東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

ISに殺害された後藤健二さんの思いは?

2015年09月21日 | 日記

 今年に入って間もな<ISに二人の日本人が人質となり、二人とも殺害された。
 本当につらい心痛む事件であった。そのうちの一人、後藤健二さん。敬虔なクリスチャンであった彼は、ジャーナリストとして海外に出かけつつ、国内で世界の問題、平和の問題を様々な形で語り続けていた。
 先日、玉川聖学院の学院長、安藤理恵子さんの話を聞く機会があった。安藤さんの話では、後藤さんは玉川聖学院でも、毎年生徒たちに平和の話をしていたそうだ。そして話の最後に必ず言う言葉があったという。それは、「平和は、自分の隣の人を大切にすることから始まる」ということだったという。
 後藤さんが危険な所へ行ったのは、捕らえられたもう一人を救出するためであったと聞く。まさに彼は自分の言っていることを実行していた。「友のために自分の命を捨てること、これ以上大きな愛はない」という聖書の言葉がある。
彼は自分の命と引き替えにもう一人を救おうとは考えていなかったと思うが、命を落とす危険を感じながらも救出に向かった。自分の命を落としてでも、友人を救おうという思いが彼を動かしたのだと思う。
 安藤さんは、その話の中でもう一つの問題提起をされた。後藤さんはISを恨んでいるだろうか、と言うのだ。普通なら自分を殺した相手を恨むのは当然だ。しかし、彼はそういうISをも赦すのではないかと彼女は言う。
 こんな話を聞くと、次々と聖書の言葉が頭に浮かんでくる。
「あなたの敵を愛しなさい」「右のほおを打たれたら左のほおを出しなさい」「剣を持つ者は剣で滅びる」そして自分を十字架にかけた人たちを前にしてのキリストの十字架上の言葉、「神よ、彼らの罪を赦してください。彼らは何をしているのかわからないのです」。そんなの無理だよと思いつつヽこれらをつきつめていったところに本当の愛、平和があるのではと思えてくる。
 後藤さんの本当の気持ちはわからない。しかし、死を覚悟して友人を助けにいったのは、彼の中にある愛からうまれた行動だったと思う。
 それにひきかえ、最近の政府の動きは心配だ。「日本を守るため」にいつでも戦争ができるようにしていこうとしている。相手を攻撃することで自分を守ろうと・・・。一度戦争を始めれば、報復が報復をうみ、人々を守るどころか、罪もない人たちが犠牲になっていくことは、歴史が示しているのに。
 確かに今、ISがやっていることはひどいことだ。しかし、ISがここまでやり出したきっかけはイラクへの米軍攻撃だったと言われている。ISは悪の存在でアメリカは正義なのか。そうとも言えない。なぜかアメリカは正しくてISは悪いと私たちは思わされている。正義の戦争はありえない。どこの国と手をつないで戦争しても、戦争は同じ悲劇を生む。後藤さんは、そういう悲劇を繰り返してはならないと、命をかけて、伝え続けていたのだと思う。