図はエルコノン.ゴールドバーグ「老いて賢くなる脳」からで、何かに取り組むときの右脳と左脳の活動の様子を端的に表したものということです。
ゴールドバーグによれば、経験したことのない新しいことに取り組むときは右脳が主となって働くといいます。
左脳には過去の経験で得られた知識や技術がパターン化されて蓄えられていて、直面した問題がその中のどれかに当てはまれば、それを使って処理をするといいます。
過去の経験や知識を応用して解決できる問題の場合は左脳が主となって処理を行うというのです。
新しいことや、自分が知識や技術を持っていないことに取り組むときは、左脳では処理できないので、右脳が主力となって働いて処理をするのです。
最初は右脳が働いて処理をしても、そのうちに左脳も参加するようになり、処理の経験が重なるにつれて処理パターンが経験として蓄積されていきます。
経験が蓄積されれば左脳がこれを利用して処理をするようになりますから、右脳の働きは左脳が働くにつれ弱まるということになります。
右脳と左脳の役割については左脳が言語を処理して、右脳が視覚や空間の処理をするといったこれまでの説とはガラリと変わった説ですが、経験的には納得のいくものです。
たとえば子どもがひらがなを覚えるときでも最初は苦労するのですが、繰り返し練習して覚えてしまえば、すらすら読めるようになり、さらに進めば文字を見たとたんに自動的に読むことが出来たりします。
計算にしてもそうで、一桁の足し算でも覚え始めは頭をしぼって計算しますが、繰り返して練習すればパッと答えが出せるようになります。
この説は右脳とか左脳とか大雑把に分けて説明しているので、漠然としたところはありますが、新しく何かを覚えようとするとき、最初は苦労して頭を使いますが、なれてくれば楽にできるようになるので、頭の働きが変わるということが実感されるので、説得力はあります。
くりかえして慣れてくれば、たいていのことは楽にしかも上手に出来るようになって、脳の負担も少なくなるというのはもっともなことなのです。
そうすると音読や簡単な計算をすると脳が活性化するという現在の流行はどういうことになるのでしょうか。
繰り返してやっていくうちには、自動的に出来るようになって、脳はあまり使われなくなるのではないかと考えられるでしょう。
いくらやっても簡単な計算や音読をするのに脳が莫大なエネルギーを使ってしまうようでは、その脳はよほどに不経済な脳だということになるからです。