東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

不思議の国キューバ

2016年05月23日 | 日記

 私にとってキューバと言えば、映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」であった。大きな波しぶきが散るマレコン通りを、スライドギターの名手であるライ・クーダが、息子のヨアキムをサイドカーに乗せて悠々と走ってゆく。あまりにもカッコいいファーストシーンに魅了されてしまった。そして、映画が終わって「いつかこの国に行ってみたい」と思ったものだ。あれから何十年が経ったのだろう。

 だから、思いがけず「キューバに行かないか」と誘われたときには、その場で承諾した。もちろん、たまたま行ける環境にあったことも、幸いだった。キューバ教育調査団にもかかわらず、葉巻と音楽とクラシックカー、そして、ヘミングウェイとチェ・ゲバラ、カストロの「不思議の国キューバ」に、私は、物見遊山気分満々で旅立ったのだ。

 ハバナの宿は、決して快適とは言いがたいホテルであったが、何にも代えがたかったのは、そのホテルが旧市街に建っていたことだ。翌朝、私は早速カメラを片手に散策に乗り出した。

 世界遺産にも指定されているハバナの旧市街は、少し歩けば、ここが観光地ではなく、人々が暮らす生活の場だということが直ぐに分かる。旧世紀の建物が居並ぶ美しい街並みの路地裏には、庶民の生活の臭いがあふれ、ベランダにはカラフルな洗濯物が風に揺れている。そして、入り組んだ細い路地に、黒い煙を吐きながらビンテージカーが行き交っている。映画「アメリカン・グラフィティ」に登場するいわゆる「古き良き時代」のアメ車たち、ビュイック、ポンティアック、シボレー、クライスラーなどなどが、前世紀の古ぼけた街並みを今も悠然と走り回っている。

 憧れのクラシックカーがあまりに街に溶け込んでいるために、私たちは軽いタイムスリップ感を味わうことになる。でも、溶け込んでいるのは当たり前なのだ。なぜなら、このビンテージカーたちは、飾られ、カメラの被写体となるために存在しているのではなく、ここで暮らす人々の生活の足として存在しているのだから。これがキューバの魅力なのだ。

 キューバの街には、どこに行っても音楽があふれ、古老たちが葉巻を片手に談笑している。食事をとり、ラム酒を楽しむ場所には、バンドの演奏があり、客にリクエストを求めてくる。リクエストは、もちろんアルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のトップを飾る曲「Chan Chan」だ。緑あふれる中で聴くローカル色豊かな「Chan Chan」も、ハバナにあるヘミングウェイゆかりのバー「ラ・フロリディータ」で聴いた洗練された「Chan Chan」も、本当に素敵だった。もちろん土産としてCDを購入したことは言うまでもない。

 蛇足になるが、帰国後の3月18日、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」アディオスツアーの日本公演があり、勇んで行ってきた。もちろんコンパイ・セグンドなど当時のメンバーの多くは亡くなっているが、オマーラ・ポルトゥオンド、グアヒーロ・ミラバル、バルバリート・トーレスなどは健在。バルバリート・トーレスのリュート、そして、なんと言っても85歳という年齢を感じさせない,オマーラ・ポルトゥオンドの歌声にすっかりしびれてしまった。私にとってキューバは、今でも「不思議の国」だ。是非もう一度行ってみたいものだ。


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