淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「NHK・TVスペシャル『永ちゃん 俺たちはもう一度走れるだろうか』は力作だった」

2006年02月27日 | Weblog
 昔、日本武道館で矢沢永吉のコンサートを観たことがあった。
 それから、矢沢永吉がソロ・デビューする前のバンド、「キャロル」の頃もよく彼らのアルバムを聴いていた。
 最近は、まったく聴かなくなってしまったけれど、「キャロル」時代も含め、それなりに彼の音楽は、ずっと辿って来たように思っている。
 ただ、「キャロル」という日本ロック史に燦然と輝く伝説的なグループは、矢沢永吉のワンマンバンドでは決してなかった。それは、ジョニー大倉という素晴らしい相方が居てこそ生まれた音楽だと、僕は今でも考えている。

 日曜日の夜にNHKで放映された、ドキュメンタリー「永ちゃん 俺たちはもう一度走れるだろうか」は中々面白かった。
 このドキュメンタリーは、矢沢永吉を追った番組ではない。
 その熱狂的なファンたちの姿を追ったものだ。それも、今では中年になってしまった、デビュー当時からの、ある意味、永ちゃんを教祖とさえ仰ぐようなファンたちの現在を描写している。
 
 テレビに映し出される熱狂的ファンのほとんどが、40代だ。
 仕事が倒産して、独りで屋台を引きながら再起を図る男性。ケーキ屋を経営したものの、多額の負債を抱え、自己破産を申請する者。矢沢永吉のファンということがキッカケで結婚したものの、夫を癌で亡くし、現在は小さな会社の経理係として働く女性。
 それから。
 小さな会社を興し、何人もの子どもを抱え、狭い居間で永ちゃんのビデオを観ながら酔っ払う中年の経営者。妻と離婚をし、一軒家で独り淋しく暮らす中年の営業マン。などなど。

 その人たちも繋がっている。
 矢沢永吉のファンだという、たった一つの共通項で。

 途中で、永ちゃんのインタビューが混じる。勿論、事前にこれらの映像を観ているという前提で。
 永ちゃんは言う。
 「俺も滅茶苦茶叩かれたけど、みんなも叩かれたらいいんだよ。でも問題はその後なんだ。そのまま寝ているか、そこから歯を食いしばって立ち上がるか・・・」

 アーティストとしてのコンサートへのプレッシャー、次のアルバム製作、多額の借金返済(これは返済が終わったようだけど)、そして56歳という年齢・・・。
 中年になって、ドン詰まりになった人間たちも同様だ。もう崖っぷちまで追いやられ、逃げる場所さえない。それでも、もう一度、這い上がって走り続けるしか、彼らに残された道はない。

 この番組、NHK久々のヒットである。
 中年世代の今を切り取ることで、人生の秋という断面を描き切っている。
 少し時間が短いのと、表面的になぞった部分も若干否めないけれど。

 でも。勇気が出る。
 

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