『やんちゃジジイ・ゆうちゃん』のイカすセカンドライフ

我儘で『やんちゃ』な爺さんの目標は、
周りに笑顔を振りまいて、楽しくセカンドライフを生きる事。

本当のことを言ってはいけないのか?

2011年08月18日 | Weblog

毎週木曜日の朝9時から、1時間。
技術報告会と称して、社長の前で技術的な報告会を行っている。
今日の報告は「新装置の熱対策」。

電気製品、とりわけ僕が設計しているような装置では
電気回路から出る熱をいかに抑えるか?・・・が、設計の大きな鍵になる。
特に小型化を試みると、どうしても熱対策は避けて通れない。

誰でも解るように簡単に説明するのは難しいんだけれど
電子顕微鏡の一部である、コイルを例にとって話してみましょう。
コイルは、電流を流すと電流×巻数で磁力が発生する。
この単位は電流(A) ×巻数(T:ターン)=AT(アンペアターン)
と言う単位で表されます。
このコイルの磁場の強弱をつけて、電子線を曲げたりするのです。

曲げたい最大距離を最大電流になるように設計したとき
コイルの抵抗(コイルの電線の抵抗値:長さで決まる)に
その電流を流した時の電力がこの回路の最大電力になる。
そのときの電源電圧はコイルの抵抗値×電流になります。
これは理科の授業で習った、オームの法則
V(電圧)=I(電流)×R(抵抗)そのもので、小学生でもわかる値です。

この抵抗に最大電流を流すときは電力の全てをコイルが消費するので、
熱の発生源はほとんどがコイルと言う事になる。
そのときの電力は
P(電力:W)=I(電流:A)×V(電圧:V)で現されます。

ところが、一定の抵抗にこの電力の半分を流そうとしたときに
トランジスタを使って、電圧が半分になるように制御します。
ちょっと算数をすると解るのですが、電気回路の熱が最大値になるのが
電流を半分にした時。
そのとき、トランジスタには最大電力の半分が消費され
このエネルギーは熱になって放出されるのです。

そのときの熱を、放熱板で空気に放出するんだけれど、
放熱板が大きければ、熱自体は低くなるのです。
この熱をどのあたりまで許容するか?
そして大きさはどの程度に抑えるか?
大きく出来ない場合は、ファンを着けたり、水を流したり・・・
これが熱設計とか放熱設計と言って、電気に限らず、設計の半分は
この熱設計で終始するといっても良いかもしれません。

機械系のコイルは最大電流のときに最大電力になるので
このときの温度でコイルの電線が燃えたり、熱が上がり過ぎないように
熱伝導を考えて、手で触れる場所で火傷しないように作るのです。

ところが、機械系の設計者がこの放熱設計をキチンと出来ない。
僕からすれば、基本中の基本だと思っているのにですよ。
それで仕方が無く、放熱に関するアドバイスを僕がすることになった。

部屋を冷やすのに、何処にどう風を流したらよいのか?
を考えるのと同じです。
で、行き当たりばったりの改造をしては温度を測っている連中をみていて
「キチンと数値で表して、自分の目論見を数値化しろ」
って言い続けていたのに、今日の発表は実験結果だけの報告だった。

それで僕は報告会の中で
「ある部分だけ冷やして温度が下がったら終わりじゃなく、
電気回路の最大熱量になるポイントで、全体ののチェックが
まだ終わっていないから、そのデーターも取って確認して欲しい」
って、指摘したんです。
そしたら、「他人事のような言い方をするのは止めろ」
みたいなことを言われて、僕は唖然とした。

はっきり言って、他人事じゃないけど「俺の担当じゃない」って思ったね。
まぁ、専務が僕を擁護してくれたので、僕は黙って引き下がったけど・・・

これで全部が解決した・・・みたいな報告で、社長が妙に安心してしまったら
それは僕にすれば『嘘の報告』になるのですよ。
本当のことを言ったり、本質を突いたりすると怪訝な顔をする人が居るけど
そういうのって、後で必ずトラブルを呼ぶ。

僕の設計経験は、ほとんどが熱との戦いだったから余計にそう感じたんだけど
どうも本当のことを言ってはいけない空気が、どこかにあるんだよね。
こういう会社は、生き残れないって思うんだけどねぇ・・・・

コメント
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