東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

取り調べの可視化

2014年05月02日 | インポート
Photo えん罪を防ぐ方法として、すべての取り調べを録音、録画して裁判の証拠にするという方法(可視化)がある。
 ほとんどのえん罪が、「犯人」とされた被疑者の自白に頼り、十分な立証がないことに原因がある。しかも、その自白が密室の取調室で不正な尋問によって誘導されたものだからだ。
 多発するえん罪を防ぐために取り調べの可視化と全証拠の開示は不可欠だ。
 可視化について審議している法制審(4/30)で法務省が試案を示された。しかし、試案を出した法務省は、本当にえん罪を防ごうとしているのか、むしろ警察と検察の権限を強化することしか考えていないのではないかと疑いたくなる。
 その理由は、①取り調べの可視化が裁判員裁判に限られていること(全裁判の3%)②「司法取引」(捜査協力で刑を減免する)を導入すること。③警察の通信傍受(盗聴)の対象犯罪を拡大。など,これを機会に警察・検察の権限拡大を図っているからだ。
 5月1日の新聞の見出しは、読売新聞「取り調べ全過程可視化」、東京新聞「警察 取り調べ可視化3%」とため息がでるほどニュアンスが違う。
 読売の記事は、1面で法務省試案がおおむね了承されたと報道し、3面で「可視化の対象事件をどう定めるか・・・議論は難航が予想される」と報じている。
 一方、東京新聞は、「裁判員裁判になる事件は殺人、傷害致死、放火などで、その数は起訴された全ての事件の3%にすぎない。警察に録音・録画を求める事件をこれらに限定した一方で、電話や電子メールを傍受できる犯罪を大幅に追加するなど、捜査手法の強化を認める内容になっている。」袴田事件の警察の取り調べについて「再審開始決定を認めた静岡地裁は、逮捕当時の取り調べを『人権を顧みることがなかった』と批判。捜査機関による証拠捏造(ねつぞう)の疑いも指摘した。他の冤罪事件でも、誘導や脅しで自白を迫る警察、検察の取り調べを、司法が繰り返し批判している。」と報じている。
 特に、袴田事件、狭山差別裁判でもえん罪の証拠となる捜査機関が集めた証拠の全面開示を日本弁護士連合会は求めているが、検察が保管する全証拠のリスト(一覧表)を弁護側に交付する案にとどまっている。
 これでは、えん罪はなくならない。
(杏と四十雀)