陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

受贈詩誌 「Komayumi」「海図」「北五星」

2017-12-30 | 詩関係・その他

 今月受贈の同人詩誌。     

「Komayumi」第35号(2017.12.15発行)

       

 「夏未明」若木由紀夫
  ことばは世界をかけめぐっていた/若者たちは街頭に繰り出し/自由の盟主を名乗る国の勝手な言い分を許さ
  なかった/世界には名付け得ぬものなど何もなく/名づけ直さねばならないものがあふれていた/僕が待って
  いたのは/明日そのものであることば/身がふるえるような詩の一行だった  (第一連)

 いつものように若木さんの力強い詩句、問題提起する姿勢が響いてくる。

 「鷹巣・銀座通り商店街異景」成田豊人
  シャッター街となった商店街通り、駅舎前で待つタクシーは客もなく車庫へ戻り、親たちは年老い跡継ぎもな
  く、思い出は溜め込むしかない・・・。
  未来を待ち焦がれているように/微笑みを浮かべていた人々は/写真の中で疲れ果てている(最終連抜粋)

 そして、気付くと成田さんも私たちも同じように時間に埋もれまいと、少し抗っていたりする姿が見えたりする。


「海図」特別号(2017.12.25発行)

       
 編集発行人の木内むめ子さんが今年10月2日に他界された。おそらくこの号の編集途中であったものと推察される。通巻で第115号目となるのだが、急逝されたので特別号としたのであろうか。創刊以来、同人はすべて女性という特徴ある詩誌。木内さんの作品を含めた同人11名の詩作品とエッセイがそれぞれ収められている。
 編集発行人亡きあと、この詩誌はどう展開されるのか。継続を願うこと切である。

「北五星」第17号(2017.12.31発行)

       

 同人は5名。田代卓さんは関西へ農業指導で長期滞在中、見上司さんは沖縄へ教員として長期出張中。その田代さんも見上さんも出張先での情感あふれる作品を寄せている。
 代表の佐々木久春さんは、今年4月に来日した中国の詩人、楊 克(ヤン・クー)氏の詩編につて紹介。4月に来日した折、講演等の様子については「詩と思想」「現代詩手帖」で掲載されていたが、討論・通訳・翻訳を担当された佐々木さんの存在は大きかった。 

「ROUTE58」見上 司
 ゆうぐれ/海をみながら/詩のようにはしるのだ//いちにち/あそびつかれたこどもが/みたされたきもちで/帰るだろう/そうした/夕やけ雲にてらされて/そらがうすあおく/天蓋をおおい/やがて藍いろになずんでいく//ぼくは宇宙をかんじる/音楽のように//そして/とおい故郷の/海ぞいの道を/おもいだすのだ  

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ふんわり雪

2017-12-19 | 季節

      

午前中に降ったボタ雪。枝にふんわりと積もった情景に”綺麗だ”と思うのだが、これが普通の情景となってしまったら”ウンザリ”するんだろうな。
 と、毎年同じことを思っていることに気付いて・・・。

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木内むめさんお別れの会

2017-12-10 | 詩関係・その他

      
 秋田県現代詩人協会元副会長、木内むめさん(筆名:むめ子)のお別れの会が本日午後、由利本荘市岩城で行われた。
 木内さんは去る10月2日に他界。享年94才。健康上の起因ではなく突然の死であった。
 大変お世話になった先輩詩人である。今このブログで紹介しようと思ったのだがうまく出てこない。いつかご紹介できればと思う。

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十田撓子 第一詩集『銘度利加』

2017-12-06 | 詩関係・その他

      
 十田撓子(とだ とうこ)さんの第一詩集『銘度利加』が刊行された。
 タイトルの銘度利加(メトリカ)とは何だろうか。そんなところから接してゆく人が多いかもしれない。挟まれている栞に詩人の吉田文憲氏と同じく詩人の林浩平氏がこの詩集について触れているが、その中で林氏が文頭で「十田撓子は、幼いころ、郷里である秋田県鹿角市の大湯で、『銘度利加』を見た記憶があるという。メトリカとは、ハリストス正教会の受洗者名簿である。大湯には明治期に正教が布教され、信者もいた。隣家が信者だったので、イコンなどにも触れる機会があったそうだ。」と書いている。この一文が詩集『銘度利加』を読み進むうえでの大きな鍵となり得る。
 これから味読させていただくが、郷里の歴史=時間=生きた人々などがあちらこちらに籠められた壮大な叙事詩であり、忘れられた時間へ近づこうとする十田さんの考え方や感性が目となって描かれた画とも言える。4章に分けられた18編の作品全てとは言わないが、この詩集を読み進めるには、十田さんの立ち位置や背景を作品ごとに、かつ”連”ごとに想起してゆくことが求められているような気がする。
 ”それまで”生きて来た不特定多数の人たちを想いながら、あるいはその人たちになり、目で、言葉で、声でその掬い取った区切られた世界を現わしている。
 
    「パニヒダ」
  
  それはとくべつな言葉
  さきの世の人のものであり
  私のものであり、次の人へと遺すもの
  
  どうにか口から絞り出せたのは
  からだの奥底から泣きたいような
  赤子の不安げに呼び求める声
 
  瞑目し、うなだれて
  自分の胸の内へ向かう
  大切な人にそっと語りかけるように
  粗朶をかさねた炉のそばで
  時おり焚き木がはぜる音のほかは
  常代からの沈黙が夜の顔をしていた

  天体から音が聞こえてくる

  水が星座を読むように
  胸の奥からふつふつと湧き出てくる
  それは音のかたちを持っていた

  その音を説明するために
  しかし私は
  言葉を使わなくてはならない

  とくべつな響きを現象させる試みの
  さなかに、ごく短い言葉が
  繰り返し口をついて出てくる

  過ぎし時をうたう
  遠いちちははへの祈り
  蕭蕭と降る雨にも似た
  鈴の音が頭上に降り注がれる

 

 発行日:2017年11月30日
 発行所:株式会社思潮社

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秋田県現代詩人協会 出版を祝う会

2017-12-03 | 詩関係・その他

                   
      福司 満氏  矢代レイ氏  ぼうずみ愛氏 


 秋田県現代詩人協会主催の出版を祝う会が本日(12月3日)開催された。
 今年出版された詩集のうち11月末までをひと区切りとした。今年は福司満さんの方言詩集『友ぁ何サ行った』、矢代レイさんの『川を釣る』、ぼうずみ愛さんの『岬 待春』。
 福司さんの詩集は、生きている原初を再考させてくれる言語の大切さに感動する。矢代さんの詩集は、水にこだわり水に自己を視る世界に共感を覚える。ぼうずみさんの詩集は、情熱的な愛を具現化し自身を語るその熱き心情に圧倒される。
 あたり前のことだが、それぞれにそれぞれの世界が展開されている。それらの深淵に近づく作業が私には必要だと改めて思った。

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こやま きお詩集『父の八月』

2017-12-02 | 詩関係・その他

       

宇都宮市在住、こやま きお氏の第三詩集『父の八月』が刊行された。(因みに、第一詩集『おとこの添景』は第63回H氏賞の候補となった)
 作品35編が3章に分け収められている。叙景であり抒情であり、掌編のようでもあり、そして社会をきっちり睨んだ鋭い眼もある。感情を抑えた表現がこの詩人の性格を表しているのかも知れない。読んでいて気持ちが落ち着き、なるほどと頷く。
 第3章では東日本大震災・原発事故に関連した作品が収められている。その中の「千羽鶴考」は、やりきれない気持ちの表出が見事だ。

   白藍に漣漣と
   海の底に埋もれた何万何千の魂は
   愚直に
   放射能を飲恨したまま
   現世を守っているのだ

     忌まわしい神まがいを閉じこめ
   人々の苦しみや悲しみを
   千の鶴に折り込ませてはいけない
   愛などというもっともらしい大人の理屈を
   鶴に折り込ませてはいけない

   願いを折る 嘘をつくな
   希いを折る 嘘をつくな
   祈りを折る 嘘をつくな
   夢一折
   希望一折 嘘ばかりつくな
   絆をつなぐ千羽鶴など
   大嘘だ

 

 発行:2017年11月25日 / 発行所:株式会社歩行社

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