欧米では、中央銀行が景気の過熱をおそれ、金融の量的緩和の踏切り、ドル、ユーロを高めに誘導した。アメリカは、政府が対中貿易に大幅な報復関税を課し、自由貿易原則が後退し、世界貿易の総量が縮小することが確実である。ユーロはイギリスの離脱が進み、もはやユーロの理想主義は崩壊し、明るい前向きの景気を上向きにさせるテーマはない。さらには、いよいよイタリアの金融危機が顕在化しはじめた。ドイツも主力の自動車産業で、ジーゼル車の廃止、EV車への転換に重い先行投資が求められ、金融緩和が必要なのに逆の金融環境となった。さらに、中国は内部における不良資産の処理が薄氷を踏むような政策操作で切り抜けてきたが、ここへきて牽引力である対米の輸出が深刻な問題となり、そこに景気浮揚の要因を見出すことは困難である。仮に、北朝鮮への経済制裁を解除しても、それが好況期にはさらなる好転の原因となるが、景気の下降局面では何の効果も生まない部分最適に終わる。こうして、世界経済の不況を予想し、不況に耐えられる経営のぜい肉を落とす動きも、日本企業では始まっており、調整局面に移行したと判断できる。世界経済は、合理的期待可能性と、その逆の合理的な期待できない下降予測にも左右される。となると、ニーアル・ファーガスンが、重視してきたチャイメリカンの瓦解を転機に、彼の想定する2020年危機がありうるという冬支度を想定しなくてはならないだろう。とすると、雇用環境も変化し、日本だけが新卒を奪い合うような状況も、早晩、慎重論により合理的な景気後退の予測が実感を伴うようになるだろう。はっきり言って北朝鮮の問題にスペースを割く余地もない状況が起きてくる。
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