陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

米屋猛さんご逝去

2019-11-15 | 詩関係・その他

最後の著書となった『米屋猛 詩集』(思潮社現代詩文庫)2016.10.31発行

 

 永年、秋田の詩壇を牽引してこられた米屋猛さんが、11月11日に他界された。89歳。
 秋田県現代詩人協会設立にご尽力されたお一人でもある。1979年第1詩集『家系』を出版、この詩集で第13回小熊秀雄賞を受賞された。生涯、詩集としては6冊を刊行。
 敬虔なクリスチャンである米屋さんらしい作品が多くある中で、詩集『人に生まれて』(思潮社2010.7.31発行)に収められている「精霊 きてください」が強く印象に残っている。寛永元年に刑場へと引かれていった秋田の殉教者32人に呼び掛けている内容で、米屋さんの気持ちがよく伝わってくる作品だ。
 
  
    「精霊 きてください」
  

       精霊 きてください

    寛永元年七月十八日の河合喜右衛門さん
    十三歳のご子息 喜太郎さん
    三十にんの方々
    皆さんと一緒に きてください

       われわれを憐れみ給え と
    祈りつつ
    久保田の奉行所附近の牢から 内町をひきまわされ
    改修されて 今は旭川と呼ばれている仁別川のちかくを通り 外町へ

    そのとき 草履を履いていましたか
    素足でしたか
    朝から
    炎天だったのですね

        (なんぼが あつがたしべ
         おいだば いのらねで ごめしてけれ ごめしてけれって
         なぎさげぶなだ) 

        精霊 きてください

    三十二にんの皆さんと一緒に きてください

    きのう あなた方がひきまわされた寛永の石ころ道を
    歩きました
    柳並木の舗道です
    お祈りもしないで 佇みました
    川の流れに逆らい 真鯉がバチャバチャ跳ねていました 
    そのときも真鯉が跳ねていましたか

        精霊 きてください 

    平成十一年七月十八日の今 きてください
    朝方から灼けつく暑さです
    「久保田より三里距てるヤナイの地」と記録されている外町のはるか外れ
    谷内佐渡の刑場へ引かれていった道筋を歩くだけで もう
    汗だくです

        (おいだば ひあぶりの まぎこさ ひつぐめがら
          なぎさげび
         しぬめぇがら しでるなだ)

        精霊 きてください

    寛永元年七月十八日の喜右衛門さん
    喜太郎さん
    三十にんの方々
    皆さんと一緒に きてください

    ただ祈るだけで
    今日 何もしませんでした たったひとりの人のためにさえ
    何もしてあげませんでした

        精霊 きてください

    寛永元年七月十八日の天から 降りて
    今 直ぐ
    光の矢で さしつらぬいてください

        精霊 きてください

 

 

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すでに晩秋

2019-11-04 | 季節

 

 出歩くことが少なくなって、ふと秋を想う。
 午後、秋田市の市街地から少し離れて山あいに出掛けてみたら、いつの間にか秋は終わりに近づいていた。

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