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北陸新幹線の不運と富山経済への影響【補充】

2019年10月17日 | Weblog

北陸新幹線、2019年の台風19号に水害により車両10編成を喪失した。「観光収入」依存度が高い金沢に対する影響は、実害として速攻的な被害として算出される。僕たち、富山の歴史家は、「歴史と観光」(山川出版社)という本で、県政が軽薄な観光ブームにのめり込む危険を指摘してきた。富山県では、「産業観光」という線で踏みとどまり、製造業への依存度の高さを軽減する方策は、「お勧めしない」というスタンスをとってきた。その裏側には、県政の基本は、治水・防災にあるべきだとする「禹王」の思想と、管仲の経世済民を軸とする古典的な伝統思想を廃棄するべきでないという保守主義がある。従って、富山県政の中核的な担い手は、農村共同体の消防・防災の「団」にあり、国政の消防官僚で郷土出身官僚を「政治家」に転身させ、県知事という記号と治水・防災という実需との結合により、富山県政の基調が形成されてきた。これは、隣県の長野、新潟、石川、岐阜とも異なり、「治水=県政」という治県の基軸が、中沖、石井知事の2代にわたり墨守されてきた。こうした点を考えると、新幹線のバック・アップとして、富山空港があり富山―羽田便が機能するので、県レベルでは損益が相殺される。このブログでは、新幹線は「半幹線」とのべてきた。まだまだ、未完成といういみである。関西圏と結ばれた段階で、それに合わせ「観光立県・富山」の諸施策が完成する。従って、石川・金沢市の観光依存型の経済には、台風19号の打撃は厳しい。が、まだ、富山駅そのものも未完成な富山では、経済面での影響を過大に想定する議論は必要はない。富山にとり急務なのは、富山産米が神戸港から上海にむけ輸出されるルートに加え、富山新港に中国側が認可する検疫・燻蒸などの施設を整えること、さらに、こうした電車の墓場として県内リサイクル産業もあり、再生、再利用できる資源回収などの環境産業への重みを高めることである。北陸新幹線の不運と富山経済への影響は、実は相関性が乏しい。それが、金沢とは大きく異なる点である。

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