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2016年の百年前は?

2015年12月25日 | Weblog

TAM講師代表:専門研究「世界は、百年前はどうだったのか?」

世界史を勉強すると、百年前にすでにあったもので、2016年も存続すると考えられるものと、この百年の間に生まれ消えていったものが区別できる。まず、継続しているのが、中央銀行の制度である。それらは、大英帝国の金本位制度に支えられ、ユダヤ系の金融商人の世界ネットワークに支えられてきた。電信による為替制度のおかげで、地球的な規模で貿易の決済が可能となる仕組みである。しかし、百年前の第1次世界大戦において、大英帝国の金本位制度は崩壊し、世界の安定秩序は一挙に崩壊する。消えていったのは、貴金属を本位とする通貨制度である。貴金属の投機市場から、世界貿易の通貨が消えていった。

百年前には極めて盛んであった共産主義・社会主義が、ロシア革命で全盛期に入り、そして大きな社会実験の結果、その後の百年のなかで進歩性、革新性が失われた。しかし、ロシア革命とは違う道すすみ、福祉国家や社会保障制度の進んだ国家がある。それが北欧諸国であり、イギリス、フランス、ドイツなどである。アジアでは、日本が唯一の成功体験を持っている。

百年前は、分裂国家で、世界帝国の仲間から外れていた中華民国は、その後、孫文の庇護のもとに誕生した中国共産党による統一の結果、遂に、アメリカと肩を並べるようになった。少なくとも、ロシアが凋落し、中華帝国が再興したことは確かである。

百年前は、少数民族の独立運動は、大英帝国のための世界平和により抑え込まれていたが、第1次世界大戦後、アメリカが民族自決を認める国際政治の基本概念を確立した結果、世界的に民族独立運動が高揚し、特に、アフリカの民族主義国家が誕生し、西欧の植民地国に大きな変化が生まれた。

このように眺めると、中国は自国の問題を解決したように見えるが、国内は社会主義制度が未完成で、粗暴な市場原理主義をうまく抑制できていない。つまり、百年前の中国にあった家産官僚国家という基本形では、中国は百年前となにも変わっていない。真の革命が中国にはなかったことを意味する。ロシア革命方式、つまり、革命政党が党の軍隊をもち、その武装力で人民を徳育教化できると考えたが、百年たっても、中国共産党員は、指導者が「党を姓にせよ」と呼びかけるほど、「私の同族の姓」を第一にする私的利益を実現する手段として革命党が利用されただけである。

この百年、最も大きな変化を遂げたのは、連合国の占領支配をうけたドイツと日本である。最後に残された活路である製造業を生かし、大きな変化を遂げた。大失敗を経験したことで、民族としては、大きな学習をしたことになる。そして、この百年、基本的に変化していないのがアメリカである。理想主義と、偏狭な保守主義とが、壮大な民主的な討論を行い、大きな間違いが修正される仕組みを内部にもっている。多民族社会でありながら、国民の合意を形成する仕組みをもっている。百年前の理想を百年後の現在も、それなりに進化させている。それは、アメリカである。広く言えば、西欧の知的社会である。中国がその一翼を担うには、もう百年の時間が必要である。そして、日本は大きく成長している。偏見なく世界を見る目が生まれてきたからである。与党も野党も、共通の認識の部分が大きい。

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