左の図では黒点は長方形の角の位置にあるのですが、円があるためにずれた位置にあるように見えます。
円がなければ四つの点が長方形の角の位置であるというのはすぐ分かるのですから、円が描かれていない状態をイメージすれば四点の位置がはっきり分かります。
それには円の中側に注意を向けるのではなく、円の外側に注意を向けて見れば自然に四つの点は長方形の角の位置に見えます。
もう一つの方法は、四つの点を同時に見てこの四つの点が形作る図形の形を見ようとするという方法です。
四つの点に注意を向けて同時に見ると、それぞれの点の位置関係が正確に見えてきます。
このとき四つの円は平面にある四つの点の周りに置かれた輪か、四つの点の上に置いた透明の円のように見えます。
あるいは円形の穴が開いていて、下の平面が見えそこに四つの点があるように見えます。
いずれにせよ、四つの点が同じ平面の上にあるように感じられるので長方形の角の位置に見えるのです。
もし黒点が球形の表面の点であるように見てしまうと、四つの点は同じ平面にあるように見えなくなり、長方形を形作るようには見えなくなります。
たとえばこれが目玉のように見えたり、果物の実のように見えてしまうと立体感を感じますから黒点の位置は手前に見えたり、奥に見えたりして、黒点の位置関係はゆがんで見えてしまうようになるのです。
右のほうの例は二つの正方形の上に斜めの線が描かれているため、正方形はずいぶんゆがんで見えます。
あらかじめこれらが正方形であると知らされていなければ、長方形にはとても見えませんが、正方形であると知らされてもどうしてもゆがんでみえてしまうのではないでしょうか。
この場合正方形の四隅に同時に注意を向けて見ていれば、正方形に見えてくるようになります。
このとき正方形は平面的に見え、斜めの線の集まりより手前に見えるか、あるいは奥に見えたりして、離れて見えるようになります。
いずれにせよ、漠然と見えるに任せるのではなく、能動的に形を見ようとすることによって、正しい形が見えてくるわけです。
こうしてみると絵を描くときに、平面的にどのように見えるかということを意識して見分ける視覚能力が大事だということが分かります。