今まで映画館で直接映画を観ても、それからDVDやテレビで放映された映画やサブスクで配信された数多の映画を観ても、必ず最後まで観ること、これだけは守って来た。どんな映画でもそれは守って来た。
そりゃあ、長い人生、観ていてつまんない映画だって沢山あったし、期待に胸弾ませて映画館に駆け付けて観た映画があまりに最悪で、ガッカリして映画館を出たことだっていっぱいあった。
だとしても、最後のエンドロールが流れるまで絶対に席を離れることはなかった。もうこれは意地である。
日曜日、一本の映画を観た。
ネットフリックスが制作した「クレイジークルーズ」である。
主演が吉沢亮で、その共演者が最近あまり映画やドラマからご無沙汰だった宮崎あおいだった。
なぜ、ほかにもたくさん観たい映画やドラマがあったのに、わざわざこの映画を選んだのかというと、脚本が坂元裕二だったからだ。それに、毎日更新されているネットフリックスの視聴ランキングの映画部門で、「クレイジークルーズ」が第一位を取っていたということもあるかもしれない。そんなに評判の高い映画なら観てみよう、そう思ったのだ。
映画のポスターを見てもらえたら分かると思う。売りである出演者の名前なんて一切なくて、大きく【脚本 坂元裕二 第76回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞】と書いてある。それほど前面に脚本家・坂元裕二を押し出している。
さてさて、映画「怪物」でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した脚本家による最新作「クレイジークルーズ」、期待は高まるばかりだ。
TVドラマ、「東京ラブストーリー」、「Mother」、「それでも、生きてゆく」、「最高の離婚」、「カルテット」、「大豆田とわ子と三人の元夫」の脚本家の坂元裕二、映画「花束みたいな恋をした」の脚本も担当したあの坂元裕二である。それに今回、「大豆田とわ子と三人の元夫」で演出を務めた瀧悠輔が監督を務めるのだという。
映画は、エーゲ海に向かう豪華クルーズ船を舞台に、乗客に対してとことん低姿勢で尽くしまくるバトラー(吉沢亮)と、浮気されて、その相手側の恋人であるバトラーに忠告してやろうと船に乗り込んできた女性(宮崎やよい)が、ひょんなことから船上で起きた富豪老人殺人事件を追うことになってしまうという内容で、いわゆるコメディ・タッチのラブ・ロマンスものといっていいだろう。
ところがこの映画、コメディとしても中途半端、推理ものとしても中途半端、ラブ・ロマンスとしても中途半端、最初から最後まで何の緊張感もないまま、ダラダラと抑揚のまったくない展開に終始する。
嘘だろう?
本当に坂元裕二がこの映画の脚本を書いたんだろうか?
それでも頑張って最後まで観ましたよ、映画「クレイジークルーズ」を。
それにしてもいまだに信じられない。この映画の脚本家、本当に坂元裕二だったんだろうか・・・。