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習近平の権威化と、財政・金融政策の相対化

2017年11月09日 | Weblog

政治、外交、軍事に関する習近平の絶対権の確立とともに、他方で、微妙な変化が生じている。財政・金融に関し、中共中央書記局が、経済政策決定の小組の「組長」とする習近平への専権集権化を解消し、習近平の個人の崇拝を妨げかねない金融リスクから習近平個人の権威を遠ざける組織運用へと変化した。「国务院金融稳定发展委员会」が発足したのである。これにより、国務院を主宰する李克強へ裁量責任制に還元された。これに従い、国家的に新たに金融委員会制度が機能しはじめ、第一回の委員会が開催された。金融の迅速性、即効性の必要に応じた現実主義的な対処である。その意味では、毛沢東の神格化と並行し、周恩来の国務院総理、中共中央のナンバー2の役割も増大するという現象とよく似た形になった。しかし、外交に関しては、国務院の機関である外交部は、中共中央の対外連絡部からみると末端にあり、極秘情報を知る立場にないことを理解しておかねばならない。つまり、日本外務省と中国外交部との交渉は、窓口と儀礼に過ぎない。専門課題に応じて、中国の政策決定の最高責任者を、中共中央の書記につき、個々に、具体的に割り出す必要がある。それを可能にするのは、政党と政党の外交である。

習近平個人の崇拝化は、他方で、市場経済原理に応じた日常的な動態変化に対し、中共中央は距離をおき、大局を監査する立場に役割を変え、国務院にリスクを負わせる分業と、逆に言えば、李克強のナンバー2としての実質的な役割の増大という現象に注意せばならない。ただし、周恩来のような外交権は、李克強にはない。経済・財政・金融の専門家を束ねる役割に限定される。

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