北朝鮮が、第2次大戦後に国家として自立できたのは、スターリンによる勢力分割の結果である。この枠組みでは、アメリカにとり北朝鮮は、自由主義体制の圏外であり、ソ連という対抗勢力の一部に過ぎなかった。北朝鮮が、アメリカを敵国として、自国の存在を脅かす最大の敵としてアメリカに能動的に敵対したのは、金日成である。38度線を超えて、軍隊を南下させ、米ソの勢力分割戦を変更しようとした。これにより、ワシントンの政治は、朝鮮半島の問題をやむなく重視せざるを得なかった。朝鮮戦争以後、アメリカは終戦を選ばず、休戦という形で、アメリカ政治の外延の片隅に置いてきた。ところが、北朝鮮は自己中心的な独自の世界戦略をもち、極東から日本が演じた世界史的な役割を消滅させ、中国を宗主とする朝鮮農業社会の伝統と破壊した。こうして主観的には、自己の伝説づくりに酔いしれている。
しかし、極東はヨーロッパからもアメリカからも「最遠東」という地の利のため、世界史の次元では、「端数」に扱われてきた。「例外」として扱っても、どの国にとっても、支障はなかった。実にうまい不干渉の要塞であった。ところが、中国が世界の超大国として復活したのを妬み、中国に肩を並べるため、不干渉の地の利を棄てて、世界政治の主な舞台において、日夜、注目を浴びる存在としてデビューした。ロケットに夢を載せて。その結果、世界から干渉を受け、自己陶酔の快感を味わっている。ただ許せないのは、金正恩ごとき若者が、人類破滅の核兵器をもって自縛テロの道にのめり込んだことである。
この北朝鮮の行為をもって、核武装の完全な廃棄に世界を導くには、世界史の時計の針の進みかたは余りに遅い。2世紀、3世紀の時間がいる。しかも、それは北朝鮮の悪手が招く悲劇の体験を実例として、人類が学習する機会がいる。人間は、未曽有の悲劇からでも、まだ学びきれていない。中国は、北朝鮮を支え、北朝鮮を持続させた歴史的責任がある。習近平政権には、北朝鮮を「反正」する第2弾の統治力が期待される。