淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「週刊文春」、小野一光氏によるノンフィクション「殺人犯との対話」を読むと凄まじい絶望感に襲われる。

2015年05月26日 | Weblog
 2010年7月30日に発覚した、当時、大阪市の風俗店に勤務していた下村早苗23歳が起こした惨たらしいネグレクト(育児放棄)。
 ゴミだらけで、エアコンも作動していなかった真夏の閉ざされた部屋で、長女の桜子ちゃん(当時3歳)と長男の楓ちゃん(当時1歳)が放置されて餓死した事件である。
 いわゆる「大阪二児虐待死事件」だ。

 ノンフィクションライターの小野一光氏による渾身のルポルタージュ連載「殺人犯との対話」を「週刊文春」で読んで、言葉に出来ないほどの衝撃と絶望感に襲われた。
 この連載は、様々なケースによる悲惨極まりない事件を掘り下げてゆくルポルタージュで、今回の「大阪二児虐待死事件」はその前篇である。

 下村早苗は、男性との間に二児を産んだもののまもなく離婚し、幼い子どもを抱えてキャバクラ勤めで生計を立てるのだが、いつしか子どもたちを部屋に残したまま職場で知り合った客たちと遊び呆けるようになる。
 子どもたちに与える食事は、コンビニで買い与えたパンやお菓子やジュースのみだ。

 警察官が部屋に踏み込んだときは、足の踏み場もないゴミで部屋中が溢れかえっていて、空の冷蔵庫には、必死で食べ物を探し回る小さな手形がたくさんついていたという。
 この箇所を読んだだけで、胸が苦しくなった。
 怒りが込み上がって来た。
 誰にぶつけたら納得出来るのか分からない、そういう類いの、押さえ切れない激しい怒りと悲しみである。

 彼女はホストクラブ通いを続け、そこのホストに入れ揚げ、多額の借金を作ってしまう。
 そして、より多くの収入を得るために風俗嬢となった彼女は、別の新しい恋に落ちる。

 彼女は大好きな彼への愛の言葉を「ミクシィ」にこう残している。

 空を見たトキ
 きっとすごくシアワセなの
 あなたとわたし
 あぁ また涙がでる
 大好きで大切な人

 そういう感情に浸り、そういう愛しいひとを想い焦がれていたその瞬間、彼女の二人の幼い子どもたちは、茹だるような地獄の部屋の中で凄まじい飢餓に泣き叫び、苦しんでいたのである。
 そして、そんな相反する行動を、誰がみてもおかしくて矛盾するような行動を、ある一部の人間は何故かしてしまうのだ。

 哀しいことに。
 愚かなことに。

 人間はみな原罪を負っている。
 少なからず、誰もが負っている。

 小野一光氏によるルポルタージュ連載「殺人犯との対話」は、読むと、元気には絶対ならない。
 むしろ激しく落ち込む。激しく怒る。激しく絶望する。

 それでも読まずにはいられないのである。

 もっと、もっと、もっと、もっと絶望しなければ!







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