陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

「矢代レイ詩展 -しなやかな言葉-」開催中

2024-07-04 | 詩関係・その他

  

  

 秋田県現代詩人協会会員、矢代レイさんの詩展が、7月1日から秋田市山王の「秋田銀行本店」ロビーで開催されている。
 『ピッタインダウン』(起き上りこぼしの意)という個人誌の発行人でもある矢代さんは、この詩展や勉強会開催など精力的な活動
をしている。かつて、ある事故に遭いながらも、その理不尽さや精神的な苦悶を乗り越えることが出来たのは「詩」であり、詩を書く
ことで「生かされた」、と熱っぽく語っていたことがある。
それらが第4詩集『濁黒(KURO)』(2019年書肆えん)に表出されたの
は象徴的でもある。

 詩展は前回の展示会以降の作品を展示している。副題は「しなやかな言葉」(上掲の画像、参照)。『ピッタインダウン』の既刊号
を遡って見てみると、第2回目から副題がつけれるようになり、「詩とわたし」「詩を楽しむ」「詩と生きる」「詩に導かれて」
とあっ
た。それぞれその回の
詩に対する思いを表わしていると思われる。
 詩作品や、画像と詩を組み合わせたパネルの展示は、詩とは縁遠い?と思っている人でも接しやすいのではないかと感じた。また、
不特定多数の人が出入りする銀行が会場というのは大きなメリット。
 会場を訪れた時は、市民の方が作品を読んだり詩集を手に取ったりしていた。

 会期は7月31日(水)まで。時間は9時から15時。なお、土日祭日は休み。無料。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

依田義丸詩集『連禱』(れんとう)

2024-06-04 | 詩関係・その他

        

「針と船」

 ぼくの目の前を、一本の針が布を縫い進んでいく。真っ
赤な布は大きく広がり、ひと針ひと針、赤い縫い目がどこ
までも伸びていく。ぼくは自分の見た奇跡を書き残したい
衝動に駆られる。
 一隻の船が海を航行しはじめる。海は残照に真っ赤に染
められ、船の後には赤い航跡が残されて行く。ぼくが安堵
していると、一本の針が真っ赤な海を進んで、赤い航跡が
縫い込まれていく。
 ぼくは不安に襲われる。そして、さっきまで見ていたも
のが、針だったのか船だったのか、わからなくなってしま
う。

 上記は、去る5月25日に刊行された依田義丸さんの第二詩集『連禱』(れんとう)
に収録されている作品。なんと繊細な世界だろうか。美しい。「真っ赤」「赤い」と
いう語彙の”連打”。これほどまでに重ねて使っていることの意味合いは相当深いに違
いない。


「平面の記憶」

 あのときのことをよく思い出すんだ。唐突に君が、あな
たって、紙のような人だわって言ったんだ。不意を突かれ
て、ぼくはぞくっとして、背中にくちゃくちゃの皺が寄る
気配がして、頭の上では刃物が鋭く裂くように走って、つ
づいて遠くから高い悲鳴が聞こえてきた。ぼくは急に、極
悪の罪を犯して自分をめちゃくちゃに汚したくなったんだ。
すると、君は笑いながら、いいえ、やっぱりあなたは紙の
ような人なんかじゃないわ、そう言い直した。その声を、
平面になっていく耳にかすかに聞きながら、ぼくはぼくに
書き込まれていたものがひとつ残らず消えていくのを感じ
ていた。そうしてついに、ぼくは真っ白な一枚の紙になっ
てしまって、そこからすべてが始まったんだ。


 当詩集を読みながら思ったのは、依田さんの詩世界は、後述するあとがきにもあるが、
現実と非現実を表出する姿勢なのか。あとがきから読みはじめることが多い私だが、こ
のたびは無意識に目次から読み始めた。途中あたりから<現実と非現実が混ざり合って、
最後は少々奇抜な展開で終わる作品が多いな>と感じていた。
実に興味深い詩人だ。


 届いた詩集に、贈呈票と発行元からの付票が挟めれていた。贈呈票は奥様・依田真奈
美氏の名が。そして発行元「思潮社」名の付票には次が記されていた。
 「(略)依田義丸氏は先年来の闘病中に本書を纏め、校正刷の確認を終えてご献本の
指示までも済ませながら、出来上がりをみることなく、三月十四日に逝去されました。
ご遺志にそってご献本をお送りいたします次第です」

 あとがき より抜粋 
「詩という形式はそれ自体の内に一つの表現上の矛盾を元来孕んでいます。それは共通
の表現性をもつ言語を用いながらも、他方ではそれから逸脱する独創的な表現を目指し
ているというものです。そしてこの逸脱性を支えているのは、詩人自身のもつオリジナ
ルな感性や視点であることは言うまでもありません。(略)現実の否応なしの拘束のも
とで非現実と言う表現を創り出すことに魅了されながら、それを可能にする言葉表現を
紡ぎ出そうとして祈るように辿った遍歴の道のりが自分自身の詩作だったと今感じてい
ます。第二詩集『連禱』を妻真奈美に捧げます。」

 ご冥福をお祈りいたします。

 

著 者  依田義丸(よだ・よしまる)
発行所  思潮社
発行日  2024年5月25日 
定 価  2,200円(本体2,200円+税)
略 歴  1948年京都生まれ
     1991年第一詩集『けいおす』(思潮社)刊行
     日本現代詩人会会員
     2024年3月14日逝去

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

市野みち詩集『風は笑って』

2024-06-02 | 詩関係・その他

    

 

   「一生」

  ラストシーンのないお芝居は
  いつまでも続くのでしょうか
  無意味に叫んだり 喚(わめ)きちらしたり
  なにしろ幕が下りないのですから
  それはそれはつらいことだと思います

  いつかは消えていく
  いつかは忘れ去られる
  ほんの一欠片(ひとかけら)の思い出が
  誰かの心に残れば
  それはそれで満足です

  近頃 こんな事を考えるのも
  それなりに充分生きて来たからかも
  知れません
  感謝の気持ちだけが丸い渦になって
  心の中程で回っています


 
 東京都小平市住の詩人、市野みちさんから第6詩集となる『風は笑って』をご恵投いただいた。
紹介した「一生」は当詩集の帯文にも使われている作品。
 自身の生き方を振り返りながら、誰かに語りかけるように、そして自身に語り聞かせるように、
平易な言葉で奥の深さを表現している。

 <それなりに充分生きて来たからかも/知れません>と表出しつつ、収録作品「教えて」では、
<どうにもしっくりしない人生です(以下略)/人はこの世に生まれ落ちた時から/心の片すみ
に/違和感を覚えつつ/年齢を重ねているのかも知れません>と吐露する揺れに共感した。

 市野さんの生き方がみえてくる詩句を、一部拾ってみた。
・<感謝の気持ちだけが丸い渦になって/心の中程で回っています>(「一生」)
・<春に椿の花が咲く/あたり前が嬉しい/いつも通りがいとおしい>(「椿」)
・<太陽は/沈む寸前でも/こんなにまぶしく輝いている>(「夕日」)
・<横切る風の/さわやかな笑い声が聞こえた/ほらね!>(「風」)
・<何のために/今まで汲汲と生きてきたのだろう/周りの人達に合わせて/
  ただ回っていただけ>(「春の日に」)
・<私は/これからも地べたを這いつくばって/生きて行くよ/
  探し物をしながら>(「これからも」)

 

著 者  市野みち(いちの みち)
発行日  2024年5月5日
発行所  土曜美術社出版販売
定 価  2,200円(本体2,000円+税)

著者略歴 1944年1月生まれ
     「マロニエ」同人
     日本現代詩人会、日本詩人クラブ 各会員

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

見上 司さん惜しかった! 

2024-05-23 | 詩関係・その他

 一般社団法人『日本詩人クラブ』の第34回新人賞が去る2月25日に決定した。(同会会報掲載3月31日発行第106号)
今回の新人賞は、井嶋りゅうさん。(詩集『影』。同詩集は『日本現代詩人会』第74回H 氏賞の最終候補にも選考された)。

 秋田県現代詩人協会会員でもある見上 司(みかみ・つかさ)さんの詩集『虹のような日』は、最終候補詩集10作に
選考され、
更に最後の2作までに残ったが、惜しくも次点となった。
 とはいえ、見上さんの詩の世界観が読者や選考委員の感性に
鋭く入り込んだということが証明されたわけでもあり、残念
でありながらも・・・最後の2冊に残ったことが嬉しい。うれしい。ウレシイ。
 惜しかった!!
 

 当ブログで先に紹介しているが、あらためて表紙画像を再掲。

                   

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋田県現代詩人協会2024年度総会・詩人賞表彰式

2024-04-25 | 詩関係・その他

                

 

詩集賞・駒木田鶴子、作品賞・木村哲夫、奨励賞・小松春美の各氏          講評を行う嶋﨑治子選考委員

 

4月21日、秋田県現代詩人協会の2024年度総会と詩人賞表彰式が秋田市内で行われた。
総会では全審議事項が承認され、新年度活動へ向けてスタートした。 

続いて行われた第25回秋田県現代詩人賞の表彰式では、受賞者のスピーチと受賞作の朗読が行われたほか、
選考委員を代表して嶋﨑治子さんが講評を行った。

コロナ対応が緩和されたこともあり、懇親会は話が弾む参加者の笑顔が”満開”であった。

 

(画像提供 横山 仁 氏)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第25回秋田県現代詩人賞 

2024-03-15 | 詩関係・その他

        

 第25回「秋田県現代詩人賞」(主催:秋田県現代詩人協会)が決定しました。
 (選考委員会:3月1日 秋田市内の会場で開催)

 ◆詩集賞  駒木田鶴子詩集『雪の吐息』(書肆えん)
 ◆作品賞  木村哲夫「休止符」
 ◆奨励賞  小松春美「さくらの下で」

 (以下、プレスリリースの一部を紹介します)
1、受賞作品
 ①秋田県現代詩人賞・詩集賞  駒木田鶴子(こまき たづこ) 『雪の吐息』
 ②秋田県現代詩人賞・作品賞  木村哲夫 (きむら てつお) 「休止符」
 ③奨励賞           小松春美 (こまつ はるみ) 「さくらの下で」
2、受賞者略歴 
 ①駒木田鶴子 1935年生まれ横手市住。「舟」同人。日本詩人クラブ会員。
 ②木村哲夫  1972年まれ秋田市住。 「北の詩手紙」同人。
 ③小松春美  1940年生まれ男鹿市住。「密造者」同人。 
3、表彰式   4月21日(日) 午後開催の総会終了後(秋田市内)  

 <ご参考>
 ◆秋田県現代詩人賞
 ①詩集賞・・・前年中に刊行された会員の詩集が対象。
 ②作品賞・・・前年の「秋田県現代詩年鑑」所収及び前年中に詩誌等へ発表された
        作品が対象。
 ③奨励賞・・・秋田県現代詩人賞に準ずると評価された作品。
 ④会員による投票と推薦委員3名の意見を参考に、県外の詩人を加えた選考委員計
  3名により選考。なお、「秋田県現代詩年鑑」には会員以外の人も参加可能で、
  詩集賞を除き当詩人賞の選考対象となる。

 ◆秋田県現代詩人協会概要  設立:1991年

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

見上 司 詩集『虹のような日』

2023-12-30 | 詩関係・その他

      

 見上 司さんの新詩集『虹のような日』が土曜美術社出版販売から刊行された。
 見上さんは秋田の三種町在住の詩人。抒情的詩風の作品が魅力的だ。

 読み手の内奥へどこかしっくりと纏わりついてくるような、そんな詩を書く人・・・
と書いてしまえば固定観念で作者へ迷惑をかけるかも知れない。
 だが、詩を読むという能動的な立場にいる人にとっては、作者が身近な存在となって
ビンビンと心に響いてくる作用があるかも知れない。

 作品集の前にある散文「自序」と最終にある「あとがき」は、一般的な詩集には珍し
く作者の本音が表出されていて、苦悩、詩に対する真摯な取り組み方、詩論、持論、人
生観などが読み取れてくる。詩作品以前にこの詩人の在り方が視えて、とてもとても他
人ごとではない情感が湧き出てしまう。
 「こんどこそこれが最後になるのではないか。もう一行も書けなくなる。書かなくな
 てってしまう。その恐れのなかで書き継いできた」


「虹のような日」

ひょっとして ぼくが手にした一篇の
名もない詩が だれかの人生の
そらに すっと一条(ひとすじ) にじをかける
まかふしぎなちからをもって
いるかもしれない
そんなたわいないざれごとに
ひとり 胸をあたためる日が
あってよいのだ

なにもかもが 徒労であったと
うらぶれて とぼとぼかえる
ゆうまぐれ

都会のこんなビルのはざまに
こぢんまり おきわすれられたような
神社のまえのベンチにすわり
ふるい 小さな
かみさまと はなしてみる

ああ 
ちいさな神さま
ちいさな神さまよ

 

発 行  2023年12月10日
著 者  見上 司(みかみ・つかさ)
発行所  土曜美術社出版販売
頒 価  2,000円+税

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

佐峰 存 詩集『雲の名前』

2023-12-27 | 詩関係・その他

      

 コトバの持つ拡がり、思惟の展開といったものの表現形態、その可能性を感じた作品集・・・
と言えば大げさだろうか。

  11月下旬、著者の佐峰 存(さみね・ぞん)さんからご恵投いただいた詩集『雲の名前』を
一言でと問われれば、乱暴だが、
そうこたえたい。

 繊細な内奥の吐露は時に傷みを伴いながら綿々と表現されている。感受性とか表現力という
ことにまとめてはいけないよう
な、一つの感覚・感性の世界観を表した詩集ではなかろうか。
この、インパクトある表現力の作品集に
出会ったことに刺激されている。
(下記引用作品は、先述とは関連なし。あくまでも作品紹介の一部)

 

「夜の鼓動」(の内の「Ⅱ 鏡像」を引用)

 深夜の湖底に軋み
 傾く満員電車の吊り革の森
 年季を重ねる群生に迷い込んだ
 毛深い蛾が 束の間の心を運んでいる

 一対の翅がなす 羽ばたきの綿は
 ふくよかな腹を風船のよう
 蛍光の波打つ宙にのせ
 読まれることのない軌道に
 
呼吸を紡いでいく 
 
速度の中を飛ぶ速度

 鋼橋を潜り抜けてきた関節に
 
染みわたる音程 傍らで
 人々の眼鼻も樹立する
 
水を通わせ
 時間の苔を育みつつ
 
疾走する生態の園
 蛾の鏡像は火花をひらき
 脱皮の果ての柔らかさにそよぎ
 やがては昏々と
 眠り込むのだろう

 今はまだ 遠くまで美しい
 窓ガラスの硬さにしだかれて
 こぼれながら 太く滑る脚の爪
 
居住区が液状に
 幾重にも加速している

 

著 者  佐峰 存(さみね ぞん)
     詩集『対岸へと』(2015思潮社)
     第一回西順三郎賞新人賞奨励賞
発行所  思潮社
発行日  2223年10月15日
定 価  2,500円+税

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

井上尚美詩集『蒲の穂わたに』

2023-11-17 | 詩関係・その他

       

 静岡県島田市住の詩人、井上尚美さんから第5詩集『蒲の穂わたに』をご恵投いただいた。

 井上さんの詩に初めて出会ったのは丁度一年前、詩誌『穂』第43号掲載の「わたしの庭」(当詩集所収)
であった。次号の43号に発表された「叩く」を当ブログで紹介させてもらったが、その時の
印象は構成力
が際立っている作品だということ。

 この度の詩集は5章にまとめ上げた全25編の作品が収録されている。

 「さみしい癖」
 引いていく闇の中に残光を放つ星
 を 見つけると少し嬉しい
 切っ先の鋭い残月がひとつ
 という朝 それも少しだけ嬉しい
 目覚めて直ぐ窓を開け今日の気運を占う
 それが日常になってしまった さみしい癖
 夜明けの匂いが静かに寄せてくる

 午前五時 今日は雨
 痩せた木々の黒い影がぬらっと立っている
 寄り合って何かを密談しているらしい
 夜のまんまの庭
 訳のわからない腹立たしさが押し寄せてくる
 濡れしょぼれた心で台所へ
 その時 男の部屋から力の抜けた声がかかる
 雨だね しとしと冷たい雨だね
 男は女より先にあの影を見ていたのだ

 おいしい朝ごはんつくるから 待っていてね
 芝居じみた明るい声で おいしいごはんだなんて
 今までそんなこと一度も言ったことないのに
 小細工はとっくに見破られているだろう
 男の切なさを女が透視しているように

 五日後男は抗がん剤治療を始める
 放っておけば三ヶ月の命
 医師が見積もる男の余命

 雨脚が強まる
 ——さあ かかっておいで
 腕まくりをして
 切れあじ抜群の包丁を握りしめて
 今日の前に 立つ

 当詩集の冒頭に配された作品。物事を捉える、本質を捉えて表現するということはこういうことか、と思
った。「切れあじ抜群の包丁を握りしめて/今日の前に 立つ」「女」。抗がん剤治療を始める五日前
の朝、
何もしなければ余命三ヶ月と宣告されている「男」との心的な交感が短い会話の中で成立している。「ぬめ
らっと立っている」「
痩せた木々の黒い影」に気付いているが、口に出すことはない。男が気付いているは
ずだと思うことで今日が始まるのだから。「目覚めて直ぐ窓を開け今日の運気を占う」「日常になってしま
った」「さみしい癖」は、男ががんと診断されてからの癖なのであろうか。
 第3連と4連は「女」、つまり妻の心理が見事に活写されている。しめった感情ではなく、からりとした
気丈を表出している。だからこそ逆に、妻の心の揺れが読み手に伝わってくる。独白的な流れを少し距離感
を入れての心情
表現。巧さを感じた。
 
 この作品を、そんな勝手な読み方をした。最初に読んだ時の箇条書きのメモは「男、女という書き方をす
ることでの冷静な位置づけ」「ガツンと来る本質表現の巧さ」「物事を直截にではなく全体で表現すること
の構成」「言葉遣いの緩急」「第2連一行目”午後五時”は”午前五時”の誤植か?詩集通りでいいとなると、
時間の隔たりがありすぎて、うまく伝わってこない気がするが」など・・・・。
※第2連一行目”午後五時”は”午前五時”の誤植とご本人から連絡あったので、引用作品も午前に変更した。
 
 代表して「さみしい癖」に触れてみたが、その他では「温泉」「日記」「夢の中で」「窓」「また あし
た」「葉桜の頃」などに心揺らされた。

 

発 行  2023年10月31日
著 者  井上尚美(いのうえ なおみ)静岡県島田市
               日本現代詩人会、静岡県詩人会、静岡県文学連盟の各会員。詩誌『穂』発行人。
             第22回白鳥省吾賞最優秀賞受賞
発行所  土曜美術社出版販売
定 価  2,200円(税込み)  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『花美術館』・若狭麻都佳さんの作品を紹介

2023-11-12 | 詩関係・その他

       「花美術館」Vol 82より

 専門誌「花美術館」Vol.82と83に若狭麻都佳さんが紹介されている。
 VoL.82では「マルチ作家 若狭麻都佳の軌跡」として8ページにわたってパフォーマンスを演じる
写真とともに、既刊詩集からの
詩作品。VoL.83では同じく既刊詩集から2編の詩が掲載されている。

 文を寄せている”評者”の捉え方に頷きつつ何度か戻りながら詩を読み返したりしていると当り前のこ
とだが、読み取り方の違いがあったりするから、これはこれでどこか合評会のような感じがあって面白
いものだと思った。

 若狭さんの詩からは離れるが、処女詩集『それは白い雲の色をしていた~亡き兄に捧げる~』の序詩、
兄克行氏15
歳の時の詩を紹介したい。

 
 「空白の時」     若狭克行
 
 ペンを持つ
 重く沈むぼくの手
 しだいに空白がぼくの心を流れる
 ぼくは暗黒の世界へ運ばれる
 空虚がぼくに広がり
 ぼくを包む
 何も見えない闇の中
 「Do+S+V・・・?」
 「y=ax²のグラフ」
 「接続の型・・・」
 文字や記号が
 かすかな光に
 「チラッ」
 と浮かぶ
 すべてがぼくの周囲にあり
 すべてがぼくから遠のく


 「花美術館」では既刊詩集からの作品をテーマに沿って?評者が選択し紹介している?のだと思うが、
時には現在の作品についての紹介も欲しいところ。
 なお、「日欧宮殿芸術祭2023inマルタ」において、若狭さんの美術文芸作品「年老いていく人形」が
ゴールドメダル受賞との報告が添えられてあった。
おめでとうございます!


・Vol 82 掲載作品 「木もれ日」「卵のきもち」「片目に棲む鳩」
          「あまらしさ—Metamorphose」
・Vol 82 掲載作品 「花物語」「夜咲く花の子」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする