言葉の美しさとはこういうものか、と思った。描く世界は勿論、いや、ともかく?言葉の響きと描写する視点の確かさに驚く。こんな風に冷静に自己を客観視しながらそれでいて叙景に自らが在るという表現方法に魅かれる。一見、自然描写に終始していると思われがちな詩編に潜んでいるものを、読み手はどのように感じどう頷くか・・・。
「光」
白光の月が一つ 空にある/枯葉一枚 かさこそと音を立て/敷きつめられた小さな石の上を吹かれていく/夕べ 小川のほとりに郡生していたすすきの穂波は/美しく焼かれた/露になった川底を白光は照らしていた/硬い冬草の葉が地に光っている/昼間 百日紅の裸木に幾度も来ていた/オレンジ色の頭をした小鳥一羽/私の魂はそれらの中にある/あまりにも静かすぎる生と死の間/人には不可視の場所で/潮汐のように操り返すいのち/光は永久に絶えることなく/光度だけが移っていく/記される日々も 季節もなく/生物も人も/明日の光の中へ/雪のようにうもれていく
2015,10,27発行・歩行者