこと、自分から教えるのではなく相手が自分からやるようになるまで待つこと、それが大事だけどつらい、と竹岡さんが語っていたことでした。

英語にしても歴史にしても、無味乾燥な規則・年号ではつまらないし、それらをイ春季の子供たちに全部覚えさそうというのは拷問に近いし、一度つまずいた子はやる気がでない。そういう子には、勉強が面白いことをまず知ってもらわなくてはならない。

ネールの本にしても、竹岡さんを取材した番組についても、あらためて学校教育について考えさせてくれました。

涼風