陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

評論「ビンボーチョー 2」  横山 仁

2013-12-15 | 詩関係・その他

 「ビンボーチョー」とは、横山にとって「思想の貧困、すなわち『貧乏帳』」ということらしい。5年前に出した「ビンボーチョー 1」のあとがきに、書きはじめた時期(1982年5月、詩誌「匪」第34号から「ビンボーチョー」というタイトルで発表してきた)について触れている。こう横山が言ったのは31歳ころである。読書量のすごさと知識あふれる評論家の彼がこう言うのは、常に自身を見ているからであろう。それは今も変わらない。今回の2のあとがきには「かんがえることをしていたという事実が、ふぬけな、いまのわたしを鞭打ってくれるかもしれぬとおもったからである」と述べている。我々の年代にとっての懐メロ?である岡林信康や高石友也の歌を聴いているうちに、こんなことではいけないと、ハッと気付くあたり並みの同年者ではない。すごいではないか。

内容は、詩誌「匪」に発表したものを編集したものだが、かって同人として読んでいたときとは異なった感覚で読むことができる。                                                                是非、買って読んで戴きたい。

発行:2013年12月8日                                                       
発行所:書肆えん(秋田市新屋松美町5-6 ℡&Fax 018-863-2681)                         
価格:1,100円+税

                                         

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詩集「一遇」 見上 司

2013-12-15 | 詩関係・その他

 三種町の見上さんが第3詩集「一遇」を出版された。透明感のあるいききとした36の詩が5章にわたって編まれている。

「未来に ふいに -火星大接近の夜」                                                           (略)多分ぼくらはいつか忘れたり/気がつかずにいたりしてしまうんだろう/遠い日に受けた だれかからの/数え切れない優しさを/                                                             今見るあの星のまたたきが/数千万年前に放たれた光のベクトルであるように/遠い昔に忘れ去った大切な記憶が/未来にふいに思い出されるかもしれない/                                             昨日放った僕の吐息や思いが/明日はあなたに届くかもしれない

この詩をはじめとして、第1章「一遇」には星座に関連した作品が並ぶ。第2章「ささしき墓標群」、第3章「ジュリエット、第4章「二人」、第5章「ただいちど」。作者の人柄がよく感じられる詩集で、朗読するとさらに響くと思われる。そういえば、あとがきに「声にはまだ人間の不可知の不思議な力が宿っているのではないかと思う。(略)それは口に出せば、瞬時に消えるヒカリの粒々みたいなもので、何の痕跡も残さず宙に霧散するばかりかもしれない。が、じつはそうではなく、聞く者の(自分自身を含めて)心に永遠に刻まれる何かである気がする。だから、僕は、詩を、声に出すことを前提にして書いている(略)」とあった。含蓄のある言葉だ。

発行:2013年12月10日、発行所:コールサック社

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詩集「荒野譚」 藤子迅司良

2013-12-15 | 詩関係・その他

 落ち着いた語り口のようにじっくりと伝わってくる詩には、そうそう出会うことがない。が、藤子氏のこの「荒野譚」の詩編には、不思議と心落ち着かせるものがある。せっかちに読んではいけないような雰囲気を持っている。


「地形」                                                                  

よく/北へ向かう道の夢をみる/こころのどこかにそれが/潜んでいるからだ/
人にはきっと/それぞれの地形がある  (後略)

 あとがきにある次の言葉は、藤子氏の詩の根源であろう。
「幸運?にも、自分は生まれ育った土地(の近場)で暮らしている。でもなぜか故郷は遠い。土地や季節、人や時間のうつろいの中、自分の根底にあるのは、荒野感。故郷は帰ろうとすればするほど遠くなってゆく。時間のせいだろうか距離だろうか、あるいは精神だろうか。故郷とはもしかしたら戻ることのできない古びた記憶のことなのだろうか。」

藤子氏は熊本市住。
発行:2013年12月14日
発行所:土曜美術社出版販売

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山口敦子詩集『芭蕉 古の叙事詩』

2013-12-03 | 詩関係・その他

12月の初日に1冊の詩集が届いた。                                                       秋田県出身の先輩詩人、山口敦子さんの『芭蕉 古の叙事詩』。 芭蕉の句に自らの人生、故郷への思いなどを織り交ぜた39の詩篇。芭蕉の句を作品の中に位置させ、そのうえで関連する思いを一体化させている稀有な詩集とも言える。

著者略歴を拝見すると、数多くの著書が並び、平成23年には『旅路 山頭火の世界へ』を刊行されている。あとがきで「山頭火の自由律俳句と、私の詩とをタイアップする試みをしてみましたが、今回は、同じ禅や仏教習得の定型律俳句の”松尾芭蕉”へ挑戦してみました。」と述べ、表現形態に対する意欲的な取り組みが伝わってくる。

 

 「紅花」                                                                        (略) /あの小さな小さな可憐な紅花から見事な反物が一反作られる/真に驚嘆の一言で/自然の草木花に改めて頭の下がるがる思いで/これがさらに広い広い紅花畑などを見たら/さぞかし心も弾む事であったろう/                         

     眉掃(まゆはき)を面影にして紅粉(べに)の花

 芭蕉がこのように女性を詠うのは珍しい/それだけ強く”紅花”に乙女像を/連想させられたのであろうか/ (略)                                               

   

山口敦子さんは、昭和18年、秋田県の旧阿仁町比立内生れ。童謡詩集、絵本など数多くの著書を持つ。東京在住。

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