東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

あなた、下流老人にはならないだろうと安心していませんか?

2015年11月27日 | 日記

 ラブライバー/アゴクイ/ドラゲナイ・・・わかる?今年の流行語大賞にノミネートされた言葉だ。ラッスンゴレライ/安心して下さい、穿いてますよ。は子どもたちもよく口にする。1億総活躍社会/粛々と/切れ目のない対応/存立危機事態/駆けつけ警護/国民の理解が深まっていない/テロに屈しない/早く質問しろよ/アベ政治を許さない/戦争法案/自民党、感じ悪いよね/シールズ(SEALDs)/とりま、廃案/マイナンバーなどとともに、ベストセラー「下流老人」(藤田孝典、朝日新書)もノミネートされている。
 この本を読めば、いつ私たちの誰もが下流老人になってもおかしくないことがよく分かる。 下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」、①収入が著しく少ない②十分な貯蓄がない③頼れる人間がいない(社会的孤立)この「3ない」が下流老人と定義している。例えば銀行員で収入も資産もあった藤原さんは、50代半ばで体に変調をきたし、認知症と分かった時には退職、離婚で資産もなくなりアパートを退去させられホームレス状態になっていた・・・など、大丈夫でしょう思っていた私も明日は我が身と感じる。
 著者は、「あまりの刺激的な言葉に、『差別的だ』、『高齢者をバカにしている』、『著者の見識を疑う』など多くのご批判もいただいた。 真摯にそれらの言葉は受け止めたいと思う。
 一方で、高齢者の貧困について、これまでも私たち社会福祉関係者は問題提起を繰り返し行ってきた。 問題は深刻であり、今後も貧困が拡大することには反対で早急に対処するべきだと。 日本における高齢者の相対的貧困率は20%程度であり、5人に1人は健康で文化的な暮らしが送れていない可能性があると指摘できる。 1人暮らし高齢者に至っては、さらに相対的貧困率は急上昇する。高齢者の孤立死の背景に貧困も見え隠れする。 しかし、高齢者の貧困問題に政治や政策が積極的に関与してきたとはいえない。 むしろ、消費税増税や年金削減(マクロ経済スライド)、生活保護基準引き下げ、介護保険制度の利用基準引き下げと自己負担割合の増加など貧困や格差を拡大させる政策が強いように思う。 案の定、高齢者の貧困に限らず、年々日本における相対的貧困率や格差は拡大する傾向にある。
 さらなる貧困を生み出し、苦しむ高齢者をこれ以上増やしたくないと思っている。 そこで『下流老人』という言葉の持つ力を信じて、大きなアクションに打って出ようと考えた。」と語っている。
 著者は、下流老人社会を克服するためには、社会の構造を変える運動が必要だとして次のことばで結んでいる。

 人種差別撤廃に尽力したマルティン・ルーサー・キング牧師は、「I Have a Dream」(わたしには夢がある)という有名な言葉を残した。最後には凶弾に倒れたが、彼が命がけで追い求めた人種差別のない、すべての国民が手を取りあって暮らすという社会構想は、実現に向けて今もその歩みを止めていない。当初、同人種の人々や仲間からも「そんなことは不可能である」と反対意見があったが、力強いリーダーシップをもとに、多くの人々の理解を得ていった。
 それぞれの領域、それぞれの社会における「住みにくさ」に対する改善要求は、歴史的にどの地域でも繰り返されてきている。これらの社会運動は、「ソーシャルアクション」と呼ばれ、政府に社会変革を求める活動だ。昔から理論的にもその必要性が指摘され、実践されてきた。すべてに共通することは、ただひとつ。「住みにくい社会をつくるのは、彼らを抑圧する社会システムである」ということだ。
 どのような社会的弱者であっても、個人的な問題のみに終始しない。そこには偏った社会構造の生み出す歪みが必ずあり、先人たちはこれを理解したうえで改善活動に取り組んできている。「住みにくいな」と思ったら、自分と同じような境遇の人もそう思っているはずだ。その共通意識でつながりながら、すべての人にとって住みやすい社会を目指して活動を続けてきた。…共に考え、想像し、行動していくことを、私は願いたい。