陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

「秋田の詩祭2019」 10月19日開催決定

2019-09-19 | 詩関係・その他

       

 秋田県現代詩人協会主催の「秋田の詩祭2019」が、10月19日(土)に開催されることで決まった。
 今年は午前の部で参加者による詩の朗読、ミニ講座「超入門!一行からはじめるやさしい現代詩」。
 また、午後の部では、高橋玖未子氏(日本現代詩人会、日本詩人クラブ各会員、青森県)による「詩風土をもとめて」と題する講演が予定されている。高橋氏は2018年度H氏賞選考委員の一人。
 参加無料。是非お気軽にご来場を。

 日 時 10月27日(土)<午前の部>10:30~12:30<午後の部>13:15~15:00
 場 所 協働大町ビル(秋田市大町3-2-44) 

 

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吉沢悦郎詩集『ノスタルジア』

2019-09-09 | 詩関係・その他

      

 吉沢悦郎さんの第4詩集『ノスタルジア』が刊行された。
 吉沢さんは1937年生まれの82才。秋田県大仙市大曲住。略歴には「京城府初音町〇〇番地に生まれる」と書かれている。現在の韓国ソウル。終戦に伴い帰国した、いわゆる引揚者。8才の頃の出来事である。このことを念頭に置いて作品を読んでいくと、著者が何を思い何を書こうとしてきたのかが少しは分かるような気がする。
 時代に翻弄され、生まれ故郷をなくし父の故郷である秋田へ引揚げざるを得なかった少年は、以後どこかで引揚者としての不条理さと違和感をずっと抱えたまま齢を重ねてきた。自らの”存在”と”非在”についてもがき、追い求めてきた。
 2004年に廃刊となった同人誌『棘(きょく)』に吉沢さんは次のように書いている。「引揚以来六十年、私は一度もソウルを訪れたことはない。韓国旅行もしていない。それが、彼の地で生まれたという原罪の贖罪と思っている」と。実に重い意識だ。

 当詩集の末尾に、成田豊人氏と私が「解題」としてそれぞれ散文を寄せている。

 

     彷 徨

   気がつくと 歩いていた 知らない町の街外れだ
   舗装もしていないし 砂利も敷いていない 車も
    人も通っていた よくあった昔の道路だ
   人通りがまるでない 車の往来もむろんない
   カラス一羽さえ見当らない 無音 無風の静まり
    かえった空間をずっと歩いている

   平屋建てがまばらに見える左てを 歩きながら
    ふと思った おれはどこから来たのだろう
   と 陽ざしのある高台が目に映った 小さい家が
    見え 辺りに樹々の緑が揺れていて そこから
    男がひとり歩きだした ああ あれがおれか
   それはそれでよかったが少し妙な事が起きていた
   数間ほど前方の 知らない家に入っていくおれが
    いる 見ているおれは後ろを歩いている 何だ
    これは 二人のオレ? 異常も異常の光景だ

   そう思ったのは後ろのオレだったようだが 彼が
    慌ても騒ぎもしないのも 奇妙でしかたない

   ほどなく 後ろのおれがそこに来て 前のおれが
    中から出てきた すると勝手に納得している
   ここは留守だったのか 尋ね先を間違えたのか

   道はぐんと広がり 明るみを増し 二人のおれの
    距離は詰まり やがて一人になったが 後ろの
    おれには しばらくは前のおれが見えていた
   杖はついてない 布鞄を左肩に吊ってもいない

     往く道は右に曲がり 緩く下り また広がる
   そうだ 右てへ行こう 思い出したのだ <人は
    右・車は左> そうなってもう七十年は過ぎた

   しかし すさまじい勢いで その時 道の右ては
    後退していった 何里も向こうに霞んで見える

   あんな遠くに おれは何を探し 尋ねて往こうと
    いうのか 心は萎えた
   その瞬間 辺りは暗転し 長い夢中彷徨の情景は
    忽然と消えた

     
 発行日  2019年8月30日
 著 者  吉沢悦郎(よしざわ えつろう)
 発行者  安倍 甲
 発行所  (有)無明舎出版 (非売品)

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