中国・香港の国内の中南海ウオッチャーには、政治局常務委員会における、韓正、王滬寧、趙楽際の事実上の権限はく奪が終わっているという分析があるようだ。実は、日本などの外部世界が期待する政変ではなく、江沢民グループに臣従する勢力を一掃する権力闘争が完結したというわけだ。他方、王岐山がひきつれる習近平、さらに胡錦涛につらなる李克強、これら二者の連携が深まり、両派でアメリカとの関係の調整に臨んでいるといえる。これは、従来、中共―アメリカ民主党という相互扶助から、習近平とトランプとの利害調整の最後の緩衝装置に委ね、江沢民グループ(上海グループ)のもつ対米のコネ、北朝鮮へのコネ、この2つの利権トンネルが完全に消滅したことを意味する。いわゆる8月上旬の北戴河で、習近平、李克強の対米政策の転換を迫る江沢民系統からの牽制の可能性は極めて低くなったようである。この一連の流れで、中国の対日政策にも大きな変化がみられた。この20年の日中関係を引き算して考えると、日中の非和解の原因は、江沢民派による「反日愛国主義宣伝」によるという答えが正確である。その前提として、習近平、李克強との不和が、当面は、解消されたことと無関係ではない。以上の点から、2019年の後半は、北京の中南海に変動要因をおいて分析する必要はない。アメリカもトランプ再選を既定の値においてよい。日本がいま、韓国との紛議を詰めているが、江沢民グループによる北朝鮮の金正日の時代に繋がる中共の対北朝鮮パイプの遮断を共同で進めることで、時代の幕が降ろされ、次の時代の幕への間へと事態は進展している。2019年の後半は、日中の和解を前提とする朝鮮半島問題の処理にあることを意味している。ただ、相手のあることだから、事態の好転は期待しないほうがよい。