陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

『自選 成田豊人詩集』刊行

2023-07-09 | 詩関係・その他

         

 成田豊人さんの『自選 成田豊人詩集』が刊行された。
 成田さんは北秋田市住、秋田県現代詩人協会会員、日本現代詩人会会員、詩誌「Komayumi」編集発行人。

 成田さんは26歳の時に処女詩集『北の旋律』を刊行してから、2年前の2021年『夜明けのラビリン
ス』まで実に8冊の
詩集を刊行しているが、このたびは、その8冊の詩集から41編を”自選”した文庫本サ
イズで刊行。巻末には、
2014年に詩集『夕顔』で三好達治賞を受賞された青森県詩人連盟会長の、藤田
晴央氏が26ペ
ジにも及ぶ「解説」を寄せている。これだけでも、成田さんと藤田さんとの交流の深さを
推しはかることが出来る。素晴らしいことだ。

 手に取った時に思ったのは、率直に言えば「なぜ今、自選集なのだろうか」ということであった。
 そういえば・・・という仮定は適当ではないが、数年
も前から「Komayumi」の編集後記だったか、それ
とも何かの会の時であったか、「詩は青春の文学という思
いがある。詩をやめ俳句を書きたいと思う」とい
うようなニュアンスの発言があったのを記憶
している。その事だろうか?あるいは、同誌第38号のあとが
きで、「最近、なぜ詩を書いている
のだろう、とか、詩を書いて何になる、と思うことがある」と吐露し、
「高校生の頃から書いているのだか
ら、作品の数と質はともかく50年は書いている。(略)詩集は7冊ある
が、ほとんど評価される事もなか
った。かなりのエネルギーと金を消費しながら、どう見ても自満足そのも
のに過ぎない、と自分に呆れてい
る」と述懐している。冷静に立ち位置を自己分析していると感じたが、
その事だろ
うか・・・。
 同世代の一人として詩を
書いてきた私にも、実は同じような感慨がある。が、さて、さてさて・・・。
 いずれにしても、成田さんは詩に関するイベントがあれば県内外を問わず出掛けることも朗読することも
講演することも積極的な人。その線状の活動と受け止めた。
 既刊詩集の自選集につき、作品への感想を控え紹介だけとした(成田さんには叱られるが)。

 

発行日  2023年6月18日
著 者  成田豊人(なりた・とよんど)
出 版  書肆えん  
     秋田市新屋松美町5-6
頒 価  1,800円(税込み1,980円)

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「詩の小径 ~文学散歩」・世界文化遺産『伊勢堂岱遺跡』(北秋田市)へ

2023-07-05 | 詩関係・その他

 6月25日(日)、秋田県現代詩人協会主催の「詩の小径 ~文学散歩」が北秋田市を会場に行われた。
 今年は、何回か候補にあがっていた世界文化遺産(北海道・北東北の縄文遺跡群)「伊勢堂岱遺跡」とその展示館。
 参加者は23名、これまでで最高の人員であった。

 特別参加の元秋田県埋蔵文化財センター所長、小林 克(こばやし・まさる)氏から遺跡発掘時の状況を含めた説明・
案内をしてもらいながら約一時間、縄文の世界へ思いを馳せた。
 この遺跡は1992年(平成4年)、大館能代空港へのアクセス道路建設工事中に発見されたもので、環状列石、配石
遺構、掘立柱建物跡などが発掘されたという。2021年7月に「北海道・
北東北の縄文遺跡群」17ヶ所のうちの一つ
として「世界文化遺産」に登録された。
 
 市内鷹巣へ移動し遅い昼食をとった後、参加者による詩の朗読、スピーチが行われた。自作詩は勿論、縄文に関連した
ものとして、著名詩人の詩・自作詩・現地をみての即興詩などなど
。ここ
数年、新型コロナウイルスの感染拡大により、
なかなか集まることが難しい
状況が続いただけに、参加者の思いが集約された濃いひと時であった。

                 

   

 
(画像提供 横山 仁氏)
               

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駒木 田鶴子詩集『雪の吐息』

2023-07-03 | 詩関係・その他

       

 駒木田鶴子(こまき たづこ)さんの第4詩集『雪の吐息』が刊行された。
 駒木さんは秋田県横手市住。秋田県現代詩人協会会員、日本詩人クラブ会員、詩誌「舟」同人。
 
 あとがきで、「六十歳で第一詩集を上梓してから第二、第三と、なぜか7年周期で出版してきた」が、
今回の詩集は13年ぶりになると記す。

 また、所属誌詩「舟」(岩手県滝沢市。レアリテの会)とのかかわり方や自身の詩の在り方を「私の
詩はレアリスムが基調になっている」と述懐しながら、
「亡くなった人の生きられなかった時間を含め
八十八年を生きてきた自分の証となる詩を残したい」と、その意図を明言する。第三者へと言うより
は、自身へ向けて”付託”するかのように。

 描かれた情景は、時として少女の目であり、地域性であり、そしてまた不意にコケティッシュな”女人”
の目であり、それらをさりげなく表出している。

「レアリスム」と語る言葉の持つ意味合いが、その手法としていわゆる”現実”や”生”であるならば、これ
またそうあることを意識しながらも、固定されない視点
を持った、詩人の全方向性を示している作品集
であると思った。


    雪の吐息

  風が止まるとき
  雪は 本音を漏らすのでしょうか
   シンシンと?

   ひひとして?
  いいえ 様子ではありません
  雪そのものの吐息です

  それは
  眠りかけた屋根を伝い
  しめ切った二階の窓から
  木綿のパジャマのようにヒンヤリと
  ひとり寝の素肌に触れるのです

  昔「雪喰い」した銃後の少女は
  年を重ねても
  雪の音やにおいに敏感です
  ジョリッ ジョリッ と
  雪玉をかじる勇ましい響き
  今も舌の上に残る
  燃えさしの 移り香まで

  人知れず
  真綿色した雪の華が
   咲いて
    散り敷いて
     消えてゆく

  ほらっ 聞こえるでしょ
  風がブレスするつかの間の
  雪の吐息が
  夜のとばり越しに鼓膜をふるわせる
  小さな命のしたたりです

 

 

著 者  駒木 田鶴子(こまき たづこ)
出 版  書肆えん(しょし えん) 
     〒-010-1604 秋田市新屋松美朝5-6
     ℡・Fax 018-863-2681
発行日  2023年6月25日 
定 価  本体2,500円(税込2,750円)  

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